2017年6月22日 更新

複業推進の2社が考える「人生100年時代」に必要な働き方とは?

エンファクトリーとサイボウズが考える複業のメリットとは

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「働き方改革」の一環として、政府が正社員の副業を後押しする一方で、企業側は優秀な人材が流出してしまうリスクをともなうため、なかなか踏み切れないのが現状です。 では、すでに副業・複業を容認している企業の狙いは何か? 実際に副業・複業をしている人たちの実感は?

イベント「これからの複業・副業を考えるイベント“人生100年時代”に必要な働き方とは」で語られた、企業と個人、それぞれの声をご紹介します。

 

 

複業OKで注目を浴びるサイボウズとエンファクトリー

複業・副業を禁止する企業が少なくない中で、反対に推進する企業もあります。本イベントの第1部では、複業研究家、働き方改革コンサルタントであり、株式会社HARES 代表取締役の西村創一朗さんの司会のもと、「複業採用」を実施するサイボウズ株式会社でコーポレートブランディング部長を務める大槻幸夫さん、「専業禁止」を掲げ、社員の復業を推進している株式会社エンファクトリーでen Factory LAB ユニットサービスマネージャー兼デザイナーを務める藤生朋子さんの2人をゲストに迎え、企業側の狙いなどについてディスカッションが行われました。

 

企業にとって社員の副業は、本当にリスクしかないのか

サイボウズとエンファクトリーは、政府が副業推進を唱える以前から副業を解禁している会社です。


特に、エンファクトリーは「副業容認」ではなく、「専業禁止」を謳うほど徹底しています。「専業禁止」と言われて、社員に動揺はなかったのでしょうか。

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「社長はいったい何を言っているんだ……? とは思いましたね(笑)」と藤生さん。しかしその後、社員たちにはこんな動きがあったそうです。


「『専業禁止』が始まった頃は、社員同士で会社を起業して、新たな仕事を立ち上げるスタイルが多かったです。本業以外に仕事を持つという自由を与えられたぶん、個人にかかる責任は重くなりました。会社が専業を禁止して複業を推進した理由は、『複業による責任の重さ』を感じて実行することが、社員が成長する一番の最短ルートだと思っていたからです」


個人の成長をうながしてくれる企業は、社員にとってスキルアップができるありがたい会社です。しかし複業は個人だけでなく、会社側にも大きなメリットをもたらしたと言います。


「複業をすることで、経営者の目線を持つ社員が増えるため、会社の人的資産が向上しました。組織内での仕事は、どうしても役割分担による作業になります。それが複業となると、すべてを自分でこなさないといけなくなる。すると、本業の仕事に対しても、全体を見渡す目が養われるので、『現在の自分の仕事は、会社としてどう動いているか』という考え方ができるようになります」


本業と複業の相乗効果により、社員の成長にとどまらず、会社の組織全体が成長できるとのこと。そこで気になるのは、スキルアップした社員が独立して会社を去ってしまう「人的流出」。しかし、エンファクトリーでは、独立する社員ともつながりを持つことで、会社の利益に変えているそうです。


「独立した元社員を外部パートナーとして、一緒に仕事をする『フェロー制度』を設けています。この制度により、会社に新しい事業が生まれやすくなり、可能性が広がりました。弊社が運営する『TSUKURITTE STORE』というECサイトがありますが、これはフェロー制度から生まれたサービスなんです」


複業を認めることで、優秀な人材が流出する危険性も生まれますが、エンファクトリーでは、こうしたリスクもチャンスととらえた結果、お互いに利益を生み出せる関係が生まれたと言います。

 

会社が副業にも本業にもなる風通しのよい環境を

一方、サイボウズ株式会社では、2017年から「複業採用」という新しい採用方法が実施されています。これは、サイボウズを含む複数の仕事を持とうとする人を採用するというもの。会社にはどんな変化が生まれたのでしょうか。

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「『複業採用』には約100名の応募がありましたが、採用したのは2名でした。そのうち1名は新潟県で本業をされている方で、サイボウズでの仕事はリモートと出張で対応してもらっています。まだ弊社にないノウハウを持っている人なので、インストラクターとして仕事をお願いしました。複業採用の面白いところは、通常の採用方法では出会えないスキルを持った人と出会えることですね」


また、複業採用だけではなく、社員の副業も認めているサイボウズですが、こちらは会社にどんな影響があったのでしょうか。


「エンファクトリーさんと同様に、社員のスキルが上がることで、会社全体の組織の質が向上しました。社員が組織内だけではなく、社外を意識することで自分の価値を客観的に判断するようになります。目の前の仕事ばかりではなく、会社とは違う仕事をこなすことで、『商売を肌で感じる』わけです。この感覚は、どんな仕事をしていくうえでも、とても重要なものだと思います」


さらに、「人材の流出によるリスクもあるが、それ以上のものを会社にもたらしてくれる」と大槻さん。


「複業採用による新しい人材との出会いに加えて、社員も副業をすることで、さらに外部から新たな人脈も生まれます。『企業=本業』ではなく、社員の立場によっては、会社が副業にも本業にもなるように、人の出入りがしやすい環境であれば、そこからどんどん新しいビジネスが生まれてくるんです


また、サイボウズでは「弊社で実現できない夢を持った社員を抱えていても、お互いに仕方がないので、そこは潔く手放します」とのこと。その代わり、「35歳以下の社員は、退職して6年以内であれば再び戻ってこられる出戻り制度」として、「育自分休暇」という制度があるそうです。


「青年海外協力隊へ参加したいと退職した社員が、3年後に再び戻ってきた例があります。弊社としても、成長した元社員に『またサイボウズで働きたいな』と思ってもらえるよう、日々努力をしなければならないという良い意味での緊張感がありますね」

 

副業の容認が企業の生き残る道になる?

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こうした2社の話を踏まえると、企業側には副業によるデメリットよりも、メリットのほうが多いように感じます。「副業を容認しない会社はまだまだ少なくありませんが、今後は企業も副業を促進しないと生き残れないのでは?」と大槻さん。


「人口減少により、採用難は悪化をたどる一方です。とはいえ、採用する人材のスキルは妥協できません。優秀な人材であればあるほど、これからは引く手あまたの売り手市場になるでしょう。そうなると、人材の価値はどんどん釣り上がり、中小企業では独占して囲うことが難しくなってくる。副業を認めないことには、会社が生き残れないのではないかと思うんです」


最後にお二人から、副業の容認に二の足を踏んでいる企業へメッセージをいただきました。


大槻さんは「管理職の育成が重要」とのこと。


「副業を容認することで、会社の組織的な問題も少なからず発生します。特に、管理職であるマネージャーが忙しくなることは必至です。慌てて副業を容認するよりも、会社がしっかりとした制度や対応策を作ってからのほうがスムーズではないでしょうか。また、いっぺんにやるのではなく、できそうな部署から少しずつ初めて、成果を出しながら広めるのもいいかもしれませんね」

また、藤生さんからは副業への足掛けとして、新しいヒントをいただきました。

「大槻さんの意見に賛成です。また、副業の容認が難しい場合は、企業の間でお互いのニーズに合った人材をトレードするところから始めてみるのも面白いかもしれません」


副業を、成長した社員が流出するリスクしてとらえるのか、新しい人脈としてビジネスパートナーととらえるのか。これからは、「社員=会社の持ち物」ではなく、より対等でフラットな関係性が望まれていくのかもしれません。

後編では、現在すでに副業、複業をこなしている人たちのディスカッションを紹介します)

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