2017年5月7日 更新

事前連絡なしで働きたい日に働く。フリースケジュール制のパプアニューギニア海産工場長インタビュー

事前連絡なしに、出勤日・欠勤日を自分で決められる「フリースケジュール」という制度が話題になった「パプアニューギニア海産」の工場長 武藤北斗さんへのインタビューです。

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先日SNSで、こんなつぶやきが注目を集めました。

株式会社パプアニューギニア海産の工場長 武藤北斗さんの投書を紹介したTwitterのつぶやき。

大阪にある「パプアニューギニア海産」という会社の工場長による、朝日新聞への投書の内容に、多くの人が驚いたのです。

なぜなら、子育て中のパートさんが主に働いているというその工場では、「好きな日に連絡なしで出勤・欠勤できる」という制度をすでに3年も続けているそう。また、今年からは「嫌いな作業はやらなくてよい」という取り組みも始めたとのこと。(投書の内容は、パプアニューギニア海産のブログに全文掲載されています。→「好き」を尊重して働きやすく 朝日新聞声欄掲載

働く側にとっては、「なんて自由で気楽な会社!」と思えるかもしれませんが、「そんなことで仕事は回るの?」というのが多くの人が持つ疑問ですよね。(参考:Togetterで色々な人の反応がまとめられています。 「好きな日に連絡なしで出勤・欠勤できる」システムを確立した工場長の話にさまざまな声が集まる )

そこで、この投書をされた武藤北斗工場長に実情を聞いてみました。

 

株式会社パプアニューギニア海産 工場長の武藤北斗さん

株式会社パプアニューギニア海産 工場長の武藤北斗さん

 

事前連絡不要 いつ出勤・欠勤してもOK! の実態は

- パプアニューギニア海産さんは、もともと宮城県石巻で営業されていたところ、震災後に大阪に移られたそうですね?

はい。創業当時は東京だったのですが、震災の7年半前に宮城に移っていました。そして2011年の震災で工場は全懐しましたので、大阪に移転して会社を再建することにしたんです。

 

- 移転前の石巻では、何人くらいの会社だったんですか?

社長以外に社員は3人、パートさんが25人くらいですね。今は、社員2人にパートさんが10人くらいですので、だいたい半分くらいの人数でやっていることになります。

 

- エビの輸入、加工、販売をしている会社ということですが、パートさんの仕事はどういう内容なんでしょう?

原料であるエビは冷凍保存していますので、それを解凍してパン粉を付けてエビフライにしたり、むきエビとしてパック詰めにしたりといったことと、商品の発送の為の梱包や事務作業、工場の前にあるお店のスタッフも兼ねています。

 

- パートの方は、持ち場を分担するのではなく、すべての作業を覚えるのでしょうか?

そうです。作業自体は1〜2週間やれば覚えられるものです。作業をしながら「今はあっちの作業に回ったほうがいいな」とか、そういう風に気づけるようになるのには1〜2年かかりますけどね。

工場での作業の様子

工場での作業の様子

- エビフライを作ったり、むきエビにしたりという作業は、手作業で?

はい。元々「手作業を大事にしたオーガニック食品の販売」ということを大事にしていて、機械化などはしていないんです。それがあったからフリースケジュール制がやりやすかったということはありますね。

 

- 機械のペースに合わせるのではなく、人数によって作業量を調整できるということですね。
何人のパートさんが来られるかはその日になってみないと分からないということですが、皆さんどのくらいの頻度で出勤されているのでしょう?

「社会保険に入りたくないので週3〜4日」という人が多いですね。社会保険に加入している人は週4〜5日来る人もいますし、逆に月に2〜3回という人もいて、それぞれですよ。

 

- ブログには出勤人数が0人という日もあったと書かれていましたが、「明日は来てくれるだろうか?」と心配になりませんでした?

いや、逆に「明日はたくさんくるだろう」と予想して作業の準備をしたんですよ。実際は普通の人数で、その次の日は全員来ました(笑) でも、1週間単位で見るときれいに平均化されるので特に困ることはないです。「今日は何人」とか目くじら立てるほうが疲れるんです。

 

- 休みが重なる傾向というのはあるんですか?

みんな近隣から通っているので、運動会みたいな学校の行事はだいたい同じ頃にあって、そういう時期は来る人も少なくなったりしますね。ただ、全員に小学生の子どもがいるというわけでもないので、誰も来ないということはないです。あとは、すごく天気が悪い日とか。この間も台風で東京は大変だったみたいですけど、そんなときに一生懸命自転車をこいで来る必要は全くないですよ。ただ、それでも来る人はいるんです。今年のゴールデンウィークは月曜日だけぽつんと営業日で、まあ誰も来なくてもいいかと思いつつやっていたら3〜4人は来ましたね。それぞれ生活していく中で「これくらいのお給料をもらいたい」とか家庭の用事だとかがあって来る来ないを決めているので、僕らが予想するのにも限界があるわけです。

 

- なるほど。パートさんは時給制だから、稼ぎたい分だけ自分で調整しているということなんですね。
会社としては、「この日はどうしても来てほしい」ということもあるのでは?

