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目次

(この記事は「LAXIC」より転載、編集しています。)

ラシク・インタビューvol.118

まちのてらこや 代表 高原友美さん

認可外保育園「まちのてらこや保育園」を経営する社長、園長、そして保育士の顔を持つ高原友美さんは、お母さんに寄り添う保育園を目指し、日々業務に取り組んでいます。

かつては商社で働いていた経歴を持つ高原さんが、保育園を運営する上で大切にしているもの、またプライベートでは、1歳のお子さんを持つママとしての等身大の気持ちを聞かせてもらいました。

子育てと仕事の両立に苦労している先輩や同僚の姿を見て 学生時代からの「働く女性をサポートしたい」という思いを実現しようと決めた

編集部:高原さんはもともと商社勤務から、保育園の運営というとすごく大きなキャリアチェンジをされていますが、どのような経緯で保育園を始めようと思ったのでしょうか。

高原友美さん(以下、敬称略。高原):大学でジェンダー論を学んでいて、どうすれば働く女性をサポートできるかなどを研究していたんです。

商社に勤務して、30歳が近くなったころ、周りの先輩や同僚が結婚・出産を経て、子育てと仕事の両立にすごく苦労しているのを見て、これは近い将来の自分の姿かもしれないと気づきました。

そこで私に何かできることはないか、私がワクワクしながら取り組めることはないかと思って、働く女性をサポートするために会社を作ろうと決めました。色んな人にヒアリングをしていく中で、お母さん目線でお母さんに寄り添うような保育園を作りたいと思うようになりました。

自分がオフィスワークを経験しているからこそ、同じように会社勤めしているお母さんたちを物理的にも精神的にもサポートしたいなと。

編集部:とは言っても、保育園を作るってものすごく規模が大きな話ですよね。そこに迷いはなかったのでしょうか。

高原:商社を退職して、周囲に「会社を作ろうと思ってるんだよね、たとえば保育園とか……」って話していると不動産会社を紹介するよ、など話が繋がって。みなさんから力を貸していただいているうちにどんどん形になっていったという感じですね。

もちろん保育園の物件探しや保育士さんの確保、そして融資など、課題は山積みでした!

今も日々の運営は必死でやっています。日中は園長の仕事をしつつ、時々保育士としても保育に入ります。その後は、社長としての仕事もあるから、ずっと走り続けている状態ですね。

「手ぶら登園」で保護者の負担が軽くなるような園作り。 一方、仕事量が多い保育士さんたちにはきめ細やかなフォローを意識

保育園の様子

編集部:先ほどお母さんに寄り添った保育園を目指していると仰っていましたが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

高原:当園は手ぶら登園をモットーとしているので、外遊びや食事などで汚れたお洋服はすべて園で洗濯をしています。

だから着替えは入園時に3〜4組お持ちいただくだけで、毎日お家で準備する必要はないんです。

宅急便の受け取りもしているので、おむつやおしりふき、ミルクなど手荷物だとかさばるものは通信販売で購入し、園に直接送ってもらうことも可能です。オムツは園で個別管理しているので、1枚1枚記名しなくていいし、認可外保育園では珍しく給食も自園調理で提供しています。連絡帳はスマートフォンのアプリを使用しているので、手書きしなくていいし、仕事中にお子さまの様子を写真で確認していただけます。

このように保護者の方の負担を減らし、きめ細やかな保育サービスを提供できるよう日々考えています。

また、当園で働く保育士さんは子連れ出勤が可能なんです。いま、保育の問題として「保育士の不足」が話題になっていますが、保育士さんって妊娠・出産を機に退職している人も多く、復職の際に子どもの預け先がないというのも問題なんですね。

当園なら子どもの預け先も確保できるので、保育士のお母さんに働く場を提供できます。実は私自身も娘を当園に通わせています。

編集部:保育士さんの離職率もよく話題になっていますもんね。長く働いてもらうために、何か意識されていることはありますか?

