2017年8月31日 更新

定住しない働き方を実践する人たちへ聞く、移住にまつわるQ&A

ユニークなくらしのきっかけ、家族の協力や仕事の見つけ方が語られました

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都心と地方、それぞれに拠点をおいた暮らし方を紹介するイベント「local next…ちょうどいい移住を探そう~定住しない地方との関わり方~」では、自分なりの納得のいく移住形態を見つけて実践している人たちをゲストに迎えたトークセッションを開催。

都心と地方で暮らす割合や、どんな仕事を運営しているのかなどを語っていただいた前半に続き、後半では、参加者から集められた質問にゲストが回答するトークディスカッションが行われました。

司会を務めたのは、音楽フェス「文化財ロック」や、福岡のUIターン向けメディア「福岡移住計画」のディレクター、そして現在は福岡銀行が2017年4月にオープンしたコワーキングスペース「DIAGONAL RUN TOKYO」のコミュニティマネージャーとして活躍している片山昇平さんです。

これから移住を考えている人が抱いている疑問や不安について、ゲストたちからは経験にもとづいたリアルな回答をうかがうことができました。

 

 

それぞれの移住のきっかけとは?

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片山昇平さん

片山:まずは皆さんの移住のきっかけについてお伺いしたいと思います。新井さんは、いろいろな仕事を手がけるなかで、みんなでカレーを食べる「カレーイベント」を全国各地で開催されていますよね。ここまで大規模なイベントへ成長したのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

新井:まず、前提として僕が大のカレー好きなんです。とはいえ、味や材料にこだわりがあるというよりも、みんなでカレーを食べる雰囲気のほうが大切なんです。そんな「カレーイベント」が地方で開催されるようになったのは、当時、僕が一方的に気になっていた女性がきっかけでした(笑)。

片山:女性ですか(笑)。

新井:はい。その女性が、山形へ移住してしまって。彼女とは会話をしたこともなく、「カレーが好き」という情報しか知らなかったんです。それなら、山形でカレーのイベントをやろうと思いつきました。そこで、SNSなどで集客して1カ月後には無事に開催することができたのですが……当の女性は来なかったんです(笑)。しかし、そのイベントで有名な農家さんと知り合って、そこからさらに全国各地の農家さんともつながりができて、いつの間にか全国規模のイベントへ発展しました。

片山:なるほど。初めはここまで大きなイベントにするつもりではなかったけれど、人と人とのつながりからどんどん大きくなっていったと。津田さんは現在、長野県でコワーキングスペース「富士見森のオフィス」を運営されていますが、一番初めの目的は地方での仕事ではなく、移住そのものでしたよね。

津田:はい。僕は、小学生から中学生まで、両親の仕事の都合でアメリカのシアトルに住んでいたことがありました。そこで僕は外国人でしたし、日本へ帰ってきても帰国子女という扱い。常に異文化へ飛び込んでいたような生活でした。そんな背景もあって、僕自身、異文化へ飛び込むことにはあまりハードルを感じないタイプなんです。大人になってからも、広告業界から大手メーカーの研究開発への転職もしていますし。そこで、ある時「10年後も現在と同じ働き方でいいのかな」と考えたことがあって、「もしかしたら別の場所へ飛び込んだほうがいいのかも」と思い立ったのが移住のきっかけでした。

片山:そこからコワーキングスペースを運営するまでには、どのような経緯があったんですか?

津田:移住をリアルに考えた時、東京での仕事だけではなく、長野でできる仕事も必要だと思ったんです。そこで、タイムシェアリゾート(複数人で共同所有する別荘)のようなものを運営できないかな、と考えていました。さらに、当時、富士見町の自治体では、テレワークの推進運動を積極的に行っていましたが、あまり上手に運んでいないように思えました。そこで、「僕にやらせてください」と直接交渉をしたんです。その後、プレゼンを行ったらトントン拍子に決まって、現在のコワーキングスペースの運営に至りました。

片山:新井さんとはまた違ったきっかけですね。移住ありきで仕事を探して、直接交渉までするという積極的な行動へ移せるのは、ご自身が培ったスキルはもちろんですが、やはり異文化へのハードルを感じないというのも強みではないでしょうか。吉田さんはいかがですか?

吉田:私は自分が経営する会社で、エンジニア採用に苦戦したことがきっかけですね。東京は土俵が大きすぎて、小さな会社は存在さえ知ってもらえなかった。我が社の実力と東京という地域がミスマッチであると気付いたんです。それならいっそ地方でも人口が少ない過疎地へ行こうと思い立ちました。

片山:徳島県を選んだのは何か理由があるのでしょうか。

吉田:徳島県は光ファイバー網がかなり整備されている地域として、日本でも有数の場所なんです。また、海辺の町なのでサーファーやダイバーなど、趣味に力を入れたいエンジニアが集まるのでは? という狙いもありました。結果としては、サーフィンやアウトドアの雑誌が「面白い会社ができた」と紹介してくれて、社員数は4倍に伸びたんです。こうした経験から、都会で起こっている経営問題、求人問題の中には、地方で解決できることもあると分かりました。

 

一緒に働く仲間の見つけ方と、人間関係の築き方

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左から、鈴木さん、新井さん、津田さん、吉田さん

片山:移住形態も仕事も皆さんまったく違いますが、仲間がいることは共通していますよね。一緒に仕事をするメンバーはどうやって集めたのでしょうか。

鈴木:私は自分でどんどん情報を発信して、問い合わせをしてくれた人たちを巻き込んでいきました。また、栃木県に関するイベントには積極的に足を運ぶようにしていましたね。