「この時期は多めにでてもらえると嬉しい」とか、逆に「今はたくさん休んでもらって大丈夫」とか、そういうことは伝えています。みんなできる範囲で協力してくれていますね。出勤予定とか休む理由とかを聞くというのは、それだけでプレッシャーになっちゃうと思うので、しないようにしています。

 

「嫌いな作業はやらなくてよい」「帰る時間を選べる」…、パートの声も取り入れて働きやすい環境を試行錯誤

- 「嫌いな作業をやらなくてよい」という制度もすごいですよね。「全員が嫌いな作業」というのがないからうまくいっているということですが、たまたま出勤する人が少なかったりすると、誰もやりたがらない作業というのが出てきてしまうのでは?

可能性としてはありますね。そういうときはその部分を社員がやるか、来ている人にお願いしてやってもらいます。フリースケジュールにしてもこれにしても、そういう(「好きを尊重する」という)考え方でやっていますということが大事なのであって、絶対に嫌いな作業をさせない、ということではないんです。

月に1度、各自がとても好きな作業にマル印、とても嫌いな...

月に1度、各自がとても好きな作業にマル印、とても嫌いな作業にバツ印を付けるという形でアンケートを取っている。

- 他にも、「帰る時間を選べる」とか「体調が悪い場合はそれを表明する」とか、いろいろなことを試していらっしゃいますね。こういうアイデアはどこから出てくるんですか?

自分自身子どもがいますので、生活する中で気づくこともあれば、みんなから「こうしてみたい」と言われることもあります。思ったことを気軽に言えるような雰囲気を作るのが大事ですよね。なにか言われても、無理であれば「それはダメでしょ」と笑って不採用にするぐらいがいいと思ってます。

 

- なんでも「検討します」と受け入れるわけではないんですね。

「言ったことは絶対に取り上げる」だと責任が重くなるから気軽に言えないと思うんですよね。あと、「あなたが言ったということはみんなに黙って、試してみましょう」ということもありますよ。「あの人はでしゃばりだ」とか、そういう意見て絶対出てくると思うので。
そういう意味では、僕は人を信用していないということになるのかもしれないです。でも、今の良い状態はちょっとしたきっかけで崩れ始める可能性はあると思っているので、これをどう維持していくかということは常に考えているんです。
嫌いな作業をやらないというのも、それによってすごく品質があがるし、管理もしやすいので、僕としてはぜひとも続けたい。続けるためにはどうすればいいかをいつも考えています。

 

社員が無理してパートに優しくしているわけじゃない

- 品質が上がるというのは、具体的にはどういうことなんでしょう? 商品のできに違いが出たりするんですか?

商品の良し悪しは全然変わりますよ。お客さんからも、リアルに「良くなった」と言われます。

 

- 加工品の味って、そんなに変わるものですか?

どこのものかよく分からない原料で、薬品もたくさん使って、機械で作る、というのだと差は出ないかもしれないですが、うちはオーガニックにこだわって手作りでやっているので、いかに鮮度の高いまま商品にするかというところが、すごく味に関わってくる。チームワークが良くなると一気に味が良くなるんです。

 

- なるほど。チームワークが良くなったと感じるのはどんなときですか?

楽しく働いているかというのは、みんなの表情に出るし、声の張りとか動きも全然違います。これはここで働いている人にしか分からないことですが、工場に入った瞬間の雰囲気とか空気感が全然変わりましたね。僕も、すごく居心地が良くなりました。昔は、なんだかどんよりした感じで工場にいるのは嫌だな、と思ったり、自分も信用されていないような空気を感じたりしていたのですが、今は僕も従業員も、両方気持ちが良いのではないでしょうか。

 

- フリースケジュールで月に数回しか来ない人もいるということでしたが、そういう人はチームの輪に入りづらくなったりしませんか?

それは、なくはないでしょう。ただ、月に数回しか来なくてもOKにしているので、良いと言われていることをやりにくい雰囲気にはならないように、かなり気をつけています。例えばうちはよくミーティングをするんですけど、あまり来ない人がいる前で、僕が冗談半分で「この人は月に1回しか来ない時もあるけど、みんな優しくしてくださいね〜」と言ったり。そういう人が繁忙期にはいつもより多めに来てくれる人だったりするので、そういう面をみんなに伝えたり、いづらくなったりしないように、しつこく話すようにしています。

 

(次ページ:パートの時給に差はつけない。競争よりも安心して協力し合えることを重視

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