• このエントリーをはてなブックマークに追加
目次

私がPR会社の社員とフリーランスの複業生活をスタートして、気づけば半年が経過しました。そしてこのタイミングで、実は複業に対しての私の考え方も大きく変わろうとしています。そのきっかけは、「複業」を選択したからこその壁にぶち当たったことでした。今日は私自身の教訓も踏まえて、「複業」を楽しむ3つのポイントをまとめてみました。

複業半年、キャパオーバーという難局

複業をスタートしてからの半年間、会社員としてもフリーランスとしても広報PRの仕事にのめり込み、まだまだPR歴としては経験が浅いのですが、お仕事の中で「嬉しい結果」をクライアントと積み重ねていく中で、私自身も少しずつ自分の貢献領域が見えてきました。


そしてもう一つ、嬉しい変化として、私のPR活動を口コミやSNSで知った方から、お仕事の問い合わせや依頼が少しずつ確実に増えてきたこともあります。本当にありがたいことで、この半年間、走り続けて良かったと噛み締めています。


一方で、複業半年が経ったこのタイミングで、懸念材料も浮上していました。既存のクライアントが、嬉しいことに皆それぞれの形で事業が成長し、PR活動が明らかに忙しくなっていたんです。それはつまり、私の中で3つの時系列が急回転で回っていることを意味していました。


  • ・フリーランスの新しい案件の調整をする
  • ・フリーランスの既存クライアントの活動量増加に対応する
  • ・PR会社社員として既存クライアントを継続して担当する

「複業」をスタートして半年。気付けば明らかにキャパオーバーの状態になり、上記の3つの時系列の仕事量を総合的に管理する難しさに直面してしまいました。もちろん、「複業」を選択したからこそ、仕事の幅が広がり、新たな挑戦を続けられてきたのですが、そんなプラスの側面だけじゃない、「複業の難局」に直面したわけです。


そして、今の状況がこれ以上続くと、既存のクライアントにしわ寄せがいくだけでなく、家族との向き合い方にも変化が起きてしまうことに危機感を募らせ、このタイミングで思い切って働き方を大きく変えることにしました。私がどんな難局に直面し、複業を続ける上で、どのようなポイントを抑えておく必要があるのか。自戒も込めて、皆さんに3つのポイントをお伝えしたいと思います。

複業のポイント1:相談可能な上司が会社内にいる

私が一番最初に、この「複業キャパオーバー」について相談したのは、今のPR会社の社長でした。社員が10人ちょっとの会社なので、社長は私の直属の上司として、毎月1対1でレビューをする時間があるのですが、毎回必ず社長から聞かれるのが「家族との時間はしっかり取れているか」「フリーの仕事はうまく回っているか」など、本業以外のことまで気にかけてくれる上司なのです。


そういう普段の空気があってこそだと思うのですが、今の「複業キャパオーバー」について上司に正直に伝えると同時に、これからの働き方の希望として、自分の貢献領域を更に絞って仕事をしていきたい、というような希望も伝えさせてもらったんです。


そうしたら何と、その翌週のレビューで社長から課題解決案が提示されて、「体制を変更します」と言われて、そのスピード感に驚きました(笑)。ここで思ったんです。今の会社の環境だったり、今の社長のような上司がいるからこそ、私は「複業」を実現できているのだと。


そして、これは私だけのことに限らず、「複業」を充実したものにするためには、自分の上司に相談出来る環境はマストだと思います。フリーランスの仕事も「副業」ではなく、「複業」として同じパワーで向き合う以上、会社員としての仕事も柔軟に変えていける環境がないと、なかなか難しいと感じます。

複業のポイント2:総稼働率「60%」で余白を作る

私がなぜ、複業キャパオーバーの事態になったのかを冷静に考えると、詰まる所、ギリギリ限界線のところまで仕事を受けていたからなんです。つまり、稼働率常時100%の状態で仕事をしていたのですが、複業の落とし穴として、会社員とフリーランスの仕事の総量が見えづらく、その仕事量のコントロールをするのも非常に難しい点があります。その状態の中で、例えばクライアントがいきなり忙しくなったり、何か突発の案件が舞い込んできた時には、すぐにキャパオーバーを起こしてしまう、まさに綱渡り状態だったのです。


