2017年11月30日 更新

外資系コンサル流、自分でできる働き方改革と周囲の巻き込み方

職場の人間関係を保ちつつ効率化をするには?「『残業だらけ職場』の劇的改善術」の清水久三子さんに聞きました

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会社の制度が整ったり、周囲の理解が高まるのを待つのではなく、自分から働きやすい環境を作っていくためのヒントをお届けする「私ができる働き方改革」シリーズ。今回ご登場いただくのは、外資系コンサルティング会社でさまざまなプロジェクトを率いたのち、現在は独立して執筆、講演を中心に活躍されている清水久三子さんです。数ある著書の中でも2017年9月に出版された「『残業だらけ職場』の劇的改善術」をもとにお話をおうかがいしました。

清水久三子(株式会社AND CREATE代表取締役/人...

清水久三子(株式会社AND CREATE代表取締役/人材育成コンサルタント)

大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの新規事業戦略立案・展開プロジェクトをリード。大規模・長期間の変革を得意とし、高い評価を得た。
「人が変わらなければ変革は成し遂げられない」との思いから、専門領域を徐々に人材育成分野に移し、人事・人材育成の戦略策定・制度設計・導入支援などのプロジェクトをリード。
2005年に当時の社長から「強いプロフェッショナルを育ててほしい」と命を受け、コンサルティングサービス&SI事業の人材開発部門リーダーとして5000人のコンサルタント・SEを対象とした人材ビジョン策定、育成プログラム企画・開発・展開を担い、ベストプラクティスとして多くのメディアにも取り上げられ、プロを育てるプロとして知られている。
講師としては、大前研一ビジネス・ブレークスルー、ベネッセ著者大学、世界最大動画教育プラットフォームUdemyなどで看板コースを多数持つ他、大手銀行系の研修提供会社3社で講師をつとめ、高い集客と満足度を得ている。
http://andcreate-official.com/

まずは個人の仕事から見直す。効率化のために覚えておきたい「4つのC」とは

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- 「働き方改革」が盛り上がっている一方で、自分の会社ではまだ浸透していない……と感じる人も多いようです。そんな時にすぐできることとして、まずは個人の生産性を高めることが大切かと思います。著書「『残業だらけ職場』の劇的改善術」では、「1日6時間で働く」「目的を捉えなおして引き算をする」「4つCで見直す」など、さまざまな方法が書かれていますよね。

はい。日本では「8時間労働」が定着していますが、これを見直していくべきだと思います。北欧では、政府主導で試験的に6時間勤務を導入した結果、以前よりも成果が上がったというデータもあるんです。とはいえ、いきなり「私は6時間勤務で働きます」というのは無理ですから、まずは残業をなくすこと、1日8時間で仕事を終えられるようにしていきましょう。これが実行できるようになったら、さらに6時間で終えられるようにする。残りの2時間は自己研鑽や、現在の仕事の質をより上げるための時間に当てれば良いのです。

- そこで必要なのが、時間短縮のための効率化ですよね。具体的な方法として、「目的を捉えなおして引き算をする」「4つのCで見直す」とあります。

まず、受けた仕事をそのままやるのではなく、「なぜこの仕事が必要なのか」を一度考えてみましょう。特に前任者から仕事を引き継いだ時は、目的を捉え直すチャンスですよ。よくよく見ると、それが無くしても問題のない作業だったり、もっと効率化できる内容だったりするんです。与えられた仕事へ対して、「なぜ?」を繰り返していくことで、取れる選択肢が広がり、そこから今よりも簡単な解決策が見つかります。ここで大切になってくるのが、「やるべきこと」と「やらなくていいこと」を見極めることですね。

- そこで有効なのが、「4つのCで見直す」方法なんですよね。

これは、コンサルタントが業務改善に使う基本的なフレームワークなんです。まずは、業務の目的を明らかにして必要のない仕事をやめる「Cut」、さらに、仕事の内容では得意不得意がありますから、それぞれを最適な人へ移管する「Convert」、あとは、分散していた仕事をまとめて片づけてしまう「Combine」、最後は仕事の内容をまったく別の観点から考えて、取り組むべきものを絞り込む「Create」という作業の4つです。

- より効率のよい方法が見つかると仕事も円滑になり、時間も短縮されますよね。しかし、会社によっては、仕事を終わらせるとさらに新しい仕事が降ってくる場合もあると思うのですが……。

