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こんにちは、フリーライターの鈴木せいらです。今回から、家庭に仕事にとあわただしく過ごす私たちに、明日へのヒントをくれたり、日常に楽しみを添えてくれたりする書籍をご紹介していきたいと思います。書くことを仕事にしている私にとって、本を読むことは食事や睡眠と同列にくるぐらい大切。勉強でもありますが、ほっとひと息つくことのできる、趣味の時間でもあります。以前Facebook上で「本積み」と称して、その月に買った本を積み上げた写真を撮り、その中からお気に入りを紹介するコンテンツを1年半ほど発信していたことも。

こんな風に積んで「本積み」と呼んでいました

第1回目は、秋と言えば「食欲の秋」。食べ物にまつわる仕事の本をご紹介します。

長野の自然に囲まれた 2種類しかパンを焼かない店「わざわざ」

『わざわざの働きかた』

薪窯で、食パンとカンパーニュの2種類だけを焼くパン屋さん。長野県の「わざわざ」について、きっとご存知の方も多いのでは。山の上に立地する場所柄、「わざわざここまでいらしてくださって、ありがとう」の思いをこめて、この店名が付けられたといいます。本の書き手でもある「わざわざ」店主・平田はる香さんは、元々旦那さんの転勤で東京から長野の地へやってきたのだそう。2児の母でもあります。この本は、これまでウェブで平田さんが発信してきた店への思いに加筆して、「これからわざわざで一緒に働いてくれる人へ向けたメッセージ」として採用のため作られたものです(スタッフ募集は既に終了)。店のこと、取り扱っている物のこと、支えるスタッフや平田さんの旦那さんのこと…「わざわざ」のエッセンスが凝縮された文章と美しい写真が相まって、映画を観ているような気分になります。

誰もが憧れる仕事の裏には、たゆまぬ努力があるはず

「SNSを見て、実際に面接に来て仕事すると、思ってたのと違ったと言われることが多いです。WEBで描かれるわざわざの印象は片田舎の美しい景色の中で生活をしながら、パンや日用品を販売すると言うと、どうしても美しさやかわいさが強調されてしまいます。じっさいこの環境の中で、商売が成立するまでに至る経緯は泥臭く、それ相応の努力が必要です。」
via 『わざわざの働きかた』p25より

美しい仕事の裏には、必ず並々ならぬ努力があると思っています。奈良のカフェ「くるみの木」店主石村由紀子さんの著作『私は夢中で夢をみた』や、陶芸家イイホシユミコさんの『今日もどこかの食卓で』を読んだ時にも感じたことですが、人の心を惹きつける仕事には、驚くような努力と熱意が根底にあって。だからこそ、はっとするような美しさになって表れてくるのではないでしょうか。それは、どんな業種であっても同じだと思います。 きっと、仕事を手掛けている方たちは「その泥臭さまで、感じ取ってください」とは望まれていないと思いますが(笑)地道な努力が、信頼や商品・サービスの安定したクオリティー、お客さまから受け取る「ありがとう」の言葉に姿を変えるのだと信じています。

サービスとは何かという話。サービスとは、人の喜ぶ顔がみたいという本心から行われることが一番で、そのサービスがお客さまにとって心地よいこと。双方の合意があること。
via 『わざわざの働きかた』p7より

オンラインショップでもパンの購入はできるのですが、週に一度、火曜日にだけカートにパンが入ります。レアな機会なので、私はまだ「わざわざ」のパンを食べたことがありません。ですが「どうしてもわざわざの味を知りたい」と思い、焼き菓子セットを取り寄せたことが。素朴で飾らないクッキーやスコーンは、主張しない控えめな甘さで、「わざわざ取り寄せてくれて、ありがとう」と照れているように見えました。

好きな仕事をしながらも、お母さんであるということ

「お母さんだから」と、仕事の大きなチャンスになる話を断ったというエピソードが本に出てきます。私は、お母さんだから。そう言って、手放すことがあったのでしょう。平田さんは夫婦そろってIターンという状況で、店を軌道に乗せ、株式会社にし、ふたりの子どもを持つお母さん(しかも下のお子さんは、2016年に生まれたばかりの乳幼児です)としての役割もおろそかにしていない。できないことは潔くできないと決める。勝手な想像ですが、後年自分で振り返った時に、「こうすればよかった」とか「あの時の自分は努力が足りなかった」と後悔しない生き方を選択しているのではないかしら。それは私も、生きていく上で目標としているところです。

「明日の自分に誇れるように」常にそう思っています。大好きな仕事をさせてもらいながら、家族と過ごす時間と感謝を忘れない。そんな日々を、大切に過ごしていきたいですね。恵みの秋。自分や家族の活力になるように、おいしいものを食べてくださいね。