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女性にとっての「新しい働き方」として社会的にも注目を浴びつつある、起業。起業に関心を持つ女性たちのためのイベント「ウーマンミーティングin Tokyo 私スタイルみつけよう!」では、女性起業家の実態を紹介した第一部に続き、第二部では、実際にさまざまな分野で起業をした女性3人をゲストに迎え、起業のきっかけや起業家ならではの悩みなどを語るトークセッションが行われました。司会進行は前半に引き続き、跡見学園女子大学准教授の 許伸江さんです。

左から許伸江さん、保要佳江さん、大橋由香さん、野田万起子さん

起業のきっかけは? 共通するのは「地元への思い」

許:まずは皆さんの自己紹介と、事業内容の紹介をお願いします。

株式会社LOOOF代表取締役 保要佳江さん。大学卒業後、国立ファームへ入社し、飲食部門でリーダーシップや企画、経営スキルを学ぶ。その後、姉妹で任意団体「芦川ぷらす」を立ち上げ、古民家でフレンチを楽しめる「囲炉裏フレンチ」を実施。2014年からは、芦川町内に100棟以上ある古民家を活かし、古民家宿LOOF澤之家、坂之家をオープン。若い女性や外国人観光客をターゲットに、一棟貸し宿を経営をしている。

保要:私は山梨県で起業をして、週の半分は山梨県で生活をしています。事業内容は、古民家を利用した宿の経営で、現在は2棟の古民宿を管理、運営しています。山梨県でも人口が400人にも満たない限界集落にあるので、当時は「こんな場所にお客さんなんか来ないよ!」と言われることもありましたが、今年で4年目を迎えることができました。

事業のミッションは、「地方に持続可能な小さなビジネスモデルを作って、集落に残る日本の文化を継承する」ことです。地方での起業を考えている人に、田舎でもきちんとビジネスが成立することを伝えていきたいと思います。

株式会社はるひ代表取締役 大橋由香さん。本厚木駅に「はるひごはん」をオープンすると、2017年には3倍の広さを持つ一軒家レストランとして移転。飲食店経営のほかにも、料理研究家として書籍やレシピ開発、イベント講師、自店での料理教室にて鍋の販売、お菓子の販売など物販にも力を入れている。

大橋:飲食店を経営しています。2014年に約10坪の小さなお店で開業しました。今年3年目になりますが、3倍の広さがあるレストランへ移転をしたので、今は夜の経営にも力を入れています。料理で皆さんが幸せになるお手伝いがしたいという気持ちで日々働いています。

Human Delight株式会社代表取締役 野田万起子さん。2010年に株式会社ベンチャー・リンク取締役に就任。翌年、MBOにより同社から独立。インクグロウ代表取締役就任。また、2010年に設立したHuman Delight株式会社の代表取締役を務めている。(2017年2月インクグロウ取締役会長を退任)20年以上、全国の地域金融機関の支援業務に携わり、中小企業の活性化に向けたビジネスマッチングの取り組みを行っている。現在は、地方自治体の地方創生に関するプロモーション支援に従事。

野田:私は皆さんと起業の方法が少し異なっています。大学卒業後、金融業界への就職を考えていたのですが、当時の業界における女性のポジションに疑問を感じ、結果、創業6年目のベンチャー企業に就職しました。男女平等の会社で結婚、出産、さらにその段階で昇格までし、非常にやりがいのある仕事をさせてもらっていました。しかし、リーマンショックの影響で企業買収にあったため、担当していた事業をMBO(経営陣による株式の買い取り)という形で独立しました。しかしその年、東日本大震災が起こり、事業はさらに厳しくなりましたが、どうにか経営を持続させることができました。その後新たな会社を設立し、これを本格的な起業として、現在は地方創生に関わる支援や地域の若者のキャリア教育、女性活躍支援などやりたかった事業を運営しています。

許:起業と一口に言っても、ジャンルやステージはさまざまですよね。皆さんが創業に向けて一歩踏み出したきっかけを教えてください。

保要:もともと田舎には興味がなく、海外で起業したいと思っていました。しかし、大学を卒業して海外へ行こうと思った時に、「自分には何もない」と気付いたんです。そこで、まずは日本で土壌を作って、その後に海外へ行くことに決めました。

