2017年9月8日 更新

「働き方改革担当大臣」の誕生、私たちの働き方にどう影響?

2016年8月3日に発足した第3次安倍第2次改造内閣では、「働き方改革担当大臣」という新しいポストができました。その狙いや、私たちの働き方に与える影響を解説します。

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安倍首相は8月3日の記者会見にて、今回の内閣の最優先課題は「経済」、新しい3本の矢を放つ的として「戦後最大のGDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」を掲げ、それを実現するための最大のチャレンジが「働き方改革」であり、そのために新たに「働き方改革担当大臣」を設けたと説明しました。

任命されたのは、加藤勝信 衆議院議員。「働き方改革担当大臣」の他に、以下の大臣を兼務しています。

加藤勝信大臣

加藤勝信大臣

  • 一億総活躍担当
  • 女性活躍担当
  • 再チャレンジ担当
  • 拉致問題担当
  • 内閣府特命担当大臣(少子化対策担当)
  • 内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)

これらは今回の内閣改造前から加藤氏が担当しているもので、「拉致問題」以外は働き方に大きく関係する役割ばかりですね。加藤氏がさらに追加で「働き方改革担当大臣」を担うことになった背景には、何があるのでしょう?

 

 

そもそも大臣とは? 新しい大臣ポストはどうやって決まる?

そもそも大臣にはどんな種類があって、それはどうやって決められるのでしょうか。

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大臣の種類は3種類

大臣(国務大臣)は内閣を構成するメンバーのことで、内閣総理大臣を除くと、大臣は以下の3種類に分かれます。

  1. 中央省庁の長
    総務省の長である総務大臣、文部科学省の長である文部科学大臣など。
  2. 内閣府特命担当大臣
    「沖縄及び北方対策担当」、「金融担当」、「消費者及び食品安全担当」の3つと、それ以外のある程度永続的な課題に対応するために内閣府に設置される役割。
  3. 内閣の担当大臣
    オリンピックなどの短期的な重要政策課題について内閣官房に設置される役割。

日本という国を会社に例えると、内閣総理大臣が社長で、大臣が会社の幹部だと考えると分かりやすいでしょう。
そうすると、
「1.中央省庁の長」は、総務部や営業部のような部署の部長、
「2.内閣府特命担当大臣」は社長直轄でかつ長期的な課題解決に当たる責任者、
「3. 内閣の担当大臣」は短期的かつ重用なプロジェクトの責任者

だと言えます。

 

大臣を任命するのは首相

各大臣は、内閣総理大臣(首相)によって任命されます。新内閣発足時にどんなポストを用意し、誰を任命するかは、首相の意思が強く反映されるわけです。
特に、「3. 内閣の担当大臣」は、首相が「自分が首相の間に解決の道筋を付ける」と考えている重用課題を表していると考えられるでしょう。

 

「働き方改革担当大臣」が設置された意味

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加藤氏の場合、「2.内閣府特命担当大臣」として「少子化対策担当」と「男女共同参画担当」を担い、それ以外の役割は「3. 内閣の担当大臣」として担っています。
つまり、「働き方改革」、「一億層活躍」、「女性活躍」、「再チャレンジ」、「拉致問題」は、安倍政権において「早期に解決すべき課題」と位置づけられているわけです。

安倍首相は記者会見で、「働き方改革」で実施することとして、「長時間労働の是正」、「同一労働同一賃金の実現」、「最低賃金の引上げ」、「高齢者への就労機会の提供」に言及しました。

実はこれらは、2016年6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」にすでに盛り込まれていることです。加藤氏はすでに「一億層活躍担当大臣」でもあるのでその役割の中で実行すれば良いような気もしますし、そもそも労働条件や労働環境を整備する機関としては厚生労働省がありますから、さらに「働き方改革担当大臣」まで作るのは屋上屋を架すような印象を受けます。
それでも新たな大臣職を設けたのは、安倍首相がそれだけ「働き方改革」の重要性をアピールし、推進したいという意思が表れているのでしょう。

 

「働き方改革」 今後の動きと私たちの働き方への影響

「働き方改革」の具体的な実行計画を取りまとめるため、政府は「働き方改革実現会議」を開催します。安倍首相が議長、加藤大臣と塩崎恭久厚生労働相の2人が議長代理を務め、関係閣僚の他、労使の代表者、中小企業団体のトップ、労働問題に詳しい有識者などをメンバーとすることが発表されています。
筆者としては、一億層活躍国民会議にも参加され、女性の働き方に関わる提言を積極的にされているジャーナリストの白河桃子さんがメンバーに入っていることに注目しています。

白河桃子さん

白河桃子さん

「働き方改革実現会議」は9月から月1回程度開かれ、(1)長時間労働是正、(2)同一労働同一賃金の実現、(3)高齢者の就労促進、(4)障害者やがん患者の労働環境整備 などの具体策を議論していくそうです。

 

長時間労働の是正

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「ニッポン一億層活躍プラン」では、「長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている。」とされ、これを是正するために「法規制の執行を強化」、「労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる 36(サブロク)協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する」とあります。

会社が労働者や下請け会社に残業をさせにくくすることで、労働時間を短くしていこうという方向性が見えます。

 

同一労働同一賃金の実現

「ニッポン一億層活躍プラン」では「例えば、女性では、結婚・子育てなどもあり、30 代半ば以降、自ら非正規雇用を選択している人が多いことが労働力調査から確認できるほか、パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸国においては正規労働者に比べ2割低い状況であるが、我が国では4割低くなっている。」という問題意識が語られています。
そして「正規か、非正規かといった雇用の形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保する」という目標の元、正社員と非正規雇用者との待遇の差について、何がOKで何がNGか具体的なガイドラインを作成し、2019年度から運用することを目指しています。また、労働契約法、パートタイム労働法及び労働者派遣法の一括改正等も検討し、2019年度からの施行を目指すとのことです。

「同一労働」と一口に言っても、「何が同一か」の判断が非常に難しいでしょう。「転勤あり/なし」のような契約条件の違いによる給料の違いは残ると思われますが、全く同じ仕事をしているのに給料が大きく違う、正社員は使える設備や福利厚生がパート・アルバイトは使えない、といったことは是正されていきそうです。

同一労働同一賃金に向けて、私たちがすべきこと - くらしと仕事

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高齢者の就労促進、障害者やがん患者の労働環境整備

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これらの施策は、誰もが生きがいをもって過ごせるということはもちろん、少しでも多くの人に働き続けてもらい、経済を活性化したいという政府の意図があります。
そのために、国としては定年延長を行う企業への補助や、障害者やがん患者の就職支援及び職場定着支援に取り組んでいくとしています。

これからは65歳以降も働き続けるのが当たり前の社会になってくるでしょう。私たちもそれを見越して、スキルアップや仕事のネットワーク作り、健康のことを考えて過ごしたいものです。

 

2016年度は今後の働き方の変化が大きく方向づけられる年に?

安倍首相によれば、「働き方改革実現会議」では、年度内をめどに具体的な実行計画を取りまとめるそう。それによって、今よりもくらしやすく、働きやすい日本へと変化していくのかどうか、注目したいですね。

 

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