好きなことはぜんぶやろう!人生100年時代を生き抜く「一人多職」の実現法

パラレルキャリア、複業とも言われる「一人で多くの職業を持つ」という生き方はどうやったらできるのでしょう

小学生の頃の夢、覚えていますか?なりたい職業を聞かれたら、幼稚園の先生、お菓子屋さんなど、当たり前に、一人一つの職業を答えていましたよね。だけど、なぜ一人一職なのでしょう?「だって会社から禁止されているし」「そもそも、複数の職業ってどうやるの?」そんな声が聞こえてきます。でも、もし実現できたら・・・・・・!?人生100年時代。「一人多職」で生き抜け!」をテーマに開催されたセミナー(主催:クルソグ実行委員会)にて、博報堂で働きながら執筆などに取り組むなど、「多職」を実践している川下和彦さんのお話をご紹介します。

ライター

篠原 舞
セブン&アイ、リクルートなどを経てフリーに。主にコンサルティングと編集・ライティングを行っています。仕事とプライベートの境界線が溶け合わさり、心地よく暮らしていきたい女性を「書くこと」を通じて応援します。

「一人多職」になるには、今が最大のチャンス

僕は小さい頃からずっと、一人ひとつの職業だと思っていました。だけど、専門性をつけるために入ったSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)では、自分で問題を発見して、課題を解決するスタイル。ここで職業観が変わりました。さらに、「一人多職」を考えるようになったのは、次の3つの変化が大きいと感じています。

働き方の変化

終身雇用が基本とはいえ、会社によっては定年までずっと個人を雇用し続ける体力がなくなってきています。さらに、定年のタイミングも後ろ倒しになり、「別の仕事を持ってもいいよ」という雰囲気が出てきた気がします。どんどん採れるリンゴを流れ作業で出荷するような、効率性を追求する時代は終わり、今は「リンゴがない!どうする?」という状況。クリエイティブな感覚が求められるようになりました。

人の変化

寿命が延び、働く期間も長くなりました。一方でインターネットの普及により情報をスピーディに得られるようになったおかげで、専門性を身につけるために何かを学ぶとき、それを習得するまでの期間が圧倒的に短くなりました。つまり、人生が長くなり、専門性習得期間が短くなったことで、生涯に経験できる職業数が増えたのです。まさに、「短命一職」から「長寿多職」へ変化していると言えます。

テクノロジーの変化

ある時、IoT(Internet of Things)に似た、IoPという造語を思いつきました。Pはperson=人です。SNSなどを通して自分の環境とは異なる世界で生きる人たちがつながりやすくなった。これも職業獲得チャンスの拡大です。

リスクを最小限におさえて夢を実現できる、5つのメリット

「一人多職」のわかりやすいメリットは、次の3つ。

  • 複数収入源によるリスク分散
  • 複数の知見によるシナジー効果
  • 視野の拡大

さらに、あと2つ。

自分の希少価値を上げる

たとえば、通訳と英語ができる人よりも、通訳と英語に加え、経理ができれば100分の1人が1,000分の1人になり、時給アップにもつながりやすいと言えます。

夢の実現

多職にすれば本当にやりたかった仕事を、リスクにおびえることなく、自分のタイミングで始めることができます。

一人多職を実現するために大事な、お金の話。

ネックになるのは、やはりお金。だからまずはピボットポイント(軸足)になる仕事を大事にすること。今の仕事がイヤだからと、いきなり他のことを始めてもうまくいきません。会社から与えられた仕事を何も考えずにやるのではなく、「個人としてどう成長しようか」と考えながら、自分の力を鍛えていく。一つ目の仕事の生産性が上げられるようになって、余力が出て来たら、二つ目の仕事にチャレンジするのがうまくいくコツだと思います。

収益性と好き度の2軸でマッピングしたキャリアポートフォリオ

では、どうやって複数の仕事のバランスを取るのか。収益性と好き度の2軸でマッピングしたキャリアポートフォリオを作るとおもしろいです。今の僕の仕事でいうとこんな感じです。

