2017年2月22日 更新

出産・子育ての始まりを、自分のくらしと働き方を考えるチャンスに〜イベント「MadreBonitaDAY2016」より

「MadreBonitaDAY2016 -子育てのスタートをみんなで支え合おう-テクノロジーとコミュニティで私たちの子育てを変えていく みんなではじめる新しい「家族」のかたち」に参加しました。

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「産後ケアの普及と研究を通じて家族の笑顔をふやしたい」を活動目的とするNPO法人マドレボニータのチャリティイベント。大変な産後をみんなで支え合うことが社会復帰の意欲へもつながるのではーー、そんなヒントをたくさんいただけたイベントの内容をご紹介します。

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産後ケアの大切さとは?

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イベントの第1部では、「マドレボニータが目指す未来」として、NPO法人マドレボニータのプレゼンテーションをお聞きしました。

誰も教えてくれない産後のトラブル

子育てのスタートという大事な時期に様々なトラブルを抱えている実態について紹介がありました。

特に産後の3大危機として「産後うつ(11人に1人)」「夫婦の不和(産後2年以内が最多)」「乳児虐待死(0才児が43.1%)」があり、厚生労働省のデータにも高い数値が示されています。

産後ケアって知ってますか?

産後には3つの時期「産褥期(産後4~8週間)」「リハビリ期(産後2ヶ月~6ヶ月)」「社会復帰期(産後7ヶ月以降)」があり、それぞれ適切なケアが必要。

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マドレボニータでは産後ケア文化を知ってもらい、体のケア、心のケアをしてリハビリできる場を教室として提供しています。

マドレボニータ代表の吉岡マコさんは「産後ケアの活動は産後女性だけでなく、社会全体で考えていきたい。他人事ではなく自分のこととして考えていってほしい」と言います。

問題解決を阻む4つの壁

「今まで産後ケア文化の普及を進めてきた中で壁が4つある」と吉岡さん。

それは、産後ケアについて、「知らない」「(価値観が)受け入れられない」「実践できない」「発揮できない」ということです。

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この4つの問題の壁を超えるにはどうしたら良いのか、それを解決する方法の1つとして、マドレボニータが開発したアプリが紹介されました。

出産と産後の準備アプリ「ファミリースタート」とは?

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出産と産後の準備アプリ「ファミリースタート」が2016年9月24日にリリースされました。

社会問題の解決にチャレンジする非営利団体を支援するプログラム「Googleインパクトチャレンジ」でWomen Will賞に選ばれ、開発されてきたことでも話題です。

こちらのアプリには5つの特徴があります。

・妊娠、出産から産後の生活までしっかりサポート

・出産、産後に必要な準備がひと目でわかる

・妊娠中から産後までを快適に過ごすヒントがいっぱい

・妊娠中から産後までの大切なひとときを写真で登録、共有できる

・夫婦で、家族で、仲間でチームを作り協力しあえる

「アプリに夫婦二人のコーチ役として伴走してもらい、産後の準備が進められます。さらにアプリを媒介にして人と人とのコミュニケーションが促進されれば良いなと願って開発しました」とアプリ開発制作リーダーの林理恵さん(NPO法人マドレボニータ理事)

産後ケアから考える仕事のキャリア

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企業も社員の「産後ケア」を意識する時代へ

マドレボニータでは、産後のリハビリの社会的インフラとして「復職支援プログラム」等、法人向けプログラム導入をすすめています。

法人営業担当の太田智子さん(NPO法人マドレボニータ 事務局次長)は「私自身は産後ケアをする機会をラジオで偶然知ることができてラッキーだった。でもそこで終わらせることなく、多くの人に知ってほしい。企業の人事施策として戦略的に取り入れてもらうことで、知ってもらうきっかけが増えるのではないか」との思いから企業の人事部へ積極的に働きかけを行っています。

ただ、営業活動をする中で「育休期間中の心身のケアの部分は社員から問題意識として上がってこない」と社内で問題が顕在化してないケースや、産後の3大危機について人事担当者が知っても「それは社員個人の問題であって企業が取り組むことではないのでは?」という企業側の意見も聞かれるそうです。

それに対して「顕在化していないのは、まだ『産後』の実態とケアの必要性が知られていないから。育休中に産後の心身のダメージのケアと、復職に向けての土台づくりをすることが当たり前の世の中にしたい。育休復帰後も仕事を頑張る姿を見た周りの方が、復帰した社員へ仕事の成果を期待して良いんだと評価をし、それを見た若い人たちがこの会社で頑張って長く働きたいと思うようになるなど良い循環が生まれていく。組織への波及効果は充分にある」と太田さんは訴えかけます。

育休時期を戦略的に活用し、復帰後の仕事・人生を充実したものに

実際に産後ケア教室実施後のアンケートでは「復帰への不安感が払拭された」「心のケアと体のケア、コミュニケーションワークで前向きになれる」「早く復帰して仕事をしたいと考えるようになった」など参加者の意欲的な声があるそうです。

太田さんは「育休期間は成長の期間と捉えてほしい」「人生や働き方についての考えを妊娠前以上に高めていく機会にできる。妊娠前より意欲もパフォーマンスも高くパワーアップして職場に戻ることができる」と企業へアピールしています。

