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Loco-workingを選択した子育てママ

福田晶子さん

大学卒業後、ホテルでブライダル事業に携わる。その後Web系の会社に転職し、妊娠を機に退職。2017年9月にNPO法人代官山ひまわりのLoco-workerとなり、渋谷区主催「ササハタハツプロジェクト」において、株式会社フューチャーセッションズと連携し、広報・PR 業務などに携わる。渋谷区幡ヶ谷に住んで11年目。小学校5年生の長男を育てながら、Loco-workingを実践。

NPO法人代官山ひまわり(以下、ひまわり)が展開するLoco-workingとは、「Loco(ローカル)」と「Coworking(コワーキング)」を掛け合わせた造語。地域にある仕事を、そこに暮らす人たちが請け負う“地産地消”の働き方です。


9月29日(土)、渋谷区の幡ヶ谷区民会館に行ってみると、カメラを持って歩き回りながら、イベントの記録写真を撮影している福田晶子さんの姿がありました。

福田さんはひまわりのLoco-workerとして、渋谷区が主催している「ササハタハツプロジェクト」において株式会社フューチャーセッションズと連携し、広報・PR 業務に携わっています。このプロジェクトは、渋谷区にある笹塚・幡ヶ谷・初台地区(ササハタハツ)で働く人や、そこに住む人、興味がある人などが主体となって、このエリアをより魅力的な場所にすることを目的としたものです。

地域への愛着が増して、シビックプライドが芽生えた

この日は、「第2回ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」が行われていました。セッションの様子をレポートにまとめたり、プロジェクトに関するフェイスブック記事を作成したりするのが、福田さんの担当業務。


今から約11年前、ご主人の実家がある幡ヶ谷に住むことになった福田さん。現在、小学校5年生の息子さんを育てながら、Loco-workerとして活動しています。

福田さんがひまわりのLoco-workerになったのと、ササハタハツプロジェクトに関わることになったのは、同じタイミングだったそうです。


「2017年9月、すでにひまわりのLoco-workerになっていた友人が、フェイスブックで『ササハタハツ散歩』の記事作成者募集の告知をシェアしていました。それをたまたま見て、『近所で仕事ができるって、いいかも』となんとなく思い、登録したのがきっかけです」

『ササハタハツ散歩』とは、「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」を通じて発見したササハタハツの魅力、散歩ルートや訪れてもらいたいスポットを、ひまわりのメンバーが持ち回りで紹介するもの(『シブヤ散歩新聞』に掲載、全20回。2018年5月に終了)。

福田さんのコーディネーターとしての仕事は、『ササハタハツ散歩』からスタート。散歩コースを決めたり紹介する店舗などに取材依頼をしたり、記事作成を担当しました。福田さんは地域を歩いて情報収集し、富士山が見える歩道橋などローカルな穴場スポットや個性的なお店を紹介しました。


例えば、こんな記事です。

『ササハタハツ散歩』富士山が見える歩道橋から「世界の味」をたどる甲州街道南側


実は福田さん、ササハタハツプロジェクトに関わるまでは、地域に対する特別な思い入れはなかったそうです。『ササハタハツ散歩』の仕事を通して、地域への興味や愛着を強く感じるようになりました。


「京王線で新宿にも出やすいので新宿に出かける機会が多く、以前はあまり渋谷区民だということを意識したことがありませんでしたが、ササハタハツプロジェクトに関わるようになったら、シビックプライドを感じるようになりました。区報などもすごくチェックするようになりましたね」


それともう一つ、うれしい変化がありました。


「Loco-workingのことを知った頃は、息子とのコミュニケーションについて考えていた時期でしたが、『ササハタハツ散歩』の仕事を始めたら、取材したお店や近所の商店街のことなどについて息子とよく話すようになり、共通の話題が増えました

家族との生活を軸に、「自分に合った働き方」を実践

「私が最も大切にしているのは、家族と過ごす時間です」と、福田さん。息子さんを出産してからは、育児・家事・仕事のバランスを取りながら、自分に合った働き方をずっと試行錯誤してきました。


「妊娠を機に会社を退職。息子が2歳になってから訪問販売の仕事を始めました。幼稚園に預けるようになってからはもっと時間に余裕ができたので、近所のお店で事務作業を。息子が小学生になるとさらに自分の時間が取れるようになったので、職業訓練に通ってWebデザインを学びました。念願かなってWeb系の仕事に就いたものの、仕事と家事・育児のバランスが取りづらく、ワークライフバランスについて悩んでいた時にLoco-workingのことを知り、現在に至っています


