2016年11月10日 更新

在宅ワーカーだけでなく会社や上司にとっても「リモートワーク」は必須のスキルに

会社でリモートワーク導入を失敗しないためには、どんな点に注意したら良いのでしょう? 2016年9月3日に開催された「連携カフェ2016 Vol.3 【テレワーク時代のマネジメント ~目の前にいない部下の管理法!~】」より、「リモートワーク・テレワーク エヴァンジェリスト」ながきさんと、ソニックガーデン倉貫社長のお話を紹介します。

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実は多くの会社が失敗している「在宅勤務(テレワーク・リモートワーク)」の導入

トヨタ、リクルート、三菱東京UFJ銀行にユニ・チャーム……、在宅勤務制度を大々的に導入する会社が増えています。ところが、「リモートワーク・テレワーク エヴァンジェリスト」として多くの在宅勤務導入を支援してきた ながきふみのりさんによると、導入しようとしたものの失敗している企業も数多くあるそう。ITの発展で同じ場所に集まらなくてもできる仕事は増えていますが、それをスムーズにやっていくのは、そうそう簡単ではないということです。

リモートワーク・テレワーク エヴァンジェリストの、なが...

リモートワーク・テレワーク エヴァンジェリストの、ながきふみのりさん

それでも、今後は多くの企業が在宅勤務を含むテレワークに積極的に取り組まざるをえないでしょう。なぜなら、満員電車に乗らなくていい、子育てや介護などと両立しやすい、住む場所を自由に選びやすいなど、雇われる側にとってのメリットは多く、「できればテレワーク可能な会社で働きたい」と考える人は増えているからです。実際、人手不足が深刻なIT業界では、優秀なエンジニアを獲得するために「リモートワーク可」という求人が増えています。

皆さんも、もし自分の会社がこれからテレワークを取り入れていくなら、失敗は避けたいですよね。そのためにはどんな点に気をつければよいのか、9月に行われたイベント「連携カフェ2016 Vol.3 【テレワーク時代のマネジメント ~目の前にいない部下の管理法!~】」より、ながきさんと、株式会社ソニックガーデンの社長 倉貫義人さんのお話を紹介します。

※なお、この記事中では「在宅勤務」、「テレワーク」、「リモートワーク」を「会社員がオフィスに行かずに働く」という意味で使っています。厳密には、「在宅勤務」は社員が自宅で働くことを指すのに対し、「テレワーク」は働く場所に外出先なども含み、会社に雇用されていない人の働き方も含むという違いがあります。また、「テレワーク」は15年以上前から政府も使っている用語ですが、最近はITベンチャーなどを中心に「リモートワーク」という呼び方が増えています。

在宅勤務導入に失敗する会社ってどんな会社?

企業の取組の失敗というのは、なかなか表に出てこないものですが、「リモートワーク・テレワークを普及させるためには、失敗事例にフォーカスし同じ失敗をしないようにすることが大事だ」と、ながきさんは言います。

全国各地でテレワークの導入に関わってきたながきさんは、「テレワーク導入の失敗あるある」を4つのタイプに分けて紹介しました。

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1.不公平感を生む「ごほうびテレワーク」

まずは出産・育児という理由のある女性社員を対象に在宅勤務のトライアルをしたところ、独身の女性から「会社にかかってくる電話の対応など、自分たちが埋め合わせをしなければいけない。あの人達だけ在宅勤務ができるのはずるい」という意見が出たり、男性からは関心を持ってもらえなかったり……、結局はトライアルのみで本格導入に至らなかった、というようなパターンです。

2.社員に選択権がない「やりすぎ・やらなすぎ」

全社を挙げてテレワークを導入し、テレワークをする必然性のない人にまで強制した結果、反発を招いてしまう。あるいは逆に、組織のトップがテレワークをしないので、社員も制度を使いづらくなって普及せず、というパターンです。

3.「費用負担」で及び腰に

「自宅で仕事している時の光熱費を社員が負担するのはおかしいのでは?」という議論が発生。個別精算を検討するが、社員も経理も対応の手間が増え、会社としても「むしろコストが増える」と、取りやめになるといったパターンです。

4.自分の存在意義を見失った「管理職の抵抗」

部下が在宅勤務を始めると、管理職は「目の前にいない部下をどう管理する」という問題に直面します。この問題がうまくクリアできないと、管理職の抵抗によって制度導入が立ち消えになるということがよく起こります。

目的の明確化と、成功させるためのしくみ・工夫が必要

4つの失敗パターンはどうしたら解決できるのでしょう?