その時に、自分の地元が限界集落で問題を抱えているということを知り、ここを立て直そうと思ったのがきっかけですね。そこで、東京にあるベンチャー企業で働きながら、山梨県へ通ってイベントを主催することから始めました。初めの頃は、予算も見合わず散々な結果でしたが、少しずつ集客数が増えて希望が見えてきたので、そのタイミングで会社を退職して、本格的に起業の準備に入りました。

大橋:私は、調理師学校を卒業後してから飲食店で働いていましたが、その後、結婚をして専業主婦になり、子どもも生まれました。しばらくして再び飲食店でアルバイトとして働き始めたのですが、自分のスキルを仕事にもっと活かしたいなと思い、ブログで発信することにしたんです。そこで、無水調理鍋を売っている会社から声がかかり、百貨店などでフリーランスとして料理講師をやるようになりました。

しかし、当時の仕事は都内でのものが多く、子どももまだ小さかったので、地元である厚木で何か仕事ができないかな、と思うようになって、厚木市が主催している起業スクールへ行きました。食に携わる仕事がしたいと思っていたところ、友人が「起業のための物件を見に行く」というので付いていったところ、自分の条件に見合う物件を発見して、具体的に動き始めました。

野田:きっかけは先ほどお話しをしましたが、私は普通に会社へ入社して、そこで立ち上げた事業の独立という形で起業をしました。「第二創業」という形に近かったのですが、長い付き合いのあるお客様と社員のために、事業を継続する事だけを考えて独立をしました。ただ、その当時に現在のような知識を持っていたら、絶対に独立などはしなかったと思います。

その後に設立した私の会社「Human Delight」は、保要さん、大橋さんと同じように地元である静岡に拠点を置いています。現在の静岡は、人口減少はもとより、女性の拠出率が高くなっています。原因のひとつとして、地元に就職先がないと思い込んでいることがあげられます。大学で県外に出たとしても、就業時に地元に戻ってくる選択ができるような地域にしていきたいと考えています。

 

創業後に直面した課題と方向性の変化

許:皆さんには、地元に貢献したいという共通の思いがありますね。創業してから事業の方向性に変化などはありましたか?

保要:起業の準備から半年間は古民家のリノベーションをして、その後、宿をオープンしました。1年間は従業員を雇わずに、自分だけで運営をしていましたが、もう一棟宿を増やした時に初めて従業員を雇いました。求人を出してみると、意外にも都会から田舎へ戻りたいという人からの応募が多かったんです。そのため、従業員が住めるように、シェアハウスの経営も始めました。こちらも古民家をリノベーションしたものです。今後の事業展開は、地元だけではなく、全国展開を視野に入れています。

大橋:私が起業したのは4年前ですが、とにかくやりたいからやるという気持ちでした。自分の夢をただ実現させたいがための起業だったんです。それがお客様と接するうちに、その気持がどんどん変わっていって、お客様のためにやるんだということを、開業してからようやく気付くことができました。すると、お客様もどんどん来てくれるようになって、それまでの店舗が手狭になってしまい、引っ越しを考えるようになりました。そこで、「引っ越したい」とお客様に言っていたら、その方の紹介で現在の店舗が見つかったんです。こうした人と人とのつながりで仕事ができることに感謝をしていますし、自分の気持ちを含め、いろいろなことが変化していくんだなと実感しています。

野田:独立する前は、100人を超える部下が全国に配置されているような組織を持っていましたが、現在起業した会社では、私と取締役、監査役を置いているだけで従業員はいません。顧客は地方自治体で、色々なプロジェクトが動いていますが、これを一人でこなすことはできませんので、何社かのパートナー会社と協力をして運営をしています。本来、会社を創るということは「雇用の創造」をしなくてはいけないと考えているので、しっかりとした形態を作るためにもいろいろと挑戦をしていきたいと思っています。

 

起業資金はどうすれば?それぞれの資金調達方法とは

許:起業というと、気になるのがお金の事情です。女性は、特にリスクを避ける傾向が強く、融資を受けたがらない人も多いのですが、皆さんはいかがですか?