高原:時間を見つけて、なるべくコミュニケーションを増やすように心掛けています。

当園は手ぶら登園ができたり、連絡帳がスマートフォンだったりで、他の園より保育士の仕事の幅も量も多くなりがちです。私がどのような想いで園を設立・運営しているかをしっかり伝え、やってもらっている仕事にどんな意味があるのか理解してもらうように努めています。何かをお願いするときも、してもらって当たり前と捉えるのではなく、指示とセットでお礼を伝えるようにしていますね。

また、保育士さん一人一人の様子を見て、気がついたことがあれば都度声掛けをするようにしています。体調が悪かったり、前日にお子さんが夜泣きをしていたり、それぞれ事情は異なりますが、誰かに気づいてもらえるだけで楽になることもたくさんあります。やりがいを持って気持ちよく働いてほしいですし、その結果、同じ先生がずっと働き続けてくれているのは私としても本当にありがたいです。

保育園でのすべてのことは、経営者である私に責任があります。日々のプレッシャーは大きいですが、同時に喜びの多い仕事でもあります。

認可外保育園は国や自治体からの補助金がなくて保育料も高い分、認可保育園・認証保育園に入れなかったときの最後の受け皿と見なされがちです。保育の質もさらに上げて、保護者の方に積極的に選んでいただける保育園でありたいと思っています。

認可でも認可外でも、 「本当に今預けなくてはいけないのか」は一度よく考えてみてほしい

編集部:保育園にいれたいと思った時、「認可に入れたい!」という方がほとんどで、中には認可外保育園に先入観を持たれる方もいますよね。

高原:認可外保育園は保育料も割高ですし、事故の報道も多く目にします。多くの保護者の方が「なんとか認可保育園に入れたい!」と感じるのは当然だと思います。

だけど認可外保育園も、質のいい面白い保育をしている園がたくさんあります。そのことがきちんと保護者の方に伝われば、保育園選びの選択肢が増えるんじゃないかとは感じますね。

また、保護者の方には「このタイミングで保育園に預けなくてはいけないのか」ということも考えてみてほしいなと思います。0歳児から預けないと認可保育園に入りにくいという地域も多く、そのために止むを得ず育休を切り上げて復職される方も多くいらっしゃいます。ですが、0歳から1歳の変化の大きい時期にお子さまの成長を近くで見守ることもかけがえのない経験になります。

保育園問題が早急に解決し、また多様な働き方がより広く認められる社会に変わっていくべきですが、同時に保護者の方も是非「本当に今預けなくてはいけないのか」と原点に立ち返って考えていただければと思っています。例えば、満1歳までは育休を取得し、認可外保育園にお子さまを預けて復職し、ポイントを稼いで翌年度に認可保育園を申請するという方法もあります。自分らしい理想の働き方・子育ての仕方を考えた時に、認可外保育園も一つの選択肢になればいいですね。

編集部:高原さん自身も一人の女性として、ママとして、煩悶している部分があるのですか?

高原:私自身は、自営業ということもあって育休が取れず、生後1か月から子連れ出勤をしています。だから、娘はまわりの子どもたちと比べるとお母さんと家でのんびり過ごす時間はあまり長くありませんでした。生後6ヶ月からは娘も当園の園児の一人になりましたが、私は園では園長先生なので、他の仕事をしているときは泣いていてもすぐに私が抱っこしてあげられないときもあります。母が見えているのに、触れ合えないというのはお互いにとってストレスにもなります。娘に申し訳ない気持ちになることもあります。

仕事が忙しく、家事も手抜きになりがちです。子どもやパートナーに対して「これができてなくて申し訳ない」って思ってしまうのは私も同じなんです。

だからお母さんたちに気持ち分かりますよ、って共感したり寄り添ったりしながら、保育園を運営していきたいなと思っています。

商社勤務から保育園の経営者と言葉で聞くだけでは華々しいキャリアを歩んできたかのように見えますが、高原さん自身も、働くママに共通する悩みを抱えていることが印象的だったこの日のインタビュー。ビジネスパーソンとしての真摯な姿勢と、1人の女性としての等身大の姿が、保育園をより良くしているのだろうなと感じさせられる時間でした。

高原友美さんプロフィール

まちのてらこや保育園 代表 高原 友美1984年生まれ、33歳。岡山県倉敷市出身。2007年3月、お茶の水女子大学卒業。2007年4月より7年間、三井物産株式会社に勤務。金属資源の輸出入、ブラジルでの金属資源開発案件などを担当。2014年4月に退職し、6月に株式会社サムライウーマンを設立。2015年9月に「まちのてらこや保育園」を開園。2017年3月に出産。社長・園長・ときどき保育士、そして働く新米ママ。

第32代中央区観光大使・ミス中央でもあり、中央区の魅力を国内外に発信中。

HP:まちのてらこや