キャリアチェンジを考えた時に、道筋を照らしてくれる本

キャリアチェンジを考えたり体験した時には、不安になるかと思います。そんな時にぜひ手にとっていただきたい本を紹介します。

ライター

鈴木せいら
札幌市出身。横浜国立大学大学院工学修士修了。2007年夏より、函館へ移住。制作会社でライティング・編集業務を行い、実用書・フリーペーパー等のコンテンツ制作を担当、2011年よりフリーランスに。現在、「HELP YOU」プロフェッショナルライター。理系の知識を活かしたサイエンスやアカデミー系の文章から暮らしにまつわるエッセイ、インタビューなど幅広く手がける。

皆さんは、キャリアチェンジを考えたり、体験したりしたことがありますか?

心の中で思っていたとしても、なかなか人に相談しにくいテーマかもしれませんね。私自身は、大学院在籍時に結婚、専業主婦の期間を経てパートタイムの仕事をきっかけに、正社員・契約社員・フリーランスとその時々で職種も立場も変わってきました。正直不安定な自分のキャリアを心細く思うことはありますが、時代がどんどん変化してきているので、「不安よりもとにかく今できることをする!動く!」という心持ちでいます。今回は、キャリアチェンジを考えた時、ぜひ手にとっていただきたい本を選びました。

 

自分で決める。自分で進む。『会社をやめてもいいですか』

書店でこの本を買った時に、店員さんに「カバーをおかけしますか?」と聞かれて「いえ、いいです」とお断りしました。「いいんですか?」と聞き返されて、「あれ。もしかしたら、会社を辞めたくて悩んでいる人だと思ったのかな」と感じました。

 

そのぐらい印象的なタイトルですが、内容は8名の女性たちへの、キャリアチェンジにまつわるインタビューをまとめたもの。紹介されているキャリアも、専業主婦から仕事を始めた方、仕事を辞めて大学院へ進学した方、会社を辞めて専業主婦になった方…いろいろです。

 

感じるのは、選択肢がある時代になったということ。仕事をしてもいいし、しなくてもいいし、同じことをずっとやり続けなくてもいいのです。

 

ひと昔前であれば、会社を辞めるというのは一大事だったと思うのですが、転職もフリーランス転向も珍しくない世の中になりました。もちろん、それに伴う苦労もゼロではありません。けれど、「こうしなくてはいけない」「ここじゃなくてはいけない」という制限から解放されると、未来への展望がずっと明るくなるような気がします。

 

私が一番興味を引かれたのは、仕事を辞めて認知言語学の博士課程に進学した堀内ふみ野さん。恩師の退官記念講義に参加されて、心が動いたのだそう。

 

「安定した会社員ではなくなったことで、生活の不安定さに焦りや辛さを感じたこともあります。でも、会社をやめたことは研究者として生きる覚悟につながったと思います。
(中略)
誰かに指示されるわけではなく、すべて自分次第。自分が決めたことなので、徹夜するにしてもふんばりがききますし、やり方を変えたいと思ったら工夫して変えることもできます。責任感と自由を同時に感じています」

 

たとえ困難があっても、自分で決めたことだから後悔しない。自由と責任は、本当に背中合わせのものだと思います。私もフリーランスになってからは特に、自分に厳しくなりました。会社や組織の名前に守られていない立場で、すべてが自己責任。だから自分の頭で考えて、全力で仕事に取組みます。

 

会社をやめてもいいですか?

 

『97歳の幸福論。』時代の流れを読んで、興味を広げておく

現在は103歳になられる、写真家の笹本恒子さん。人生100年時代と言われますが、まさにそういう生き方を体現していらっしゃる方は、どんな風に働き、暮らしてきたのでしょう?

