2017年7月20日 更新

ライフもキャリアも「二兎を追って、二兎を得る」西村創一朗さんインタビュー

互いに応援し合える夫婦関係を築くためのアドバイスも

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仕事も家庭も。本業も副業も。どちらもあきらめない社会が当たり前になるように――。

「二兎を追って、二兎を得られる世の中を創る」をビジョンに掲げ、採用支援や人事コンサルティング、副業・複業支援などを手がける株式会社「HARES(ヘアーズ)」代表の西村創一朗さん(29)。昨年、3人目のお子さんが誕生した後、育児休暇を取得する代わりに、会社を辞めて独立。自身の選択を「育休的起業」と名づけ、「二兎を追って二兎を得る」スタイルを体現している最中です。「働き方改革」の専門家である西村さんに、夫婦、家族それぞれがハッピーになる生き方とはどのようなものなのか、お話をお伺いしました。

 

西村創一朗(株式会社「HARES」CEO。HRコンサル...

西村創一朗(株式会社「HARES」CEO。HRコンサルタント/複業研究家)

1988年神奈川県生まれ。大学在籍時、当時19歳の頃に長男が誕生し、学生パパとなる。その後、NPO法人ファザーリングジャパンに参画し、現在は最年少理事を務める。大学卒業後、2011年に新卒でリクルートキャリアに入社し、法人営業、新規事業企画、採用担当を歴任。本業の傍ら「二兎を追って二兎を得る世の中を創る」をビジョンに掲げ、2015年に株式会社HARESを創業。仕事、子育て、社外活動などパラレルキャリアの実践者として活動した後、第3子となる長女の誕生を機に「通勤をなくす」ことを決め、2017年1月に独立。
独立後はHRコンサルタントとして、リファラル採用や採用ブランディング、タレントプールなど「新しい採用」に関するコンサルティングや講演、執筆活動を行うほか、複業研究家として、複業に興味のある個人に向けたアドバイスや、企業向けに働き方改革に関するコンサルティングを行い、政府とともに副業解禁を推進。講演・セミナー実績多数。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会で理事を務める。
6月からはクラウドソーシング事業を展開するランサーズ株式会社にて「タレント社員」として週2日働く社員としても活動している。

 

家族とビジネス、両方のタイミングが合って独立

―会社を辞め、「育休的起業」を選択した理由を教えてください

2016年2月に長女が生まれました。3人目なんですが、上2人が男の子で初めての女の子だったので、本当に半端なく愛おしくて。もちろん息子たちもかわいくて大好きなんですが、初めての女の子というのは異次元のかわいさで、1秒でも長く、子どもたちと一緒にいたいという気持ちがますます強くなりました。

当時、多摩ニュータウンの自宅から会社まで、片道で1時間半、往復で3時間を費やしていました。もし、毎日、通勤のために使っている時間を子どもたちと過ごすために使えたら、どんなにいいだろうか。そのためには、働く時間や場所をコントロールする働き方に変えなければ、と思いました。

もう1つの理由は妻のため。高校の同級生だった妻とは、大学1年生のときに妊娠が分かり、結婚を決めました。話し合いの結果、僕が大学に残った一方で、妻は大学を辞め、専業主婦になる道を選びました。妻は次男が生まれた後、仕事をしていた時期もあるのですが、妻のやりたいことを本当に実現できていたわけではなかったと思います。その後、長女の妊娠をきっかけに退職し、再び専業主婦になりました。でも僕の中ではずっと、妻のやりたいことを応援したい気持ちがあり、いろいろなことに挑戦してもらいたいと思っています。だから僕が会社を辞めて起業し、家庭にいる時間を増やすことで、妻に子育てから解放される時間をプレゼントしたいと考えました。

