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「プレコンセプションケア」という言葉を聞いたことがありますか? なかなか馴染のうすいこの言葉。しかし、女性とその家族の人生をより輝かせるために、とても大切なものなんです。 この「プレコンセプションケア」について、国立成育医療研究センター プレコンセプションケアセンター 母性内科 医長の荒田尚子先生にお話しを伺いました。

プレコンセプションケアとは、自分と将来のパートナー、赤ちゃんの健康を守るもの

荒田 尚子(国立成育医療研究センター プレコンセプションケアセンター 母性内科 医長)

-プレコンセプションケア」というのはどのようなものなのでしょうか?

コンセプション(Conception)は受胎と言う意味です。つまりプレコンセプションケア(Preconception care)とは、女性やカップルが将来の妊娠のための健康管理をすることを言います。

プレコンセプションケアはもともとアメリカから始まりました。肥満女性が多く、他の先進国に比べ早産比率が高かったり、低出生体重または先天性の乳児疾患が多かったりという問題を抱えており、妊娠前のケアの必要性が叫ばれるようになりました。 そしてCDC(米国疾病管理予防センター)(2006年)、WHO(世界保健機関)(2013年)などが中心となってプレコンセプションケアを広める活動をしています。

プレコンセプションケアの目的は、「若い世代の男女の健康増進を図り、より質の高い生活を送る」こと、そして「若い世代の男女がより健康になることで、より健全な妊娠・出産のチャンスを増やし、次世代の子どもたちをより健康にする」ことです。

-国立成育医療研究センターでは2年前にプレコンセプションセンターを設立されまし たが、その背景と経緯を教えてください。

以前からプレコンセプションケアはやっていました。ただ、ばらばらの機関で行っていたのでPRという観点では弱かったんです。 もっとこの概念について広く知ってほしい、という思いで2015年11月にプレコンセプションケアセンターを設立しました。

プレコンセプションケアは妊娠を計画している女性だけでなく、全ての妊娠可能年齢の女性にとって大切なケアです。妊娠前ケアというと妊娠前にのみ注目してしまうのですが、そうではなく成育サイクル(ライフサイクルを胎児⇒新生児⇒乳児/幼児/小児・思春期/成人⇒妊娠を経て胎児と区切ったもの)全体で見ていこう、思春期の頃からプレコンセプションケアをスタートしようということでチェックリストを作成しました。

必ずしも妊娠を前提としているものではなく、ヘルスリテラシーを高めることが目的です。プレコンセプションケアを行うことで女性も男性も健康になる。生活習慣を変え、生活の質を高めることで、自己評価も高まる。これが理想ですね。

 

医療の進化で妊娠・出産のチャンスは増えているけれど、まずは自分自身でできるケアからスタートしよう

-プレコンセプションケアはなぜ必要なのでしょうか?

妊娠してから健康について考えたのでは遅いからです。現在、6%の赤ちゃんが早産で生まれ、10%は低出生体重(2500g未満)で生まれます。また、2-3%は先天異常をもって生まれているんです。

妊娠前から持っているリスク因子が妊娠・出産、さらには赤ちゃんの健康に影響を及ぼします。

リスク因子には、まず「肥満と痩せ」が挙げられ、特に日本では痩せの問題が深刻です。痩せとはBMIが18.5未満の状態を指し、厚生労働省が発表した「平成26年度国民健康・栄養調査」によると20代では4人に1人、30代では5人に1人が痩せているという結果が出ています。痩せていると低出生体重の赤ちゃん出産や早産のリスクが高まってしまうので、看過できません。

「タバコ」もリスク因子の1つ。これに関しては環境省が実施している「エコチル調査(全国15地域、10万組の子どもたちとそのご両親を対象にした健康調査)」で興味深い結果が出ています。妊娠初期の喫煙率について報告しており、全体では「以前は吸っていたが、妊娠に気づいて止めた」人の割合が13%、妊娠中も吸っているという人が5%ですが、25歳未満に限ると、それぞれ26%、9%ととても高いのです。 妊娠中の喫煙は、流産や早産のリスクがあがり、そして低出生体重の赤ちゃんが生まれやすくなります。

その他にも「催奇形性のある感染症や薬剤の使用」、「妊娠前からの医学的に問題となる状態(糖尿病)」などがリスク因子として考えられます。

- 何がリスク因子になり得るかを把握して、早めのケアを心がけることが大事なのですね。

実は、医療の発達によって病気をもっている、もしくは持っていた人たちの妊娠・出産のチャンスは急速に増えているのです。 糖尿病や高血圧などの慢性疾患をもつ女性、小児癌など悪性疾患を経験した女性、先天性疾患や稀少疾患をもった女性、低出生体重や早産で生まれた女性……。 これらの女性も十分に妊娠前からケアをおこなうことで、無事に妊娠し、出産できる時代になってきています。

こういった医療に頼る部分と、自分自身でできる生活習慣改善などのケアの部分。その両方が大切です。

 

その情報は本当に正しい? 安心して相談できる場所を

-現在、妊娠・出産についての不安感を煽る情報が蔓延しているように感じます。

リスクが0となることはもちろんありませんが、正しい知識・情報を得るために普段から心がけるべきことをお話いただけたらと思います。

正しい情報をどこから得るか、というのは非常に重要ですね。多くの方はインターネットで情報を得ることがほとんどだと思いますが、一般の方のブログは鵜呑みにしないことが大切です。 医療に関係していることを扱うブログは引き算して読まないと怖いですね。書いてあることがその人にとっては真実でも、他の人にとっても正しいという保証はありません。

おすすめなのは、自分の主治医を見つけること。レディースクリニックの数も以前に比べたら増えてきていますし、若い産婦人科医の7割が女性と、女性の立場で話ができる人も増えてきています。地方の遠隔ネットワークも出来つつあるので、信頼のおけるお医者さん、困ったときにはまず相談できる方を見つけておくのが良いのではないでしょうか。

プレコンセプションケアの重要性が分かったところで、仕事も忙しいし、具体的に何から始めればいいか分からない……という方も多いはず。 続編では、誰でも気軽にプレコンセプションケアに活用できるアプリ「カラダのキモチ」を提供するドコモ・ヘルスケア株式会社さんのお話をご紹介します。