2017年9月9日 更新

働き方が変わりワーキングマザーが先頭に立つ時代がやってくる!ママボノで見えた育休経験や女性的能力の活かし方

育休中のプロジェクトを経験したママ、それを見守った方たちが語りました

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産休・育休中のママたちが、復職に向けたウォーミングアップとして参加できる社会貢献活動「ママボノ」。

『くらしと仕事』では、これまでも何度か「ママボノ」の活動を追ってきました(参考:育休中ママが社会貢献活動。「ママボノ」キックオフミーティングで垣間見た、その魅力ママたちが育休中のチャレンジで得たものは?「ママボノ2016」成果発表会レポート)。今回は、2月25日に行われた報告会より、パネルディスカッションの様子を抜粋してお伝えします。

 

 

パネルディスカッション概要

テーマ:育休などの一時的なブランクを経て復職し、活き活きと働くために

パネラー:(順不同)
桜井 陽さん(日本経済新聞社 映像報道部/ママボノ取材者)
藤澤 理恵さん(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所 研究員/ママボノ参加者)
村松 邦子さん(NPO法人GEWEL 代表理事/ママボノ支援先)
矢部 いづみさん(NTTデータシステム技術株式会社 企画部 人財開発担当/ママボノ参加者)

 

育休・離職は、マイナスじゃない!

NPO法人GEWEL 代表理事 村松邦子 さん

NPO法人GEWEL 代表理事 村松邦子 さん

「今回の"育休・離職のブランクをプラスに変える"というテーマ設定に、そもそも違和感を感じます」そう語り始めたのは、2016年度のママボノ支援先でもあるNPO法人GEWEL代表の村松さん。ワーキングマザー歴25年の素晴らしい先輩ママです。

「新しい生命の誕生と育児、それはとっても貴重な経験だから、どっぷり浸かって楽しんで、それだけで十分なはず」

しかし、離職することはブランクとして扱われ、さらに女性活躍だ社会進出だと世間も騒いでいれば、育休中も何かキャリアアップしなくてはと、ママたちは焦ってしまう。

「不安感を煽り、育休を楽しむ気持ちにさせてくれない、そんな風にさせてしまう社会って何?って怒りすら感じます。育休・離職はブランクではありません。社会が女性に求めすぎているのです」

NTTデータシステム技術株式会社 人材開発担当 矢部い...

NTTデータシステム技術株式会社 人材開発担当 矢部いづみさん

今回のママボノ経験者で、企業で人材開発の担当をされている矢部いづみさんも、「今の社会では、企業側も取得側も、産休・育休をマイナスとして捉えていて、いかにマイナスを減らし、以前のパフォーマンスに戻すかということを考えてきました」と語ります。しかし自身が育休を取得し、ママボノを経験してみて、この考え方自体が誤りだったことに気づかされたのだそうです。

"意識を変える"というテーマで、OJT(企業内研修)やOff-JT(企業外研修)をやってきた矢部さんですが、1日で意識を変えるのはやはり無理があるのだそう。約2ヶ月間、意識の高いママたちと一緒にプロジェクトを遂行したことで、仕事に対する考え方やリーダーシップのあり方など、短期間の研修では得られなかったものに気づかされた経験から、「産休・育休はプラスなんです。決してマイナスではありません」と語られました。

 

多様性や女性ならではのリーダーシップの価値とは

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動...

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所 藤澤理恵さん

企業内で育休の研究をされている藤澤さんは、第一回ママボノの参加者です。

「ママボノに参加したのは3年前ですが、今でも鮮明に覚えているのは、多様性ってこんなに成果につながるんだ、ということです。今まで会社内で感じていた多様性なんて、たいしたことなくて、全く違う業種の人で集まると、こんなに成果の幅や深さが増すのかと本当に驚きました」

ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(一体性)という言葉は、最近よく耳にする機会も増えましたが、経験者が語るとその言葉はたいへん重みを感じます。

また「女性だけのプロジェクトは初めての経験でしたが、やってみて、女性ってこんなにリーダーシップがあるのかと驚きました。普段遠慮して控えめにしている方が多いんだなと思いました」と、女性にはあまりないと思われがちなリーダーシップについて語った藤澤さんに、ママボノでリーダーを経験された矢部さんも同意しました。

