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オトナリラボ代表 芳野尚子さん

学生時代に独学でグラフィックデザイン・DTP・Webデザインを修得し、大学卒業後実父の会社(株式会社オーバルプラン)へ入社。26歳で長女出産、育児休業復帰を機に総務に転身。経理・労務業務等の傍ら、人それぞれの働き方や仕事の価値観に関心を持ちはじめる。40歳を目前に、自らの子育てと仕事の両立経験を元に、オトナリラボを起ち上げる。

気軽に頼れるお隣さん同士のように。Otonari Laboとは、どんなところ?

Otonari Labo は、オーバルプランというデザインの会社が運営されているのですか?


芳野尚子さん(以降、芳野) :そうなんです。弊社は元々UIデザインを専門にやっていました。最近は、クライアント企業の新事業立ち上げにまつわるリサーチやサービス化のデザインが増えています。

社員には女性が多く、出産後も保育園に入れる入れないに関わらず仕事を続けられたら良いよね、と。Otonari Laboのように子ども連れでも仕事できる場所があると、長く休まずに済むのではという話になったんです。私も以前からこういう取り組みを考えていましたし、Otonari Laboの建物(古い町屋)改装のタイミングとも時期が合ったんですね。それで2018年1月にプレオープン、4月から正式にスタートすることになりました。


ですから、Otonari Laboは、自社サービスのひとつ。会社のスタッフが常駐で誰かひとり受付にいて、そのかたわら会社の仕事をしていたり、Otonari Laboの広報業務をしていたり、利用するママ社員にとっても、徐々に仕事復帰の練習ができて、子供もお母さんと離れる練習になるといって喜んできます。

私自身も、Otonari Laboの運営業務のほか、社長である父の補佐業務や会社の経理、サービスデザインのプロジェクトの仕事を並行しておこなっています。



-お子さんたちを見てくださる保育スタッフは、どんなかたですか?


芳野:Otonari Laboの保育は、親子が同じ施設に居る状態が原則なので、保育資格は問いません。リトミック講師で、小学校・幼稚園教諭の経験のあるスタッフや、保育スタッフの派遣事業をしておられる「京都子育てネットワーク」というNPO団体と提携して、予約がある時に来ていただいています。



-立地面で、Otonari Laboのある場所はどういうところなのでしょう?


芳野:Otonari Laboのある場所は、京都駅から、繁華街と言われる四条河原町、ビジネス街の四条烏丸の間のほぼ真ん中。交通の便が良いため、お近くの方に限らず、いろんなエリアの方が関心を持って探して来てくださっているようで嬉しいです。

もっと働くママにとって、選択肢に幅があっていい。「働き方の中間的選択」

-コンセプトのひとつに「働き方の中間的選択」とあります。仕事はしているけれど子どものそばにいたい、となると最近では「在宅ワーク」という選択肢も。そうではなくシェアスペースで、という背景にはどういう思いがあるのでしょうか?

芳野:在宅では基本お子さんがそばにいて、遊んでいる間に仕事を…と思っても、なかなか離れてくれなくて、子どもが寝静まってから仕事をする。と言う実状かと思います。作業が細切れになってしまったり、集中できなかったりして、実際仕事にならないという声も聞きます。


私自身、子どもを見ながら仕事に集中できなかった経験もあって。そういう時に、私は近くに母がいたので、手助けしてもらっていたんです。それこそ今、Otonari Laboでやっている見守り保育のような形で、見てもらっている間は集中できるし、呼ばれてもすぐに行ける、半分家庭・半分仕事の環境でした。周囲の人の助けを借りることで実現できていたんですね。

ですが、近くに頼れる人がいないとそのスタイルは難しい。お子さんと2人きりの空間で子育てと仕事の両方を頑張っておられる方は、本当にすごいなと思います。その中で手助けできる人がいるOtonari Laboのような場所を、上手に使ってもらえたら良いなと思いました。


今、子育てしながらの働き方って、週5日保育園に預けて働くか、保育園に預けないなら仕事を諦めるか。大きくはそのどちらかで、0か100かみたいな状況ですよね。「中間的選択」というのは、仕事をあきらめるか、保育園に預けて働くかの2択ではなく、その間の部分を助けられる場所になったら、という思いでした。



-これだけ出産後仕事を続ける方が増えていて、0か100かだと辛い部分もありますよね。


芳野:私自身の子育てと仕事の両立は、子どもは一時保育に預けながら、仕事は週に2〜3日というペースからのスタートでした。こんな働き方だと、キャリアや給与の面で凄く先行きが心配と思われると思うのですが、それよりも子どもと一緒にいる事と、細く長く仕事を続ける事が大事。という考え方でした。

イレギュラーだとは思いますが、こういう働き方が出来るなら、仕事を諦めよう、とか、フルタイムで働くのはもう少し子どもが大きくなってからにしよう、など、いろいろな考え方を選ぶ事が出来ると思っています。



-京都では、保活の状況は大変なのですか?


