2016年8月25日 更新

ソーシャル・デザイン代表 長沼博之さんに聞いた21世紀の女性の「くらしと仕事」

オンラインメディア「Social Design News」や著書、講演活動を通じ、ITの発展や社会の変化によって起こるビジネスモデルや働き方の進化について情報発信されている長沼博之さんに、これからの女性の働き方についてインタビューしました。

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長沼博之さんは、「Social Design News」や著書『ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉』、『ビジネスモデル2025』などを通じ、ITの発展や社会の変化によって起こるビジネスモデルや働き方の変化について情報発信されています。
今回は『くらしと仕事』編集長のやつづかが、これから20年、30年後を見据えた女性のくらし方、働き方について伺いました。

社会や仕事の変化を強調する情報に焦る必要はない 日常の積み重ねを信じて

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やつづか :「人工知能(AI)やロボット技術の発展によって、今ある様々な職業が近い将来なくなってしまう」ということが言われています。たとえば今会社勤めをしている人たちは、急に自分の仕事がなくなってしまうような可能性があるのでしょうか?

長沼さん(以下敬称略):今しっかり働いている人はきっと良い形でシフトできるので、焦らなくていいと思いますよ。

なぜなら、テクノロジーがどんどん進んで変化があることは確かですが、カルチャーやシステムなど”緩和剤”になるレイヤーを通して、人間の仕事・生活は再びうまく割り振られていくはずです。
もし既存のビジネスなどがAIの進化によって崩壊したとしても、私たちが歴史的に培ってきた様々なシステムやカルチャーが、うまくクッションになってくれるはずです。その中で、人が幸福になるための社会の構造がゆっくり再構成されていく。僕はそうなると確信していますし、その傾向が今どんどん見えてきているんですね。
いろんなタスクがロボットに代替されていくことによって、人間がやるべき仕事が、より「やりたかったこと」「人間らしい」方向に向かうのは間違いない。

情報を収集するのは良いと思いますが、決して焦る必要はないと思います。一足飛びに何かができるようになるという話はなくて、自分の中でいろんな問いを繰り返しながら徐々に、ゆっくり進化していくのが人間の生態。ですから、日常の積み重ねを信じてほしいというのが僕のメッセージです。

よく言われることですが、21世紀は女性の時代になる。これからは「命を慈しむ心」を持つ女性のコアな部分が、より活かされていくと思うんです。
20世紀は経済的利益を重視するエコノミックアニマルの時代でしたが、21世紀の社会はひとりひとりの命そのものが最も大切である、そういった生命倫理が徐々に広がっていくことでしょう。いわゆる生命の世紀であるわけです。その担い手の中心が女性。 もし今小さな子どもを育てながら、社会の中で戦うパートナーをサポートしている人であれば、テクノロジーによる社会の変化に焦らず、地道だけど確実に積み重ねていく日常生活を大切にしていくことが重要だと思います。

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やつづか :育児などのためにブランクがあるけれど、また働きたいと苦労している人も多いと思います。今後、スキルのない人は今以上に仕事が見つかりにくくなってしまうことも起き得るでしょうか?

長沼 :そんなに急激な変化は起きないと思います。というか、社会としては起こしてはダメです。
むしろ最近は、クラウドソーシングサービスを始め、いろいろな仕事の手段が出てきています。また、コミュニケーションコスト(仕事を探したり、仕事の際のやり取りにかかる労力)はどんどん下がってきていますから、パラレルキャリアで同時にいくつもの仕事ができる状況になっているんですよね。
クラウドソーシングはまさにそう。フルタイムじゃなくても働けるときに働く、社会との関係性を繋いでおく、ということを可能にするものです。

新しい働き方を支援するサービスがどんどん出てきているので、それらを活用して「試しにやってみる」ことが大切ですね。その上で、自分に合う、合わないを感じていくことが今は大事。何をするべきかは、周りの言うことや、ネット上で華やかに語られている女性像より、現実として家族が喜ぶかどうかで見ていくべきでしょう。

女性に限らず男性も、「自分の好きなこと」で、「お金になって」、「社会に役立っている」という「3つの軸」で仕事ができている人は本当に少ないですよ。
「今は家庭を守るために、お金を稼ぐという経済の軸が強くなっている」という状況も当然ありますよね。それは否定、拒否すべきことではありません。「好きなことをやる!」というよりも、家庭の状況によってその軸を柔軟に変化させることの方がはるかに重要で、自分の置かれている状況をしっかり見つめ、地に足をつけなくてはいけない。ネットではリア充のかっこいい女性ばかりが目に入ってしまうかもしれないけど、じゃあその人が本当に幸せなのか? それは全然わからないんですよね。

