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「わ~ママ Style Kids」内のデスク

社内に保育スペースを作ったタイミング

まず横川副社長にお話を伺います。社内に保育スペースを作られているということで、そのプロジェクトが立ち上がった経緯をおしえてください。

うちの会社は、20代30代の女性社員が多いのでいずれ何かしなくちゃいけないと思っていました。 2年前に二人の社員が同時期に妊娠出産を迎え、二人とも「すぐにでも働きたい」と社に戻る意欲があったのですが保育園に入れず待機児童になってしまったんです。 それならそういうスペースを作っちゃおうかと。

当時はこんなに大規模なものではなく、会社のすぐそばにワンルームマンションを借りて、たまたま一人が保育士の資格を持っていたので、その社員が二人の子ども達をみることになりました。 もちろん保育も仕事として会社から給料も発生していました。今後さらに子どもも増えるだろうということで、会社を引っ越すタイミングで、社内に保育スペースを作りました。

株式会社スタイル・エッジ 横川泰之副社長

今でもそのお二人は社外の保育園には入れずに、この保育スペースを利用されているんですか?

今は普通の保育園に預けていますが、例えば土曜日や風邪を引いている時はここを使っています。子どもが元気でも、37.5度を超えると普通の保育園では預かってもらえないので。

連れてくる場所があるというのは助かりますね! 現在は利用者は何名ですか?

4~5名です。非常勤の子どもを合わせると、10名位です(笑)

お子さんの年齢による制限はありますか?

未就学児であればというくらいで、制限はないです。早い方で1歳になる前の子を連れて、時には背中におぶって仕事をしていましたね。

新たに保育士兼事務職として採用した保育士さんが働いているそうですね。

うちは大企業でなく社員も100名くらいなので、常時保育士を雇うのもどうかと。それで保育士兼事務という形で応募を出してみたら、思いのほか応募者が多かったんですね。保育士は結構激務で低賃金と言われていますよね。保育士自身が出産をして社会復帰する時に、パソコンの技術もないのでもう一度あの激務に戻るしかないわけです。そういう背景や潜在保育士の問題もあるので、これまでも事務を募集すると、保育士資格者からの応募があったんですよ。

保育士さんはおひとりですか? お子さんは何人まで受け入れ可能なのでしょうか。

保育士は今一人です。子どもは6人くらいが適正で、最大7~8人でしょうか。でも社内で出産の時期が重なることもそんなにないので、いっぱいになってしまうということは、まだまだないですね。

 

踏み込む勇気だけ。あとはやれば何とかなる

経営者目線では、どんな効果がありましたか?

対外的なところでは、採用に関してはいい影響が出ていますね。応募総数も上がりますし。 女性の社員が増えていますね。

それは今お子さんがいない方も含めてですか?

そうですね。自分がそうなった時の事を考えている方もいますし、自分の子どもはもう小学生で自分が利用することはないんだけど、そういうことに理解がある会社がいいということで応募する方もいます。

社内でいうと、空気感は良くなっていますね。ママ社員は、子どもが風邪をひいたら会社を休まなければいけないじゃないですか。そんな時に、誰かがその人の仕事を補わなければいけないということで、普通の会社なら殺伐とした空気になるところもあると思うんですが、うちのママ社員はちゃんと感謝をし、まわりも快く助けるという雰囲気ができていると思います。

お子さんをお持ちでない社員さんたちの反応はどうでしたか?

子どもの存在に対して、ホンワカしていますね。たとえば子どもがギャーッと泣いていたら、自然と笑いが出てきたり、子どもが歩き回っていたらちょっかいを出す社員もいるし、保育スペースに入っていく男性社員もいます。そういう関わり方を全員がやっています。 「めっちゃ優しいやん!」という知らなかった社員の顔を見られたりもしますね。

株式会社スタイル・エッジ 横川泰之副社長

今まで困ったことは何かありましたか?

今の所、特にないですね。最初このプロジェクトで集まった時に、会社側がガチッと決めたのではなく、「テーブルの素材やおもちゃはこうしよう、学習機能はそれぞれの教育方針があるから入れないでおこう」など、ママ社員やママ社員候補たちなど現場からの意見を出し合ってまとめたもので運営しているので、そういう意味でもトラブルはないですね。

始める前には想像がつかなかったけど、やってみたらこれも必要だったね、というものは?

おまるくらいですかね(笑)

ママ社員が増えると仕事量の調整は必要になってきますか?

