2017年1月31日 更新

いつかは起業〜母親になって子どもの頃からの夢を叶えた〜「楽器オルゴール」のお店をオープンした秀島えみさん

「30代前半で起業しよう」、そう考え、20代は様々な職業経験や専門知識を得てきた秀島さん。ゆっくり焦らず準備をし、「これは」と思えるビジネスを見つけたのは、お子さんを持ったことがきっかけでした。

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優しい音色が穏やかな時間を演出してくれるオルゴール。江戸指物の巧みの技を使った「楽器オルゴール」をご存じでしょうか。櫛歯の弁をはじいて音が出るオルゴールは、本体を包む箱によりその響きが変わると言われ、木の繊維にそって音が響きます。周囲を囲う部分に釘や接着剤を一切使わず仕上げる江戸指物のオルゴールは丸みのある心地よい音を耳に届けてくれます。このオルゴールに魅せられてショップを立ち上げた秀島えみさん。会社員時代に思い立ち、仕事と子育ての合間を縫って起業準備をされました。起業のきっかけ、準備について伺いました。

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子どもの頃から「働くこと」への憧れがあった

―起業はいつ頃から考えられていましたか

実は、かなり前から考えていました。父も母もそれぞれ自営業でしたし、祖父母は理髪店を営んでいたことも影響したのかもしれませんが、働くことに対しての憧れのようなものがありました。小学生の時、同じ学校に劇団に所属している人がいて、デビューされたことがあり「子どもでも働けるんだ!?」と驚きました。近所に野菜を売りにくる人の手伝いをして、「いらっしゃいませ」と声をかけることがとても楽しかったことを覚えています。中高一貫の私立に通っていたのですが、中学を卒業したら働きたいと親に話したほどでした。結局、反対されて高校に進みましたが、卒業後はすぐに就職しました。いつか自分の商売をしたいという思いはずっとありました。でもまだ漠然とした希望でしたね。

―希望からどのようにして現実的なものに近づいたのですか

すぐに現実のものとなったわけではありません。まず描いたのが人生設計で、20代はいろいろな経験を積んで、どんなことが自分に合っているのかを見極める時期だと考えました。その後、30歳くらいで方向を決めて、30代前半で起業しよう、そんな風に計画を立てたのです。それに沿うように20代は派遣やアルバイトなどでさまざまな職種を経験しました。

28歳の時、これからはパソコンの時代だと感じて一度仕事を辞め、職業技術訓練校に2年通って情報工学について学びました。卒業後は青年海外協力隊に応募しようかなと考えていたのですが、夫に出会い結婚することになり、日本に留まりました。そこからはまた企業に所属し、会社員として生活していました。

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心から素敵だと思える物を売りたい。温めた思いと長期ビジョンが実る時

―何年たっても起業に対する夢は持ち続けていたのですか

そうですね。営業の仕事に何度か携わってきたのですが、社員として働く場合、必ずしも自分が欲しいものや興味のあるものを売るわけではありません。自分が「素敵!」と心から思えるものを売る仕事をいつかしたいという思いはずっと持っていました。ただ、売る物に出会えていなかった。そのまま時間だけ流れていった感じでした。そして、人生設計に抜けていたところがありました。それが出産という大仕事です。子育てもあり、起業の夢は持ち続けていましたが、なかなか具体的なものになりませんでした。でも、この子育て経験が私に出会いを与えてくれました。

―出産後も仕事に復帰されていたそうですが、そんな中、「これは!」と思える商品に出会われたのでしょうか

子どもの頃にオルゴールミュージアムを訪れたことがあり、オルゴールって素敵だなと思った記憶がありました。育児休暇中に子どもと向き合う日々の中で、オルゴールのことを思い出しました。音楽と数学の教育は早い方が良いといわれますが、私は楽譜が読めず、楽器を弾くこともできません。かといって、子どもをいつもコンサートなどに連れていくこともできない。子どもに良質な音楽を気軽に聞かせる方法はないかなと探していた時に、自分が子どもの頃に聴いたオルゴールのことを思い出したのです。