芳野:基本的には「フルタイムで働く事」「働く先が決まっている事」が絶対条件になってきます。地域にもよりますが、人気や定員で希望する園に入園するのは結構難しい様子です。

また、ここ1~2年で、小規模保育の開園が数多くありました。枠が広がった一方、年少児になった時に転園するのが不安だという声も聞きます。

もちろん、預けずに自分で子どもを見たいという考えの方もおられます。ですから、両極ではない中間的な選択肢も得られるようにと思っています。



-在宅の場合、ママひとりが保育の悩みを抱えがちになるではと思います。Otonari Laboのように第三者の目、第三者の手があるというのは、保育環境としても良いのでは?


芳野Otonari Laboでは、お子さんのお世話の大変さも、その場にいるみんなで共有する空気があります。例えば、お子さんが人見知りして泣いてしまっても「この子はまだ慣れていないし、みんなで温かく見守ろうね」と、言わずもがなで全員が感じている。利用しているママも、それで安心してくださって使いやすいとリピートにつながっているようです。お子さんにとって良い刺激になる、という風に受け取ってもらえたら。

「こどもとはたらく」という言葉をOtonari Laboの頭に付けているんですけど、「働く」って仕事のこともあるし、家事のこともあるし、お金にならなくても人のためになることもある。そういうことを全部含めて「働く」だと思って。だから、OtonariLabo では、仕事だけでなく、いろいろな「働く」を持ち込んでもらってOKなんです。


子育てと仕事って、分断して考えられがちですよね。最近ではその傾向は減ったかもしれませんが、会社に子どものことを持ち込まない、家庭と仕事は分けるべきという空気があったり。児童館など子育ての空間に行くと、今度はママとしての自分しか受け入れられていないように感じてしまうとか。「会社で働いている自分も私だから、その中でも子育てのことを話したい」「子育てしているだけが私じゃないよね」みたいに、両方とも気兼ねなく話せる場所ってあまりないと思ったんです。そういうことを感じている方に届いたら良いですね。

イベントにこめられたOtonari Laboのメッセージと、集う人たちの思いがコミュニティーに

-開催イベントには、お子さん向け・親子向け・ママ向けとあるようですね?


芳野:スタートして1年が経ってつかめてきたのですが、利用者の方には平日働いているから土日に遊びに来たいという層と、育休中などで平日に利用したいという層がいらっしゃるようです。それぞれのニーズも見えてきて、Otonari Laboから提案したいこともありますので、考えながらイベント作りや情報発信をしています。2カ月に1回ペースで土曜日に開催している「こどもとはたらく座談会」では、ママの働き方や子育てに役立つことなど、私たち運営側のメッセージ性のある内容で企画しています。

他にも、Otonari Laboの考え方に共感して、「ここで活動したい」と仰ってくださる講師の方々がいらっしゃって。リトミックやボールエクササイズ、離乳食教室、キャリアカウンセラーさんの座談会イベントなどがあります。



-Otonari Laboのコンセプトに共感した人たちが集まってきて、人のコミュニティーも形成されてきている?


芳野:座談会でのコミュニティーもあれば、育児休業中で子育てのことが知りたいという方、子どもと一緒にイベントに参加されている方でもコミュニティーができていたり。段々と「Otonari Laboってこういうところだね」とそれぞれに思って、集まってくださる人の輪ができてきているのを感じています。

なかなか来れないけれど何かと気にかけてくださっているとか、情報はキャッチしてくださっているという方もいるようですね。

オーバルプランとのコラボワークショップを展開。社会参加のひとつの形

-オーバルプランとのコラボワークショップというのは、イベントの中でもまた違うのですか?


芳野:オーバルプランでサービスデザインを手掛ける中で、プロジェクトから発生してきたワークショップです。クライアントが求めていることが家庭の生活の中にあったり、ターゲットが親子だったりすることが分かってきて。生活の中での課題をサービスによって改善しようというのが最終目標です。その課題を見つけるためのワークショップを、半年間で3回ほど開きました。私たちはデザイナーなので、デザイン手法に基づいて進めています。自分たちの意見を共有化したり、「より良いもの」のアイディアをその場で作り上げたり。出てきたアウトプットが、ゆくゆくは子どもたちの未来に役立つ社会貢献にも成り得ます。



-Otonari Laboの運営を通して、最終的にはコンセプトである「ちょっと頼れるオトナリさん」「働き方の中間的選択」「子育て&仕事でつながるコミュニティ」を実現することが目標でしょうか?


芳野:多分私たちのコンセプトは、すぐに解決したり、誰もが実現できたりすることではないと思うんですね。まだまだ今の社会の中での立ち位置は小さいものだと思うので、少しでも認められていくようになったら良いなと。2年、3年と続けていく中で、地域や社会の中で、どういう風に受け止めていってもらえるかな、と考えています。

取材後記

ご自身の子育てと仕事の経験で感じたことを、Otonari Laboで体現している芳野さん。
社員の方もお子さんのそばで仕事ができ、利用者にとっても集中したい時、ちょっとのんびり過ごしたい時の良い場になっているようです。働き方も子育ても、もっと多様に。人それぞれの「くらしと仕事」を考えたときに、「働き方の中間的選択」がより多彩に増えていくと良いと思いました。