確かに出産・育児の経験を通して価値観が変化する女性も多いですし、それを前向きに成長するチャンスにすることで、仕事復帰への心理的なハードルが下がるだけでなく、今後の人生や働き方にとても良い影響をもたらすことができるなと感じました。

井上英之さん・有紀さん夫妻の体験に学ぶ、コミュニティで産後を支えるということ

第2部は『みんなではじめる新しい「家族」のかたち』をテーマに、一般社団法人INNO-Lab International共同代表の井上英之さん・有紀さんご夫妻のトークライブです。

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(左から井上有紀さん、井上英之さん、吉岡マコさん)

マドレボニータで新しい価値観の創造として、地縁・血縁などの閉じた共同体ではなく、自身のコミュニティの仲間との支え合いの中で子供たちが大人になっていくという文化を作っていきたいとの思いから生み出された「産褥ヘルプ」という活動。

産褥ヘルプとは、産褥期(さんじょくき)と呼ばれる授乳と食事以外は布団の上で横になって過ごすなど母体の回復に努める時期に、沐浴や家事、上の子のお世話等必要な支援を仲間同士で行い産褥婦が休める環境を作ること。

家族だけで抱えると疲弊してしまうし、昔のように、地域での助け合いも薄い。同時に、女性の働き方や男性の育児への関わり方も変化している中、今、どうやって、産褥期を支えるのか。新しいあり方を、家庭を開き、SNSなども生かしながら仲間たちで補いあう方法はないか、という試みです。

吉岡マコさんの後押しから実現し、井上ご夫妻が体験された産褥ヘルプや産後のことについてお話を伺いました。

今回は関西のご実家に里帰りして出産されたため、産後ドゥーラの専門家と、関西で社会起業家として活動されている友人たちを中心に、未婚の方やこれから子どもが欲しい若いご夫婦にも産褥ヘルプをお願いしたそうです。

当初は「事前に産後の大変さについて知識があったにも関わらず、いざ自分の子育てになるとプライベートなことを誰かにお願いするのっておこがましいのではと感じていた。いろんな人の手を借りて動かしていくのもありなんだと気づくのに時間がかかった」と英之さんは言います。

それでも「自分が感じていることを言葉として第3者に伝えていくことで、自分の状態に気づき、行動のきっかけになった」そう。

「子どもがいない生活なら数秒で終わることが、一日かかってもまだできていないというフラストレーションを、産後ドゥーラや産褥ヘルプの友人のおかげで解消できた。皿洗いなど具体的なサポートが助かるというだけでなく、産褥期で家から出られない中、信頼する人たちが来てくれることで、閉じた世界に新たな風が吹く。心理的に助かった。」と話す有紀さん。

「1人でできないことが2人だと様変わりし、3人4人だととても簡単な問題に変わる。人の力って大きくて誰かの助けってこんなに有り難いんだと身をもって教えてくれた」と感慨深そうに英之さんは語ります。

 

 

子育てを通して変化する仕事への姿勢

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井上さんご夫婦は、共同代表として組織運営をしつつ慶應義塾大学でも教鞭を取るなど、仕事で活躍しながら、家庭も大事にされ、現在0歳のお子さんを子育て中です。子育てスタート時期を経験しての仕事への良い影響や価値観の変化についてお伺いしました。

「優先順位のリストが洗練されていくこと」とおふたり声を揃えておっしゃいました。

「以前は自由に24時間自分のことに使えていたが、子育て期になり時間の密度が濃くなった。限られた時間の中から今という瞬間を大切に、何がほんとうに大事か考えるようになった」

「それをすることで本当に欲しい結果が得られるのか、無駄なものは省いて突き詰めるようになった」と良い影響がもたらされたことを嬉しそうに話されました。

「逆に、無駄に過ごした時間というのも、こんなに無駄なことに時間を割けたんだ、ということが嬉しくなる」そうです。

また、「皆ひとりひとり、いろんな思いやリアリティを持って生きているんだなと想像を働かせるようになった」「物事の背景や前提に何があるのかというところから考えるようになった」と英之さん。

「大学の講義で学生がよく遅刻する。そこには何か理由があるのでは?と考えるようになった。そこで学生に尋ねたところ、前の授業のキャンパスが遠く移動する際に1つでもアクシデントがあると間に合わないと分かり、開始時刻を30分遅らせようとなった」というエピソードを語ってくださいました。

他にも「日々変化する子供に合わせて自分も変化し続ける必要がある中で、しなやかな強さが身についてきた」「人生に対する自由度がむしろ上がったかも」と有紀さんがおっしゃっていたのが印象的でした。

「例えば、子供の学校をどうするか。海外の学校に通ってもよいかも。そうすると仕事や住む場所は?」など、子どもが加わったことで、逆に自由に発想が膨らむようになった点が大きな変化だったようです。

大事なのは、ライフイベントをプラスに変える考え方

皆さんのお話を聞いて、「産後の大変さを事前に知り、心と体の備えをすること」の大切さがひしひしと伝わってきました。産育休中、子育てだけでなく働くことや自分の人生について考えることでモチベーションを高める良い機会にできること、子育てを通して学ぶ経験は仕事にも活かされるなど、ライフイベントを新たなチャンスだと前向きに捉えることで、新たな可能性に気づけそうです。

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