2017年8月31日 更新

実践者4人のちょうどいい「移住」とは? 定住しない暮らしと働き方

週末だけ、各地をあちこち、毎週行き来……、移住にも様々なやり方が

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ITの発達により、リモートワークやコワーキングスペースを活用した新しい働き方が注目され、場所を問わずに仕事ができる環境が整いつつあります。さらに昨今では、「移住」についての概念にも変化が起こっているようです。自分にとっての「ちょうどいい移住」を考えるイベント「local next…ちょうどいい移住を探そう~定住しない地方との関わり方~」(フリーランス協会が主催)では、さまざまな移住パターンで仕事をしているゲストたちを迎え、現在どんなライフスタイルを送っているのか、どんな仕事をしているのかなどを紹介するゲストトークやディスカッションが行われました。

(開催場所:DIAGONAL RUN TOKYO

 

 

週末だけの移住――「仕事がないから地元へ帰れない」を減らすために

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最初の登壇者は、都内の広告会社で人事として働くかたわら、地元の栃木県に関わるイベントを開催している鈴木彩華さん。(「栃木ゆかりのみ」発起人)

平日は東京で働き、週末は栃木県へ帰るという移住スタイルをとっている彼女は、栃木県で「栃木ゆかりのみ」というイベントを開催しています。これは、栃木県にゆかりのある人はもちろんのこと、栃木県が好きで接点を持ちたいという人へも、「最もハードルの低い栃木県との関わり方」として開かれているイベント。たった2年半の運営にも関わらず、すでに200人以上の参加者を集めています。

「私は、いつかは栃木県へ帰りたいけれど、関わりもないし友人もいない、就職できそうな会社も分からなかったんです。そんな時に、この『栃木ゆかりのみ』のイベントを思い立ちました。すると、さまざまな人たちから思わぬ反響があり、NHKでも紹介されたんです」と鈴木さん。

その後は、栃木県のコニュニティを持っている人として、他団体とのコラボイベントや、移住促進の運営・PR活動、起業家への勉強会など、実にたくさんの仕事へ発展したそうです。

「仕事がないから地元へ帰れないというのは、とても悲しいことだと思うんです。これを解決する仕組みをつくりたいですが、週5フルタイムで会社員をやりながら活動することに限界を感じ始めています。今後はフリーランスとして独立し、活動を加速していきたいと思っています」

 

日本各地へあちこち移住――定住にこだわらない暮らし方

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2人目の登壇者は、週によってさまざまな土地へ赴き、さまざまな仕事をこなしている新井一平さんです。(株式会社瞬 代表取締役CEO/株式会社BOLBOP/「一平ちゃんカレー」(Facebook ))

彼は、バウムクーヘン屋の店長を経験したのち、人を起点とした地域活性事業を行う会社「株式会社BOLBOP」へ転職し、ウェブコンサルティングを担当。2015年に独立すると、地域のものづくりに携わる中小企業を中心に、ウェブマーケティングやウェブ制作を行う「株式会社瞬(またたき)」を創業。その他にも、仕事の合間に全国でカレーを作るイベントを開催し、アマチュアカレーグランプリ2016で優勝を果たすなど、とにかく多岐に渡る仕事をこなしています。

「『何をしている人ですか?どこに住んでいますか?』という質問が一番困ります」と言う新井さんは、会社運営やカレーのイベント以外にも、地方の古民家をシェアハウスとして改修したり、使われなくなった施設をコワーキングスペースへ改築したり、さらには実家の製粉業を手伝ったりと、年間にして25~30もの都道府県を移動しているそうです。

「僕は、自分が好きなことに対して直感で行動をしているだけなので、そもそも定住か移住かという部分に重きを置いていません。強いて言うなら、日本に住んでいますという気持ちです」

そんな非定住型の新井さんは、「フリーランスは自己管理が一番大切」という思いから、現在は、健康的に働くためのコワーキングスペースを計画中だそうです。

 

2拠点による移住――「好き」を優先した働き方

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3人目の登壇者は、長野県と東京都の2拠点生活を送っている津田賀央さん。(Route Design合同会社 代表)

