夫の地方赴任を乗り越え、転職に成功! リモートワークでチャンスを掴んだ話

6月27日に開催された「リモートワークジャーニー@TOKYO 2nd」では、株式会社LiBの松永佐和子さんが、愛媛県へ転居の予定がありつつ東京の同社に中途入社し、リモートワークにチャレンジした話がシェアされました。

ライター

やつづか えり
『くらしと仕事』初代編集長です(〜2018年3月)。コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブマガジン『My Desk and Team』を運営中。『平成27年版情報通信白書』や各種Webメディアにて働き方、ICT、子育てなどをテーマとしたインタビューを執筆しています。2013年に第一子を出産。

参加者同士が対話をし、自分自身の働き方を考えるイベント

「リモートワークジャーニー」は、リモートワークで「自分らしい働き方」を目指す仲間たちが集うコミュニティ。北海道から沖縄まで、各地で集まりが開催されています。6月27日には、東京で2回目となるイベントが開催されました。

単に成功者の講演を聞くだけでなく、そのお話に刺激を受けつつ、その場に集まった参加者同士で対話をし、自分自身の働き方について考えるというのが、リモートワークジャーニーの特徴です。

本レポートでは、参加者同士の議論のきっかけとして自らの体験をシェアしてくださった松永佐和子さんのエピソードを紹介します。皆さんも是非、自分の仕事や働き方のヒントにしてください!

中途採用の最終面接でリモートワークを提案

大学卒業後、ラグジュアリーブランドでの販売や人材業界での営業、アパレル関連のPRなど、様々な職を経験してきた松永さんは、「女性が輝ける社会を作りたい」という目標を見いだし、それがかなえられる会社として、女性の転職支援やキャリアの相談サービスなどをメインに、キャリア女性のためのライフキャリア支援事業を行う株式会社LiBに出会いました。ところが中途採用の最終面接までこぎつけたタイミングで、夫の仕事の都合で一時的に愛媛県今治市に行くことが決まりました(LiBは東京 渋谷にある会社です)。

多くの方は、そこで入社を諦めてしまうのではないかと思いますが、どうしてもLiBに入りたいという気持ちが強かった松永さんは、最終面接の場で社長に「3ヶ月後に家族の都合で今治市に行くので、リモートワークをさせて欲しい」と直談判し、見事採用されたのです。

当時LiBでは他にリモートワークの事例があったわけではなく、松永さんの入社をきっかけに「会社としてチャレンジする」と社長が決断されたのだそう。松永さんは実際に入社3ヶ月後から半年間、今治の自宅でリモートワークをし、現在は家族共に東京に戻っています。

リモートワークジャーニーの発起人の一人であり、自身の経営するソニックガーデンでリモートワークを推進する倉貫義人さんは、「リモートワークは社員がやりたいと言っても、トップがその気にならないと難しい。面接という社長と直接話せる場で交渉し、会社として取り組むと言ってもらえたことは良かった」と評します。実際、LiBでは社長が度々「リモートワークは会社としてのチャレンジだ」とメッセージを発信してくれ、それが他の社員の理解と協力を得るためにとても助けになったといいます。

中途入社でいきなりリモート。組織に馴染める?

それでも入社して日が浅い段階でひとり遠く離れた場所で仕事をすることになるわけですから、互いを知りあったり、コミュニケーションを円滑にする努力は必要でしょう。

松永さんは、月に1回3日ほど上京する機会を作り、そのときにはランチやディナーなども含め、なるべく他の社員と一緒に過ごすようにしました。また、普段は社内のチャットツールで仕事の話だけでなく他愛もない雑談にも積極的に反応したりする他、毎日「今治だより」というタイトルで、その日にやった仕事の内容やプライベートなできごとなどを、全社員に向けて発信していたそうです。

倉貫さんも、社員達が「日報」ではなく「日記」を書くことは、互いをプライベートな面まで知り合い、離れた場所にいてもチームワークを高める効果があると、おすすめしていました。また、倉貫さん自身は「社長ラジオ」と称して毎朝5分間のメッセージを配信し、社員がスマートフォンなどでも聞けるようにしています。みんながリモートワークの組織ならではの、「朝礼」の方法です。

松永さんの場合は、東京のオフィスで行われている朝礼にSkypeで参加していたそうです。自宅で仕事をしていた松永さんにとって、これが仕事モードに切り替わるよいきっかけになっていたとのこと。

リモートワークの課題は「サボり」ではなく「働き過ぎ」

リモートワークで問題になりがちなのが、「働き過ぎてしまう」ということです。上司の目に見えないところにいるとサボるんじゃないかと思われがちですが、だからこそ、リモートワークをする本人はプレッシャーを感じる上、ひとりで仕事をしているとそれを終了するきっかけがつかめなかったりしてがんばりすぎてしまうのです。

松永さんも、一時期はひとりで仕事を抱え込みすぎて辛い状態になってしまったことがあったそう。そのときは直属の上司から「成果を上げるためには手段を選ばなくていい」、つまり「他の社員の力をもっと借りて、みんなで成果を出せばいいんだ」というアドバイスをもらって、やり方を変えられるようになったといいます。

参加者からは、「ひとりだけリモートワークをしてずるい」と言われるようなことはなかった? という質問が出ましたが、「会社としてのチャレンジだ」というトップからのメッセージが浸透していたことのほか、松永さん自身も飲み会などの席で「リモートワークをする上での努力」などを伝えることで、理解を得られていたそう。

もうひとつ、リモートワークを導入すると問題になるのが、「評価をどうするか」という点です。もともと「働いた時間ではなく、成果によって評価する」ということが徹底されている組織であれば問題にはならないはずですが、多くの日本の会社の管理職は、目の前で働いている様子が見えない部下を評価するということには戸惑いを覚えるでしょう。松永さんの場合は、リモートワーク開始時点で「固定給+成果給」という形で成果に連動した報酬制度を提案され、その元となるミッションと成果の測り方についても合意した上でリモートワークを始めたようです。納得できる評価を得るには、「リモートワークだからと遠慮しないで、自分の状況や意見を伝えていくことが大事」だと松永さんは言います。

これらの話からは、普段顔が見えないリモートワークだからこそ、上司と部下、そして同僚との間で率直に状況を伝え合い、助け合ったりやり方を微調整したりできる関係づくりが大事だということが分かります。

リモートワークは発展途上。みんなで解決していこう

会の後半では、松永さんや倉貫さんの話を聞いて参加者それぞれが得た気づきを共有し、「自分らしい生き方のための働き方を実現するための一歩」を考えました。そして、その中でも「ぜひ、今日参加しているみんなからアドバイスをもらって一歩踏み出したい」という6名が名乗りを挙げ、全員で6つのチームに分かれてそれぞれのテーマについて解決方法を考えたりアドバイスをしあったりしました。「これからリモートワークをやりたいけどどうしたらいいか」といったことから、実際にリモートワークをやっている人による「こんなところが上手くいってないので解決したい」といったことまで、テーマは様々でしたが、普段は出会わないようないろいろな立場の人からのアドバイスが寄せられ、6人それぞれに何らかのヒントが得られたようです。

 

最近リモートワークという言葉を耳にする機会はかなり多くなりましたが、まだまだ実践者は少なく、発展途上のワークスタイルです。ということは、うまくいくやり方や、活かしどころがまだたくさん隠れているということでもあり、こういった場で議論を深めていくことは、とても意義があることですね。

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