これを教訓にして、今月からは働き方のシフトを始めました。具体的には、スケジュールが何も入っていない「余白」を意図的に増やしていくために仕事総量を減らすアクションをすることにしました。


まず最初に、フリーランスの仕事のスタッフを新たに1人採用し、自分にしか出来ない領域をよりシビアに見極めると同時に、自分以外の人が力を発揮できる領域は手放すことに。さらに、会社員としてのPRの仕事も、社長に相談させてもらったことで体制に変化があり、より自分の強み、貢献出来る領域に短時間で集中出来る環境になりました。


こうして、少しずつ稼働率100%の状況を脱し、日常に「余白」が生まれてくると、様々プラスの面があると感じています。例えば、余白を新しいメディア研究をするためのインプットの時間に充てたり、映画鑑賞や読書の時間に使って、感性やクリエイティビティを刺激したり、またある時は、クライアントへの提案に向けて、集中して考える時間に使ったり。


これが、稼働率100%の仕事パツパツの状態だと、「最低限やるべきことをこなす」というイケてない状態に陥りかけていたわけです。そんな危機的状況を回避する私なりの答えが「稼働率を下げて余白を作る」ことでした。目指せ稼働率60%。週3日くらいの体制が複業にはちょうどいいのかもしれないと思っています。

複業のポイント3:「唯一のスキル」以外は複業にしない

3つ目は、特に複業をこれからやりたいと思っている人に向けてお伝えしたいことなのですが、クライアントに対して「何でもやります」「何でも出来ます」という姿勢を示すことは、なるべく避けることをお勧めします。

というのも、「何でもやってくれる」というクライアントの期待値は、複業においては自分を苦しめ、誠実さに欠ける仕事の引き受け方になってしまうリスクがあるからです。


これこそ私の経験に基づく教訓でもあるのですが、「複業」というスタイルを選択している時点で、複数のクライアント業務を1日24時間並行して進めていく状況が自ずと生まれてきます。その中で、例えばクライアントに対して「PRのことは何でもやります」とコミットしてしまうと、どのような結果が待っているのか。


これは、前項目の「余白を作る」から繋がってくることでもあるのですが、PR業務を何でもやる=いつでもどんな時でも全力でクライアントに向き合う姿勢を相手は期待しますが、現実的には、そのような状態を複業で作ることは非常に難しく、クライアントからの期待値に答えられない状況に陥りがちです。

事実、私も複業のスタート時は、「PR活動全般を実行まで引き受けます」とクライアントにお伝えしていました。でも、クライアントの期待値と私が限られた時間で出来ることに、少しずつギャップが生まれてきた中で、「これではクライアントに対して真摯な複業ライフが送れない」と焦った私は、改めて自分のスキルについて見直すことになりました。

つまり、PR活動における私の唯一のスキル、強みである領域を言語化してクライアントに伝えることで、その貢献領域については、自信を持って結果をコミットメント出来るようになったからです。


「何でも屋」にならず、自分はどの部分で力になれて、どの部分は力になれないのか。その線引きをよりシビアに行い、私以外の他人に任せられることは、クライアントに対しても、出来ないことまで共有する。こうして、クライアントと期待値をすり合わせていく過程は、複業において非常に大切なポイントになると感じています。


以上、3つの複業のポイントを自戒も込めて、まとめさせていただきました。「副業元年」とも言われている2018年ですが、副業推進ばかりが声高に叫ばれている流れに違和感を覚えている私がいます。その違和感が、今回の寄稿に繋がったのかもしれません。副業・複業は向き、不向きがあると感じますし、良い側面がたくさんある反面、大変な側面もたくさんあります。だからこそ、失敗談も包み隠さず私の経験をシェアすることで、副業・複業についてもっと現実味を持って考えてもらえるきっかけになったらと考えています。


井上千絵 プロフィール(PRプランナー)
大学卒業後、テレビ局に入社。報道記者を9年間、宣伝・広報を2年担当し、出産を機に退職。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)で2年間学ぶ。在学中にPRプランナーとして独立し、現在はPR会社「ベンチャー広報」の社員としての顔ももち、「複業フリーランス」というスタイルで活躍している。


井上千絵さんのtwitter @sakai_chie

井上千絵さんの記事一覧