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「暮らす」と「働く」が地域でつながるLoco-working

出産や育児によって、ほとんどの女性はそれまでとは違う働き方を選んでいます。働くことをあきらめてしまう人も少なくないのではないでしょうか。また、どんな働き方が自分のライフスタイルに合っているのか分からず、前に進めない女性もたくさんいます。

ですが、子育てママも、仕事や趣味などで身につけたことや子育で学んだことなど、社会のために生かせるスキルを持っているのです。むしろ、子育てママだからこそできること、分かることもたくさんあるはずです。


NPO法人代官山ひまわり(以下、ひまわり)は、そんな子育て世代のママたちのために設立された団体。現在、ひまわりが活動の主軸としているのは、Loco-working(ロコワーキング)事業です。

Loco-workingとは、「Loco(ローカル)」と「Coworking(コワーキング)」を掛け合わせた造語。地域にある仕事を、そこに暮らす人たちが請け負う“地産地消”の働き方です。フルタイムでもパートでも派遣でもない、このLoco-workingという新しい働き方によって、暮らしと自分らしさを大切にしながら働くことができるのです。


Loco-working事業はどんな仕組みで、どんな子育てママたちがLoco-worker(ロコワーカー)として活躍しているのかを知るために、8月10日(金)に開催された公開ミーティング(毎月1回開催)に参加してきました。

「できること」を持ち寄って、スキルをシェア

2010年に子育てママたちのサークル活動からスタートし、2012年にNPO法人となったひまわり。Loco-working事業を開始したのは、その翌年からです。

ひまわりの子育てママたちへの想いは、次のコメントからよく伝わってきました。


事務局:育児や家事に追われていると、自分を見失ってしまうこがあります。子どもも家庭も大事ですが、まずは自分を一番大切にしてほしいです。働くことをきっかけに、自分の居場所や価値を確認することができます。

現在、登録しているLoco-workerは約170人で、そのほとんどが渋谷区に住む子育てママたち。住んでいる地域や年齢制限など、登録のための条件は特にありません。こうして自然と、ひまわりは様々なバックグラウンドやスキルを持つ女性が集まるコミュニティとなっていきました。


赤ちゃんから小中高生など、様々な世代のお子さんを持つママたちが、仕事仲間としてのつながりだけではなく、子育てや家庭の悩みを先輩ママに相談したり、地域の情報を交換したりできるフラットな関係性が育まれているようです。

ミーティングの最中に、泣いている赤ちゃんを先輩ママが抱っこしてあげる様子からも、そんな関係性がうかがえました。



「それぞれが、『できること』を持ち寄って活動する」のが、代官山ひまわりのスタイルです。

ミーティング初参加の方が、最初は「私にできることはあるかな?」と、自信なさげに話していたものの、みんなで雑談をしているうちに「Photoshopで画像の加工ができます」「商店街の会長さんと顔見知りなので、イベントでひまわりの活動をPRできるかも」など、できることがたくさんあることが分かりました。

その場面を見ていて、こういった場に参加してみることで、自分が持っているスキルに気づかされることもあるのだと感じました。


また、ひまわりは、Loco-workerがそれぞれ持っているスキルを持ち寄るだけでなく、シェアすることで、みんなでスキルアップしていけるコミュニティでもあります。この日は、元報道記者の子育てママが、写真撮影のポイントなどを教える講座の企画について話していました。

チームでフォローし合いながら業務を進める

ひまわりのLoco-working事業では、渋谷区にある企業や店舗を中心に仕事を受けています。業務内容は、商業施設の店舗・商品を紹介するブログやSNS記事作成、翻訳、イベントの企画運営、マーケティング調査、商品のモニタリングなど多種多様。

Loco-workerとして働くに当たって最も気になるのは、仕事の進め方ではないでしょうか。 子育てママたちが楽しく生き生きと働ける秘訣は、どうやらそこにあるようです。


