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「働き方改革」やITの普及が進むなか、雇用形態や勤務時間、働く場所など、さまざまな場面で多様な働き方が実現しつつあります。

より良い 働き方を見つけた人たちは、どんな過程を経て、現在の働き方を見つけたのか。結果だけではなく、模索した経緯にスポットをあてたアワードプログラム「Work Story Award2017」には、これからの日本をつくるための、一人ひとりが自分に合った働き方を見つけられるヒントがありました。

後述の通り様々な部門が用意され、今年は18部門で受賞ストーリーが決定しました。すべてのストーリーは「これからの日本をつくる"働き方"のストーリー」で詳しく紹介されていますが、その中から筆者の印象に残ったストーリーをご紹介します。

 

 

「終日一斉テレワーク」プロジェクトで、社員の小さな幸せを叶える会社へ

左から、株式会社スタディスト広報の朝倉慶子さん、at Will Work代表理事の藤本あゆみさん

10あるテーマ部門のうち、「テクノロジー・AI」部門でで受賞したのは、全社員が終日テレワークをするプロジェクトを実施した株式会社スタディストの「テクノロジーで個人のWILLを叶える!全社員/終日/一斉テレワークプロジェクト」。

2010年の創業時から、すでにテレワークを利用していたものの、それまでメイン事業だったコンサルティング事業から撤退。2015年から、新たにマニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」をメイン事業としたところ、だんだんとテレワークよりもオフィス出社が当たり前という雰囲気に変わっていったそうです。

「創業時から働いている従業員と、2015年頃から急激に増えた従業員の間には、テレワークの認識に誤差が生まれていました。新しいメンバーは、テレワークを気軽に使えなかったり、そもそも制度に不慣れだったりと、利用することにとまどいがあったんです」と株式会社スタディストで広報を務める朝倉慶子さん。

「この状況のまま、もしも、有事が起きた場合に、全員がスムーズにテレワークを利用できるのか、何の支障もなく事業を継続できるのかという懸念に加え、従業員の半分以上に子どもがいたこともあり、もっと柔軟な働き方を推奨するべきではないかという思いがありました」

そんななか、経済産業省らが推進する「テレワーク・デイ」が2017年7月24日に実施されることを知り、スタディストでは社内全員が終日一斉にテレワークをするというプロジェクトを実行。プロジェクトは、当日利用したカフェやコワーキングスペースの料金は会社が負担する「テレワーク補助金」などの制度も作り、自宅では作業が難しい従業員への配慮もされたものでした。

この取り組みは大成功を収め、メディアへもテレワーク参加企業の代表例として紹介されたそうです。

また、テレワーク中である社員同士のコミュニケーションツールとして、G Suiteを利用したテレビ会議、chatoworkやYammerなどのチャットツールを利用したほか、自社サービスでもある「Teachme Biz」を活用したことで、従業員自らが自社サービスの有効性を実証することになりました。

「スタディストでは、経費精算の仕方や営業管理ツール、ウェブ更新の方法などありとあらゆるものをマニュアル化しています。このマニュアルがあるからこそ、従業員がどこにいても大丈夫という安心感が生まれました」

実際にテレワークを行った社員からは、「必須ではないけれど、できたら嬉しいことって実はけっこうあるんです。そういった小さな幸せが叶った」という喜びの声があがったそう。

「天気のいい平日に布団を干す、昼休みに子どもと触れ合う、朝ごはんをいつもよりゆっくり食べられる。無意識のうちに諦めていた個人のささやかな『WILL』をテレワークが叶えてくれました。こうした柔軟な働き方は、パパ・ママである社員が仕事と家庭を両立するうえで大きな支えになるのではないでしょうか」

 

「有給休暇でやりたいことリスト」で有給消化100%。売り上げも結婚率もUPした会社

左から、株式会社エムワン 代表取締役の村井俊之さん、at Will Work 代表理事の藤本あゆみさん

同じくテーマ部門「働きがい・モチベーション」で受賞したのは、有給消化を積極的に行うことで、売り上げだけではなく、結婚率までUPさせた株式会社エムワンの「ライフの充実が人生を変える」。