検索していると「楽器オルゴール」というものが出てきました。偶然にも検索した当日に展示会があると書いてあったのです。これは聴いてみたいと思い、会場に足を運んだのが「楽器オルゴール」と出会ったきっかけでした。素晴らしい音色で、はじめは自宅用に購入することを考えて、翌日に夫も連れて展示会に行きました。注文から1か月ほどで手元に届いたオルゴールは、豊かな音のある生活を私にもたらしてくれました。

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「楽器オルゴール」の特徴のひとつは、サウンドボックス(共鳴箱)。下から、低音、中音、高音域の音を響かせる役目を持ち、小さなオルゴールもこの上に載せることで、驚くほど豊かな響きを楽しむことができます。

―客から販売する側に変わられるわけですが、楽器オルゴールで起業しようと思われる決め手はどこにありましたか

まず第一に、自分が使ってみて本当に良いものだと思えたことです。癒し効果があり自宅でストレス解消に役立ちました。職人の方に開発秘話やこだわりを聞き、知れば知るほどその魅力に魅かれていきました。世の中にオルゴールと呼ばれるものは沢山ありますが、江戸指物の技を使った「楽器オルゴール」の良さは格別のものでした。私自身、もともと伝統工芸に対する興味があったということもあります。職人さんが一つひとつ手作りで造る「楽器オルゴール」は、世界に一つだけの自分の音色です。全く同じ音色のものはないという希少価値があります。耐久性もあり、聴くほどに音も良くなり、大切に使えばいく世代も引きつくことができる品です。こうした良さに気が付いた時、これをたくさんの方に知ってほしいと心から思えました。助産院で知り合ったママ友などに呼びかけて「楽器オルゴール鑑賞会」を催してみたところ、反応がよかったというのも起業に踏み切るきっかけになりました。

会社勤めしながら起業準備ができたのは、土曜日開催・託児付きの講座のおかげ

―起業の準備に入られた時はまだ会社勤めをされていたとのことですが、どのような形ではじめられたのですか

武蔵小山創業支援センターが実施していた「女性のための起業スクールMU☆SAKO」に通いました。事業計画書を作るというゴールに向けて専門家の方からいろいろなことを教えていただけました。受講には品川区の助成金もあり、全9回の講座が3万円弱で受けられました。講座は仕事が休みの土曜日開講で、託児もあったおかげで無理なく準備を進められました。はじめは、平日は会社で働き、イベントやネット販売で事業を展開していたのですが、子どもが保育園との相性があまりよくなく、他の園に転園することになったことがきっかけで、店舗が決まれば楽器オルゴール販売に専念しようと決めました。運よくとてもよい場所に店舗の空きが出て、競合を押さえて許可が下りたこともあり、「今だ」と思い、この1月に念願のお店をオープンさせました。

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オープンしたばかりの可愛らしいお店は、湧き水の出る森の入り口にあります。

―第5回ウーマンズビジネスグランプリin品川ではさわやか信用金庫賞を受賞されていますね

はい。正直なところ、起業について家族からは不安の声がありました。会社を辞めてまでするにはリスクがあると思われていたようです。「ウーマンズビジネスグランプリin品川」で賞をいただいたことで、家族も理解を示してくれました。色々な意味で、出場して良かったと思います。

―秀島さんの人生設計、次はどのようなものが入っていますか

「楽器オルゴール」の販売だけでなく、制作もできるようになりたいと考えています。4月からは江戸指物の技術を習得するため、工房に通い勉強します。すぐにできるようになるものではないですが、焦らずやっていきたいと思います。

秀島えみ(EMI-MUSICBOX 代表)

秀島えみ(EMI-MUSICBOX 代表)

高校卒業後、営業職などを経験し結婚。子育て、会社勤めの傍ら起業準備をして2017年1月「楽器オルゴール」専門店をオープン。第5回ウーマンビジネスグランプリin品川では「さわやか信用金庫賞」を受賞。「楽器オルゴール」の良さを伝えるため、保育園や幼稚園、イベントなどでワークショップなども開催している。

EMI-MUSICBOX

EMI-MUSICBOX
楽器オルゴールとは、箱を作る江戸指物職人の永井氏と、機械を作る㈱三協商事(現 日本電産サンキョー㈱)が、共同開発した楽器です。やわらかく、心やすらぐ音を奏でる このオルゴールは「楽器」そのものです。多くの楽器は箱や板、管で共鳴させることで
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