津田:僕は、「地域起こし協力隊」から来てもらいました。これは、地方での地域協力活動を行ってもらいながら、定住をしてもらうための制度なのですが、唯一出した条件は「兼業が可能な人材であること」です。自分の仕事をしながら「富士見森のオフィス」で働ける人ですね。あとは、実際に会って僕の描くビジョンに共感してもらえるかどうかでした。事業を共有していて、同じ思いを持った人たちが集まれば、さらに新しいことを生み出せると思ったんです。

吉田:私の場合は、メディアに取り上げてもらったこともあって、応募はたくさんいただいたんです。田舎でできる仕事があるなら、ぜひ田舎で働きたいと思っている人はたくさんいるんだな、と実感しました。もちろん、思いだけでは仕事はできません。適正の基準は、一緒に汗がかけるかどうかです。机上の話はいくらでもできますが、実際、田舎はそんなに甘いものではないんです。また、都会では気にならないことでも、人と人のつながりが密である田舎では、しっかりチェックされている部分もあります。とはいえ、当たり前のことをきちんとやればいいだけの話。評価はおのずとついてきますから。

片山:皆さんのお話を聞いていると、地方での仕事は新鮮で楽しそうな雰囲気がありますが、それだけではない部分もあるわけですよね。いざ移住をしようと思った時には、こうした人間関係を含めたさまざまな不安を抱えると思います。地方で働くために大切なポイントはありますか。

吉田:人口の減少は地方からどんどん広がっていくと思います。つまり、これから過疎化する地域も増えていくわけです。例えば、今から地方で初めたビジネスは、今後、過疎化していく地域への需要が見込める。ビジネスチャンスは都会よりも田舎にあるのではないでしょうか。また、田舎での人間関係の作り方については、遊びがキーワードになります。趣味は年代を超えた付き合いを呼びますから、まずはそこから初めてみるといいと思いますよ。

新井:僕は各地を飛び回っていますが、仕事ありきで行っているわけでもないんです。もちろんウェブ関係の仕事で訪れることもありますが、その後は町の商店街を歩いて、そこにいる人たちと会話を楽しむことが多いですね。何度も訪れるうちに、気が付いたら「おかえりなさい」と言われるようになっています。商売抜きの付き合いだからこそ、深い話を聞けるのではないでしょうか。イベントを行う時にも、自分が主催者という感覚はありません。みんなで一緒にやるという気持ちを大切にしています。

 

家族の説得と、移住先で仕事を見つけるコツ

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片山: 移住や2拠点生活を考えた時に、家族の存在も大切な部分だと思います。津田さんと吉田さんは、ご家族から反対はなかったのでしょうか。

吉田:私の妻と子どもは東京生まれの東京育ちなんです。妻が移住で一番恐れていたのは、子どもの選択肢を狭めてしまうことでした。実は、この不安を解消するためにデュアルスクールを考えたんです(編集部注:「デュアルスクール」については前編を参照)。大切なことはパートナーが抱える不安に、どれだけ向き合えるかではないでしょうか。また、田舎には都会では出会えないような面白い人たちがたくさんいるのも事実。そういう意味では、選択肢が狭まるだけではないと思います。それに近い将来、テクノロジーが解決してくれそうなこともたくさんありますしね。

津田:僕の場合は、妻も賛成していたので反対はありませんでしたが、移住相談に乗っていると、「移住先で仲間を作れるか不安」という人はいますね。家族以外の接点がない生活は、確かに怖いですが、こうした問題は同じ移住者同士でつながることで解消されます。妻の友人などは、移住前にSNSを通じて、先輩移住者とコンタクトを取り、実際に会いに行ったりもしていました。いきなり移住するのではなく、先に仲間を作ったり、移住する土地の下調べをしたりしておくことは、とても有効だと思います。人口が少ないぶん、つながり合う力は強いですから。ちなみに、吉田さんもおっしゃっていましたが、面白い人は本当に多いですよ。

片山:地方の人間関係は大変だというイメージがありますが、行動次第という部分も大きいですよね。最後に、移住先で仕事を作る時のコツなどあれば教えてください。

鈴木:自分がどんなことができる人間なのかを積極的にアピールすることが大切だと思います。SNSをポートフォリオとして使うのもいいですね。

新井:僕はあまりビジネスを意識しないことが大切だと思います。仕事をアピールするよりも、まずは仲間を作ることと、会話を楽しむことですかね。

片山:鈴木さんと新井さんは、アプローチ方法が真逆ですね。津田さんはいかがですか。

津田:僕は広告代理店のプランナーをしていたので、企画を人へどう伝えるかで勝負してきた経験があります。このスキルは仕事を獲得するうえでとても有効でした。企画を持ち込む時に大切なのは、空論で終わらず実現するところまでしっかり落とし込むこと。小さなことでもコツコツと実績を積むことで、あちらから企画が持ち込まれるようになります。「富士見森のオフィス」もこうしたコツコツとした積み重ねの結果だと思っています。

吉田:地方での仕事には、都心でできる仕事を田舎でやるか、田舎でしかできない仕事をやるかの2パターンあると思います。また、人口が少ない地域でも、住民が求めるサービスは変わりませんが、一方で人材不足も起こっています。この部分をカバーできる人間が一番求められています。ここへアプローチできる企画があれば、かなり有効なのではないでしょうか。

 

「ちょうどいい移住」で見つかる新しい働き方

参加者からの質問に対して、4人のゲストの回答はさまざまでしたが、ひとつ言えるのは、移住者に求められる仕事はまだまだたくさんありそうだということです。今まで培ってきたスキルを移住先で活かすのか、新しいビジネスを立ち上げるのか、その可能性は自分次第というところでしょうか。情報が集まるはずの都心では気付けない新しい「何か」が、地方では見つかるのかもしれません。

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