充実の保育サービスがうらやましすぎる!ワークスアプリケーションズの企業内託児所「WithKids」、その狙いとは

株式会社ワークスアプリケーションズが、自社で運営する社員のための託児スペース「WithKids」をオープンしました。その目的や、保育サービスの内容、オープニングセレモニーにゲスト出演された女優の木村佳乃さんのお話などを紹介します。

ワークスアプリケーションズは、企業向けソフトウェアの開発・販売を行っており、2016年6月末の時点で5,600名以上の社員を擁する大企業です。毎年実施されている「働きがいのある会社」調査において9年連続ベストカンパニーに選出、インターンシップには毎回80,000人もの応募が世界中から集まるなど、働く人にとって魅力的な会社としても知られています。そのワークスアプリケーションズが、東京 赤坂にある本社オフィス内に社員のための託児スペースをオープンしました(2016年12月14日運営開始)。

ライター

やつづかえり
『くらしと仕事』初代編集長です(〜2018年3月)。コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブマガジン『My Desk and Team』を運営中。『平成27年版情報通信白書』や各種Webメディアにて働き方、ICT、子育てなどをテーマとしたインタビューを執筆しています。2013年に第一子を出産。

社員の有志50人が集まり、理想の子育て環境を実現

12月5日のオープニングセレモニーイベントでは、「WithKids」のプロジェクトマネージャーで、ご自身も1歳と4歳のお子さんを育てる谷口裕香さんより、託児スペースが作られた経緯や、保育サービスの内容について説明がありました。社内に託児スペースを作るプロジェクトは今年3月、牧野正幸CEOの発案で始まり、約50名の社員が動かしてきたそうです。メンバーは有志で集まり、ワーキングマザーだけでなく、未婚の男女もいれば年齢も様々だそう。子育てしながら働くということに対する、社員の皆さんの関心や期待の高さが伺えます。

 

企業内託児所の多くは、専門の保育サービス事業者に運営が委託されていますが、「WithKids」はワークスアプリケーションズ自身が運営し、保育士や看護師、調理スタッフなども同社が社員として雇用しているという点に特徴があります。

 

なぜ自社運営にしたのかという点について、谷口さんは次のように語ります。

 

「もっともっと、子どもとママにとって理想の環境をつくりたいと考え、自社採用、自社運営をすることに決めました。委託をしてしまうと、どうしてもサービスに限りができてしまいます。自社運営をすることによって、よりワーキングマザーのニーズに合ったサービスを提供することができるようになります」

 

実際「WithKids」のサービスは、従来の保育園ではなかなか叶えられなかった、かゆいところに手が届く内容になっています。

 

柔軟な時間設定

都心の企業内託児所でよく問題になるのが、通勤ラッシュの中、子どもを連れてくるのが大変! ということです。ワークスアプリケーションズでは、元々裁量労働制とフレックス制が導入されていて、社員は自分の都合に合わせて通勤時間帯を選べることに加え、保育時間も自由に選択できるようにすることで、ラッシュを避けられるようにしています。

 

「延長保育」という概念がなく、8時から20時半の間なら何時間預けても一律30,000円/月 (一時保育は2,000円/日)というのもスゴイです。

仕事中に子どもに会える・授乳もできる

オフィス内にあるため、勤務時間中でも子どもたちの様子を見に行けます。裁量労働制、フレックス制の元で働いている社員は休憩時間のとり方も自由ですから、授乳のために休憩時間をとることもできる。これは乳児を持つお母さんにはとてもうれしいですね。

 

着替えやシーツの持参不要

自分が保育園を利用するようになると驚くのが、着替え、シーツ、オムツなど、その荷物の多さ。それが、「WithKids」の場合は全く不要とのこと。着替えやオムツもすべて施設側で用意してくれるそうで、うらやましい限りです。

 

親子一緒に食べられる食事も

施設内にはキッチンもあり、調理スタッフさん手作りの食事が提供されます。驚いたことに、親子一緒に食べることができ、夕食も出してくれ、これも含めて月30,000円で利用できるそう。

 

「帰宅後に夕食の買い出しや準備、片付けが不要になりますので、ゆとりある親子の時間ができます」と谷口さん。確かに、働くママは家に帰ってからも大変なんです。会社で一緒に食べて帰れれば、心の余裕ができますね。

 