そこまで必要ないですね。決められた時間内で生産性高く働けば、十分成果は出せますので。

保育士さんが一人だと、保育士さんの病欠の時はどうされていますか?

病欠の時は臨時の保育士を雇ったり、他の社員で保育士資格を持っている者もいるので、その方に臨時で対応してもらいます。 お休みの希望は極力受け入れたいですね。
最初のうちは「8時までみてくれないか」「土曜日お願いしたい」というママ社員の声もあったのですが、18時半以降の残業はなしときっちり線を引き、保育士への負担が集中しないようにしました。もし土曜に出勤してもらう場合は、平日の子どもがいない日を休みにするなどしています。 週5日勤務なんですが、子どもがいない日が1日ありますので、その日は保育士には事務職をしてもらっています。

今後保育士を増やす予定はありますか?

今の状態なら、子どもが2倍に増えても対応できます。3倍になったら増やすか、あるいは保育士二人で午前と午後でシフト制にするなど、色々できますよね。 今のところ増やす予定はないですが、とにかく保育士に負担がかからないようにはしていきます。

保育スペースの導入を検討されている他社さんが見学に来られるとのことですが、御社のように保育スペースを取って保育士さんを常駐させるのに、ネックになることや導入のポイントはありますか?

経営者仲間からも「やってみてどうなの?」とよく聞かれますが、やってみたら何とかなるんです。踏み込む勇気だけだと思います。あとは社内の風土作りですよね。社内での不平不満は100人いたら1人は必ずいると思うんですよ。でも会社としてママ社員を守るという意思をちゃんと示す。そういう空気を作れるかどうかが肝だと思います。

そこは普段のコミュニケーションで意識して発信しているんですか?

私も他の役員も子どもを持っていて子どもが好きなので、会社で他の子も可愛がるじゃないですか。そういう姿を見せることも一つの発信していく方法だと思っています。

仕事復帰と保育スペース作りのはじまり

ここからは保育スペースを利用している稲葉さんにお話を伺います。現在の仕事内容や勤務時間を教えてください。

営業部のチーフとしてお客さんのアポを取り、アポイント先に出向くことも多いです。社員のマネジメントや教育も行ってます。

株式会社スタイル・エッジ 稲葉千枝さん

お子さんは今何歳で、復帰されたのはいつですか?

2歳3ヶ月です。復帰は子どもが生後7~8か月くらいの時でした。

会社でマンションの一室を借りて保育することになる前は、保育園に預けようと探していたんですか?

はい。認可、無認可、認証保育園など、預け先をかなり探しましたが、基本空きがなくて。空きがあっても無認可で、正直安心して預けられる環境とはほど遠いような状態でした。泣いてる子がずっとバウンサーに座ったままいたり、走りまわっている子がいたりしても先生が一人もいないとか。子どもを置いて仕事に行くことを考えられる場所ではなかったので、預けられずにいました。

社内で託児しようと話が出た時はどう思いました?

復職を希望していたし、安心した環境に預けられるし、一気に両方が叶って嬉しかったです。

最初は同僚の方が保育されたということで、偶然もあったのかと思いますが、安心してお任せできましたか?

同僚も出産が1週間違いで、同じ月齢のお子さんだったので私の状況も分かってくれるし、どういう人かも分かったうえで預けられるのですごく良かったですね。

社内の保育を辞めて、他の保育園に入れようと思ったことはありますか?

認可の保育園に空きが出るなら入れようと考えていましたが、学年が上がるまでは認可は空きが出ないので、空きがでるまでは預けていました。
今は認可に入れたので常時は認可で、社内には週に1,2回連れてきています。

社内に預ける日は決まっているんですか?

私は土日祝日に仕事が入る日も多々あり、認可の保育園はお休みなのでそのタイミングとか、大きな風邪ではないけど認可では預かってもらえない、病児保育も空きがないという時にも連れて来たりします。

本格的に社内に保育スペースを作ろうとなった時に、他のママ社員や予定されている方で意見を出し合ったそうですが、その時にどんな要望やこだわりが出ましたか?

