2017年6月16日 更新

夫婦のどちらも主役 協力し、尊重し合えるフリーランス起業家夫妻のくらしと仕事 ~後編~

夫がデザイナー、妻がWebディレクターとしてそれぞれ会社を経営する中村克己さん(株式会社フェスタ― 代表取締役/国酒支援NPOサケネス 代表)と小沼光代さん(株式会社フラップ 代表取締役)夫妻。後編では、家事や育児の分担、ライフワークや今後の展望について聞きました。

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家事は妻、子育ては夫が多くを担うチーム体制

- どういうふうに、二人で家事と育児をやっていますか?

小沼: 結構パターン化しています。
朝は最初に私が起きて朝食を作り、小学生の息子が次に起きるので食べさせていると夫が起きてきます。息子が登校するぐらいに夫が娘を起こして世話をして、それから保育園まで連れて行ってくれる。「行ってらっしゃい」と言いながら私は家事の続きや身支度をして、出勤します。
上の子が15時ぐらいに下校するので夫が家にいれば迎え入れてくれて、それから17時に娘のお迎えに行ってくれます。私が帰ってくるまで、夫は仕事をしつつ、子どもを見つつ。私は帰宅してすぐご飯を作って、大体その間に夫が子ども二人をお風呂に入れてくれる…というのが日常ですね。
家事は私が多いですが、育児は夫が多い気がします。息子がサッカーをやっていて、試合や遠征に行く時は夫が全部行ってくれる。私はお弁当作り担当。


- 小沼さんは基本的に出勤するスタイルなんですね。ご自宅で仕事をすることは?

小沼: ほとんどないですね。


- お子さんが小学校に入学すると保育園より帰宅が早くなりますよね、中村さんは普段ご自宅で仕事をされていて、やりにくくなったことはないですか?

中村: 僕はいつも家にいるわけでもないので。子どもが帰ってきても、サラッと流します(笑) 「おかえり、宿題やんなさい」って声をかけたら「やったよ」「遊びに行ってきまーす」。そんなもんです。


- 学童へは?

中村: 行ってたんですけど、やめちゃった。

小沼: 2年生の12月ぐらいにやめました。学童以外のお友達と遊ぶのが楽しかったようで。それに、サッカーの練習があって学童に行かない日が多くなった。息子はしっかりしているというか、夫がいなくてもちゃんと自分でできるので。


- 土日は完全に仕事を休んでいますか?

中村: サッカーの付き添いか仕事で、最近ほとんど土日は休めていませんね。

小沼: 私はたまに、娘だけ連れて会社で仕事をすることも。でも、大概は家のことをしたり、娘と過ごしていたりします。


- おふたりとも仕事をしていると、お子さんと接する時間が少なくなる面があると思うのですが、何か決めている約束ごとはありますか?

中村: あまり守ってくれないのですが、「子どもの前でスマホをいじらない」。

小沼: 全然守れない(笑)

中村: 心構えとして、家族と一緒にいる時ぐらい「一緒にいる」気持ちでいてほしい。

小沼: 仕事のメールなんかを見ているときもあるんですけど、ただ自分の世界にこもりたいからスマホに逃げてしまうような時がありますね…。

中村: 本当に仕事が忙しくて手が回らないような時は、僕が家事を全部やろうと思っています。「集中してください」と。僕もそういう世界で生きてきたから、分かります。


- そのチーム感は心強いですね。

小沼: 夫はかなり察してくれますが、私が素直に頼めない時があるんですよね。お互いに働いているのだから家事育児を分担してもいいよね、と思う一方で、どこかで「家事は女の仕事」という気持ちが私の中にあって。それを夫に「やらせてしまっている」という思いが捨て切れない。それで無理して、「いいよ、私がやる」って言って、後から「素直に頼めば良かった」って後悔して(笑)


- そういう経験を重ねると、「次は素直に頼んでみよう」となりますか?

小沼: 少しずつなってます。


- 小沼さんの方が、中村さんの仕事の状況に配慮することは?