大手広告代理店でデジタル領域のコミュニケーション戦略に関わり、その後は大手家電メーカーへ転職。「もともと、都心と地方を行き来しながら生活することに興味があった」という津田さんは、2015年に家族と長野県へ移住し、現在、週の半分は長野県でコワーキングスペース「富士見森のオフィス」の運営、もう半分を都内の大手メーカーでUXデザインに関わるという生活をしています。縁もゆかりもない長野県へ移住したきっかけは、「山が好きだったから」だそう。

「しかし、移住するだけでは面白くないなと思って、コワーキングスペースの運営を始めたんです。東京への通勤は特急で2時間ほどかかりますが、慣れるまでは時間よりも標高差による頭痛に悩まされました(笑)」

そんな津田さんは、現在、コワーキングスペースを運営する一方で、移住支援や移住者への仕事作りも企画。その他にも、地元の人たちのビジネス相談から商品開発、プロデュースまで手がけることもあると言います。また、こうした現在の「2拠点移住」へ落ち着くまでのプロセスについても語られました。

「まずは上司へ勤務形態の相談をしました。それまでフル勤務だったものを、週3日の勤務にしてもらったんです。しばらくはこの勤務形態で働きましたが、今年の4月に退職しました。ですが、今でも業務委託として仕事を受けています」

東京と長野の両方の仕事が充実している津田さんですが、それゆえに悩みもあるようです。

「『田舎の生活は時間に余裕があっていいね』と言われることもありますが、そんなことはありません。現在、休日は週に1度しか取れず、大好きな山登りもなかなかできずにいるんです。今後はプライベートも充実させたいですね」

 

地方拠点の移住――日本の将来を考えた地方創生ビジネス

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最後の登壇者は、徳島県に拠点を置いた生活を送る吉田基晴さん。(株式会社あわえ 代表取締役社長)

ソフトウェアサービスの会社からベンチャー企業への転職を経たのち、デジタルデータ保護や情報漏えい防止に関する製品開発を行うサイファー・テック株式会社を東京で設立。その後は、徳島県美波町に仕事と暮らしの両立を目指したサテライトオフィス「美波Lab」の開設し、続いて、地方の暮らしで感じた地域課題を解決するためにパブリックベンチャー「株式会社あわえ」を設立。その他にも、各地で講演を行うなど、かなり幅広く事業を展開しています。そんな自他ともに認める「マルチワーカー」の吉田さんは、近い将来の日本では、複業を抱えて働くことが、より必要になってくると予想しています。

「日本はどんどん人口が減少しています。現在のように1人が1つの仕事をする専業の働き方では、いずれ社会が成り立たなくなるのではないでしょうか。そして、複数の仕事をこなすことが必然となった時、地方への移住や2拠点生活といった暮らし方も一緒に求められると思うんです。『株式会社あわえ』では、こうした地方創生ビジネスを主体として、地方に人が集まるための取り組みをしています」と吉田さん。

具体的には、地域の高齢者の手元に残る写真をデジタル化して保管するお手伝いや、古民家のリノベーション、地域外の人へ向けた自治体の広報代行などを行っているそう。中でも興味深かったのは、両親が2拠点生活を送る子どもたちを想定した教育制度「デュアルスクール」の提案です。

「デュアルスクールとは、1人の子どもが複数の学校に通える教育制度です。親の2拠点生活に合わせて、ふだんは都心の学校に通っている子どもでも、週に何日かは地方の学校へも通えるというもの。子どもたちはどちらかに偏ることなく、都会と地方それぞれの特性を活かした学びに触れることができますし、少子化対策へも一役買うことができると思います」

吉田さんのアイデアが発端で徳島県の取り組みとしてスタートしたデュアルスクール制度、その普及に力を注いでいるそうです。
(実際にデュアルスクールの制度を利用している方のレポートはこちら:親子で海辺の田舎町に長期滞在できる「リモートワーク&デュアルスクール」とは?

 

移住とは、個々が自分らしく生きるための手段

皆さん、移住の考え方や地方との関わり方など、実にさまざまでしたが、「都心でないと仕事がない」という考え方は崩れつつあるようです。また、自分が培ったスキルを地方へ持ち込むことで、新しい仕事が生まれる可能性も充分にあると感じました。もしも、「自分はなぜここに住んでいるのか」という疑問が芽生えたら、それは移住のチャンスかもしれません。

後編では、4人のゲストが実際に移住を考えている参加者たちからの質問に答えるトークディスカッションの模様を紹介します)

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