書くことはずっとやりたい仕事ですが、収益性としてはまだまだです。だけど、PRの仕事があるから、お金にならなくても続けられると思います。ここに時間配分や時系列の概念を加えれば、もっと戦略的にキャリアを構築することができるようになると思います。本当は何がしたいのか、自分の内面を探れますしね。ここに上がった仕事の名刺をいくつも作れば、それはもう多職ですね。

再就職はではなく、重就職を

うちの会社はムリ、どうせ……と言っていても一生変わりません。まずは一職の生産性、つまり時間単価を上げる働き方を始めましょう。そうやって余った時間で何ができるか。今の仕事を辞めて再就職ではなく、「重就職」するつもりで。二つ目以降の仕事は、人生の貴重な時間をハッピーにするもの。「やりたい」を「できる」にすれば、結果的に好きなことで稼げるようになりますよ

〈対談〉「一人多職」で生き抜くには?会場からの質問に回答

続いて第二部では、株式会社チェンジウェーブの佐々木裕子さんを交え、同社のエグゼクティブパートナーでもある小安美和さんの進行のもと、会場からの多職に関する質問に回答しました。

そもそも、多職に目覚めたきっかけは?

川下:もともと40歳は第二成人式のつもりでしたが、大きなきっかけは震災です。人生一度きり、後悔しないようにしようと思うようになりました。

会社からこれだけはやらないでくれ、みたいなものはありましたか?


川下:
当たり前ですが、クライアントにご迷惑をかけるものはNGですね。

複数の仕事のバランスの取り方は?新しい知識を身につけるためにどれくらい時間をかけますか?

川下:もともと完璧主義なうえに時間の作り方がヘタだったので、本を書きたいと思っていたのですが、準備に3年もかかりました。書くことが好きすぎるゆえに聖域(難しい仕事、完璧を目指さなければならないもの)と捉えて固くなっている自分に気づきました。そこを突破したときに、少しずつ筆が走るようになりました。


佐々木:
ひとつの会社を経営しながら、別の会社を立ち上げた経験から言わせてもらうと、自分にはチェンジウェーブという会社(軸足)があったので、まずはやってみようという気持ちから始められました。新しい会社のメンバーはみな同じ状況で、他に自分の会社を持つ多職取締役ばかりです。

一般の会社では多職を始めるのに壁があります。そもそも時間管理を一社がしていることにムリがあるのではないでしょうか?

川下:自分時間で考えましょう。好きなことは小さくてもコツコツやっていくといいと思います。

お話の中に、多職はシナジー効果を生むとありました。私も複業をしているのですが、今年は会社で営業成績を出せていないので、堂々と言えません。そんな場合は?

川下:自分自身へのマネジメント力が大事。本業がおろそかになったり、過労になったりしたら本末転倒です。バランス感覚を持って行いましょう。

佐々木:経営者側からしても、人脈や視点が増えるので多職のメリットはあると思います。ただ、川下さんも言うように自分のマネジメント力が必要。会社にとっても、副業の人が増えれば、社員はどちらに時間を割くのか、コミットしてくれるのか、緊張感を持つようになるから、いいと思う。私たちの会社では、頻繁にコミュニケーションを取ってうちの仕事をどのくらいやれるのかなど、複業社員の意思を確認しています。

二つ目の仕事探しはハードルが高いと感じます。どうやって始めて、どうやって大きくすればいいでしょう?

佐々木:お試し期間は大事だと思います。複数をやり始めると、どれも中途半端になるリスクがあります。そんな中でも、あきらめずにやれることかどうか。

川下:佐々木さんのおっしゃるように、好きだと思っていたものがやってみたら違っていることもありますから、お試しは大事ですね。まずは小さくやってみること。明日から300万円稼ぎますというのはムリがあるから、人生を戦略的に考えることが大事だと思います。たとえば、3年後にこれくらい、とか。

何かを得るためには、何かを諦めなければいけないと考えてしまう人は多いのではないでしょうか。「だって、でも」と理由をつけたくなるのは、生活のことを考えるから。家事や育児に充てる時間がなくなったら?収入は十分に得られるのだろうか?と悩む前に、まずは収益性と好き度でキャリアポートフォリオを作ることから始めてみるのが良さそう、そんなことに気付かされたセミナーでした。