そこで重要なのが、「SLA(サービス・レベル・アグリーメント)の明確化」です。SLAとは、サービスを提供する側とその利用者の間で結ばれるサービスのレベルに関する合意書のこと。相手の要望のままに仕事を受けてしまっては、仕事は減らないばかりかミスが発生するリスクもあります。これを防ぐためには、個人でも「ここまでのことを、このレベルでやります」というSLA、つまり線引きが必要になってくるんです。生産性の向上を考えた時に間違えやすいのは、「与えられた仕事をいかに早く終わらせるか」だけに集中してしまうこと。これでは、新しい仕事がどんどん増えてオーバーワークになってしまい、結果、いつまでたっても仕事は減らないという状況に陥ります。

- それでもなかなか「できません」というのは言いにくいですよね。

新しい仕事が発生したときに、全員が「できません」と言っていては、仕事は回りませんよね。そこで、「これはできませんが、これならできます」というように、セットで伝えるのがポイントです。これを「私の取説」と呼んでいますが、女性は特にライフステージによってプライベートに変化が起こります。こうした自分の状況を周囲へ伝えておくこと。さらに、できないことは先に伝えてしまうことです。「こうした理由でこの仕事はできませんが、これならできます」と言えば、周囲への納得感が違います。

 

個人では限界のある業務改善。周囲を巻き込む方法は?

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- 業務改善をさらに勧めるには、個人では限界のある部分も出てくると思います。周囲を巻き込んでいくためには、どうしたらいいのでしょうか。

年初や期の初めなどで、「仕事のやり方を変えます」と宣言してしまうのもひとつの手段ですね。現在は「働き方改革」の流れもあって、全面的に否定されることはないのではないでしょうか。ただし、「私は早く帰りたいので仕事を頑張ります」という漠然とした言い方ではなく、そのためには仕事の効率や質をどうやって上げるのかという具体的な目標を入れることが大切です。また、いくら個人で仕事を効率よく終わらせても、周囲が忙しく働いていれば、先に帰ることはためらわれますよね。ですから、個人的目標だけでなく「チーム全体の向上を目指すこと」に言及しておくのもひとつの手段です。まずは、自分の考えをオープンにしていくこと。同じ意見を持っていても、上司の顔色や雰囲気をうかがっていて言いづらい……という人もいると思いますから、少しずつ賛同者を増やしていくことが大切なのではないでしょうか。

- 個人主義である海外と比べて、日本はチームプレイを重視する傾向が強いですよね。チーム全体の仕事の効率化につながる具体的策を教えてください。

「IPOと松竹梅プランを提示する」という方法があります。これは、仕事を受けた時に、最初に気を付けるべきことなのですが、IPOのIはInput、つまり何を使ってその仕事をするのか、必要な情報を得ること、PはProcess、どのような手順で、どんな工数でその仕事をやるのか、締切りや完成前のチェックポイントなども含まれます。Oは、Output、その仕事において、どんな成果を出せばいいのかということです。受けた仕事をそのままこなすのではなく、一度この3つに沿って作業プランを提案し、さらに、松竹梅の3つで品質とコスト、納期などを分けて提案をするんです。

- 例えば、上司から仕事を受けた時に、IPOに沿ったプランを出して、「急いでいるなら、『松』の一番時間が短く達成できるもの。ただし、ここまでしかできません。ある程度時間があるなら、『竹』、もっと猶予があるなら『梅』で作業ができますよ」という感じで可視化しておくということですか。

上司がたくさんの仕事を振る時には、部下の現在の仕事量を把握していない可能性があるんです。このIPOと松竹梅プランを事前に提示すれば、上司も部下の仕事量を把握できますし、正しい判断をしやすくなります。また、IPOには、仕事の企画書などの書類や資料のやり直しを防ぐメリットもあるんです。作業を始めてから、「これ言ってなかった?」「もっと早くできない?」と言われたことがある人もいると思いますが、IPOであらかじめ段取りを提示しておけば、こうした意識のすれ違いが解消され、結果、上司の時間も自分の時間も奪わなくて済むようになります。

 

周囲の意識改革は、「ステークホルダーマネジメント」による味方づくりから

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- 個人から発信できるさまざまな方法を教えていただきましたが、中には、角が立たないか心配だという人もいると思います。円滑に変化を起こすためにはどうすれば良いでしょうか。

自分がいきなり旗振り役になるのはプレッシャーですよね。一番いいのは、「みんな悩んでいるよね」ということで一体感を持つこと。そのためには、みんなで勉強会を始めたり、外部のセミナーや研修へ参加したりと、情報を共有していくのが有効です。すぐに変化は訪れないかもしれませんが、「このやり方はよくないのではないか」という意識は確実に浸透していきます。残業が美徳とされてしまう会社は、長年の社風から新しい考え方になかなか乗りづらい傾向があります。こうした意識改革には、社内の人間が声を上げることが重要なんです。今時、「ずっと会社にいたい」なんていう人はごくわずかですから、急がずに少しずつ共有感を広げていきましょう。

