2017年9月9日 更新

企業が変わり始めた! 短時間しか働けない人でも求められる時代に

自宅近くや短時間という条件でスキルを活かせる場が増えている

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「ライフフィット転職」――、リクルートが2017年のトレンド予測の中で発表したキーワードです。同社によれば、望むくらしにフィットする働き方ができるよう、働く日数や時間などを企業と交渉する転職者が増えてきているそう。

企業側も、特に人材不足が深刻なサービス業では数年前から、1日1〜3時間といった拘束時間の少ないアルバイト・パートの求人を増やしています。最近では、専門性の高いオフィスワークについても、勤務日数や時間の条件を緩めて人材募集をする会社が出てきました。先日開催されたセミナーより、新しい方法で人材を活かそうとしている会社の事例を紹介します。

 

 

大企業が本気の働き方改革に踏み出している

3月某日、株式会社KDDIエボルバの主催で、「働き方改革実践セミナー 〜『働く』を変える始めの一歩〜」が開催されました。企業の人事や働き方改革を推進する立場にある方がたくさん集まり、関心の高さが伺えました。

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セミナーでは、まず『AERA』の元編集長 浜田敬子さんから、ここ30年ほどの働く女性の状況や、ここにきて急に「働き方改革」、「女性活躍」が注目されるようになった理由、先進的な企業の改革事例など、豊富な取材経験を元にした説得力のある基調講演がありました。

その後のパネルディスカッションでは以下の方々より、企業における働き方改革の実例が紹介されました。

・日本航空株式会社 調達本部 調達第一部 企画グループ グループ長 埋金 洋介さん

・グーグル合同会社 ブランドマーケティングマネージャー 兼 Women Will プロジェクトリード 山本 裕介 氏

・株式会社リクルートホールディングス iction!推進事務局長 二葉 美智子 氏

・株式会社新閃力 代表取締役 尾崎 えり子 氏

・Will Lab 代表 小安 美和 氏(モデレーター)

左から、モデレーターの小安さん(Will Lab)、パ...

左から、モデレーターの小安さん(Will Lab)、パネラーの埋金さん(日本航空)、山本さん(グーグル)、二葉さん(リクルートホールディングス)、尾崎さん(新閃力)

日本航空(JAL)では、2010年の経営破綻後、登壇者の埋金さんが所属する「調達本部」が発足しました。以前は各部署でそれぞれに購入していたものをこの部署で一括して調達することになり、130名の部員が総額6,500〜7,000億ほどの調達業務をこなすのに、かなりの残業が発生していたそうです。やるべき仕事は増えるが人は増やせない――、埋金さんはその状況を打開しようと、社長が「ワークスタイル改革」を打ち出したときに、トライアル部門として立候補しました。2014年夏頃から仕事の内容、やり方を徹底的に見直し、「残業して当たり前」という意識を変えていくことで、今では大幅に残業時間を減らし、メンバーのワークライフバランスが保てる部署になっているとのことです。

グーグルの山本さんは、Women Will プロジェクトのリーダーとして、様々な企業の新しい働き方への挑戦を促してきました。その数31社、皆さんもご存知の大企業が多く、世の中が大きく動いていることを感じさせます。プロジェクトの活動内容は、「Google Women Will プロジェクトに学ぶ、あなたにできる働き方改革」で詳しく紹介していますが、山本さんによれば、多くの企業は働き方を変える前は「それで仕事は回るのか」という不安を持っているものの、やってみると杞憂だと分かり、新しい働き方の良さを実感しているそう。プロジェクトが公開している「働き方改革推進ガイド」なども活用し、「まずは取り組んでみてほしい」と呼びかけました。

 

短時間でスキルを活かしたい人たちを雇ってみたら……

リクルートの二葉さんは、同社が導入した「ZIP WORK(ジップワーク)という働き方とその有効性について語りました。

「zipファイル」というと、パソコンで扱うファイルを圧縮したものですが、zipにはもともと「素早く動く」といった意味があります。リクルートでは「限られた時間で成果を出す新しい働き方」として以下のような仕事をZIP WORKと名付けました。

ZIP WORKの特徴

1.時間:時間が限定された仕事であること

2.職務内容:専門的な知識やスキルを活かせる仕事であること

3.報酬:高い専門性に見合う報酬と、昇給などのキャリアアップの機会があること

そして、これまでフルタイムの社員が抱えていた仕事の中から、より専門的知識が活かされる、組織にとっては重要だが、その社員のメインの業務ではない、といった業務を切り出し、それを担う人材を週3日4〜7時間などの条件で募集したところ、1,000件以上の応募があったそう。育児中の方からの応募が多いだろうという予想に反し、ダブルワークをしたい、介護があるなど、様々な理由でスキルをより短い時間で活かせる機会を求めている人がいたとのことです。