月〜金曜日、息子さんが小学校で勉強している間の1日5時間(週25時間)が、福田さんの稼働時間。現在の働き方に、とても満足しているそうです。


また、ひまわりのLoco-workerとして働いてみて感じる利点を、次のように語ってくれました。


「子育てママは、子どもの成長過程などによって、自分が働ける時間がその都度変わります。今年は毎月このくらい働きたい、だけどこの時期はちょっと仕事量を減らしたいなど。そんななか、ひまわりのLoco-workingは、どれくらい働きたいかによって仕事量を自分で調節できますし、仕事と育児や家事の時間を自分自身で組み立てられるので、私のライフスタイルにとても合っています


このような働き方が可能なのは、ひまわりでは一つの仕事を一人で請け負うのではなく、チームでフォローし合いながら進める体制を整えているからです。福田さんにとってひまわりは、単なる仕事仲間のグループではなく、信頼できる仲間が集まるコミュニティなのだそう。


「みんな子育てママなので、例えばチームの誰かから『子どもが病気になった』と連絡を受けたら、他のメンバーたちで『その病気なら治るまでこのくらいの日数がかかるから、その間私たちで仕事を分担しよう』などと、協力し合って進めています。子育ての悩みも相談しやすく、仕事以外のことでも分かり合えている感じがします。私にとってひまわりは、居心地のいいコミュニティです

いろんな人に出会い、新しい世界にふれることを通して得られる成長感

福田さんが担当した『ササハタハツ散歩』の記事作成やコーディネート業務は、当時どの仕事も未経験でした。


「実は、学生の頃から文章を書くことに苦手意識があったのですが、やってみたら楽しいということに気づきました。自分ができることが増えて、今後の可能性が広がった気がします」と、福田さん。インターネットや雑誌などでいろんな記事を読んで、「いい記事だな」と感じたものがなぜいいのか理由を考えてみたり、写真の撮り方を研究してみたりしたそうです。


それだけでなく、今は仕事を通して、会社員として働いていたときには得られなかったやりがいや充実感を得ています。


「会社勤めをしていた頃は上司の指示に従って仕事をしているという感じでした。でもLoco-workerになってからは、コーディネーターとして取引先と打ち合わせや交渉をするなど、ある程度の裁量をもって業務を進めることができます。Loco-workingをしてみて、短時間の労働時間でも、いろんな人に出会ったり新しい世界にふれたりしながら、自分を成長させることができることを知りました

Loco-Workerの今後のキャリアプランは?〜起業も選択肢の一つに〜

福田さんは近い将来、Web業界に復帰することを見据え、仕事や子育ての合間に勉強を続けています。以前は、「息子が中学生になったタイミングで、会社勤めをしようかな」と考えていたそうですが、今は、このままLoco-workingを続けながら、個人で仕事を請け負うこともイメージするようになったそうです。


「以前は、仕事は職種で選ぶものだと思っていましたが、Loco-workingを通して、生活に合った仕事から始めて、自分の理想に近づけていく働き方もあるということが分かりました。また、以前はフリーランスや起業はまったく想定していなかったのですが、それも視野に入れるようになっていることに最近、気づきました。


Loco-workingによって可能性が広がり、働き方の選択肢を増やすことができた福田さん。きっとこれからも、自分らしさを大切にして、いろんなことに挑戦していくのではないでしょうか。

取材後記

以前、ひまわりの公開ミーティングを取材した際、Loco-workingがきっかけで仕事の幅を広げ、個人事業主となった方にお会いしました。その方が、自分の仕事について生き生きと語っていたのが印象に残っています。

年収や職種を基準に仕事を選別していたら、Loco-workingという働き方は視野に入ってこないかもしれません。ですが、このWebメディア「くらしと仕事」が提案しているように、「『くらし』を起点に、働き方を選ぶ」と、Loco-workingなど様々な選択肢が見えてきます。

こうした視点で仕事を選択すると自分らしく働き続けることができ、それと並行して楽しく学び続けることができると思います。「人生100年時代」と言われる現代にも、合っているのではないでしょうか。

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