独立した保育ルームを作るのではなく、仕事の空間に保育ルームを置き、保育スペースを利用しない他の社員のストレスにもならずにいかに仕事と保育スペースの共存ができるかということを考えました。
あとは安全面に妥協しないことも、とても気を付けました。床や家具なども材質にこだわり無垢材を使用し、壁には漆喰を施しました。防音ガラスで音もほぼ聴こえないですし、内側にクッションがついていて、子どもが保育スペースにいる姿がちょうど見えないようにしているので、子どもが目に入って気になってしまうという事もないんですね。あとは子どもも同僚たちも落ち着けるよう、優しい色味にするなども工夫しました。

株式会社スタイル・エッジの保育スペース「わ~ママ Style Kids」

独立した保育スペースを作るのとは違う気遣いですね。外部の専門家の意見を聞いたりはしましたか?

各自が色々調べたりしました。あと床の材質を選ぶ時には、普通の保育園ではどんな材質を使っていて、社内との調和を取れるようにするにはどういったものがいいかなど業者さんに相談させていただいたりしましたね。

社内託児所を作るのにネックになるのがお子さんを連れての通勤だと思うんですが、自宅近くの保育園とは違って工夫などされましたか?

私の場合はちょっと行くと始発駅なので、始発駅で一旦降りてから、座って通勤しています。他のママ社員は通勤時間を遅らせるなどしています。

ママはあそこでお仕事してるよ。

今お子さんは何時から何時まで預けていますか?

9時から18時の勤務なので、8時半から9時の間に来て、18時すぎには社を出ています。行きに比べたら帰りの電車はそれほど混んではいないですね。
座れない時もありますが、通常の認可保育園に預けている時も、電車で自宅に帰ってから自転車に乗りまた別の場所にお迎えに行くことになるので、負担としては同伴出勤と通常の認可保育を比べてどちらの方が大変というのはありません。子どもは電車がとても好きなので、本人は楽しいみたいですね。

保育スペースの中にもデスクがありますが、中のデスクと外のデスクでする内容の違いはありますか?

電話を使う業務の時は、保育スペースには電話は置いていないので外でしています。会議やチームのメンバーを見ながら進める業務の時もチームの席にいます。それ以外は中で業務をしています。

中での業務中に、お子さんから話しかけられたりしないですか?

最初の頃は話しかけられましたが、今は「ママはここに来ると仕事に入ったんだな」というのが本人も分かるようになってきて、あまりないですね。

外のデスクで仕事をしている時に、ママに会いたいと出てきたりしませんか?

そういう時は、保育士さんが保育スペースの中から「ママはあそこで仕事をしているよ」と抱っこして見せてくれて。私の姿を見ると「本当だ。お仕事してる」と、満足するみたいです。それが自宅で作業することとの違いですね。私以外に他の大人が見てくれると子どもも納得して気にならないみたいです。

昼ごはんはそれぞれ別にしていますか?

別でお弁当を持たせて保育士さんに食べさせてもらっています。

最近、中途入社してこのスペースを利用してる社員の方もいらっしゃるようですが、皆さんスムーズに始められていますか?

それありきで入って来られる方もいらっしゃいますし、アルバイトの方も利用されています。アルバイトだと余計に保育園も見つからないでしょうから、助かっていると思います。子ども達は来る曜日もそれぞれ違うんですが、全然関係なく仲良くしています。子どもはたくましいですね。

「わ~ママ Style Kids」で仕事をする稲葉さん

オフィス内の託児と認可の保育園と、それぞれメリットデメリットがあると思うんですが、どういった点がありますか?

通常の保育園に預けていたら、普段どう過ごして、どうやって遊んでいるのかなどは連絡帳で断片的にしか子どもの様子が分からないじゃないですか。それがオフィス内の保育スペースに預けると子どもの様子もわかるし仕事もできるという美味しいところ取りができるんです。ママが仕事を頑張っている姿を小さいうちから見てもらえるので、仕事に対する子どもの理解も出てくるのかなと思います。

ここには園庭がないので、好きな時に園庭に出て遊ぶことができないですが、近くに公園や新宿御苑もあってお散歩もできるので、そんなに問題もないです。あと認可保育園では給食が出ますが、どうせ自分のお弁当も作りますから、それも負担ではないです。 大人数での生活ではないので、団体生活をしている子どもと大差のないように、教育プログラムは必要かなと思います。

授乳している方はいらっしゃいますか?

今はいないですが、マンションの時やここに移ったばかりの時はいました。

 

すぐに授乳できるというのは復帰するのに安心ですね。 皆さん就学までに認可保育園に入れるチャンスがあるなら入れたいとお考えですか?