最終的に、真っすぐ誠実に日常を積み重ねている人は、先ほどの3つの軸がゆっくり自然に成り立ってくると思っています。まして、私たちの働くという行為は、これまでのように65歳で定年を迎えて終わるわけではないですよね。健康な間は何かしらの活動、仕事を続けていくのだと考えると、寿命が伸びている我々の世代にとっていちばん大事な時期は65歳以降ですよ。それまでは前哨戦と言ってもいいくらいです。
65歳になるまでに、色々傷ついたり、失敗したり、時にうまくいったりしながら人間というものを深めていく。その中で、人格の向上をはかる。それを65歳からの20年の活動、仕事に活かしていくというのが理想形ではないでしょうか。それが、現代における最大のトレンドである「超長寿社会」の基本となると思っています。

65歳以降の人生を輝かせるために 今できることは?

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やつづか :確かにそうですね。今、長沼さんから見て65歳以降で良い生き方をしていると思う人は?

長沼 :結構いますよ。日野原重明先生(2016年8月現在104歳の医師)、柴田トヨさん(92歳で詩作を始め、詩集を出版。101歳で死去)、80歳で不動産屋を始めた和田京子さんとか。これからもっと増えてくるでしょうね。

これからは人間的な成熟と共に、自分がどのように社会に貢献していくのか、それを仕事としてどのようにパッケージ化していくのかというところに面白味があり、社会の注目もそちらに移っていくでしょう。
65歳以降活躍できるかどうかは、それまでの積み重ねが大事。会社の肩書などではなく、より人格や人間関係で人が測られるようになっていくと思います。

やつづか :今、良い関係性を作るためにできることは何でしょう? 例えば、クラウドソーシングなどで、仕事は始めやすくなりましたが、顔の見えないクライアントを相手に単発の仕事を繰り返しても、なかなか良い関係づくりにはつながらないと感じている人も多いように思います。

長沼 :「自分は何が得意で、どういうところに使命感を感じるのか」そして「相手が今心から望んでいることはどんなことなのか」、これらの気づきが大事ではないでしょうか。
なんとなく作業的にやっていれば、積み重ねにならないです。「自分自身が社会に、相手に貢献していくんだ」という熱量をそこに転写していけるかで、どんな仕事も試行錯誤しながら積み重ねていけるようになると思いますね。外から見て華やかでクリエイティブなことも、実際は地道な仕事の積み重ねですから。

やつづか :先ほど、仕事にブランクがあって再就職に苦労している人もいるという話をしました。でも、今すぐフルタイム分のお給料を稼いでこなくてもなんとかなっているのであれば、逆に焦らずゆっくり、自分が熱量をもってできることを探したり、関係性を作ることに時間をかけてもいいと思うんですよね。「難しい」とか「無理」だと思って動かないのは、もったいないなと。

長沼 :そうですね。

パラレルキャリアのコツは 縁を活かして常に選択を続けること

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やつづか :著書では複数の仕事を並行するパラレルキャリアを提唱されていて、ご自身も同時にたくさんのことをされていらっしゃいますね。長沼さんが実践している、パラレルキャリアを上手にやっていくコツはありますか?

長沼 :選択と集中と分散という、自己マネジメントですね。

例えば、新規事業の立ち上げに加わっている時などは、それに大きなパワーと時間を割く必要があります。例えば僕は今、とあるドローンの事業に注力しています。
一方で、執筆やサロン運営を通じていろんな人を支援するといった、ライフワークとしてずっとやっていきたいこともあります。もちろん、うまくやらないと全部中途半端になるので、パラレルキャリアをやっていくには、選択と集中と分散のバランス感覚も重要です。しかし、取引コストやコミュニケーションコスト、テクノロジーコストが激減する社会の中では、パラレルキャリア的なワークスタイルがより普及していくと思いますね。

それと、大事にしているのは人の縁。そして家族を大切にすることです。
自分がやる仕事をガチガチに決めきってしまうのではなく、つながった縁によってやるべきことを選択し、その都度バランスを取っていく努力をしています。

やつづか :縁によって考えてもみなかったような仕事をすることになったりするわけですね。その代わり、それまでやっていたことを止めるという選択も必要になりますよね?

長沼 :正にそうですね。それも焦ってやることを絞るというよりは、つながった縁の中で自然に絞られていくような感覚を大事にしています。
例えば子育て中で、どんなに家事や育児が忙しくても、できるだけリアルやオンラインで人との関係性をつくったり、維持する意識しておくといいと思います。

 

 

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