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結果として、現在リクルートでは企業の人事部長を経て社労士として独立した男性や、システムエンジニア経験があり家庭と両立しながら働きたい女性など、高度な専門性をもった方々が、週3〜4日で働いて成果を出しているそうです。

二葉さんは、企業側が感じるメリットを次のように語ります。

「景気が上向いて求人倍率も上がっている中、『全然人が採れなかったんだけど、時間の枠を外すだけで、こんなに優秀な人達がいるんですか!』と驚く人が多いです。皆さん、最初は『マネジメントが大変なんじゃないか』と言うのですが、試しにひとりだけ導入した部署からは、どんどん『こういう人はいないか』という要望が出てきます。

私の部署でも5人のZIP WORKERがいますが、本当に多彩な人達です。働く時間数でみるとフルタイムの人2〜3人分ですが、持っているスキルや才能という意味では5〜6人分。すごくパフォーマンスが上がっています

また、ZIP WORKをする人達の存在は、その部署全体の働き方にも良い影響をおよぼすことが分かってきたそうです。

「例えば、ひとつの業務を週2日や3日で複数の人が分担するという状況になると、仕事の引き継ぎをきちんとすることでその内容が可視化されたり、他の社員がその人たちに仕事を頼む時のルールができていったりと、以前は属人的だった仕事の仕方がどんどん進化していきました」

 

「この人に活躍してもらうには」という発想でテレワークを導入する企業も

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株式会社 新閃力の尾崎さんは、千葉県流山市の商店街に、近隣に暮らす人たちが働く「Trist(トリスト)」という場をつくりました。現在は都心の企業7社の「サテライトオフィス」としての機能も果たしており、それらの会社に採用された人たちは会社に出勤するのではなく、Tristで仕事をしています。

尾崎さんが目を付けたのは、優秀なのに力を発揮する場のなかった女性や定年退職後のシニアの方たち。離職してからブランクがあるなど、自信をなくしている方たちに、テレワークという新しい働き方をするためのキャリア教育プログラムを提供しました。『なぜ働くのか』『どうやってチームで働くのか』といったマインドセットから、クラウドサービスを使った情報共有やセキュリティ対策などのITリテラシーまで、一通り学んだ人たちは、その後は自主的に学び合うようになり、どんどんスキルを高めているそうです。

その結果、企業からは「この人に働いてもらえるなら」ということで、都心のオフィスに通勤しなくても良いという条件で採用してもらえるようになったとのこと。

「どの企業も、最初からサテライトオフィスを導入しようという気はなかったんです。でも、Tristにいる人たちを見て、『こんな人たちが雇えるなら、変える必要があるかもしれない』と気づいてもらいました。『ママだからサテライトオフィス』ということではなく、『この人材が欲しい。この人材が一番効果を出すには、Tristで働いてもらうのがベストだ』と。企業に合った人を採るのではなく、採りたい人に合わせた制度を作っていこうということなんです」

 

住宅地の託児所付きオフィスに集まる優秀な女性たち

今回のセミナーを主催したKDDIエボルバも、働き手のニーズに合わせた職場づくりをしています。昨年から、「働きたいママを徹底的にサポートするワーキングスペース」をコンセプトに「ニア宅オフィス」の運営を始めました。

そこで行われている業務は、同社が顧客企業から請け負っているコールセンター業務、ブログなどのライティング、経理処理、データ入力などです。大きな特徴は「ニア宅」の名の通り、働く人の自宅近くにオフィスがあるということと、託児所が併設されていて、希望者は無料で子どもを預けられるということ。

第一号の「ニア宅オフィス かみふくおか」は、埼玉県ふじみ野市の上福岡駅からほど近いショッピングセンター「西友」の中にあり、「子どもを預けることができず、働けなかった」というお母さん達が勤務しています。

「ニア宅オフィス かみふくおか」の立ち上げを担当された高橋さんは、ほとんど口コミだけで10名の募集枠に60名の応募があったことに驚いたそうです。これは、これまでのコールセンターでは考えられないことだそう。また、応募者は正社員経験のある方がほとんどで、様々な資格を持つ人たちも多いという点でも、「ニア宅オフィス」の可能性を感じているとのこと。

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同社は、3年で10店舗を目指し、他の地域にも「ニア宅オフィス」を展開していく準備中です。特に感心したのは、今後の構想として「ニア宅オフィス」に学童保育の機能を持たせたり、在宅ワークで仕事を継続できるようにしたり、子どもの手が離れれば都心のオフィスでのフルタイム勤務の道も用意したりと、働く人の将来のキャリアのオプションも検討しているというお話でした。

これらの企業の事例を知り、「スキルや経験が活きるキャリア望むなら、多少プライベートを犠牲にしてでもフルタイムで働き続けるしかない」という状況が変わりつつあると感じました。「短い時間で働きたい」、「自宅近くで働きたい」というのはワガママな願いなの……? と悩んできた人には希望が感じられる動きでしょう。

 

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