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9月8日、リモートワーク導入担当者向けセミナー 「ライフとワークの質を高めるリモートワークの始め方」が開催されました。

オフィスを持たず、全員が今いる場所で、離れて働くという働き方を10 年近く続けてきた有限会社エコネットワークスと、2015年からグループの働き方の大改革を推進してきたリクルートホールディングス。この2社の「リモートワーク」経験がそれぞれの実践者より語られました。

また、話を聞いた上で参加者同士が自分たちならではのリモートワークのあり方や、それを実現していく具体的な方法を考えるワークショップも行われました。

 

司会進行は『くらしと仕事』のやつづか編集長。今回のイベントについて「昨年『暮らしと仕事の質を高めるためのリモートワーク実践BOOK』の制作をお手伝いしたことから、『自分の職場にリモートワークを取り入れたい人を、直接手助けする場を作ろう!』と企画したのが、今回のセミナー・ワークショップです」と開催の経緯を語りました。

 

暮らしを重視した働き方を、と考えたときにリモートワークが最適だった

第1部では「リモートワークで得たいもの」を考える、というテーマで、有限会社エコネットワークス 野澤 健さんに自社におけるリモートワークについてシェアしていただきました。

エコネットワークスは企業や自治体などに向けてCSR、サステナビリティに関する各種業務を行っている会社なのですが、リモートワーク制度を採用している背景はどういったものなのでしょうか。

野澤さんは、「組織という観点から見ると、仕事の内容がプロジェクト単位で完結するのでリモートでやりやすいという面があります。また、CSRというテーマが専門的ということで、それができる人を探すとなると必然的に地理的に離れた人にお願いすることとなるという事情もあります。一方、個人という観点からは、働いているメンバーは、子どもと一緒にいる時間を増やしたい、定期的に働く場所を変えたい、満員電車が嫌……、など様々な理由でリモートワークを選んでいます」と説明。さらに、「それぞれがワークライフのライフ、”暮らし”の部分を大切にしながら、その時々の状況に応じてベストなパフォーマンスを発揮できる、そういった働き方を自らデザインできる環境を作っていくことが大事です」と述べました。

(参考記事:会社と個人の未来はどう変わる? 新しい働き方の先駆者エコネットワークス代表 野澤健さんとの対話・前編 )

 

リモートワークを導入したい理由を個人起点で考える

続いて、「なぜリモートワーク? 自分たちにとっての意味を見つめる」というテーマのグループワークに。

個人としてリモートワークを導入したい理由に当てはまるカードを選び、より共感する順番に並べます。

カードはピンク・青・黄色・緑の色分けがされており、ピンクは疲労やストレス軽減、青は生産性の向上、黄色はワークライフバランスやプライベートの充実、緑は新しいワークスタイルといった内容がそれぞれ書かれています。

参加者に管理職の方が多かったからか、青色が共感性の高い項目として多く挙げられていました。そんな中でも、仕事の内容や個人の考え方などにより、選ぶカードや優先順位付けには多様性があることが確認できました。

 

リクルートの事例から見る、リモートワーク導入と運用のヒント

第2部では「リモートワーク導入の課題と解消方法を考える」というテーマで、リクルートホールディングス 働き方変革推進部 エバンジェリストの林 宏昌さんにお話をしていただきました。

リクルートホールディングスでは、2015年の4月に働き方変革プロジェクトが発足し、6月から8月の3か月間、手上げ制でのリモートワークのフィジビリティスタディ(試験導入)がスタート。そして2016年1月からは雇用形態にかかわらず全ての従業員を対象とした、上限日数のないリモートワークを本格導入。会社間の同意および本人の希望があった場合には、派遣社員もリモートワークを選択可能としています。

現在、リクルートホールディングスの他、グループ各社においてもリモートワークの導入をすすめており(※1)、グループ全体での柔軟な働き方を実践しています。 
(※1 リモートワークの運用ルールは異なります)

そのプロセスの中で、例えば自宅などで集中できるスペースを確保するのが難しい、などの従業員からの声があり、サテライトオフィスを設置するといった施策も行なっています。

参加者からは、「フィジビリティスタディではどういったことを評価指標にしましたか?」という質問が。これに対し、林さんからは「週に3日リモートワークを導入したのですが、優秀な人材の維持と外部からの優秀な人材の採用に効くのか、ということをはかりました」との答えが。

さらに、「フィジビリティスタディは当初3ヶ月行い、88%と9割近い従業員から『リモートワークには期待感が持てる』という回答を得ました。この会社で働き続けたい、というロイヤリティが向上した従業員も多く、メリットはかなり早いタイミングから現れていたように感じます」と続けました。