ひとつは、「何のためにテレワークを導入するのか」という目的を明確にし、社員みんなで納得して進めることでしょう。「同業他社がやっているから我が社も」だと、ちょっとした壁に直面しただけで「やっぱり止めよう」となったり、そうはならないまでも「使えない制度」になってしまうのです。

また、「テレワークは場所が異なるだけ、それ以外はすべて同じルールで仕事を進めましょう」というわけには行きません。当然、離れていてもスムーズに仕事をするためのしくみや工夫が必要です。例えば「失敗あるある」3番目の「費用負担」については、自宅の光熱費を実費精算するのは非現実的かもしれません。でも、固定額の在宅勤務手当のようなものを新たに作るといった解決方法は考えられるはずです。

オフィスへの通勤を「義務」から「権利」に変えたソニックガーデン

イベントの後半は、「失敗あるある」4番で問題となった「テレワークのマネジメント」をテーマに、ながきさんとソニックガーデン社長の倉貫義人さんの対談が行われました。ながきさん曰く、ソニックガーデンさんは「日本で一番テレワーク・リモートワークをやっている会社」だそう。『くらしと仕事』でも「リモートワークジャーニー」 の主催者として何度か倉貫さんのお話を紹介しています。

ソニックガーデンでリモートワークのために作ったコミュニ...

ソニックガーデンでリモートワークのために作ったコミュニケーションツール「Remotty」の説明をする倉貫義人さん

社員の誰もがリモートワークOKという制度のもと、チームとして仕事を回していくノウハウについては、倉貫さんの著書『リモートチームでうまくいく』に詳しく書かれています。今回の対談では、その本には載っていない最新の情報が語られました。

ひとつは、「オフィスをなくしました」という話です。

同社では、ある時に創業メンバーのひとりが海外でリモートワークをし、それがうまくいったので「勤務地不問」の採用をするようになったところ、今では30名ほどのうち半数は地方でリモートワークをする社員になっています。やがて、首都圏近郊に住んでオフィスに通える人も含めてリモートワークを基本とする働き方にシフトしたため、「もうオフィスは不要」と判断。以前の広いオフィスを解約したのです。

面白いのは、一緒に働く場所を完全になくしたのではなく、自由が丘にマンションを一部屋借りたという話です。全員リモートワークOKなのですが、都会の人は仕事専用の部屋が持てなかったりして自宅では仕事がしづらいこともあるので、使いやすい仕事場を用意することにしたのだそう。そこは、社員にとって通勤する義務のあるオフィスではなく、使う権利のあるワークプレイスなのです。

自由が丘のワークプレイスはマンションなので寝泊まりもできます。だから、地方の社員が東京に来たときに宿泊場所にしたり(家族も宿泊OKだそう!)、みんなで合宿をしたりするのにも使えます。

今、街中のカフェやコワーキングスペースなど「ノマドワーク」をできる環境は増えたものの、いざやろうとなると混んでいたりして仕事に集中できないことも多々あります。今後はこのように、会社側が仕事しやすい環境を用意してくれるというのが、組織に属して働く大きなメリットになるかもしれません。

ソニックガーデンでは、新人はリモートワーク禁止!

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ソニックガーデンの「ワークプレイス」は、自由が丘の他に東京都町田市と岡山にもあるそう。これまた面白いのが、町田のワークプレイスは半分は社員の住居であるというお話です。

社員のリモートワーク化をどんどん推進しているソニックガーデンですが、実はリモートワークを禁止されている社員もいます。それは、新卒で採用したキャリアの浅い社員たち。社会人になっていきなり一人きりの環境で仕事の仕方を覚えるのは無理があるということです。

町田のワークプレイスに住んでいるのは、新卒で入社して3年目の独身の社員で、そろそろリモートワークに向けた練習をするべきタイミングであるとのこと。かつ、自由が丘のオフィスには少し遠いので、どうしようかと考えた結果、引っ越しを機に少し広めの部屋を借り、寝室は個人の場所、リビングは会社のワークプレイスとすることにしたそうです。そして、もうひとり町田に住む先輩社員がそこに通い、一緒に仕事をしているのです。

先輩のやり方を身近で見ながら、自律的なリモートワークを始める準備をするというこの方法、すごくいいですね。世間ではリモートワークに関して、「ツールと制度があればすぐにでもできる」とか、逆に「自己管理能力のある人にしかできない」といった情報が溢れていますが、リモートワークのスキルは学んで身につけていくことが必要だというソニックガーデンさんの考え方が、もっと広まればいいな、と感じました。

会社や上司の「テレワーク・リテラシー」が問われる時代に

ながきさんや倉貫さんのお話からは、テレワーク・リモートワークは「なんとなく」始めても上手く行かないこと、リモートワークが上手にできる組織や社員を育てていくという視点が、会社や上司達に不可欠になるだろうということが分かります。

ただ、この点で経験豊富な経営者や上司達はまだ少ないですから、リモートワーカーや在宅ワーク経験者達が声をあげていくことも重用でしょう。今回の連携カフェでも、後半は参加者同士がディスカッションし、様々なアイデアを出し合い、それぞれの場に持ち帰っていきました。こういった情報共有も活かし、テレワーク・リモートワーク導入に失敗しない組織が増えていくといいですね。

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