あなたの会社は守ってる?残業に関するお約束

職場においてどのくらいの残業が発生するのか、残業代はきちんと支払われるのかといったことは、くらしと仕事を考える上で重要な問題です。どんなに忙しい時でも一定時間以上の残業はNG、妊産婦や小さい子どものいる労働者が請求すれば残業や休日出勤はできないなど、法律上のルールを知り、ワークライフバランスを守る武器にしましょう。

ライター

nachaco
一児の母でフルタイム勤務やってます。暮らしやすいワークスタイルを求めて日々奮闘中。趣味は道の駅めぐりです。

1.そもそも残業とは?

私たちは何時間働いていいの?

残業とはなにかを知るためには、まず私たちが法律上どのくらいの時間働けるのか知る必要があります。労働基準法(以下労基法)では、会社が社員(アルバイトやパートなども含む)を働かせることができるのは、原則として1日8時間、1週間に40時間までと定めています。これを「法定労働時間」 といいます。

また、労基法は休憩や休日についてもルールを定めています。休憩については、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上、休日については毎週1日または4週間を通じて4日以上の休日を与えることとしています。

正しい手続きのない時間外労働は違法!

法定労働時間を超える労働や休憩時間に働くことを「時間外労働」 、本来休日である日に働くことを「休日労働」 と言います。本来これは禁止事項ですが、時間外労働協定(36協定)により認められることになっています(詳細は「2.時間外労働が認められる正しい手続きとは?」を参照)。逆に、この手続きを経ずに時間外や休日に働かせるのは違法です。また、時間外労働や休日労働には、割増賃金が払われなければなりません。

法定労働時間が適用されない場合もある

残業時間の算出の基本となる法定労働時間ですが、以下の人は適用されません。

  • 農業、水産業、畜産業に従事する労働者
    天候など自然環境に業務が左右され、規定が適さないため。
  • 管理監督者、機密事務取扱者
    管理監督者は一般に管理職とされていますが、肩書や職位などの名ばかりではなく、立場や権限が伴った人のことを指します。また、機密事務取扱者とは、役員の秘書などを指します。
  • 監視断続業務、または休憩時間は少ないが手待ち時間の長い労働者
    守衛や門番など緊張の少ない業務や、役員専用自動車運転手などを指します。

時間外労働=残業?

「法定労働時間」が法律で決められた労働時間であるのに対し、職場の就業規則などで定められたものを「所定労働時間」 と言います。企業によっては、フルタイムでも一日当たりの労働時間を7時間とするなど、法定労働時間より短い時間を設定している場合があります。

一般的に「残業」と言うときは、「所定労働時間」を超えて働くことを言います。このとき注意しなければならないのは、自分の行った残業が法内残業(法定労働時間内)である場合、法律上は時間外労働=残業ではないということです。上に挙げた「所定労働時間=7時間」のような場合、それを超えても法定労働時間の8時間までは、36協定を交わしたり割増賃金を払う義務はないのです。(企業が独自に割増賃金を払うことにしている場合もあります。)

 

2.時間外労働が認められる正しい手続きとは?

時間外労働協定(36協定)

前述のように、会社が法定労働時間を超えて社員を働かせる場合、労使の間で時間外労働協定(36協定・サブロク協定と呼びます) を結び、行政官庁に届け出る必要があります。36協定は書面によって取り交わされなければなりません。書面には

  • どのような場合に時間外労働させるのか
  • 業務の内容
  • 必要な労働者の人数
  • 延長時間の限度

などを明記の上、労使の代表者(労働組合があれば労働組合)が各1通を所持します。これが協定の取り交わしです。そしてその協定書を、所轄の労働基準監督署(以下労基署)に届け出る必要があります。36協定は、労使間で協定を結ぶだけではなく、それを労基署に届け出なければ効力を発揮しないので注意が必要です。

36協定の上限

36協定を結んだからといって、会社側はいくらでも労働時間を増やせるわけではありません。労基法により、以下の表のように期間に応じて限度時間の基準が決められています。

特別条項付き36協定

限度時間以内の延長時間を決めた上で、特別な理由があって労使が合意すればそれを超えた労働時間を設定できる「特別条項付き36協定」 というものもあります。特別な理由とは、予算・決算業務、ボーナス商戦時の繁忙、大規模なクレーム対応などを指します。慢性的な残業を防ぐため、一時的・突発的な理由に限られているのです。

残業が免除されるのはどんなケース?

なお、以下の場合は、36協定を締結していても時間外労働や休日労働をさせることはできないなど、より厳しい時間外労働の制限があります。

  • 18歳未満(災害等・公務の場合を除く)
  • 妊産婦が請求した場合(管理監督者である場合を除く)
  • 小学校就学前の子の養育者が子の養育のために、または要介護状態にある家族を介護する者が介護のために請求した場合(事業の正常な運営を妨げる場合を除く)

育児と介護に関わるルールについてはこちらをご参照ください。↓

 

3.フレックスや裁量労働制の場合は?

これまで説明したルールは1日8時間、1週間40時間の原則に沿った場合のものでしたが、その原則に当てはまらない勤務形態もあります。具体的には以下のような制度がありますので、ご自分の勤務形態と照らし合わせてみてください。

変形労働時間制

1日8時間、1週間40時間の原則について、1か月単位、もしくは1年単位など一定の期間内で平均してみた時にクリアしていればよいという制度です。デパートやレジャー施設など、季節によって繁忙のムラがある業種が効率的に人員を配置するために採用する場合が多いようです。

フレックスタイム制

一定期間内の総労働時間を会社側があらかじめ決めておき、労働者はその枠内で自由に労働時間を決められる制度です。必ず勤務していなければならないコアタイムが設定されている企業も多いようです。ワークライフバランスの充実を図るため、多くの企業が導入しています。

みなし労働時間制

外回りの営業など、事業場外で労働するために正確な労働時間を算出することが困難な場合、所定労働時間分を働いたとみなして計算する制度です。
例えば、朝自宅から直行で営業先へ向かい、15時に事業所へ戻ってきた場合、15時までは所定労働時間働いたとみなし、それ以降の労働は実労働時間を計算するのです。

また、研究開発員など成果を出すために労働時間の管理を本人の裁量に大幅にまかせる必要がある裁量業務も、みなし労働に含まれることがあります。

 

4.時間外労働の制限は厳しくなる方向

安倍内閣は仕事と子育ての両立を図りやすくするため、長時間労働を削減していく方向性を打ち出しています。具体策として、労基法を改正して36協定のあり方を見直し、労働時間の上限の規定を厳しくすることも検討されています。適切でない長時間労働をさせている企業に対する労基署の立ち入り調査も厳しくする方向です。

私たち働く個人も、「一生懸命働く=長時間労働」ではなく、メリハリをつけて働き、健康や家庭とのバランスを保ちながら仕事をするよう意識を切り替えていく必要がありそうです。

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