事務局:一つの仕事を一人で請け負うのではなく、チームでフォローし合いながら進める体制を整えています。クライアントから仕事を受けたら、その仕事をやりたいと手を挙げた人たちでチームをつくります。そうすることで、子どもが熱を出すなどして動きが取れないLoco-workerさんがいても、チームでカバーすることができるのです。

「経験はないけど、やってみたい!」という自主性を大切にしているのも、ひまわりの特徴。経験がある人と一緒に組むこともできるので、安心です。Loco-workerの中には、プロのライターや編集者、翻訳者などもいるので、プロのチェックを入れてクオリティを保っているそうです。

ユーザー目線で伝えられるという強み

地域に住む友人たちを巻き込んで、商業施設の店舗・商品の紹介記事を書くライターチームを編成したLoco-workerさんもいました。

Loco-worker:最初は私が書いた記事を、そのお店をよく利用している友人に読んでもらっていました。そうしたら、「あなたが紹介していた商品、今度買ってみる!」と言われ、内輪で盛り上がったりして。
そこで、実際に商品やサービスを利用している友人たちに「記事、書いてみない?」と声をかけているうちに、チームが増えていきました。やはり、そのお店のファンが紹介するのが、いちばん伝わると思います。

自分が書いた記事によって利用者が増えると、お店のことが他人事ではなくなり、愛着も増していくのではないでしょうか。


Loco-workerになったのをきっかけに、個人で仕事を請け負うようになった人も少なくないそうです。個人事業主となったあるLoco-workerさんが、「この仕事は定年退職がないので、夫は私のことをちょっとうらやましがっているみたい」と、話していたのが印象的でした。

クライアントは「共創パートナー」

地域に浸透してきたLoco-working事業ですが、始めた当初は、クライアントに子育てママの苦労を理解してもらえないことが多く、悔しい思いもしてきたそうです。


事務局:「お母さんたちは、お子さんが昼寝している間は暇でしょ? その時間でちょっとやってくださいよ」と、軽く言われたこともありました。子どもが昼寝をしている間にこそ、やってしまいたいことが山ほどあるのに。でも今では、「ひまわりにお願いしたい」「渋谷に住んでいる子育てママの視点がほしい」と、子育てしているお母さんたちにこそ仕事を依頼したい。と言ってくださるクライアントが増えてきました。


最近では、地域を盛り上げるプロジェクトにも、Loco-workerさんたちが参加しています。

「ササハタハツまちづくり」はその一つ。渋谷区の笹塚・幡ヶ谷・初台の3つの地区を実際に歩き、もっと魅力的なエリアにするためのアイデアを出したり、おすすめの場所を記事にして「シブヤ散歩新聞」http://shibuyasanpokaigi.jp/shinbun/に掲載したりしています。


また、渋谷エリアでシェアリングエコノミーを活用して地域課題を解決しようと立ち上げたプロジェクトでは、地域・企業・ひまわりが連携して、自分たちができることを「シェアリング」(助け合い、おすそ分け)しながら、地域の課題を解決しようと動いています。その中でLoco-working事業は、広い方面に影響をもたらす事業になると期待されているのです。


事務局:自分たちが暮らす地域で、企業や行政などと「共創パートナー」として連携し、お互いの足りないところを補い合いながら、新しい働き方を開拓しているところです。

【取材後記】Loco-workingは「共助」にもつながる

Loco-working事業は、すべてが“自分事”で回る、好循環をもたらす取り組みだと思います。自分の好きな仕事だから自主的に取り組め、住んでいるまちに関わる仕事だから当事者意識を持つことができ、まちに顔見知りの人が増えると地域の情報交換がしやすくなり、まちへの愛着が深まる。だから、暮らしやすい、居心地のよいまちにしようと考えるのです。
こうした意識は「共助」を促します。自然災害などが発生したときなどに、それが発揮されるのではないでしょうか。