2017年9月29日 更新

「困ったことを相談できる先」が幸福度を高める私が「誰しも、息をしているだけで価値がある」と思えるまで【カエルチカラ・プロジェクトVol.6】

幸福度の高い社会を実現させるために

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(この記事は「LAXIC」より転載、編集しています。)

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〔本原稿は、 カエルチカラ・プロジェクトの一環として「なかのまどか言語化塾」に参加した女性たちが書いたものです。ライターや専門家ではなく、問題の当事者が当事者自身の言葉で発信することで、社会への問題提起や似たような立場に置かれた方々への情報共有を目指しています。編集協力:中野円佳〕

他者を頼るな、という日本社会の呪い

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他者を頼る前に、まず自分でやれることはやり尽くしてから。それでもダメだったら初めて他者を頼ってよい。

私は、日本社会にはこのような“呪い”がある気がしています。

子育てのシーンで言えば、例えば、親族が遠方だったり、病気や怪我をしていたりで一切頼れない場合や、単身赴任で片方のワンオペ中の場合。原則親がやるべきことで、親として全力を尽くした上で、その上でも足りないところがあるなら、家事代行やシッターさんをお願いしてもいい、というような呪い。

本来は、頼れる身内がいても、家族それぞれがより生き生きとするための時間をもつために家事代行を頼んでも、なんら問題はないはず。でも、日本社会では、私は「こんなに大変だ、でもがんばっている」という前提条件があって、はじめて「助けてほしい」と言うことが許される。そんな気がしてしまうのです。

私自身のことを言えば、健康な一成人女性だった時より、夫と娘だけの核家族、かつ、娘に健康上の課題があり行政支援を受ける身となった今の方が、他者に頼りやすくなりました。

息をしているだけで価値がある

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唐突ですが、あなたは、自分や自分の大切な人たち、友人や家族について

「息をしているだけで価値がある」

と心から思ったことがありますか?常日頃思う機会はありますか?

私たちの子どもは、文字通り「息をしているだけ」となったことが何度かあります。厳密には人工呼吸器なくしては、呼吸ができなかったことも何度かあります。

ただここにいてくれる、それだけで尊く価値があると、私は心から思いました。

と同時に、「この子はずっと誰かに頼り続けるしかないの?それでいいのだろうか」ということに対する不安も、私の中に、何度となくわきあがりました。

今考えれば思い込みなのですが、私には、「他者に助けてもらう前にはまず、自分が全力で何か目に見える成果を出さなければいけない」「他者に助けてもらうのは借りであり、後で返せる見込みがなければならない」という考えがありました。自分自身が、明日の食事や、義務教育期間の修学旅行代に困る経験をした時のコンプレックスがあり、返せる見込みがない状態で助けてもらうことが怖くもあったのだと思います。

この思い込みをはずし、子どもはもちろん私自身のことも「息をしているだけで価値がある」と、心の底から思うには、自分の心に余裕が必要でした。

障害児の親の就業率は、健常児の7分の1

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厚生労働省「全国家庭児童調査」(平成21年度)および障害(児)者の家族の健康・生活調査大阪実行委員会 「障害(児)者・家族のくらしと介護者の健康調査」(平成8年)によると障害児の親の就業率は、健常児の7分の1と少ないです。

子どものために、働き続けることが良いのかについて、私は非常に悩みました。金銭面から働き続ける選択肢が最優先ではあったのですが、親として、子どもの介護やリハビリに付き合うことが、子どものためではないか、何度となく考えました。

行政、複数の病院、複数の療育機関、複数の保育園とそれぞれに何度も相談させてもらいました。その結果、「退院後なるべく早く、健常児と接する機会があることこそ、子どものリハビリには最善」と配慮いただけ、発症前に健常児として入園していた保育園にて、慣らし期間を持ちながら引き続き対応してもらえることになりました。

相談先によっては、厳しい指摘をいただいたことも、少なからずありました。そんな中で、今、私にはできることがなく、先々何か返せる見込みもない状態でも、困ったこと相談してもいいのだと分かったこと、その相談できる先を得られたことは、私にとって大きな一歩でした。

慣らし期間は、1時間程度、お昼時に私と子どもで保育園にいかせてもらう日々からのスタートでしたが、それだけでも子どもの発達は著しく、医師にも保育園の先生方にも想定以上と言われてました。発達検査上の数値からもみてとれるほどでした。私や夫では子どもに提供することが困難な、子どもたち同士での集団生活だからこその場が、そこにはありました。

子どもの入院中にも感じていたことですが、私は自分が手術ができるわけでも、点滴のルートがとれるわけでもありません。意識のない子どもの身体を撫で、握れる範囲で握り、祈るだけでした。

保育園でも、例えば管理栄養士さんたちが栄養計算し、嚥下できるように工夫した食事が、子どもに用意してもらえました。同じようなものを私が作れるようになるには時間を要しましたし、食事の準備に時間をとられると、リハビリのための語りかけや、遊具の差し出し方を学ぶ機会が削られます。

保育園の先生たちは、作業療法士さんからのアドバイスを元に、私よりはるかに早いスピードで、子どもへの接し方を工夫してくれました。

私がやろうとしてもできない、または、やろうとすると時間がかかることを、他の人にお願いすると、より早く、適切にやってもらえることがある。複雑な気持ちがゼロではありませんでしたが、今自分にできないことを事実として受け止め、お願いしたことで、私の、私自身への心の優しさ、余裕が、少しずつ増えていきました。