人によりますね。会社と自宅が離れている方ですと地元の保育園に預けた方がいいでしょうし、週に3~4回だけ働きたい方だとポイントが足りなくて認可には入れない。その場合は社内の保育スペースの方がいいですよね。

その方の働き方に関連してくるんですね。稲葉さんはずっと働き続けたいとのことですが、今の会社は子育てに対する理解はあると思いますか?

ものすごくあると思います。社員が小さな子どもを育てている世代なので、男女とも理解を得やすいです。経営者陣も小さなお子さんがいらっしゃるので女性の育児、家事、仕事との両立の大変さとか、仕事を大事にしたいというスタンスを見てくれていますね。子どもを育てながら仕事をしたいキャリア志向の女性こそ、マッチングするんじゃないかなと思います。

世間では待機児童問題もありがなら、女性の社会進出が推進されていますが、世間的にどういう制度や工夫があると、より子育てしながら働きやすくなると思いますか?

保育事業全般に関しては、好きな日や時間ごとに預けられるとか、シッターさんをつけるとか、色んな保育の形を自由に選択できるといいですね。保育園でさえ、「週5日預けて可哀想」と言われることがあるので、シッターさんに預けても可哀想と思われないような空気感のある世の中になってほしいです。もっと安全で他の方に任せて安心して仕事ができる制度ができるといいですね。

保育士のあたらしい働き方

最後に保育士の守屋さんにお話を伺います。ここの募集はどうやって見つけましたか?

前は普通の保育園で働いていたんですが、体力的に厳しくなってきたので転職を考えていて、その時のここの求人を見つけました。

株式会社スタイル・エッジの保育スペース「わ~ママ Style Kids」

転職は保育士に限らず探されていたんですか?

はい、幅広く探していたんですが、ここですと保育士の資格も活かせて他の仕事も覚えられるので。

事務の仕事は初心者ですか? どんなことをされているんですか?

ほぼ初心者ですね。データ集計などですが、エクセルも使ったことがないので、教えていただきながら仕事しています。

普通の保育園と今との違いで難しい点はありますか?

児童の人数が少なかったり保育士が一人なのでそこが違うとは思うんですが、その分じっくり関われたり、それぞれの子どものペースに合わせてゆっくり過ごせたりするのはいいですね。

お散歩には何人まで同時に連れていけますか?

年齢によって違いますが、その時によって3人か4人は連れていけます。その日の状況に応じて、多い日は無理せず部屋で遊んですごしたり、ずっと室内だと飽きてしまうので社内のテラスで遊んだりしています。

今保育士はお一人ですが、有給休暇とかお休みはどうされているんですか?

今のところ、有給は使ったことはないです。一度風邪で休んだ時は別の保育士を臨時で頼んでくれました。子どもがいない日に代休を取ったりしています。あとはママ社員さんと都合を合わせて調整しています。

前と比べて体力的にはどうですか?

通常の保育園はシフト制なんですが、ここは毎日同じ9時から18時半までなので体力的に楽になりました。

株式会社スタイル・エッジの保育スペース「わ~ママ Style Kids」

今は保育士不足が問題になり、そこから派生して保育士さんの待遇問題も取り沙汰されていますよね。資格があるのにもったいない人も多いと思いますが、どういう状況なら保育士さんが働きやすくなると思いますか?

保育士が辞めてしまう原因はお給料の問題や人間関係、残業が多いところなど色々あると思います。お給料を上げるのも一つの方法ではないでしょうか。お給料が増えて人が沢山集まれば残業も減ると思います。

保育士としてのやりがいはどんなところですか?

子どもと過ごす中で日々成長を感じられるというのは他の仕事にはなかなかないところだと思います。そこがやりがいですね。

ここで働くようになって、近いところでお父さんお母さんたちが働いているのを見て感じることはありますか?

最初は正直慣れなかったですが、今は気にならないですし、逆に「近くにお父さんお母さんいるよ」というと子ども達が安心します。子どもも親が働いているところを見られるのがとてもいいと思います。

インタビューを終えて

社員も経営者陣も子育て世代だからこそ、自然にこのプロジェクトが発生した。その会社の理念に共感した優秀な女性が集まることで経営者は喜び、早く仕事復帰したいママ社員は待機児童で悩まず、子どもを近くに感じながら仕事に集中でき、保育士はハードな環境から解放され、無理なく大好きな保育の仕事ができる。これぞ社会が子どもを育てるということ。どの立場の人も幸せになるこのしくみ、他の会社にもどんどん取り入れていってほしいですね。

 

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