「生産性はどうなったのか教えてください」という問いに対しては、「半分以上の人が生産性が上がったと回答し、15%の人が下がったと言っていました。生産性が上がった理由の第1位は、『(オフィスよりも)集中できたから』。生産性が下がった理由としては『ネットワーク環境が充分でなく、テレビ会議を問題なくできる状態ではなかった』、『チャットなどのコミュニケーションツールが使いこなせない』という意見が出てきました。この結果からリモートで仕事をする環境だけでなくオフィスのあり方についても見直し、より集中できるオフィス環境作りやサテライトオフィスの設置という取り組みに繋がりました」とアンケート結果を受けてより生産性が上がる施策を講じていると説明しました。

さらに、「リモートワークを行なった結果気づいたのは、ワークスペースをサイバー空間へ拡張し、意思決定と業務遂行のスピードを上げることが重要です。 我々は『サイバーオフィスファースト』と呼んでおり、通常業務をストレスなく遂行できるネット上の空間を意味し、あらゆる情報をデジタル化、クラウド保管し、誰でも検索して手に入れられる状態を目指しています。

コミュニケーションを常に顔を合わせて行うという業務フローのままやっていると、リモートワークになったときは生産性が下がる可能性がある。なので、物理的対面コミュニケーションをチャットなどオンラインに変えていく必要があり、その方がコミュニケーションの質とスピードが上がります。そうなると、結果的にオフィスにいる必要がなくなってきます。私たちはリモートワーク制度導入が先立ってしまいましたが、これからリモートワーク導入を考えているのであれば、まずはオンラインコミュニケーションができる環境や習慣を整えてからリモートワークに移行することをおすすめします」と学びをシェアしました。

「リモートワーク導入に対する反対勢力がいる場合はどうしたらいいですか?」という質問に対しては、「反対派の人こそぜひやってください、と伝えました。やった上でリスクや課題を実証してください、と。そして、挙げてもらった項目に対して一つずつ対応していきました」と答え、実際導入時に挙がった課題とそれに対する対策の一覧表を見せてくださいました。

そして最後に、「導入時、社員にはどのような伝え方をしたのですか?」との問いには「まずは個人起点の”自由裁量時間の確保”という目的のために”リモートワーク導入”といった手段をとる。その次に創出した自由裁量時間をベースに、個人の選択で学習や地域活動などに参加することで、多様な強みを持った個の創出と活躍促進が行われます。そして多様な強みを持った者が社内外関わらず、オープンなコラボレーションにより、コミュニケーションを活性化させ、その結果イノベーション創出が起こり、企業成長が加速する…といった目的と手段を構造化して伝えました。つまり、企業成長のための第一歩としてリモートワークを行うんです」と語り、目的と手段を取り違えずに伝えることの重要性を訴えました。

リクルートホールディングスにおいてリモートワークを導入する上での、目的と手段の構造化

 

リモートワークの不安を可視化し、解決策をディスカッション

ここで、再びグループワークに。参加者には「リモートワークの不安と解消法」検討シートが配布され、自分の会社やチームでリモートワークを導入する場合に不安に思うことや課題を書き出し、その解消方法をグループで考えていきます。
解消方法を考えるにあたっては、ヒントとして「コミュニケーション」「ツール」「ルール」「スモールスタート」「キーマン」といった切り口が提示されました。

参加者からは「新入社員にリモートワークをどうインストールすればいいのか」「社員の健康管理はどのようにしたらいいのか」などの不安が挙がりました。

これに対し、林さんからは「新人に対しては、例えば半年間は研修期間としてリモートワークは実施しないとしたり、業務状況を見て出社と自宅勤務の割合を調整したりすると良いのではないでしょうか。また、健康管理については、週1回は上長との対面面談を設けています」という実例に基づくアドバイスがなされました。

 

リモートワーク導入に向けて、継続的に情報収集することが大切

イベント終え、やつづか編集長は「大小様々な業種の方が熱心にディスカッションされていて、リモートワークという働き方への期待と同時に、それを実現するには各社それぞれにハードルがあるということを、改めて感じました。
リクルートホールディングスの林さんは、リモートワークを導入するにあたって社員の皆さんから出てきた様々な懸念や課題の一覧を見せてくださいましたが、そのすべてに何らかの『対策」も記入されていました。やりたいことを実現させようという意思があれば、課題を潰す方法は必ずあるというわけです。
ただ、その方法にはお金や人の協力が必要なものも多く、進めていくには賛同者を増やしていくことが不可欠でしょう。そのために役立つ情報を、今後も発信していきたいと思います」と振り返りました。

リモートワークと一口に言っても、導入の背景や目的は組織の規模や状況によって様々です。
情報収集を進めながら、自分の組織に近しい導入実例を参考にしてもいいかもしれませんね。