地方で仕事を見つける難しさとその方法を経験者が語ります

夫の転勤で、札幌から他の地域に引っ越した筆者。希望の条件に合う仕事を見つけるまで、どのような紆余曲折があったのでしょう。

女性活躍が叫ばれ、働く女性が増える中、転妻(転勤族の夫を持つ妻)が夫の赴任先で、なかなか新しい仕事を見つけられないという問題があります。特に地方都市では、希望する職種や時間帯で働くことができないと、悩む転妻が多くいます。私自身も、夫の転勤で北海道に在住しています。2度引っ越しをして、地方で仕事を見つけることの難しさを、身をもって感じてきました。今回は、身の回りで感じた仕事を見つける難しさと、私がそれを解決した方法をご紹介します。

ライター

Click&Clack
30代子持ちの名ばかりフリーライター。小さなものから大きなものまで。趣味はエッセイと短歌。

移住希望者も増えているけれど、不安材料は「仕事がない」

転妻の多くは、引っ越しのたびに「夫の新しい赴任先で、仕事を見つけられないのではないか」という不安を抱えています。慣れない土地で知り合いもいない中、さらに今後も夫の転勤があり、長期間働くことができないことを考えると、仕事探しは難航します。

 

 

転妻だけでなく、最近は自ら望んで田舎暮らしをしたいと、Uターン、Iターンを選ぶ若年層も増えています。そうした自ら地方に行きたい移住希望者にとっても、「地方には仕事がないのでは?」ということが不安材料になっています。政府の調査でも、「移住する上での不安・懸念点」で、50%以上の人が「働き口が見つからない」と答えています。

 

 

(参照:「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」の結果概要について

「地方には仕事がない」は本当?

私はもともと札幌で働いていました。子どものころから本が好きで、独身時代は書店や図書館などで仕事をしており、できれば同じような仕事を続けたいと思っていました。

 

求人誌で求人の少なさを実感

結婚後すぐ、転勤族の夫の赴任に同行し、とある道内の港町に引っ越しました。そもそも書店や図書館が近隣にない街で、札幌にいたときと同様の仕事をしたいという希望は早々にあきらめざるを得ませんでした。

 

引っ越しを終えてすぐ、求人誌を手に取って驚きました。求人誌がペラペラなのです。札幌の求人誌は、週に2回、雑誌ほどの厚みで販売されますが、この地方都市ではパンフレットほどの薄さ。さらに、自宅の近隣で通える範囲となると、応募できる求人数はかなり絞られてしまいました。妊娠が発覚したこともあり、このときは一旦仕事探しをあきらめました。

 

地方によって募集職種に偏りがある

はじめに住んだ町は、工場が多い街だったため、工場内で働く作業員や、それに付帯する事務、清掃、調理などの仕事が多いと感じました。工場は24時間稼働しているので、不規則勤務の募集が多く、結婚してすぐの夫と過ごす時間を大切にしたいと思っていた私の仕事探しは難航しました。

 

次の赴任先は、現在も住んでいる、外国人観光客が多く訪れる人気の観光地。接客業の募集が多く、こちらも土日勤務が可能、シフト勤務が可能な方、という募集が多いと感じました。このときはすでに子どもが生まれていたので、日祝日は保育園が休みで預けられないこと、周囲に身寄りがいないため頼れる人がいないことを考えると、自分にできる仕事はないのでは……と頭を抱えました。

 

再就職セミナーへの参加が転機になり、テレワークやフリーランスという働き方に出会う

こうした状況の中、友達もおらず自宅で赤子と二人で過ごすだけの生活に閉塞感を抱いていた私は、「どうにかして働く方法はないか」と模索していました。その中で、再就職希望者のためのセミナーに参加しました。すると後日、研修の主催者から「よい求人があるのだけど、働いてみないか」と誘われたのです。

 

二つ返事でOKし、小さな会社で、事務として働き始めました。この会社はテレワークを取り入れていて、今までに見たことがない新しい働き方にわくわくしました。「在宅ワーク」や「オンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)」という言葉もここで出会いました。

 

ここでは2年ほど働きましたが、子どもや親が病気をしたことや、保育園に落ちたことが重なり(それまでは一時保育を利用していました)、働き方を考え直したいと思うようになりました。もともと文章を書くのが得意で、会社でライティングの指導をしていたこともあり「自分一人でも仕事ができるのではないか」と、思い切って仕事を辞め、開業届を出して自宅で仕事を始めました。

 

現在はライターとして独立し、複数のクライアントから仕事を受けています。昨年からは、保育園に入園することもできました。

 

長く住む土地なら、地域の人と関わりができる働き方がおすすめ

私は今後、また別の地域に行く可能性があります。以前は、夫がキャリアアップ、昇進していく中で、自分が好きな仕事が続けられないのを苦痛に思っていましたが、自分のキャリアも維持でき、子どもや夫の体調や休みに合わせて働ける、この働き方はいまのベストだと感じています。ただ、今後また大きな都市に転勤した際には、本に携わる仕事をしたいという夢は忘れていません。

 

転妻の方には、在宅での仕事やオンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)のような働き方は本当に便利です。しかし地方でずっとくらしたいという移住者の場合は、思い切って外で就職する方がよいのではないかと私は考えます。地方で長く暮らしていくには、どうしても地域に住む人々との関わりが大切だからです。

 

私自身、親が転勤族のため、政令指定都市から周りに家がないような田舎まで、さまざまな場所で暮らしてきました。母は専業主婦でしたが、ボランティア活動や習い事、子どもの学校行事などに積極的に参加し、父が転勤するたびにその土地でたくさんの友人を作りました。

 

思い出深いエピソードがあります。小学生のとき、ある町で大地震にあいました。公務員の父は仕事場に駆け付けねばならず、私と妹、そして母が、停電しがれきの散乱する家に残されました。呆然としていると、近所に住む母の友人がかけつけてくれ、「避難するよ!」と私たちを車に乗せ避難場所まで運んでくれました。避難先では、父のいない私たちを気遣い、たくさんの人が声をかけ食料も分けてくれました。このとき、私は近隣の人とのつながりの大切さを感じました。たくさんの友人や知人を作ることは、見知らぬ土地で幼い子を抱えて、働くこともできなかった当時の母の生き抜く知恵だったのだと感じます。

 

どこに行っても自分に合った働き方の選択肢を

転妻は専業主婦、という考え方は変わりつつあります。人手不足のなか、地方でも今後求人が増えてくることが期待されます。しかし、自分や家族のライフスタイル、人生設計に合った仕事を探すのは、いまだ難しいものです。私の場合も、さまざまな偶然が重なり今に至っていますが、この先どうなるのかはわかりません。

 

東京一極集中や、地方での人口減少は、社会問題化しています。どんな場所に住んでいても、自分に合った働き方を選ぶ社会ができることを、強く望みます。

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