 

実は、長いキャリアにおいて笹本さんはずっと写真の仕事だけをしてきたわけではありません。その時々でフラワーアレンジメントやアクセサリー制作など色々なお仕事に携わってきたそうです。「面白そうだなぁ」という興味から発展してプロとして成り立つまでのスキルを身に付けてきたことが、キャリアチェンジの成功につながったのではないかと思います。

 

 どこにも所属しない無印人間は、好きな仕事ができて良い反面、パタッと仕事がこなくなったりもする。フリーランス稼業の怖いところです。わたくしも’60年代から20年ぐらい写真の世界を離れていた時期がありました。
その間に何をして収入を得ていたかというと、オーダー服のサロン、フラワーデザイン、陶版画、アクセサリー作り……いろいろなことをしたのです。
報道写真へ進みましたが、そもそもが画家志望。「絵描きじゃ食えないぞ」と言われ、娘時代に洋裁学校や生け花の教室に通ったことが幸いしました。だからみなさんも、興味のあることは何でもやっておいたほうがいいですよ。

 

97歳の幸福論。ひとりで楽しく暮らす、5つの秘訣

 

『エンパワーメント』自分のキャリアをデザインするための力

元国連職員であり、日本に帰国後はフリーランスで活躍している大崎麻子さんの著作。離婚をして二人のお子さんを育てている境遇だそうですが、文章には微塵も暗さがありません。とはいえ、これまでご自分のキャリアを選択する場面においては、知らずにしみついている「思いこみ」からずいぶん悩まれたようです。「結婚して子供を持ったら母親は家にいるべき」。そんな自分自身の思いこみを打ち消して、可能性に挑戦し続けていくことが、これからの世の中を生きる上で必要なのだと思いました。

 

サブタイトルは、「働くミレニアル女子が身につけたい力」。タイトルにもあるエンパワーメントとは、健康、教育、生計手段・経済力、社会・政治への参画の4つの要素を身に付けるプロセスを言うのだそうです。「もっと早くこういう視点を知っておきたかった」と思うことばかりでした。大崎さんご自身の経験を通して提案されるエンパワーメントは、キャリア志向のビジネス書にありがちな上から目線や冷たさがない。とても優しいんです。

 

「自分も悩み、葛藤しながら、がむしゃらにここまでやってきた。仲間ですよ」そんな励ましの気持ちを感じます。

 

 今から20年前の1997年、私は国連に就職しました。
大学院卒業ほやほや、しかも、すでに2歳の子持ち。子どもを産んだことに後悔はまったくなかったけれど、大学や大学院時代の友だちは皆、1日24時間を自分のために使える状況で、仕事や習い事や遊びに邁進していて、キラキラと輝いているように見えました。
(中略)
あるとき、国連の邦人職員会の企画で、当時、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトップを務めていらっしゃった、緒方貞子さんを女性職員で囲む会というのがありました。
(中略)
そのときはこぢんまりとした囲む会、しかも女性限定ということで、ぺーぺーの職員ではありましたが、私も張り切って出かけました。
そして、思いきって質問をしたのです。
「私はUNDPで仕事をしていますが、2歳の子どもがいます。日々、どうにか時間のやりくりをしている状況です。どっちつかずになってしまって、焦ることもあります。緒方さんはどのように、ご家庭を持ちながら、キャリアを構築されてきたのでしょうか?」
(中略)
「女性は人生というスパンで物事を考えるとよいのでは?人生には色々なステージがあるから、子育てに集中する時期があってもよいし、仕事に集中する時期があってもよい。子育て中は仕事の量をセーブしつつ、働き続けることもできる。それに、子育ての経験だって、後々、仕事の役に立つこともたくさんある。長期的な視点に立って、キャリアを考えるとよいのでは?」

 

キャリアチェンジを重ねて私自身が思うのは、人の意見を聞くと同時に、自分の意思を伝えていく努力も大事だということ。「こうしていきたいんです」と言葉にしたことがきっかけで、思わぬ時にお声をかけていただいたこともありました。

 

できることとやりたいことの両方を増やしていけるよう、一緒にがんばっていきましょうね。

 

エンパワーメント 働くミレニアル女子が身につけたい力

 

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