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近年、注目を集める地方移住。しかし生活、家族、職場環境の変化を考えると、なかなか踏み出しにくいものです。そんな中、短期間の滞在でローカルな生活を楽しみながら仕事を続ける「ワーケーション」という働き方が増えているのをご存知でしょうか。

1月に行われたトークイベント「local next..("小さい移住"を暮らしに取り入れよう~ワーケーションという働き方)」(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、福岡移住計画主催)では、ワーケーションを実践している4名の方々から移住や多拠点居住などへ踏み出すヒントを伺いました。

正解はない!それぞれのワーケーションのカタチ


まずは福岡移住計画ディレクター・ 会場であるDIAGONAL RUN TOKYOのコミュニティマネージャーでもある片山昇平さんと、フリーランス協会事務局の齋藤有子さんの進行のもと<自己紹介>として、登壇者4名のこれまでの移住体験について伺いました。

<登壇者>
伊野亘輝さん…ROLLCAKE Inc. 取締役 兼 デザイナー
板羽宣人さん…株式会社ベビログ 代表取締役
杉浦那緒子さん…株式会社ヒトカラメディア/オフィスプロデュースグループ/プランニング事業部
板林淳哉さん…株式会社ダンクソフト取締役/企画チーム/WLB・サテライトオフィス推進


1ヶ月どこで働いてもいい、そんな仕組みが会社にあってもいいと思った---伊野さん

「家族4人での旅行は短期でもお金がかかり疲れる、それなら料理など、日常的な生活ができる環境で1ヶ月滞在する方がいいのでは」という思いから行動した伊野さん。やってみると、仕事も問題なく進み、お子さんも新しい場所に親しむことができたという経験から、会社では「ルールを守れば8月どこで働いてもいい」という仕組みを作りました。それから3年、毎年夏には秋田や長野の古民家を利用してワーケーションを続けていらっしゃいます。

売ることだけに集中できるビジネスモデルでワーケーションを実現---板羽さん

板羽さんは、生まれた時の重さで作るテディベア「体重ベア」をe-コマースで販売されていますが、発注・生産・配送など販売業務以外をすべてアウトソーシングし、スタッフはご自身と奥様のみ。そのため海外にいても月1000体以上の発注に対応できるそう。数週間の家族ノマドを実現するため、「中学生の子どもの定期テストが終わったらすぐ出発! 終業式は休ませます」とのことでした。

ワーケーションは子どもの多面的な人格形成や地方貢献にもつながる---杉浦さん


不動産営業、ファイナンシャルプランナーなどのキャリアを経て、現在は東京の会社で営業アシスタントをされている杉浦さん。徳島県が政策を進め、2017年先進政策大賞を受賞した「デュアルスクール」制度の参加者第一号として、徳島県海部郡美波町の戎邸をサテライトオフィス兼住居として利用し、子どものそばで仕事ができる環境を作られています。
参考:親子で海辺の田舎町に長期滞在できる「リモートワーク&デュアルスクール」とは?

滞在期間は最短で2週間ですが、2016年10月以降3回ほど訪れ、子どもを通して地域の「子ども神輿」を復活させるなど、地域との関わりも深めています。

自ら実験台となってどこでも仕事できることを証明したい---板林さん


都内の会社でウェブデザイナーをされている板林さん。東日本大震災で停電など業務が滞った頃、「徳島県はネットワーク環境が揃っている」と聞き、同年9月と11月に社員全員で徳島県神山町の古民家へ短期滞在されました。滞在時に町のプロモーションを手伝ったことがきっかけとなり、他の自治体からもオファーを受けるようになり、2013年頃からはワーケーションが会社の事業のひとつに。2015年に北海道別海町、翌年に徳島県阿南市に滞在し、廃校やゴルフ場のクラブハウスをオフィス化しました。

まずは第一歩を踏み出すことが大切。経験者が語るワーケーションのリアル

続いての<パネルトーク>は、事前に参加者から寄せられた質問コメントに対して、登壇者が回答する形式で行われました。

- ワーケーションのデメリットを教えてください。

伊野: ワーケーション中はオンラインミーティングを定例化しているが、対面の場合よりコミュニケーションコストは数十%上がってしまう。

板羽:お金がかかる。大阪では親が購入した家を借りていたが、東京に引っ越してきてからは、ワーケーション中は東京と滞在先で二重の家賃が発生。

杉浦:コミュニケーションコスト。TV会議では言葉がかぶったりしてやりづらいこともあるし、外出しようとする人に対して「忘れ物はない?」と声をかけるような気軽なコミュニケーションもぐっと減ってしまう。

板林: 「ワーケーション」は「ワーク+バケーション」のことだが、「バケーション」部分を当事者以外に理解してもらいにくい。日本はまだ時間をかけて働くことを良しとする人が多いので、コミュニケーションが不可欠。

- 家族・会社など周囲の理解はどのようなものでしたか?

