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ソフトバンク コマース&サービス株式会社では、定年退職後も楽しみながら続けられる仕事を若いうちに見つけてほしいという社員への想いから、「副業」を推奨しています。
第3回では、同社で副業をしている一人の社員のキャリアを通して、新しい会社員の働き方を探ってみました。

働きながらMBAを取得し、副業で講師をする会社員

ソフトバンク コマース&サービス株式会社(以下、ソフトバンクC&S)の社員である本松晋作さんは、会社員とビジネススクールの非常勤講師という二つの顔を持っています。現在43歳の本松さんは、35歳のときに「このままでいいのか?」という不安や疑問を感じ、MBA取得、転職などによってキャリアを開拓してきました。
そんな本松さんが考える、キャリア、学び、副業とは?

●本松 晋作さん(ソフトバンク コマース&サービス株式会社 コンシューマ事業本部IoT事業推進本部 事業開発室 室長)
早稲田大学理工学部卒業後、ソニー株式会社に入社。ウォークマンやブルーレイ等のAV製品中心に経営企画、商品企画、事業管理を担当。マレーシア現地法人にてマレー、インド、中国人の多様なチームでサプライチェーン改革や工場運営を経験。並行してMBAを取得し、異業界での海外事業開発に携わりたいと楽天株式会社へ転職。国際部にて欧州事業の戦略立案、事業推進に携わる。その後、ソフトバンクアカデミア入校と同時にソフトバンク コマース&サービス株式会社へ入社。現在はIoT関連事業開発やパートナー開拓に日々奮闘中。

ワクワクする環境へ自ら動くことが大切

—2014年にソフトバンクC&Sに転職してきたそうですが、こちらではどんな業務を担当していますか。


本松 晋作さん(以下、本松):転職してすぐに担当したのは商品企画です。当社で開発したスマートフォンのアクセサリーを、海外で販売するためのグローバル事業に携わりました。2017年からは全体の戦略を考え、現在はIoT関連事業の推進やパートナー開拓などを行なっています。



—プロフィールによると、社会人としてスタートを切ったのはソニー株式会社ということですね。どういった動機からソニーを選んだのでしょうか。


本松:私はソニーのウォークマンで育った世代で、初めてウォークマンで音楽を聴いたとき、脳の中で音が鳴っているような衝撃を受けました。その印象が強く残っていたこともあり、ソニーで働きたいと思いました。当時、ソニーは現在のAppleのような存在で、絶頂期でしたね。“デジタル世代”に育った子どもたちが将来のお客様になる、だから彼らの夢をかなえる企業にならなくてはということで、「デジタル・ドリーム・キッズ」というスローガンを掲げていました。



—ソニー在職時に、ターニングポイントとなった出来事などがあれば教えてください。


本松:マレーシアの現地法人に3年間行かせてもらったことが、後のキャリアに大きく影響しています。

商品企画を担当したポータブルMDプレーヤーが最高益を記録した翌年、売り上げがガクンと落ち込み、状況が激変しました。AppleのiPodが大ヒットしたのです。このとき大きな挫折感を味わい、先が見えなくなってしまいました。

そんな中で、商品がつくられている現場の業務を経験したいと思うようになり、会社に願い出たところ、マレーシアの現地法人に行かせてもらうことになりました。

マレーシアで工場運営をするなかで、現場にいる人たちが一つひとつ組み立ててくれるから、我々は商品を販売できるのだと実感しました。すべての部品が届き、それを使って組み立てて、毎日、計画通りに生産できるのは、すごいことなのです。
マレー人、インドネシア人、中国人、インド人など言葉や文化が違う人たちに指示を出すために、自分の席の横に小さなホワイトボードを置いておき、ヴィジュアルで描いて伝えたりしていましたね。自分は現場が好きで、いろんな人とコミュニケーションをしながら働くのが好きなのだと、改めて感じさせられました。



—では、その後はどのようなキャリアを築いていったのでしょうか。


本松:帰国して本社に戻り、ブルーレイのマネジャーを担当しました。管理職になり、予算進捗確認や社内報告が多い毎日で、仕事の“手触り感”みたいなものがグッと減り、「社内スキルは身につくかもしれないけれど、そのスキルは他社でも通用するのか?」と、考えるようになりました。

当時、ソニーでは50歳役職定年制が設けられ、家電業界は構造不況に陥っていました。そんな状況から「このままでいいのか?」という不安や疑問を感じ、ソニー在職中の2011年にMBAのスクールに通い始めました。



—その後、楽天株式会社に転職することになるのですね。


本松:異業界での海外事業開発に携わりたいと考え、2013年に楽天に転職し、国際部で欧州事業の戦略立案、事業推進に携わりました。ところが、わずか半年で廃部になってしまいました。

その後、MBAスクールの同期の紹介でソフトバンクアカデミアに入校、同時に当社に入社したという流れです。



—社会人になってから現在に至るまで、キャリアに対する考え方が大きく変わっているのではないでしょうか。


本松:そうですね。今振り返ると、ソニーに入社した当時は「生涯この会社で働き続ける」と、当たり前のように考えていて、それ以外の選択肢はまったく想定していませんでしたね。



—キャリアを形成するうえで、どんなことが大事だと考えていますか。


本松:私は自分の経験から、二つ大事なことがあると考えています。一つは、「ワクワクする環境へ自ら動く」ことです。ソニー在職時に商品企画を担当するようになったのもマレーシアの現地法人に行くことができたのも、会社に願い出て実現させたことでした。