地域医療をプロデュースする薬剤師集団であるエムワンは、業界全体の問題となっている「薬局の人員不足」に頭を悩ませていた会社のひとつでもあり、人事部を担当する柴田左織さんは、この状況をどうにか打破したいと考えていたそうです。

こうした慢性的な人手足のなかで、有給消化率100%を目指すきっかけになったのは、「スタッフ2人の出産休暇」でした。

今回受賞に訪れた村井さんも、地域の医療を活性化するべく、薬剤師のフィールドを広げる活動などを積極的に行っているそうです

「薬局業界は多くの女性が活躍しており、エムワンでは9割が女性スタッフです。だからこそ、福利厚生ではなく、経営戦略として女性活躍を推進して、女性が出産後も安心して働き続けられる職場作りをしなければならないと感じていました」と言います。

出産、育児だけにとどまらず、ふだんから有給をきちんと取ってもらうには、人が足りなくても回るオペレーションにしなければならない。柴田さんがこの問題に頭を悩ませていたところ、会社がある三重県には「ワークライフバランス推進サポート事業」があることを知り、応募をしたそうです。

結果、見事に採用。そこで、エムワンが経営する9店舗の中から、育児休業中のスタッフがいる鎌田店で実際に事業を始めました。

ただでさえ忙しい日々で、事業についての会議へ時間を割くのは大変なことです。そのため、「会議室は使わずに立ったまま、A3用紙と付箋のみで短時間で行える会議を実施していた」と言います。そこから、事業を行うための具体的な問題点や課題が見えてきたそうです。

「まずは、薬剤師でなくてもできることをリストアップし、個人がどの程度仕事をこなせるかを4段階で記入します。それぞれ仕事が未熟な部分を、全員が達成できるまで社員同士で教え合いました」

これがクリアされることで、仕事の効率は格段に上がったそうです。

「これまでは忙しくて後回しにしていたことも、現状を可視化することではっきりとして、仕事をやり残すことがなくなりました。1週間かかっていた仕事が、なんと1日で解決するという事例まで起きたんです」

さらに、意識改善のために、「有給を取ったら何がしたいか?」というそれぞれのやってみたいことを書き出した「やりたいこと10リスト」も作成。すると、職場内は「こんなささいなことでも有給を取っていんだ」という雰囲気へ変わり、同僚の知らない一面や自分にはなかった発想に触れることで、おのずとコミュニケーションも深まったそうです。

このほか、スタッフの有給がどれだけ残っているかを一覧にした「有給消化シート」を張り出すことで、「有給を取りなよ」という声がけが行われ、「お互いに有給消化を推奨し始める動きも見られた」と言います。

しかし、一方では、「私でなくても仕事が回るなら、自分の存在意義はどこにあるのか」と不安を覚えるスタッフもあらわれたそうです。

「『自分がいなくても仕事が回る』ことをネガティブに考えるのではなく、現在の仕事が誰でもできるようになれば、空いた時間でさらなるステップアップができるんだということを伝えました」

こうしたなか、事業は一進一退を繰り返しながら、少しずつ状況を改善。取り組みがうまく回り始めると、空いた時間を利用して資格取得する人、自分のスキルアップのために海外ボランティアへ行く人など、さまざまな時間の使い方が生まれたそうです。

そして、事業を開始してから1年半。ついに有給消化100%を達成し、そこには予想外の嬉しい出来事が起こりました。

「事業を実施した鎌田店では、スタッフ数も労働時間も減ったのに、売り上げと生産性が大幅に上がったんです。さらに、スタッフの結婚、出産もUPしました。有給はどうしても休まないといけない時に使うのではなく、気軽に取れるようなものになれば、プライベートが充実しますし、仕事も楽しくなります。この結果、スタッフ一人ひとりが仕事だけの人生よりも、もっと幸せな人生を手に入れるようになりました」

 

記念すべき第一回目は、18部門のストーリーを選出!