- こうした共有感を持つためにも、やはりコミュニケーションが必要になってくると思うのですが、付き合う上司や先輩、同僚、それぞれ性格も違えば、置かれた環境も異なりますし、そもそも対人関係が苦手という人もいます。上手にコミュニケーションを取るためのポイントなどはありますか。

何かを実行する時に、反対してきそうな人、味方になってくれそうな人など、利害関係者を把握してコミュニケーションの仕方をコントロールすることを「ステークホルダーマネジメント」と言います。

コミュニケーションは「相手が何を望んでいるのか」を知ることから始まります。まずは、上司や先輩、同僚、一人ひとりが何に興味や関心を持っているのかを考えてみましょう。相手が何を大切にしているかを考え、それを認めたうえで一緒に考えていくことが大切です。自分と考え方が違うから否定するのではなく、どうすればいいのかを考えていくことは、ダイバーシティにもつながりますね。

- 円滑なコミュニケーションを築いていくなかで、一番難しいのが上司との関係だと思います。例えば、自分が主張したいことが上司の意見と対立してしまう場合などは、どうすればいいのでしょうか。

否定から入ると、完全な対立構造が生まれてしまうので、一度は同調することが大切です。例えば、長時間労働は良くないと分かっていても、仕事の生産性は下げたくないと考えている上司がいるとします。これに対して、真っ向から「長時間労働は良くありません!」と否定するのではなく、「そうですよね。でも、このまま長時間労働を強いてしまうと、社員の体調も悪くなりますし、結果敵に生産性は落ちてしまうのではないでしょうか……」という問題提起をします。「ステークホルダーマネジメント」という言葉には馴染みがないかもしれませんが、要は根回し。無意識にやっている人も多いと思います。

それと、注意したいことは「大広間で話すこと」と「個室で話すこと」をしっかり分けることですね。他の人たちが聞いている場所で上司へ否定的な意見を出せば、上司も後に引けなくなります。こうした場合は、2人きりの場で話すほうがいいでしょう。さらに、自分の主張したい意見があたかも上司の出した案のように周囲へ広まれば、旗振り役のプレッシャーを避けることもできます。

- 人間性や考え方を把握するためには、やはり仕事外での付き合いも必要になるのでしょうか。

決しておおげさなことをする必要はありません。ランチを一緒に食べるのもいいですし、それが難しい相手なら、メールの最後の一文に自分の状況や近況を添えてみるのもいいと思います。業務内容を報告するだけのビジネスライクなやりとりでは、温度感が伝わりづらく、仕事上の建前の付き合いで終わってしまいます。仕事をお願いした相手なら、「先日はありがとうございました。おかげで助かりました」など、お礼や気遣いを示す文章を入れてみましょう。こういうコミュニケーションは、上司が率先して行うことで、部下もやりやすくなりますね。お互いの状況を開示し合える職場であれば、ギスギスした人間関係にもなりづらく、お互いのフォローもしやすいんです。

- ランチやメールならすぐにでも始められますね。著書では、自分が理解したい相手、もしくは理解して欲しい相手については、周囲から話を聞くことも有効だとありました。最後に、初対面の相手やあまり関わりのない相手でも、上手にコミュニケーションが取れるコツを教えてください。

相手にいきなり気持ちをさらけだしてもらうことは困難です。しかし、相手をよく知る人物から、どういう性格なのか、どんなものを好むのかなどを前もって聞いておくことで、初対面でも話しやすくなりますよね。これは、コンサルタントの技術のひとつなのですが、事前に得た情報を会話の中にそっと散りばめていくんです。すると相手は、「自分のことをよく分かってくれている」と安心して、一気に打ち解けてくれます。

 

すぐに始められることばかり。さっそく明日から実践してみよう!

コンサルタントの視点から、個人で改善できる仕事のやり方や、周囲を円滑に巻き込んでいく方法をたくさんおうかがいすることができました。特に、コミュニケーション方法については、仕事だけではなく、プライベートでも応用できるのではないでしょうか。今回お話しいただいたことは、すぐにでも始められることばかりです。さっそく明日から職場で実践してみましょう。

(参考:『外資系コンサル流・「残業だらけ職場」の劇的改善術』(清水久三子著 PHP研究所)

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