経団連が「LGBTへの取り組みの重要性」を提言。企業も対応が求められる時代に

企業のLGBTへの取り組みについて、調査結果が発表されました

日本経済団体連合会は企業のLGBTへの取り組みについての調査結果を発表しました。近年LGBTという言葉とともに、LGBTへの理解を示す動きが出てきています。今回、LGBTへの取り組みの重要性を経団連が提言したことから、行政だけでなく企業も対応が求められる時代になってきました。

ライター

あん☆な
子育て奮闘中のママではあるものの、何かチャレンジしてみたい、社会に役立てることがしたい意欲に駆られ在宅ワークを決意!育児の合間に執筆活動を行う専業主婦。1日1楽がモットー。

LGBTとは

LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとったもので、性的指向(SO)や性自認(GI)に関して社会的にマイノリティと位置づけられている人々のことを指します。

  • L=レズビアン(女性同性愛者)
  • G=ゲイ(男性同性愛)
  • B=バイセクシュアル(両性愛者)
  • T=トランスジェンダー(心と身体の性の不一致を感じている人々)

上記の他にも、身体的性、性的指向、性自認、性表現(服装、しぐさ、言葉遣いなど)の4つの性の組み合わせによって、多様なセクシュアリティをもつ人々が存在します。このように多様な人々に対して、それを受容する仕組みづくりが必要となってきています。

諸外国では同性婚を認めていたり、LGBTを理由とした差別禁止などの制度がすすんでいたりしています。日本でも、渋谷区が同性パートナーシップ条例を作るなど、徐々にLGBTに配慮した対応がなされるようになってきています。

(※2017年6月30日訂正 ご指摘により、説明内容を修正いたしました。修正前の記事ではLGBTに含まれるカテゴリーのひとつとして「インターセックス(身体的に男女の区別がつきにくい人)」と記載しておりましたが、インターセックス(性分化疾患)とは、一般的にこれが男性の体もしくは女性の体の構造であると理解されている状態とは一部異なる体の性の発達をした、様々な先天的状態を指す包括用語です(オランダ社会文化計画局報告書 「インターセックスの状態/性分化疾患と共に生きる」より)。あくまで体の状態を指し、多くの場合は自分を男性もしくは女性であると感じており、「男女の中間」「どちらでもない人」との誤解にはつらい思いをする人が多く,また性分化疾患を持つ人にも,そうでない人同様LGBT等性的マイノリティの人はいますが,当事者の大多数はLGBT等性的マイノリティに含まれるとは考えていないとのことです。認識不足により不正確な記載をしましたことを、お詫びいたします。)

企業の対応が求められるようになった背景

行政だけでなく、企業の対応が求められるようになった背景として、3つのことが挙げられます。

  1. 必要なもの・サービスをより効率的に提供できる“超スマート社会”の到来に伴い、多種多様な能力を有する人材が必要となったこと。
  2. 企業のグローバル化によって活用が進んでいる、さまざまな背景をもつ人材に対し、国際的にも人権問題への配慮をしていく動きが出てきたこと。
  3. 人生100年時代が到来し、年齢を問わない人材活用が必要となったこと。

これらを踏まえ、経団連は「経済の持続的成長を実現するには、多様な人材の能力を引き出し、経済社会全体の生産性を向上させていくことが不可欠」として、今回初めてLGBTへの取り組みの重要性を提言しました。

この考え方に関して、個人的には「企業の利益のため」という姿勢が前面に出ていて、基本的人権の尊重という意識が薄いように感じました。

『LGBTへの企業の取り組みに関するアンケート』から見る、企業の現状

では、LGBTに関する取り組みに対して企業は現状どのようにとらえているのでしょうか?

『LGBTへの企業の取り組みに関するアンケート』(※)の結果から、企業の考えや動きを見ていきましょう。

※調査期間:2017 年3月1日~31日回答数:233(調査対象:経団連会員企業 1,385 社 156 団体)

1、LGBTに関して、企業による取り組みは必要だと思うか

90%以上の企業がLGBTへの取り組みの必要性を認識していると言う結果になりました。LGBTへの関心度の高さがうかがえます。

2、1で「思う」を選んだ場合、LGBTに関する企業の取り組み目的について重要だと思うものをすべて選択

多様性に基づくイノベーション創出・生産性向上が特に重要との結果が出ています。また、法的リスクへの対策、人材獲得におけるアピールなどもほぼ半数以上の企業が重要だとしています。

3、LGBTに関して、何らかの取り組みを実施しているか

40%の以上の企業が既にLGBTに関して何らかの取り組みを実施していると言う結果となりました。しかし、30%以上の企業は未だ検討中で、取り組みの浸透にはまだ時間がかかりそうな印象です。

4、3で「既に実施」または「検討中」を選んだ場合、取り組みとして当てはまるものをすべて選択

90%の以上の企業が社内セミナー等を通じてLGBTへの理解を深めていることが結果より分かります。また、相談窓口の設置や、採用活動の際の配慮なども多くの企業が実践しているようです。

各企業の具体的な取り組み例

実際にLGBTへの取り組みを実施している企業の具体例を、いくつか紹介します。

アフラック

  • 社内規程の明記  性的指向・性同一性に基づく差別は行わない。
  • 社内セミナー等の開催
  • 社内相談窓口の設置
  • 採用活動におけるLGBTへの配慮  新卒採用面接官向けの面接ガイダンスの実施。
  • LGBTに配慮した商品・サービスの開発

イオン

  • 社内規程の明記  性的指向と性自認などを理由にした差別は一切行わない。
  • 社内セミナー等の開催
  • 社内相談窓口の設置
  • 職場環境の整備  誰でも使えるトイレの必要性をディベロッパー事業のグループ会社幹部への提案。
  • LGBTに関する社外イベントへの協力・社外評価

花王

  • 社内規程の明記  性的指向、性別の認識または表現を理由とした差別の禁止。
  • 社内セミナー等の開催  年一回のニュースレターの発信。店頭での接客に当たる美容販売員、その上長への啓発。
  • 職場環境の整備  本社、国内事業場の多目的トイレの表示を、性別によらず誰でも使いやすいように変更。
  • 採用活動における配慮

カルビー

  • 社内規程の明記  LGBTへの取り組みも「働き方改革」の一環として、2017年3月に社外へ向けてニュースリリース配信。
  • 人事制度の改定  結婚、慶弔休暇、慶弔見舞金の制度において、同性パートナーも対象とする。
  • 社内セミナー等の開催
  • 社内相談窓口の設置
  • 採用活動におけるLGBTへの配慮  新卒採用活動におけるエントリーシートから性別記入欄を廃止
  • アライ活動

カルビーオリジナルのALLYステッカーを作成し、希望者に配布。

※アライ(Ally)とは、LGBTの支援者のことを指します。

企業の取り組みが浸透することで、多様性を受容する社会へ

上記で挙げたように、LGBTへの取り組みは大企業を中心に進んでいます。各社の取り組み状況は、社会課題への対応力や社員の人権を尊重する意識の有無をはかるものさしになるので、就職や転職の際にも参考になりそうです。

また個人としても、多様な人と一緒に働いていくための基本的な知識やマナーが必要となってきますね。まだまだLGBTへの理解は始まったばかりです。

多くの企業が理解を示し、多様性を受け入れる社会になっていくことを願います。

(出典:一般社団法人 日本経済団体連合会「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」 

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