2017年9月8日 更新

基本給のほか賞与や福利厚生も。「同一労働同一賃金ガイドライン案」で示された具体例

昨年末に政府が発表した「同一労働同一賃金ガイドライン案」の概要をご紹介します。これによって非正規社員の待遇は良くなるのでしょうか?

3,476 view

政府は2016年12月20日、働き方実現会議を開き「同一労働同一賃金」の実現に向けたガイドライン(指針)案を発表しました。これは「非正規」という言葉を一掃することを目指すという強い意気込みのもと、非正規社員の待遇差改善に向けて打ち出された指針です。 現在は法的な拘束力のない「案」の段階ですが、今後はこの案をベースに法改正も進める方向で、正規・非正規にかかわらず私達の働き方に少なからず影響してくると言えそうです。
ここでは「同一労働同一賃金ガイドライン案」の概要をご紹介します。

 

目的は正社員と非正規社員の格差解消

gettyimages (8019)

なぜ政府は同一労働同一賃金をめざしているのでしょうか?

安倍総理は、非正規雇用者の賃金水準を上げれば「もう一度、中間層が厚みを増し、より多くの消費をするようになるでしょう。そうなれば、より多くの人が家族を持つようになるでしょう。そうなれば、日本の出生率は改善するのだと思います。」(平成28年9月21日ニューヨークでの金融・ビジネス関係者との対話における安倍総理講演)と語っており、非正規社員の賃金水準を上げることで、個人消費の拡大・少子化への歯止めにつなげる狙いがあります。

また、現在の日本では全体の4割もの労働者が非正規雇用で働いており、待遇改善が進めば今まで働いていなかった女性や高齢者などの労働者が仕事につきやすくなり、働き手不足の解消にも期待がかかります。

 

「同一労働同一賃金」先進国の欧州と、日本の違い

同一労働同一賃金を考えるにあたって、よく引き合いに出されるのがヨーロッパ各国です。例えばドイツでは、パートタイム労働者の時間あたり賃金がフルタイム労働者の8割。フランスでは9割とほぼ正規雇用者に近い水準となっていることがわかります。一方日本では6割弱になっており、正規・非正規間の格差が大きいことが一目瞭然です。

出典:『同一労働同一賃金について』厚生労働省 平成28...

出典:『同一労働同一賃金について』厚生労働省 平成28年8月31日

欧州で同一労働同一賃金が進んでいる背景には、性別・人種などの違いを理由とする賃金差別を禁止するという考え方や、賃金制度が産業別に労働協約により定められていたことなどがあります。目的や経緯が異なるため、「欧州型」を参考にしつつ、日本の環境に合った「同一労働同一賃金」のあり方を考える必要があるでしょう。

 

今の法律でも「不合理な待遇差」は禁止されているけれど…

thinkstock (8020)

それでは、現在の日本の法律ではどのようになっているかと言うと、実は労働契約法20条やパート法8条によって「不合理」な格差を設けることは既に禁止されているのです。

その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。

禁止とは言っても具体的な内容についてまで触れていないのが現行法です。 裁判所によって最終的に判断される模範的概念であり、合理性・不合理性の判断が難しいため、問題がある場合でも労働者が訴訟を起こすなどしなければ是正がされません。
そこで、待遇差について何が不合理で何が合理的かを具体例を挙げて明示し、最終的には強制力のある法改正につなげていこうというのが、今回のガイドラインの狙いです。

 

同一労働同一賃金ガイドライン案の内容を読んでみよう

istockphoto (8022)

ガイドラインは下記の4項目に分類されていて、項目ごとに基本的な考え方、「問題とならない例」「問題となる例」を具体的にあげています。

・基本給

・賞与 手当(役職手当、休日労働手当など)

・福利厚生

・その他(教育訓練、安全管理に関する措置・給付)

具体的なケースとしては、以下の様なケースが挙げられています。

(ガイドライン案の全文はこちら:「同一労働同一賃金ガイドライン案」

問題とならない例

・特殊なキャリアコースを選択した結果、スキルアップした正社員の基本給を、非正規社員よりも高くする。

・職業経験や勤務地に変更がある正社員の基本給を、非正規社員よりも高くする。

問題となる例

・正社員には職務内容や貢献等に関わらずに支給している賞与を、非正規社員には支給しない。

・役職が同じ(例えば店長)で、責任の範囲・程度が同じであっても、非正規社員の店長には正規社員の店長よりも低額の役職手当を支給する。

 

まとめ:「同一労働同一賃金」実現には、企業側の対応とそのための国の支援が不可欠

今回のガイドラインでは、具体的な例に踏み込んで書かれていますが、それでもなお実際の判断が難しいケースは多いでしょう。

また、先に述べた欧州諸国のように、産業別に賃金が決まっていない日本では、一律の仕組みを作るのが難しく、個々の企業に負担が大きくのしかかってしまう懸念があります。そうなれば企業に求められる対応は、非正規の賃上げの為の原資を増やすための構造改革や、賃金規定の整備等多岐に渡るでしょう。

現在、厚生労働省は非正規社員に対して正社員と共通の処遇制度を導入・適用した場合に「キャリアアップ助成金」として必要な経費を助成しています。
このような支援が拡充していくことで、どれだけ「同一労働同一賃金」の実現に向けた後押しになるのか、今後に注目したいところです。

この記事を読んだ人におすすめ

旅先でも仕事をするワーケーションって嬉しいの?

旅先でも仕事をするワーケーションって嬉しいの?

旅先でも仕事をするワーケーションのメリットや課題について解説します
やつづか えり | 248 view
女性の働き方関連ニュースまとめ:2017年7月下期版

女性の働き方関連ニュースまとめ:2017年7月下期版

2017年7月後半の女性の働き方に関連するニュースをまとめました。
宇野まきこ | 174 view
働き方改革が本格的に進んでいく2017年、ワーキングマザーを取り巻く環境はどう変わる?

働き方改革が本格的に進んでいく2017年、ワーキングマザーを取り巻く環境はどう変わる?

「自分の人生を自分で選ぶ。人生をゆたかにする。」という理念のもと、女性活躍推進のコンサルティングを行う株式会社bouquet 取締役の髙橋玲衣です。新年を迎えるにあたり、「同一労働同一賃金」と「残業削減」の動きがワーキングマザーに与える影響について考えてみます。
髙橋 玲衣 | 1,736 view
2016年の働き方関連ニュース振り返り。そして来年はどうなる?

2016年の働き方関連ニュース振り返り。そして来年はどうなる?

「女性活躍」や「働き方改革」関連のニュースが盛んに報じられた2016年。具体的にはどんな出来事があったのでしょう。私たちのくらしと仕事にまつわるニュースを5つのテーマに分けて振り返り、来年はどうなっていくのかを考えてみます。
やつづか えり | 937 view
正社員と非正社員の「同一労働同一賃金」、りそなグループの場合

正社員と非正社員の「同一労働同一賃金」、りそなグループの場合

「同一労働同一賃金」が実現されると、働く私たちにはどのような影響があるのでしょうか? りそなグループの取り組みから考えます。
西谷 じゅり | 2,307 view

この記事のキーワード

この記事のライター

西谷 じゅり 西谷 じゅり