―会社で育児休暇を取るのではなく、退職して独立したのはどうしてでしょうか。

元の職場には男性社員の育児休暇の制度も実績もありましたし、上司に相談できる風土があったので、会社に残る選択はもちろんありました。一方で、自分の気持ちとして、いつか独立して自分で事業をしたいという想いもずっとあったんですね。

ただ、いきなり起業するのはリスクなので、会社員時代に複業として、ブログメディアを運営したり、副業・複業の支援など、に取り組む会社「HARES」(ヘアーズ)を立ち上げていました。そのビジネスが収益的に軌道に乗って来たこと、また、長時間労働是正や兼業・副業の解禁など「働き方改革」が声高に言われるようになり、大きな世の中からの期待を感じたことから、独立するなら今だと判断しました。

このタイミングで育児休暇を取るのではなく、起業すれば、家族と過ごす時間を増やし、妻のやりたいことを応援したい、というライフの想いと、仕事面でも働き方改革を通して世の中をよくしたいというキャリア軸の願いが両方かなえられるのではないか。その「二兎を追って二兎を得る」方法が、「育休的起業」だったんです。いまは「週休3日制」を採用し、1週間のうち、平日1日、2日は自宅で家族と過ごし、残りの3〜4日で都心に出て打ち合わせなどをこなし、17時には帰宅するワークスタイルです。

 

妻はプログラミングの勉強をスタート

 (11945)

―独立して半年ほどになります。この半年を振り返っていかがでしたか。

会社員だった頃は土日の休みだけでしたが、いまは平日も1日か2日は家におり、外に出て仕事するときも、帰宅ラッシュが始まる前に終わるよう予定を調整しているので、明るいうちに家に帰れます。家族と過ごす時間は2倍以上に増えましたね。だからといって収入が下がったということはありませんし、ライフ面は充実したと思いますね。複業として勤務時間外に取り組んでいた頃と比べれば、100%、自分のやりたい仕事に打ち込めるいまは幸せです。

今年の6月からはランサーズに「複業採用」で入社しました。HARESの代表としての仕事に加え、週に2日はランサーズの「タレント社員」として働くスタイルです。独立した当初はこのような展開は考えていなかったので、そのときそのときで柔軟に道を選択できる人生は面白いなと思います。

―奥様の生活は何か変わりましたか?

妻はいま僕の会社の経理や事務周りを手伝いながら、オンラインでプログラミングを学べる「ITプロカレッジ」で勉強をしています。週2回、担当のメンターとマンツーマンでオンラインのメンタリング指導が受けられるので、頑張ってやっているようです。まずは何かを学ぶ機会そのものを大事に、学ぶ喜びを感じてほしいなと応援しています。学んだプログラミングスキルを活かして、弊社のCTOとして活躍してくれたら最高ですね(笑)

 

「ファーストペンギン」の気持ちで

 (11948)

―西村さんのように起業する道を選択できない場合はどうしたらいいと思いますか。

僕の場合は運と縁がめぐり合い、年齢的にも若かったので、失敗したらまた再就職すればいい、ぐらいの感じで挑戦できました。けれど、子育て世代の多くは30代から40代で、会社の中で責任ある立場にいるでしょうし、今まで築いてきたものを捨てて独立、というのは現実的でないでしょう。そうなれば、いまの環境や枠組みの中で、どうやって自分や家族の生活を大事にできるか、という判断になります。

実際は育児休暇どころか有給休暇も取りにくかったり、定時退社できない会社がほとんど。でもそれでお手上げなのかと言えばそれは違います。世の中の流れとして、長時間労働を削減し、生産性を高めようと言う波は確実に来ています。このようなときに育児休暇を取ろうという人がいたら、人事担当者はプラスに捉えてくれるはず。むしろ前例を生み出してくれてありがとう、と言われるかもしれません。勇気を出して「ファーストペンギン」(集団の中から最初に海へ飛び込むペンギンのこと)になれば、後に続く人のためにもなるでしょう。もし直属の上司に相談しにくいなら人事部に相談してみるとか、社内で家族を大切にするワークスタイルに切り替えて仕事をしている人がいたら話を聞いてみるとか、できることを1つずつやっていけばいいと思います。