社員が先生になって様々な体験を

共働きだと、子どもを習い事に連れて行くのも難しいものです。「WithKids」では、語学、プログラミング、ダンス、音楽、運動など、社員が特技を活かして「1日先生」になるそうです。外の教室に連れて行かなくても様々な体験をさせてあげられるのはいいですね。

 

「会社の中で子どもを育てる」という新しい働き方を実現したい

広い託児スペースを確保し、充実したサービスを実現するには、相当のコストがかかるはずですが、牧野CEOは「優秀なプロフェッショナル社員がキャリアを継続することができるなら、子育て支援はコスト的にも理にかなっている」と明言しました。保育士などのスタッフに関しても、「大事な社員の子ども達を育成していくのだから、ぜひ優秀な人に来て欲しい」と、かなり高い給与を提示し、社員として採用したのだそう。

 

会社がここまでする背景には、人材が同社の競争力の源泉であるという確固たる信念があるからでしょう。牧野CEO自身、「優秀な人材を集めることに大変なコストをかけている」、「社員には相場よりも高い給与を払っている」と明かします。それでも、特に日本の女性社員は出産後の復帰率が低いことが課題で、時短勤務や育休からの復帰時の特別ボーナスなど、「出産後も変わらず仕事ができる環境を」とこれまでも色々な施策を打ってきたといいます。ですが、「子どもが小さいうちは母親がそばにいた方がいいのでは」という周りからの意見や、ママ社員自身の思いがあって、思い切り仕事に打ち込めない人もいたようです。そんな親としての気持ちを尊重しつつ、仕事も頑張ってもらえるようにと考えられたのが、「会社の中で子どもを育てる」という新しい仕事と育児の両立方法だったわけです。

 

習い事への送迎、学童保育……、今後の可能性もいろいろ

オープニングセレモニーイベントでは、ゲストによるトークショーも開催されました。ジャーナリストの治部れんげさんがモデレーターを務め、女優の木村佳乃さん、『〈マンガとQ&Aで楽しくわかる〉1人でできる子になる 「テキトー母さん」流 子育てのコツ』などの著者の立石美津子さん、牧野正幸CEOが子育ての苦労や保育園に望むことなどについて話し合いました。

 


ふたりのお子さんを育てるママでもある木村さんは、現在2017年NHK連続テレビ小説「ひよっこ」の撮影中で、子ども達が起きている時間には帰れないことも多いそう。ロケで遠方にいるときなど、子どもが熱を出して保育園から電話がかかってくると心配で気が気でないと、子育てしながら女優業を続ける苦労を語られました。そして、「会社の中に託児所があるなんて、そんな夢のようなことがあるんですね!」と驚きしきりでした。

 

立石さんは、乳幼児期はかけがえのない大切な時期だからこそ、保育士の質が大事だと語り、保育士に高い給与を保証し、良い保育をしようとしている「WithKids」の姿勢を評価しました。また、「社員が1日先生として子どもたちに色々なことを教えるという制度も素晴らしいが、スイミングなど、親が希望する習い事への送迎もあれば、幼稚園に通っているお子さんと遜色ない教育ができるのでは」、「子育てと仕事の両立は小学校以降も大変なので、学童のような機能もあるといい」という提案もされました。

 

立石さんの提案に対し、牧野CEOは「それ、マジいいっすね!」と前のめりに反応されていました。また、保育士などのスタッフには、「子どものために良いと思ったことはどんどん提案して欲しい」とも。「WithKids」の内容は、今後もバージョンアップしていきそうです。

 

会社員は家庭と仕事の両立がしにくいという状況が改善されるか

今、国の働き方改革の中でも「フリーランス」や「副業」が注目されるなど、「ずっと一つの会社のためだけに働く」ということが当たり前ではなくなりつつあります。

 

ワークスアプリケーションズの手厚い子育て支援は、世の中のこのような動きに対する反動のようにも見えます。会社の中の多くの仕事は、外部に委託したりAIやロボットに任せることができるようになるとしても、会社の根幹の部分を担う社員は必要で、その社員こそが会社の競争力を左右する。だから、社員たちが働く上で壁になることは会社が取り除こうと、惜しみない子育て支援策が出てくるわけです。

 

個人で仕事をする手段も増え、古い働き方を脱することができない会社が多い今、特に子育てや介護などの家庭生活に時間を取りたい、取らなければならない、という人はどんどん会社組織を離れていっています。でも、もう何年か経てばワークスアプリケーションズのような会社も増え、家庭のことも大事にしたいからこそ、仕事との両立支援が充実している会社に勤めるという人達が増えてくるかもしれません。