保要:リノベーションには、初期投資が千万単位でかかってくるので、それを20代で借りるのは躊躇しました。しかし、同世代には結婚して家をローンで購入している人もいます。もし事業に失敗したら再就職すればいいし、その時には古民家を自分の別荘として使おう、そのためのローンだと思ったら気が楽になりました。

大橋:当時、専業主婦だった私には自己資金がなかったので、そもそも借りられるのかという不安がありました。起業スクールの講師だった人に日本政策金融公庫を紹介してもらい、夫を保証人として立てることで事なきを得たのですが、それでも最初に資金を借りるのには、かなりの勇気が必要でしたね。移転した時には、さらに最初の3倍以上の借金をしましたが、最初に借りた時よりも気楽でした。それよりもやりたいという気持ちと、どうやって事業計画を立てて借金を返していこうかという気持ちがありました。

野田:MBOをした時には、グループのコストを全部背負うことを条件に独立させてもらったので、赤字からのスタートでした。準備していた7,000万円のキャッシュでは半年もたない状況でした。とにかくやるしかないとがむしゃらに働きました。金融機関がお金を貸してくれるまで3年がかかりました。

今の会社は自己資金で立ち上げましたが、起業を考えたら、まずはいろいろな支援機関へ相談をしてみることをおすすめします。事業プランに対して、どれくらいの資金調達が必要なのかなどアドバイスもしてくれます。

許:保要さんはクラウドファンディングを利用されたとうかがいましたが?

保要:クラウドファンディングは、資金調達ができなかった場合には手数料がかからないというメリットがあったので、起業当時に利用しました。ウェブページを作るのは大変でしたが、結果、資金調達ができたんです。また、資金調達以外にも、プロモーションとして利用する狙いもありました。当時、古民家をリノベーションした宿は珍しかったので、かなり注目が集まり、いろいろなメディアで取り上げてもらえたんです。観光客が来るような場所ではないのに、クラウドファンディングを見た人が来てくれたり、古民家に興味がある人が勉強しに来てくれたりしました。最初のお客様は、ほとんどがクラウドファンディングでつながった人たちです。

 

二度と戻りたくない…!起業で大変だったこと良かったこと

許:実際にみなさんが起業してよかったことと、大変だということを教えてください。

保要:よかったことは、毎日とても幸せに働けていること。自分がやりたいことが、地域の貢献に役立っていたり、宿泊したお客様が喜んでくれたりすることがとても嬉しいです。つらいことはあまりないですね。というのも、創業当時が相当大変だったので、日々のささいなことは、まったく記憶に残らないんです。

大橋:私も同じです。立ち上げが一番大変で、二度とやりたくはありません。創業当初は、お昼だけの営業のつもりだったのですが、スタッフを募集したら正社員でやりたいという人が出てきて、それなら夜の営業もやろうと思い、始めたんです。現在、夜はスタッフに任せていますが、その時は昼も夜もずっとお店で働いていました。「人を幸せにしたい」と思って始めたのに、一番身近な家族を顧みていなかったんです。それに気付いてからは、仕事だけではなく、家庭のこともきちんと考えるようになりました。こうした自分自身の成長を感じられることは、起業してよかったことのひとつです。

野田:現在は、子どもも大きくなったため、24時間すべてを自分の時間として使えるので、本当にストレスがなく、人生で一番楽しく働いています。これまでできなかった分野の勉強や資格取得などにも挑戦しているので、新しい視野が広がってきました。

許:最後に、起業へ興味を持つ女性たちへアドバイスをお願いします。

保要:私は20代で起業したので、夫も子どももいない身軽な状態でした。起業は本当に大変ですが、やりたいことがあるのであれば、早い段階で起業することをおすすめします。

大橋:飲食店の起業は、相当に大変です。しかし、それでもやりたいという人には、協力してくれる人が現れると思います。勇気が持てたら、一歩踏み出してみてください。きっとそこには、新しい世界が広がっています。

野田:女性は男性と比べて、とにかく時間がありません。ですから、時間を管理することは大切なキーポイントになります。あとは、体調管理です。体が思うように動かないと気力も失い良い仕事はできません。

また、前半での許さんのお話にもあったように、女性の起業は趣味の延長から始めることが多いと思います。すると、10年後、20年後の夢や事業計画を持って始めている人はそんなにいない。もしも会社を作ったら、いかに事業を継続してやっていけるか、利益を生み出せるかを考えないと、長くは続きません。そういう意味でも、自分が考えた目標に一つ0(桁)を加えるくらいの目標設定をして欲しいと思います。

 

女性起業家のロールモデルが少ない現在、今回のイベントは、起業家のリアルな話を聞くことができる貴重な機会でした。3人のお話にもあったように、会社を興すことは相当に大変なことで、決して安易にできることではありませんが、社会に追い風が吹いている今は、チャンスでもあります。自分らしく生きるために、柔軟な働き方を求めているのであれば、起業をひとつの選択肢として考えてみるのもよいのかもしれません。

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