「5年間で100のストーリーを見つける」というビジョンを掲げた「Work Story Award」は、その名の通り、今年を含めた5年間だけの期間限定のアワードプログラムです。記念すべき第一回目である今回は、「テーマ部門」「グループ審査」「個人賞」において18の部門で15のストーリー へ賞が贈られました。

テーマ部門

テーマ:可視化・データ化から判断する

「組織のハピネス度向上のための働き方アドバイスアプリの開発と600人試行」
株式会社日立製作所

テーマ:イノベーション

「イラスト制作の分業制を確立し、テレワークや在宅勤務など、クリエイターに新しい働き方を提案」
株式会社MUGEN UP

テーマ:テクノロジー&AI

「テクノロジーで個人のWILLを叶える!全社員/終日/一斉テレワークプロジェクト」
株式会社スタディスト

テーマ:人材育成

「飛び立て僕らは愛ある跳躍台!-アイアールの若手・未経験技術者育成の取り組み-」
アイアール株式会社

テーマ:チームワーク・コラボレーション

「大塚倉庫のコミュニケーション改革」
大塚倉庫株式会社

テーマ:WILL

「人ではなく、会社が電車で通勤する時代へ」
株式会社新閃力(Trist)

テーマ:働きがい・モチベーション

「ライフの充実が人生を変える」
株式会社エムワン

テーマ:採用・人財獲得

「外国籍人財との働き方開国(改革)」
森興産株式会社

テーマ:健康 該当なし

テーマ:人事評価と仕組み 該当なし

グループ審査

ロックなWork Story賞(Tokyo Work Design Week提供)

「世界一集中できる場所Think Lab」
株式会社ジンズ JINS MEME Gr

日本を代表する人事マネージャー10名が選ぶWork Story賞

「入社への覚悟と多様性を受け入れる土壌を高める『ライフプレゼンテーション』」
株式会社CRAZY

20代の大学生が選ぶWork Story賞(OfferBox提供)

「口コミで受講者が増えていく『社内コーチング制度』」
Sansan株式会社

きょうそう〈共創・競争〉力のあるWork Story賞(PHP総研 提供)

「大塚倉庫のコミュニケーション改革」
大塚倉庫株式会社

次代の働き方を創るWork Story賞(パーソルキャリア 提供)

「人ではなく、会社が電車で通勤する時代へ」
株式会社新閃力(Trist)

個人賞

これぞ本質だ賞(株式会社people first代表取締役/株式会社ICMG取締役 八木洋介氏)

「創造的関係性をつくりだす『グラフィックカタリスト』たちはいかにして集まり、社内外へ展開するに至ったか」
グラフィックカタリスト・ビオトープ

日本社会を救うで賞(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役 小室淑恵氏)

「飛び立て僕らは愛ある跳躍台!-アイアールの若手・未経験技術者育成の取り組み-」
アイアール株式会社

未来のウェルビーイング賞(NHK出版 放送・学芸図書編集部編集長 松島倫明氏)

「組織のハピネス向上のための働き方アドバイスアプリの開発と600人試行」
株式会社日立製作所

元気がすべての基本で賞(シンクタンク・ソフィアバンク代表 藤沢久美氏)

「組織活性化!スマイル健康プロジェクト」
株式会社ディー・エヌ・エー

ママのやりがい探求賞(東京大学 大学総合教育研究センター准教授 中原淳氏)

「ママのモチベーションは子供だけじゃない!『私の得意が貴方の笑顔に』」
株式会社ルカコ

 

自分の働き方を探すヒントは、結果よりも過程にある

「柔軟な働き方」が実現すればするほど、そこには多様な働き方が生まれます。そして、仕事も家庭も人それぞれ。「私も仕事と家庭が両立する働き方がしたい!」と考えた時に、「そもそも自分にとって理想の働き方って何だろう?」という疑問にもぶつかることもあるのではないでしょうか。

「働き方改革」の波に乗って、すでに「理想の働き方」にぐっと近づいている人たち。彼らが成功した結果だけではなく、そこにいたった過程や行動力に注目することで、自分自身が望む働き方を見つけるヒントが見つかるかもしれません。