幸福のパラドックス

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内閣府旧国民生活局が作成した「国民生活白書」のデータからは経済的豊かさと幸福度が必ずしも結びつかないという統計結果が出ています。これは日本だけに限らず、他の先進諸国でも見られる「幸福のパラドックス」と言われる現象です。

「幸福のパラドックス」が明示的に議論されるようになったのは、1971年にブリックマンとキャンベルの二人の心理学者によって、「所得や富といった生活の客観的状況を良くすることは個人の幸福に何も影響していない」という結論を示してからです。続いて、イースターリンが1974年に所得との関係を詳細に分析し、一国内では所得の高い人が幸福度が高いという相関が見られるにもかかわらず、国際比較では少なくとも先進国間では一国の所得水準と幸福度の平均値に相関がないことを示しました。

その後、このパラドックスを解く「幸福の経済学」という分野が生まれ、年齢、失業、家族形態、ソーシャルキャピタルといった要因について実証分析が行われてきています。所得についても、絶対的な所得よりもむしろ他人の所得との相対関係が幸福度に影響しているとの報告がされています。

また行動経済学で2010年にノーベル賞を得たカーネマンは脳の活動で幸福度を測る実験や生活の質、満足度と健康との相関関係を研究しています。研究が進むにつれ、日本において幸福度に影響を及ぼす要因は、以下と分析されています。

▼幸福度にプラスの影響

・女性であること

・子どもがいること

・結婚していること

・世帯全体の年収が多くなっていくこと

・大学または大学院卒であること

・学生であること

・困ったことがあるときに相談できる人がいること

▼幸福度にマイナスの影響

・年齢が高いこと

・失業中であること

・ストレスがあること

▼影響なし

・自営業であること

・何らかのトラブルを経験したこと

興味深いと感じたのは、災害や病気などの経験は、幸福とは相関がないこと。これは、世界的な研究結果として現れています。また、幸福に相関があることとして「困ったことがあるときに相談できる人がいること」が上がっていることに、非常に共感し、納得しています。

困ったことがあるときに、相談できる先をつくろう

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復職後1年ほど、私は健常ではない子どもを預けていることに勝手に負い目を感じ、帰宅後極力自分で料理をつくり、アレルギーに影響しないよう掃除を念入りにしようと努めていました。保育園では子どもの成長段階に合わせた接し方をしていただけ、療育機関でも子ども個人によくよく向き合っていただけていました。それは、私がやるよりプロがやってくれた方が良いことであり、他の人にこれだけお願いしているのだから、自分でできることはもっと頑張らなければいけないと思っていました。

一方で職場には申し訳なさも募っていました。療育は平日休暇をいただく必要がありましたし、何より突発の発熱が多く、当日お休みをいただくことの多い日々。中途半端な状態で職場にいること自体が迷惑ではないかと自己嫌悪することも日常でした。そこで、時間をつくるために、ものすごくどうしようもないほど困っているわけではない、掃除の家事代行を依頼することにしました。

掃除はどちらかといえば好きな家事なのですが、いざお願いしてみると、レンジフードやエアコンのフィルターなど自分でやるよりはるかにピカピカにしてもらえ、自然とありがとうの気持ちが溢れました。この、ありがとうの気持ちは、やってくれたその人にも向かうもので、とても気持ちの良いものでした。

はじめはうまくいかないこともありましたが、他の人に頼ることを練習するにつれ、他の人への感謝が増し、私の心の余裕も増え、私こそがすべきことに、より集中することができるようになりました。

食器洗いや洗濯物たたみ、料理など、できるからとやっていってしまうと、いつの間にか自分自身への心の優しさ、余裕が削られてしまうことがある。

逆に、自分ができる・できない、貸し・借りの基準ではなく、ただここにいる自分が、ちょっと困っていることを助けてもらうことで、感謝と余裕が生まれ、幸福度が上がる。

「困ったことがあるときに相談できる先」は、いざ困った時にゼロスタートで作り始めると、なかなか大変です。いざ困った時、自分の心に余裕をもつことも、なかなか難しいです。なので是非、日常の、ちょっとした不便は、自分1人でがんばりすぎず、相談しながら解決する練習も、してみてほしいのです。

相談しながら解決するのは、はじめは、むしろ大変です。自分1人でやってしまった方が早い物事が多いことに、たくさん気がつくと思います。でも、困った時に助けてもらうことができるようになり、助けてもらうことも含めて、自分や周りにOKが出せるようになると、心の優しさ、余裕が少しずつ増えていきます。

是非、幸せな日々を持続可能な形でおくれるように、自分1人で抱え込まず、助けてもらう手間に挑戦してみてほしいです。

清水陽子

秋田県出身、東京都在住。フルタイム勤務ITエンジニア。「母となってはたらく」をテーマに対話を中心としたワークショップを行うNECワーキングマザーサロン第9期広報担当。目の前の問題を言葉にして解決への一歩を踏み出すことを目指す“カエルチカラ・プロジェクト”の「なかのまどか言語化塾」一期生。

カエルチカラ・プロジェクト」は、目の前の課題を変えるための一歩を踏み出せる人を増やすことを目指すプロジェクトです。

女性を中心に何らかの困難を抱える当事者が、個人の問題を社会課題として認識し、適切に言語化し、データを集め、発信することで、少しでも改善の一途につなげたい。「どうせ変わらない」という諦念、泣き寝入りから「問題を解決できる」「社会は変えられる」と信じることができる人が増えることを願っています。

発起人: WILL Lab 小安美和、研究機関勤務 大嶋寧子、ジャーナリスト 中野円佳

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