もう一つは、「しっかり腰を落ち着けて、目の前の仕事に集中する」ことです。周囲に翻弄されずに、自分を信じて取り組むことで、チャンスが巡って来るのだと思います。

MBAの勉強で身についた「タイムマネジメント力」と「学ぶ習慣」

—先ほどのお話にもありましたが、ソニー在職時に不安や疑問を感じたことが、MBA取得の動機ということですね。


本松:それまで簿記や英語など、一通りの自己啓発はしていたのですが、この先に何年も働き続けるに当たり、体系的で実務に直結する知識を身につけて、どこでも通用する実力をつけたいと思いました。そのためにはMBAを取得するのがよいと考え、グロービス経営大学院に4年間通いました。



—仕事と学業の両立は、大変だったのではないでしょうか。


本松:そうですね。平日は会社に勤務しているので、その前後に自習や勉強会をセットして、週末はスクールの講義や家族と過ごす時間の合間に自習をしていました。睡眠時間は削らず、毎日6時間の睡眠をとっていました。



—バランスのとれたタイムスケジュールですね。何か工夫した点などあれば教えてください。


本松:何かを捨てないと時間を捻出できないと考え、テレビを観るのをやめました。 学習の時間については、切磋琢磨する仲間がまわりにいる環境をあえてつくっていました。一人だとサボってしまうので、スクールの仲間に声をかけて朝の勉強会を積極的に開いていましたね。自分で手を挙げたからには有意義な時間にしなくてはというプレッシャーから、予習をしていきました。



—MBAのスクールに通って得たことはたくさんあると思いますが、特に挙げるとしたらどんなことがありますか。


本松:一つは「学ぶ習慣」が身についたことです。以前より読書量も増えましたし、常に新しいテーマを決めて自分なりに勉強するようになりました。この先、何年続くか分からない人生において、何もしないのと何かを学び続けるのとでは、大きな差が出てくるはずです。

もう一つは、人脈ができたことです。様々な経歴を持つ仲間や先生たちと出会えたことは、とても大きな収穫でした。どの業界でも、直接的または間接的にコンタクトできる人脈が広がり、実務でリサーチをする際などにも大変役立っています。

また、どこに行ってもある程度のパフォーマンスを出せるという自信がつきました。MBAのスクールで、約100件のケーススタディを通して経営の疑似体験をしたことで、視野が広がりました。当社のように、変化が比較的大きい環境でも器用に動けているのは、MBAでケースや講師、クラスメイトから見聞きしていたことを実務に生かせているからだと思います。

副業で接する人たちが「自分も(本業で)頑張ろう」と思わせてくれる

—副業を始めようと考えたのは、どのようなきっかけからでしょうか。


本松:きっかけは、2017年10月に当社で副業を推奨すると発表したことです。それを知ってすぐに副業の申請をして、2018年1月からグロービスが運営するビジネススクールで非常勤講師を始めました。

もともと人に教えることは好きで、大学生のときには塾の講師をしていました。社会人になったら人に教える機会なんてないだろうなと思っていたのですが、そのスクールで講師をしている友人に、「副業で講師をしたい」と相談し、現在に至っています。



—どういった科目を教えているのでしょうか。


本松:企業の管理職の方を対象に、「クリティカル・シンキング」と「ファシリテーション」を教えています。



—講義の準備をするのは、大変なのではないでしょうか。


本松:講師になるための訓練を3カ月間受けたのですが、それはかなり大変でしたね。
講義が始まってからは、クラスのたびに内容をアップデートしていく感じです。あとは、受講生のプロフィールなどに目を通して、「介護事業に関する質問は、介護業界に詳しそうなこの人にしてみよう」といったように、事前に相当緻密なクラス設計をして臨みます。



—ビジネススクールでの非常勤講師の副業は、本業にどのような影響を与えていますか。


本松:講義をするたびに受講生から元気をもらっていて、「自分も頑張ろう」という気持ちにさせられます。受講生たちは、自分と同じ立場の管理職の方々なので、ディスカッションや懇親会などを通して悩みや本音を聴きながら、自分も頑張らなくてはと励まされます。

また、講師という立場で指導してはいるものの、自分自身うまくできていないと自省することもあります。 一方、受講生からは、講師が自分たちと同じ会社員だと親近感を持てるという感想をよく聞きますね。



—最後に、副業を始めたいと考えている人に、メッセージをお願いします。


本松:やりたいことがある人は、自分ができることから気軽に始めてみるのがよいのではないでしょうか。たとえば、花屋になりたかった人は花の勉強をしてみるとか、犬が好きで犬にかかわる仕事に興味があるなら、ペットトリマーの資格を取得して働いてみるなど、できることはいろいろあると思います。

実は最近、ソニー時代の親友が、ガンで他界しました。明るくて元気な人だったので、とてもショックでした。この経験から、やりたいことは、すぐにやってしまおうと思うようになりました。「今年は忙しいから、来年トライしよう」と先送りしたとしても、来年があるかどうかは誰にも分かりませんので。

【取材後記】スキルだけではなく「人間力」も培うことが大切

今ある仕事が10年後もあるとは限らない変化の激しい時代においては、5年、10年先を見通したキャリアを思い描くよりも、今を大切にすることが大事なのかもしれません。また、このような時代には、スキルや知識よりも、「人間力」が必要とされるのではないでしょうか。

本松さんは、MBA取得や転職、副業によって、「人間力」も高めてきたのだと感じました。本松さんのように、自分らしく働ける場所を求めて主体的に動く会社員が、今後もっと増えていくことでしょう。

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