2017年9月11日 更新

会社と個人の未来はどう変わる? 新しい働き方の先駆者エコネットワークス代表 野澤健さんとの対話・前編

リモートワークを続けるために大事なことは

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エコネットワークスは、社員4名という小さな会社ながらも大手企業や自治体、NGOなどをクライアントに持ち、CSR(企業の社会的責任)やサステナビリティ(社会や環境の持続可能性)への取り組みを支援する会社です。日本はもとより世界各地の専門家たちとつながり、全員がリモートでプロジェクトごとにチームを作って仕事をするという先端的な働き方を、10年ほど前から続けています。

今回は代表取締役の野澤健さんをお迎えし、『くらしと仕事』を運営する合同会社レインボーの代表秋沢崇夫さん、同社が展開する在宅ワーカーによるバーチャルアシスタントサービス「Help You!」のマネージャーTさんが、これからの働き方、組織と個人の関係について語り合いました。聞き手は『くらしと仕事』編集長のやつづかです。

 

目次

エコネットワークス 代表取締役 野澤健さん(右)

エコネットワークス 代表取締役 野澤健さん(右)

野澤 健(有限会社エコネットワークス 代表取締役)

企業や自治体などに向けてCSR、サステナビリティに関する各種業務を行うエコネットワークスに大学在学中から関わり、卒業と同時に正式に参画。国内外の幅広い社会課題にアンテナを張り、CSR・サステナビリティ関係の調査・分析、ステークホルダーダイアログのファシリテーション、プログラムの企画・運営支援などを担当。2011年取締役就任、2016年より現職。

秋沢 崇夫(合同会社レインボー 代表)

インターネット事業会社にて約10年間、インターネット広告、システム構築、ソーシャル・マーケティング事業に従事した後、独立。海外でリモートワークをするなかで現代社会の「働き方」に疑問を持ち、2015年4月に「新しい働き方」を提供する人材サービス「Help You!」を立ち上げる。

T(合同会社レインボー 「Help You!」マネージャー)

教育業界でのマネジメント業務の経験を経て、合同会社レインボーに参画。代表の秋沢と共に「Help You!」を立ち上げ、バーチャルアシスタントの採用、教育、マネジメントを一手に引き受けている。

 

リモートワークに必要なのは「管理しなくてもいい仕組み」

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やつづか: エコネットワークスさんは昨年、「暮らしと仕事の質を高めるためのリモートワーク実践BOOK」を発表されましたね(参考:「リモートワーク実践BOOK」は実践者はもちろん家族や関係者にも読んでほしい! )。オフィスを持たず、メンバーそれぞれが離れた場所にいながら様々なプロジェクトを進めていくという働き方を長年続けてきた、そのノウハウをまとめたいというお話を聞き、私もお手伝いさせてもらいました。秋沢さんとTさんはこの対談前に初めて目を通してもらいましたが、どういう感想を持ちましたか?

秋沢: 全体的に「うんうん」と共感しながら読みました。特に「マネージャー編」がいいですね。「Help You!」でも、全部で約200人のアシスタントが各地でバラバラに働いているんですよ。最初の頃は相手が見えないということが結構不安で、「ちゃんと報告してね」とか、管理をしっかりやっていこうという方向を向いていたんですけど、ここに書かれているのは逆ですよね。「目の前に一緒にいなくてもまわる仕組み、 管理しなくていい仕組みを作るのがマネージャーの役割だ」と。やっていると、確かにそれが重要だということが分かってくるんです。だから、マニュアルとしてそういうことが書かれているのがすごくいいな、と思いました。

野澤: ありがとうございます。例えば「Help You!」に登録して働いている方がこれを読んだ時に、どのくらい共感し、自分ごととして考えていただけると思いますか?

T: とても受け入れやすいと思いますよ。新たに気づくことも多いでしょうね。ここに書かれていることで、すでに実践していることもあるでしょうけど、明文化されることで、行動の意味とかその背景にある考え方がよく理解できると思います。みんなに読んでもらいたいですね。

やつづか: 初めてリモートワークをすることになった人に、最初に読んでもらうのにもいいですよね。

T: はい。こういう働き方が初めての方々は、困っていても自分から声をあげないと気づいてもらえない、手を差し伸べてもらえないんだということが分からないんです。 リモートワークでは、仕事に暮らしの状況が密接に関わってくるので、プライベートなこともある程度伝え合うことが必要ですが、そういう感覚も、最初は慣れないんですよね。だから個人に対する教育はとても大事で、こういうマニュアルは必要だと思います。

野澤: 僕はインターンの経験を除けば、ずっとオフィスで働くというのはやったことがなくて、今のやり方が当たり前なんですけれど。リモートワークと、これまでの一般的な働き方とで、報告してもらうべきことも違うということなんですね。

T: そうです。隣にいれば、今何をしていて何に困っているだとか、今日はすごく忙しそうだとか、なんとなく雰囲気でわかるじゃないですか。でもリモートでは全くわからないので、自分の状況を進んで説明しなきゃいけないんですね。かつ、私達の場合は主婦の方が多いので、旦那さんや子どものこと、学校の行事だとかが、結構お仕事の状況にも直結するんです。

