2018年2月14日 更新

旅をしながら暮らし、働くには?自分の理想と今の把握がポイントに

福井県南越前町で、移住や多拠点居住の希望者を支援する荒木幸子さんの考えるFLOW LIFEとは

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地方の過疎化と東京の一極集中が問題視され、政府も「地方創生」を推進するなどの政策を始めているなか、個人の間でも「場所にとらわれない自分らしい働き方」を目指す人たちが増えているようです。しかし、それまでの働き方やライフスタイルをがらりと変えようと思うと障壁も多く、なかなか踏み出せずにいるという人もいるのではないでしょうか。

そんな人たちのために、すでに多拠点居住で働く実践者を招いたイベント「Tokyo⇔Local Creative 5LIFE&5DAYS」が始まりました(主催:デジタルハリウッドSTUDIO/『TURNS』(第一プログレス))。初回のテーマは「旅しながら仕事をするクリエイターLIFE」。さまざまな土地を旅しながら仕事をするゲストたちによるディスカッションが行われました。前・後編でその様子をお伝えします。

震災からライフスタイルの見直しを決意

荒木幸子さん

荒木幸子さん

都内SIer企業にてコンサルティング部隊に5年間所属。東日本大震災の経験から、大きな社会の変動に脅かされずに生きる方法を模索するため、それまでの生活環境を一転させた。2013年から福井県南越前町地域おこし協力隊として活動し、2015年からは南越前町公式事業として「流動創生事業」の企画・運営に携わっている。
流動創生:http://ryudou-sousei.jp/

東京でSEとして働いていた荒木さんが、それまでのライフスタイルを大きく変えるきっかけとなったのは、東日本大震災だったそうです。

「私は、移住や地方暮らしに興味があったわけではありません。しかし、震災を経験したことで、東京の大きな企業や仕組みに依存している社会に危機感を覚えたんです。そこで、それまで暮らしていた東京を離れ、あらためて働き方や生活環境について考え直してみようと決意しました」

そこで、2013年に福井県南越前町へ移住すると、「地域おこし協力隊」という地域を活性化させるための活動を開始します。さらに、2015年には「流動創生事業」を始めました。

「流動創生事業では、『StopOver』という企画を行っています。これは、南越前町に無料で宿泊できる代わりに、現地で農作業などのお手伝いをするというもの。『一宿一飯の恩義』で地域と関わってもらおうと企画しました」

その他にも、「多拠点居住・旅暮らし」を希望する人たちへ、宿泊施設や仕事などの相談にのったり、他県の複数の地域を連続で訪問し、現地でお手伝いをしながら地域の暮らしや生業に触れる『RoundTrip』というツアーも開催しているそうです。完全な移住ではなく、「多拠点居住」にフォーカスしたのは、「地域間に起こる移住者の奪い合いを防ぐため」とのこと。

「日本全体の人口は減少傾向にありますから、どこかの地域で人口が増えれば、どこかの地域では人口が減っているわけです。こうした『パイの取り合い』を避け、各地域がよりよい形で落ち着くためには、完全移住ではなく、さまざまな地域を絶えず動き回る多拠点居住者をいかに支援するかが重要なのではないかと考えました。私が活動している『流動創生事業』では、こうした地域間、ひいては社会全体の血流がよくなるようにという理念をかかげてさまざまな活動を行っています」

 

「FLOW LIFE」を始めるために必要なこと

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多拠点居住を含め、さまざまな地域を旅しながら暮らすライフスタイルを「FLOW LIFE」と呼ぶ荒木さんですが、こうしたライフスタイルを目指すためには、「まず自分のスタート地点とゴール地点をしっかり把握することが大切」と言います。

「参加者の皆さんは、『旅をしながら働く』ことに興味を持っていると思いますが、実はこの『旅』という言葉はすごく漠然としたものなんです。ただ『旅がしたい』ではなく、『そもそも旅に何を望んでいるのか』を明確にしないと、目指すものに対してズレが生じてしまいます」

そこでまずやっておきたいのが、自分のなりたい理想の姿と現在の姿を客観的に把握することだそうです。

「旅には、移動する身体感覚の楽しさを得ることや、見知らぬものに出会いたいという知的好奇心を満足させること、地域(地方)を助けたいという自己実現を叶えることなど、さまざまな理由があるはずです。自分がこれらのどれに当てはまるのか、また、実現するためにはどんなスキルが必要なのかを考えてみましょう」

 

買う? それとも作る? ライフスタイルはお弁当である

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現在の日本の社会では、会社に雇用されて働くスタイルがスタンダードですが、旅をしながら働くとなると、このスタンダードから脱却しなければならない可能性が高くなります。こうしたライフスタイルと雇用方法のバランスについて、荒木さんは「お弁当のようだ」と言います。

「日本で一番メジャーなお弁当は幕の内弁当です。白いご飯に梅干しやゴマ、おかずは鮭、揚げ物、煮物などバラエティ豊かで、オールマイティーな存在。これを正社員として雇用される人のライフスタイルにあてはめて考えることができるんです。白いご飯は賃貸住まいという居住スタイル、鮭は月給、揚げ物はボーナス、煮物などは趣味や習い事。こう考えると、幕の内弁当は長く愛されるだけあって、欲しいものがしっかり詰まった優秀なパッケージです。しかし、誰しもが納得するものだからこそ、小さな部分では融通が効かないという弱点もあります。『ご飯ではなくパンが食べたい』『煮物はいらないから鮭を2つにしたい』など、細かい希望は通りません。これをどうにかしたいと考えるなら、弁当を買う(雇われる)のではなく、手作りするという方法が出てきます。この手作り弁当が、『自分の理想を詰め込んだ働き方』になるわけです」

しかし、手作り弁当には、手間やコスト、労力がかかるというデメリットが発生します。荒木さんいわく、「こうした手間ひまをかけることを苦痛だと思うなら、幕の内弁当、つまりスタンダードな働き方をしたほうがいい」とのこと。

「手作り弁当は自分の好きなものを詰め込めますが、食べ合わせや彩り、栄養面だって考えなければなりません。また、せっかく作っても、お弁当箱に入らないという予想外の出来事だって起こり得るんです。手作り弁当を作るために必要な『工夫』を楽しめない人には、あまりおすすめできない働き方でもあります。しかし、ひと昔前と比べれば、Wi-Fiやスカイプなどのチャットツールの環境も整っているし、副業を容認する会社も増えてきています。それぞれのいいところを活用しながら、自分の理想の働き方へ向けて、課題解決をしていくことが大切なのではないでしょうか」

 

自分らしい流動LIFE実現の課題と解決のヒントを、実践者の経験に学ぶ

一カ所にとらわれずさまざまな場所を旅しながら働くことは、誰しも一度は夢を見る憧れの働き方でもあります。しかし、それを実現するためには、必要なスキルや具体的なゴールへのイメージ、現状の把握など、解決しなければならないポイントもたくさんあるようです。

こうしたさまざまな課題を解決し、実際に旅をしながら働いている人たちは、どんな過程を乗り越えてきたのでしょうか。後編では、実践者2人をゲストに招いたトークディスカッションを紹介します。

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