矢部さんは典型的なリーダーではなく、みんなの話を聞く調整型のリーダーだったそうです。最初はそれでいいのか自信がなかったそうですが、みんな付いて来てくれて、プロジェクトもしっかりやり遂げた。矢部さんにしかできないリーダーシップを実感されて、自信につながったようです。

日本経済新聞社 映像報道部 桜井陽さん

日本経済新聞社 映像報道部 桜井陽さん

ママボノの映像取材をした日本経済新聞社の桜井さんも、女性ならではのリーダーシップの価値について語りました。

「皆さん気付いていないと思いますが、ミーティング中の皆さんのうなづきの回数がすごいんです。僕の会社はおじさんが多いからなのか、ミーティング中に誰もうなづいたりしません。矢部さんのお話にも出ましたが、共感型というか協調型というか、こんなリーダーシップがあるのかーって驚きまして、夢中になって撮影しましたよ」

確かにぐいぐい引っ張るスタイルだけがリーダーシップではありません。いろいろなスタイルのリーダーシップがあっていいし、女性ならではのやり方があるのは素晴らしいことです。

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自身が代表理事をされているNPO法人で、日々ダイバーシティ推進に取り組まれている村松さんは、女性とひとまとめにせず、ひとりひとりに向き合うことの必要性を訴えました。

「ダイバーシティというと女性、と思われがちですが、ひとくくりにしてはいけません。女性の中にも多様性はあって、みんなそれぞれ悩んでいます。バリキャリと言われている人も、実は家事も育児も仕事も全部中途半端じゃないかと悩んでいたり、シングルの女性は独身女性にだけ支援なしなの?と思っていたり、ずっと仕事一筋の方は親の介護を心配していたり。企業にも言っていることですが、女性の中にも多様性があるし、ワーキングマザーの中にも多様性がある。制度を作るのも大事ですけど、キャリアや価値観はそれぞれ違いますから、それぞれと向き合って考えていくことが大事なのです」

だから一人ひとりと向き合って、話を聞く場を作る活動をされていらっしゃるそうです。

「ダイバーシティを尊重し活かしていくための前提として、まずは一人ひとりが自立し、ご自身の価値観を大切にしてください。私の価値観はこうです、私はこういう働き方がしたいです、と皆さんがしっかりと伝えることがとても大切なのです」

村松さんのお話を聞いていて、自分が体感していないため考えたこともない人の人生まで思いを寄せるという、大きな視野を持つことの大切さや、難しさを感じました。

 

育休後の女性は、自分が「異物」になったと感じている

育休・離職から復職した後、やはり家事育児と仕事の両立に悩む女性は多いでしょう。出産前と1日の時間は変わらないのに、やることは何倍にも増えてしまうのですから、大変なのは当たり前なのですが・・・。

育休の研究をされている藤澤さんは、「皆さん辛いこととか、上手くいかないこと、大切にされてないという気持ちになることも増えてくるかと思いますが、個人的に傷付く必要は全くありません。ぜひ個人的に傷付かないでほしいです」と研究内容を語り始めました。

個人的に傷つく必要がない? 初めて耳にする表現です。

「今どういう状況に曝されていて、その中で自分がどういう波に揉まれているのかって知ることで、個人的に傷つく必要がないってことを理解していただけると思います」と、研究者の視点から働く母親たちの置かれている状況を語りました。

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藤澤さんは育休を"ワークとノンワーク"や"ソーシャルとビジネス"のような少し文化の違うところの「境界」を出入りすることと、とらえているそうです。