小沼: 私はしてるつもりなんですけど、夫ほど気が利かないので(笑)。子どもを夫の方に行かせないようにしてみたり、先回りしてお風呂を洗って沸かしておいたりと、一応私なりに。


- 気遣いし合うのは、良いことですよね。これが同じ業界じゃなくても、夫婦でお互いにサポートすることは成り立つものでしょうか。

小沼: 例えば(フラップでディレクターをしている)守屋さんを見ていると、旦那さんは違う業界ですけど彼女が忙しいってことは理解して、サポートしてくれていると思います。私も人のこと言えないですけど、素直にお願いすればいいんじゃないかなと。「今日は仕事に集中したいから、お願い」って言えると、すごく楽になる気がします。

「飲み屋を始めるかも」という夫に不安を抱いたことも

- 中村さんは、デザイン会社の他にサケネスというNPOの活動をされていますが、いつ頃からですか?

中村: NPOにしたのは2014年ですが、屋号をつけたのは5~6年前です。


- きっかけは?

中村: 妻のお腹に上の子どもがいる頃に、衝撃的に日本酒にハマって、そこからのめり込んで。当時は今みたいに日本酒ブームではなかったので、業界は右肩下がり。蔵元がどんどん廃業されていた。「これ美味しいなあ」って、手作りのあまり出回っていないお酒を飲んでいたんですけど、その蔵元がつぶれてしまったんですよ。それで、あまりにも蔵元を支援する機関がないので、自分で応援したいと思ったんです。


- 具体的にはどんなことをやっているんですか?

中村: 最初は何をやっていいか分からなくて。仕事柄、ネットを使った情報発信で蔵元の力になれたらと思ったのですが、あまり反響がありませんでした。今は、日本酒を好きな人を草の根で増やしていくしかないなと思って、イベントをやったり日本酒のラベルの缶バッジを作ったりしています。

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日本酒のラベルをあしらった缶バッジ。詳しくはこちら→http://sakeness.jp/

- 日本酒のラベルの缶バッジ、素敵ですね!

中村: 蔵元さんに許可をもらって作っています。今後ネットで通販をする予定ですが、イベントでテスト販売したところとても評判が良かったんです。試飲会で、元々その日本酒のファンだった人も欲しいと言ってくれるし、初めての人も「美味しいと思ったから」とメモ代わりに買って行く。


- 蔵元さんとは、直接知り合って?

中村: そうですね、蔵元は造りが終わると東京に集まるんですよ。営業目的もあるし。ことあるごとに集まっていて、皆さんオープンで会いやすいんです。

小沼: 東京でイベントがあると、主人は娘を連れて出かけて行きます。


- 今はフェスタ―とNPOの仕事、育児と時間的にはどんな割合ですか?

中村: 割合ですか、難しいな。

小沼: リンクしてるんですよね、特にフェスタ―とお酒は。

中村: ネットの情報発信がだめだと思って、長いこと悩んで行きついたのが、日本酒ラベルの缶バッチ制作なんです。これで、デザインという仕事を活かすことができた。


- NPOで缶バッジの企画や蔵元さんとのやり取りをして、デザインや制作をフェスターで請け負っているわけですね。 今までも、本業以外に新しいことをやってみようと思うことはあったんですか?

中村: いえ、なかったですね。実は一度はNPOの活動だけやろうと思って、フェスタ―をたたみました。辞める決意をして仕事をストップして。でもちょっと急ぎすぎたみたいでうまくいかず、やっぱり再開しました。


- その時は小沼さん、びっくりしたんじゃないですか?

小沼: そうですね。何をやるんだろうと思ってたら、バッチができてきた。最初はびっくりしましたけど、反響もあってよかったなと。

中村: 酒屋さんや飲食店になることも考えていたんですけど、「ラベルを使う」ところに着地できたので、デザインの仕事を手放す必要がなくなって、すごくラッキーでした。

小沼: 一時期「日本酒の飲み屋さんをやるかも」と言っていて。私はあまり穏やかじゃありませんでした。そうなったら仕込みで午後からいなくて、夜中まで帰って来られないじゃないですか。「えっ、どうなるんだろう?」って。

中村: 妻が会社を辞めて独立するっていうことと、自分が飲食店にジョブチェンジするのと、僕の中では近い感覚で、それもありだったんですけどね。


- 結果的に、中村さんは2つのことを同時にやっているわけですが、そのコツは?

