2017年8月10日 更新

『ライフ・シフト』編集者と考える「人生100年時代」の人生戦略

100年生きる時代に備えて、私たちができることとは

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2050年までに日本の100歳以上人口は100万人を突破し、個人のライフスタイルや働き方、労働期間などにも変化が訪れると言われています。先日行われたイベント「『LIFE SHIFT』~あなたの人生も、100年つづく~ 20代、40代、80代の実践者が語る、長寿時代のLife&Work」では、これからの時代の働き方や、世代別にライフスタイルを語るトークセッションが行われました。

本イベントの前半では、世界中で大ヒットしている書籍『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』の日本語版を担当された東洋経済新報社編集第1部編集長 佐藤朋保さんと、ランサーズ株式会社代表取締役・秋好陽介さんによる「人生100年時代!? これからの働き方生き方はどう変わる?」をテーマとしたトークセッションが行われました。

 

人生100年時代へ向けて、日本が抱える課題とは

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右から、東洋経済新報社 佐藤朋保さん、ランサーズ 秋好陽介さん

秋好: 人生100年時代を迎えるにあたって、イギリスの経営学者と経済学者が新しい人生戦略を提示した『LIFE SHIFT』は、今や日本で16万部を超えるヒットとなっていますね。

佐藤: 日本でも働き方の変化が始まっているということではないでしょうか。実際に、働き方に関するセミナーは各地で開催されていますし、参加者も増えていますから。

秋好: 「100年時代の人生戦略」というサブタイトルには、かなり衝撃を感じました。「人生があと20年も増えた!」と喜ぶ人もいれば、長寿社会への漠然とした不安を抱える人もさまざまだと思うんです。

佐藤: そうですね。読者からは、「子どもや孫と過ごす時間が増えて嬉しい」、「健康に気を付けていきたい」などのポジティブな声が多いですが、一方では、お金の問題に不安を抱えているという声も聞こえています。

秋好: 『LIFE SHIFT』では、長寿社会は良い悪いではなく、「良くしていかなきゃいけないというマインドが大切だ」と書かれていますよね。

佐藤: はい。これからの時代、良い悪いはもう自分次第ということですよね。さらに、日本は世界的な長寿大国ですから、必然的に人生100年時代の先端を走ることになります。これからの日本人の生き方次第で、世界をリードする国にもなりえるのではないでしょうか。

秋好: なるほど。『LIFE SHIFT』では、近い将来、人生100年時代を迎える日本の可能性とともに、課題も示唆されていましたが、具体的にはどんなことなのでしょうか。

佐藤: 一番の課題は、終身雇用制度です。今まで以上に技術革新が進んでいけば、企業の寿命は人間より短くなってしまう可能性があります。すると、ひとつの企業に忠誠心をもって働くというスタイルは、今後どんどん難しくなっていくかもしれません。

秋好: インターネットに加えて、現在は人間からAIへの置き換えも注目されていますしね。ちなみに、人生100年時代において、世界と日本の違いや特徴といったものはありますか?

佐藤: 女性活用の少なさです。あとは、海外に比べて英語が喋れない人が多いこと。世界中とつながれる環境がそろっているのに、言語力が足りないためにビジネスチャンスを逃してしまっているのはもったいない。しかし、一番の特徴であり課題なのは、やはり終身雇用と正社員制度ですね。

秋好: 具体的にはどんなことが課題になってくるのでしょうか?

佐藤: 今後は介護問題などにより、正社員の離職率が増えると言われているんです。辞めたくはないけれど、辞めざるを得なくなる。主戦力である正社員がどんどん減っていけば、会社自体が立ち行かなくなってしまいます。企業や経営者は、この問題へ対して意識を変化させることが必要になってくるでしょう。そこが課題であり、チャンスでもある部分だと思います。

 

世代間のギャップと変化する資産価値

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秋好: 現在はテクノロジーの進化によって、テレワークなど柔軟な働き方も可能ですよね。しかし、こうした働き方が当たり前ではない世代もいるわけです。佐藤さんは、世代による価値観の違いなどは感じたりしませんか?

佐藤: すごく感じますし、同世代でも個人差があると思います。こうした動きに敏感な人は、すでに動き始めていますよね。世代間のギャップについて言えば、やはりネット環境の差にあるのではないでしょうか。それまでの世代では、大学を卒業して、新卒の一括採用で就職することが当たり前でした。しかし現在は、ランサーズのようなクラウドソーシングを使って、自分のしたい仕事を探すこともできるわけです。これって、実はかなりすごいことだと思います。

秋好: 生まれた時からインターネット環境があるデジタルネイティブ世代と、それ以前の世代ではすでに前提条件が違いますよね。これからの企業経営者に必要なことは、デジタルネイティブ世代の発想ではないか、と個人的には強く思っています。

佐藤: ギグエコノミーのような、強い個人同士がコミュニティを作っていく可能性も充分に考えられますね。『LIFE SHIFT』では、大切な3つの資産として、生産性やスキルの資産、健康の資産、変化に柔軟に対応できる資産をあげています。その中でも、今後は、変化に柔軟に対応することを可能にする資産が特に重要になってくるのではないでしょうか。そして、これからは有形資産よりも、今あげた3つの資産、つまり、無形資産の時代だと思います。

秋好: 長寿社会により、有形資産の価値が変わってしまうということですか?

佐藤: 有形資産の価値がまったく無くなるとは考えづらいですが、それだけで人生100年時代を維持していくことも無理があるのではないでしょうか。何かを貯蓄して、それを削りながら生きていくよりも、その場その場で必要なスキルを身に着けて、それぞれを組み合わせて生きていくことが大切だと思います。

 

変化に備え、個人でできることとは

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秋好: これからの時代は、前例がなく未知の部分が多いので、漠然とした不安を抱えている人もいると思います。個人的にはどんな備えをしたらいいのでしょうか。

佐藤: 私も悩んでいるところなのですが、まずは、自分は何が好きなのかを考えることではないでしょうか。他人が嫌いなことでも、好んでできることは何かを突き詰めて考えることが重要ではないかと思います。

秋好: それって結構難しいことでもありますよね。自分が好きなことに気付くには、どうすればいいですか?

佐藤: それは私も聞きたいです(笑)。秋好さんは、どう思います?

秋好: まさか、逆質問が来るとは……(笑)。私の場合ですが、若い頃は人と会ったり本を読んだりと、とにかく色々なことをやっていました。どれだけたくさんの体験ができるかが大切ではないでしょうか。色々なことをやってみることで、自分の好きなことが見つかると思います。現在いる場所から、まったく違う場所に自分を置くと分かることもありますよね。

佐藤: 自分のみの絶対的な中から見つけるのは難しいと思います。相対的なところから探すのはひとつの道ではないかと思いますね。

 

寿命が延びることは決して悪いことではないはずなのに、どんな変化が待っているのかと、不安を覚える人は少なくありません。現在言えることは、今まであまり重要視されなかったモノに価値が見出され、私たちにも変化へ対して柔軟な姿勢が求められているということ。そのためには、自分がやりたいことは何か、できることは何かを今一度、自身に問うてみることが必要なのではないでしょうか。

(8月15日公開の後編では、20代、40代、80代のフリーランサーが語った、それぞれの人生や働き方に対する考え方と実践を紹介します)

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