「働く組織の一員であり続けながら、組織・役割を一時的に離れて、育児という異世界のプロジェクトに従事する。それが育児休業なのです」

そういう考え方もあるのかと、目から鱗が落ちました。

1ヶ月以上の育休経験者への復職前のアンケートから、男性は"子どもと過ごす時間が減ることが惜しい"とか"成長の瞬間を見逃してしまうのではないか"といった子どもと離れることに対する不安が上がったのに対し、女性は"仕事で思うような活躍ができるか"とか"上司や同僚は受け入れてくれるのだろうか"といった意見が多く、仕事も会社も何ひとつ変わっていないのに、自分は仕事にとって異物になってしまっていると感じるそう。そのため、たとえ同じ組織・仕事であっても「再適応」することが必要となってくるわけです。しかも、これまでの経歴ややりがいなどの喪失感と、子どもという新しい喜びや制約も抱えた状態で……。自分がそういう状況にあるんだとわかれば、難しさがあるのも当たり前だと思えます。研究者からの温かい応援メッセージだなぁと感心しました。

 

ワーキングマザーの経験が活かされる、新しい時代はそこまで来ています!

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最後に4人のパネリストから、力強いメッセージが発信されました。

矢部さん「育休明けの復職後って時間の制約もあるし、子供の病気とかで、どうしても肩身が狭くなってしまって、新しいことにチャレンジする気持ちになんてとてもなれなくなってしまうけど、チャレンジなくして成長もありません。勇気を出してチャレンジしてください。また、復職後の女性と面接をすると、"みんなに迷惑をかけて申し訳ない"とおっしゃる方が多いですけど、他の人だって、このあとどうなるか分からないですよ。病気になったり、介護があったりするかもしれません。っていつも言うんです。今この瞬間だけを見るのではなくて、長い目で見ていつか返せればそれで十分なんです。いつの日かギブアンドテイクになる日が来ると考えると、肩身の狭い思いも楽になるのではないかと思います

桜井さん「取材していると、"私なんか"という人がとても多い。何を言ってるんですか、勿論できますよ!って僕は思います。"社会の役に立ちたい"という思いと"私なんか"の間で揺れ動いている方が多いと感じます。僕が育休明けの女性に言いたいことは、職場復帰することだけで、十分にダイバーシティに貢献していますよ。ということです。どうか肩身が狭いなどと思わず、胸を張って復職してください!

村松さん「時間の制約があったりすることで引け目を感じることもあると思いますが、お一人お一人で絶対できることがあります、とお伝えしたい。私はJリーグの理事をしておりますので、よくサッカーを例にとって話すのですが、先発から90分フルで出場しなくても、最後の10分で点を入れることもできます。ですから、時間に限らず、何か自分ができることで得点をあげればいいんです。自分自身の心と体を大切にして、自分らしいライフキャリアを楽しんでください」

藤澤さん「働き方改革で、みんなが短く働いたり、工夫して働くようになると、仕事が全体的にプロジェクト化していくと思っています。私たちが経験した痛みとか弱みとかは、そんな時代になった時に、繋がる力として活きてくるんです。共感できると繋がることも早いし、"もっと社会を良くしようよ!"とみんなのこと考えれば考えるほど、繋がる力になる。これはもう仕事の能力ですよ。あと数年で働き方改革が終われば、もうその時代が来るので、そこまで皆さんが今の経験を積んでいくことで、必ず先頭に立つことになると思っています。
育休明けの復職は、先ほどお話しした通り、自身のアイデンティティを作り直す時間なので、みんな苦しいです。そういうものなんだと思って、自分の心の声を聞いて、周りの状況を見ると、少しは楽になると思います。"ああこの人はもう、前線から降りたんだ"と今は思われても、そのあとの活動で見せればいい。"今はできないけど、今後はこんなことがしたい"って"本当はもっとやりたいんだー"って上司や周囲に伝えるだけでも、相手は安心するんですよ。"この人は今は時間がなくてできないけど、仕事に対する思いや、会社に対するロイヤリティは変わっていないんだ"って分かってもらうだけでも、ぜんぜん違います。味方は、たくさんいます。ネガティブな声の方だけつい聞いちゃいがちですけど、応援してくれる声の方にぜひ耳を傾けて、皆さんの力にしてくれたらなと思います

パネリストの皆さんの言葉に、思わず目頭が熱くなりました。頑張ってるママたち、もう少しです。もうちょっと踏ん張りましょう。長いトンネルの向こうに、小さな光が見えたような1日となりました。

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