中村: コツはこうだとは言えないですが。ただ、今はデザインとお酒のことをずっと考えてるんですよ。考えて、手も動かして。

小沼: 夫から話しかけられる話題のほとんどがお酒・デザイン・子どものサッカー。この3つ(笑)


- やりたいことがやれているというのは、多くの人にとって理想ですよね。

中村: 今、やりたいことができる喜びでいっぱいですね。

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ママ達の会社として価値を出すことの難しさを感じつつ、新しい事業を模索中

- 小沼さんは、今後webディレクション以外のことをやる予定は?

小沼: 個人的に「これがやりたい」という話ではないですが、会社としてはディレクション業以外にも、会社の業績が人の稼働量に影響されない事業をやっていかなくては、と模索しているところです。私とスタッフでアイディアを出して、リサーチを進めています。
自分も母であり、スタッフも育児中の人が多いので、子どもや家庭にからむものができたらいいと思うのですが……。


- web制作は納期に向かってハードに詰めていくイメージがあるのですが、子育てしながら限られた時間でとなると難しいことも?

小沼: 私は今、案件はほとんど持たずに管理業務をしているので余裕がある方ですけど、前職を残業が嫌で辞めたはずの守屋さんが、終電で帰宅することが続いていて。旦那さんやご実家がサポートしてくれているようですが、このままではいけないと思っています。私も必要に応じて手伝うようにしていますが、受けてしまった仕事はやるしかないので…。


- 子育て中のお母さんが多い会社であることについて、クライアントさんに理解してもらうようなことはされていますか?

小沼: フラップを始めた当初は、「ママ」であることを特徴として出していこうと思っていたんですけど、それだと正直営業にならない。「16時ぐらいから連絡がつかないんだよね?」と聞いてくだされば、まだ「いえいえ、そんなことないです。夕方以降もちゃんとやりますよ」と説明できるので良いですが、先入観を持たれて「ここには頼めない」と思われてしまうケースもあると感じました。ですから、最近は「ママ」を前面に押し出すより「女性向け案件が得意な会社」ということを伝えるようにしています。理想としては、子どもがいることを理解していただいた上で仕事を依頼してもらえるのが良いのですけど…。


- 中村さんは、奥さんが仕事をしていることは当たり前の感覚ですか?逆に、辞めてもいい?

中村: あまり頓着しないですかね。

小沼: 基本仕事が好きなので辞める気は全くないんですけど、あまりにも大変で「さすがにもう全部辞めたい」と思った時があって。私がボソッと言うと「辞めてもいいよ」って。


- じゃあ、自分の意思次第?

小沼: そうですね。ただ、辞めないと思います(笑)

インタビューを終えて

ご夫婦のお話から、固定観念に縛られず、家族愛のある中村さんのサポートやアドバイスを得ながら、小沼さんが新しい働き方を切り拓いてきたことが感じられました。 同じ業界にいてひとつの案件を一緒に手掛けることもあるため、お互いの仕事の大変さも理解しつつ、家庭の中で自然に助け合っている様子は理想的です。
ですが、多くの共働きの夫婦は、お互いの「仕事の場での顔」を知り得ないのが現実。普段から会話の中で仕事の話をしていると、理解が深まり、家庭の運営も協力しやすくなるのではないでしょうか。

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中村 克己(NPO法人国酒支援事業団体サケネス 代表理事、株式会社フェスター 代表取締役)
1968年北海道札幌市生まれ。インテリアデザイナーを経て、1999年よりWeb/グラフィックデザイナーとして、大手企業のCIやWebサイトデザインに携わる。
2006年頃より日本酒のおいしさに魅了され、大好きな日本酒を支援したい思いが高じてサケネスを設立。日本酒をはじめとした国酒の発展をサポートするため日々邁進している。
http://sakeness.jp/

小沼光代(株式会社フラップ 代表取締役)
1978年富山県生まれ。2001年に中央大学卒業後、専門商社、企画会社を経てモバイルコンテンツプロバイダーへ。退職後、フリーランスを経て、株式会社フラップを設立。
女性向けコンテンツを中心に、大手企業のWebサイト、アプリなどの企画から運用までをワンストップで受託している。
http://flap.jp/

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鈴木 せいら 鈴木 せいら