伊野:家族は最初から賛成だった。場所を探すのだけが大変だった。

板羽: 妻は、突拍子もない発想をする自分の背中を押してくれる。短期の東京滞在の帰りに「1回(東京に)住んでみようか?」と軽い気持ちで言ってみたところ「じゃあすぐに家を探して来て!」と翌月に引っ越すことに。

杉浦:「知り合いがいないから」と息子が嫌がったので、本格滞在の前に1週間滞在させたところ友達ができた。実際にやってみるのが説得材料になった。

- 短期間だけ滞在できる場所探しは、具体的にどのように行いましたか?

伊野:最初はairbnb、2年目はTwitterなどで知り合いに「家族4人で住める場所がないか」と呼びかけた。3年目は地方自治体が移住体験のために提供している物件を借りた。根気よく探すとかなり安く見つかることもあった。

- 杉浦さんのようにデュアルスクールを利用したかったが、住んでいる区で許可が降りなかった。どうすればいいでしょうか。

杉浦:そういった課題を徳島県知事に話したところ、知事から文部科学省に働きかけ、区域外就学制度をデュアルスクールに援用できるよう進めているとのこと。ぜひリトライを!

- 子どもの教育フォローはどのようにしていますか?

杉浦: 同じく県に掛け合った。デュアルスクールの専任講師の方が、東京の小学校と頻繁に連絡を取り、必要なプリントなどを子どもに配布してくれた。

板羽:そもそも学校教育がどれだけ役立つのか? 学校と移住生活、どちらが子どものためになるのかを考えて判断している。教科の学習など、必要な時はSkypeも使って家庭教師でフォローする。

- 2018年オススメのワーケーション先を教えてください。

伊野: こちらが教えて欲しいくらい。どこがオススメかは、登壇者のみなさんもわからないのでは。

板羽:2月下旬から1ヶ月福岡に単身で滞在予定。福岡はまた住みたい・住みやすいという人が多いので、実際に行ってその魅力を知りたい。

杉浦:徳島県海部郡美波町。もう実家に帰る感じ。他のエリアにいってネットワーク環境の良さを改めて知った。最初のステップに最適。あとは軽井沢に会社の支店を持っていて四半期に一度オフサイトミーティングをしている。東京から70分なので通える距離なのが良い。

板林: 山口県の萩。今年は明治維新150周年で様々な取り組みをしている。ネットワーク環境も良く、フリーランスを受け入れて合宿をしたり、フリーランス協会が地元の企業の課題解決のワークショップをしながら家族で萩を楽しむツアーを開催予定。

- ワーケーション中、仕事とそれ以外の時間の比率はどのようになっていますか?

伊野:仕事時間は相当短くなった。会社にいると無駄なコミュニケーションが発生することもあるが、朝のTV会議後は作業に没頭できる。デスクに向かって仕事をするのは4~5時間くらいで、15時くらいには仕事を終える。

板羽:日本人は働き過ぎてしまいがちだが、特に海外にいると時差によってある程度の強制力が働くのがいい。例えば北欧にいると、日本時間の午前中は真夜中なので日本にいる人に任せ、現地で朝になると5~6時間働いて、日本が18時以降になる午後からは家族で活動する時間に充てる。

杉浦: 徳島ではサテライトオフィスの上で寝起きしているので、通勤がない分東京より長く働ける。昼休みに夕飯の仕込みができたりもするので、家族と過ごす時間も長い。

一口に短期移住と言っても、当事者や家族構成、自治体の支援の有無などによって様々な選択肢があり、登壇者の方々もその都度試行錯誤されている印象を受けました。いきなり大きな目標を掲げるのではなく、まずは数日から、近場からと、ハードルを下げて具体的に考え始めることが、理想の生活への第一歩ですね。

会場協力:DIAGONAL RUN TOKYO