一方で、転職と言う選択肢を持っておくのも大事ですよね。育児休暇を取ることでキャリアに傷がつくというような会社なら、結局は仕事の質ではなく、働いた時間で社員を評価しているかもしれません。それが分かったなら早く見切りをつけ、次を探した方が賢明です。個人個人がそれぞれに自分の人生を選んでいかないと、本来、変わらなくてはいけない会社が危機感を持つことなく、ずっと同じ風土や体制のまま存続してしまいますから。幸い、今は売り手市場で転職先に困ることはありません。一時期「35歳限界説」といった話もありましたが、今はこれまでのキャリアを生かして転職するアラフォー世代も増えています。そういう意味で、働き方を変えるなら今がチャンスだと思います。

生涯現役が唱えられる時代ですが、ずっと同じ会社にどっぷりつかってきて、退職後に1から別の仕事を探そうとすると、本当に職種が限られていて人生に希望を失くす人が多いんです。だからこそ40代、50代のうちから小さくてもいいから自分で事業をやってみたり、複業に挑戦してみたりするのは、生涯現役で働き続けるための貴重な経験になると思います。実際、大手メーカーを中心に、社員の退職後のセカンドキャリア支援で、複業解禁を取り入れる人事部は最近増えてきているんです。

 

お互いの理想を応援し合える夫婦関係に

 (11951)

―時代が変わってきている、ということは妻の側も意識すべきことですよね。でも実際、夫から転職や起業の話を持ちかけられたら、戸惑ってしまう女性もまだまだ多いかもしれません。

僕も社会人2年目ぐらいのとき、スタートアップ企業へ転職しようとして、妻から反対されたことがあります。いわゆる「嫁ブロック」というやつですね。次男が生まれたばかりでしたし、35年の住宅ローンを背負っているわけですから、妻にすれば当然の感覚だったと思います。今思えば、「嫁ブロック」ではなく「嫁アシスト」だったので、妻には大変感謝しています。

それで、次に起業を思い立ったときには、複業でコツコツと実績を重ね、複業と本業の収入が同じぐらいになってから起業するということを、妻と約束しました。その上で、この本業の時間を複業に費やせたら、もっと事業の収益は上がるはずだし、家族と過ごす時間ももっと増えるから、と。もし失敗したとしても、30歳前後なら起業経験がある方が市場価値も上がるし、ダメだったらいつでも再就職するから、と一つ一つ妻の不安を消していきました。最後には、妻から「頑張ってね」とむしろ背中を押してもらいました。

夫婦は日々のコミュニケーションを通して、お互いの理想をちゃんと応援しあえる関係が大事だと思います。たとえば妻は安定した生活を望んでいるのに、夫にはこうしたいという野望があるとします。一見、相反するそれぞれの希望ですが、お互いに「二兎を追って二兎を得る」にはどうしたら良いか、一生懸命、知恵を出し合ってみてはどうでしょう。夫に挑戦したい仕事があるなら、いきなり会社を辞めるリスクを取るのではなく、まずは複業で始めてみるとか。例えば、妻の側からそういった提案をして、夫婦それぞれの理想をちゃんと守るのも、とても良いことだと思います。

―これからの目標や夢を教えてください。

HARESのビジョンとして掲げている「二兎を追って二兎を得る生き方」が当たり前になる社会を実現していきたいです。仕事と子育て、もしくは、本業と複業というときに、どちらか1つではなく、両方で夢を追い求めてハッピーになれる人が増えてほしいと思います。そのための育児休暇取得支援や職場の意識改革、また兼業・複業支援にこれからも取り組んでいきたいです。

 

(取材協力:BOOK LAB TOKYO

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吉岡 名保恵 吉岡 名保恵