やつづか: これまでの一般的な会社の論理とは真逆かもしれないですよね。プライベートで何があっても会社に出勤したら仕事人の顔になる、という姿勢が求められていた人が多いと思うんです。むしろプライベートな事情も伝えた方がいいっていうのは新しい概念かも。

 

家族の理解、時間と健康管理の重要性

合同会社レインボー 代表 秋沢 崇夫さん

合同会社レインボー 代表 秋沢 崇夫さん

秋沢: 「ワーカー編」の中に「誰の理解を得ることが重要?」という問いかけがあって、 リモートワークは一緒に暮らす家族に理解してもらわないと続けるのが難しくなってしまう、ということが書かれていましたね。僕らのところだと、家事や育児の役割を中心に担う人が多いので、仕事量が増えた結果、旦那さんの理解が得られなくて辞めてしまうという人もいるんです。そういう課題はどうクリアされてきているのか、伺いたいです。

野澤: 家庭内のコミュニケーションの取り方についての直接的な回答はないですけど、僕達が重要視しているのは、 働きすぎないための時間の管理です。何時間働きたいのかという、本人の希望があった上で、その枠内に収まるように調整するということが、大前提としてありますね。

秋沢: 例えば100時間要する仕事があったとして、それをやる人が働く時間としては80時間しか希望していない、20時間足りないといった場合はどうしているんですか?

野澤: その場合、100時間の仕事を50時間の2つのタスクに分解して、それを2人にやってもらうようにします。希望の時間に対して7、8割に抑えるよう、業務量を調整するイメージです。常に一定の余裕を持つようにすることは、セルフマネジメントをする上で大切で、リスク管理にもつながります。

秋沢: なるほど。

やつづか: 家族に反対されることの他に、本人が体調を崩したりするリスクもありますよね。体調の変化って、リモートだと把握しづらいことの代表格だと思います。エコネットワークスさんはそれで壁にぶつかったことはありますか?

野澤: あります。5年位前ですが、一緒に働いているメンバーが、「すごく足が痛い」とずっと言っていて。ただプロジェクトマネージャーの立場で忙しい時期だったので、精密検査に行くのも後回しになっていたんです。やっと行く時間がとれたら、実は悪性のがんで、危うく足を切断するところだった……。治療が成功してなんとかなったんですけど、1年近く休職するということがあって。多分、一緒に隣で働いていたら体調が悪そうなのに気づいてストップをかけられていたんですけど、それができなかったという後悔はやっぱりすごくあって……。それ以降、 お互いの体調を意識するというのが、全体の文化として浸透しましたね。

(※ここで語られている、メンバーの病気と復職の経験については、エコネットワークスさんのブログで、ご本人の言葉で語られています。「Return to work ~ 病気からの復帰(第1回)

やつづか: ちょくちょく体調について聞く、とかですか?

野澤: 例えば1ヶ月ぐらいの頻度で、ミーティングをするときに体調のことなんかも含めてヒアリングしてみるとか、体調が悪い時には誰かにバトンタッチできるようにする、とか。夜遅くにメールが来る日が続く場合には、無理しなくていいよと伝えたり、配分を見直したりもします。

 

女性や地方・海外在住者も一緒に働くために、必然的にリモートワークに

やつづか: エコネットワークスさんは、経営メンバーもそれぞれ離れた場所にいて、その上世界中に一緒に働く仲間がいるんですよね。

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野澤: フルタイムで関わっているメンバーは4人で、僕は千葉、あとはつくば、埼玉、金沢とバラバラです。その他に、色々な濃さで関わってくれるパートナーが、年間で60〜70人くらい国内外にいます。プロジェクト単位で一緒に仕事をするんですが、それ以外の期間もチームという形でゆるやかにつながって情報交換をしたりしています。

やつづか: ゆるやかにつながる関係というのは、長い人だとどのくらい続いているんですか?

野澤: 設立当初からの人もいるので、もう14年になりますね。今のように、意図的にチームにしようとし始めたのは、この5〜6年のことですが。

やつづか: 5〜6年にしても、ずいぶん早いと思うんです。今でこそ、人は会社単位ではなくプロジェクト単位で集まって働くようになるよ、なんていわれていますが、それをずっと前からやっているんですよね。そういう方法を選んだのには、理由があるんですか?

野澤: ひとつは、オフィスとか固定された環境で働きたくない、通勤の満員電車にエネルギーを使いたくない、という志向だったというのが大きいです。もうひとつは、僕らが扱っている「サスナビリティ」というテーマ自体が、ひとりの力とかひとつの専門性だけでは解決できない領域で、プロジェクトごとに様々な専門性を集めてくる必要があったということもあるかもしれないですね。

あとは、こういった分野に共感して一緒にやろうと来てくださる方って、女性の方だったりとか、割とビジネスどっぷりじゃない人の方が多かったりします。 自分の生活を大事にしたい人や東京にいない人も多かったりするので、そういう人と仕事していくためには、必然的にこういう形態になったんです。

 

後編では、これからの個人と会社の関係性についての対話をお届けします。)

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