2017年1月4日 更新

エニタイムズ代表 角田千佳さんが起業に込めた想い〜新しい働き方を提供し、社会をよりよく変えていく~

毎日の生活で、ちょっと誰かに手伝ってもらえたら助かるのに、と思うことは意外に多いものです。そんな困りごとを解決してくれるサービスが「エニタイムズ(ANYTIMES)」。「ダンスを教えます」と自分の得意を売ったり、「掃除できる人を探しています」と募集したり、個人と個人間のビジネス(C to C)を可能にするプラットフォームを提供しています。代表の角田千佳さんにエニタイムズ創業に込めた想い、また、これからの新しい働き方についてお話をお伺いしました。

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やるか・やらないかが大きな分かれ道

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- 角田さんが起業されたのは27歳のころだったとお伺いしています。なぜ起業しようと思われたのでしょうか。

大学を卒業して証券会社に就職し、その後、IT関連会社でPRプランナーの仕事をしていましたが、何かもっと直接、社会に役立つ仕事をしたいとずっと考えていました。もともとの原点は小学生のころ、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんについての本を読んで感銘を受けたこと。自ら現場へ赴き、UNHCRという組織を大きく変え、社会を変えていく姿が本当に素晴らしいなと思い、自分も将来は世界の開発途上国での開発援助、持続可能なまちづくりの仕事したいと考えるようになりました。

そしてそれを実現するために、いつかは国連で国際公務員として働きたい、という夢を持っていたんです。しかし社会人として働いていく中で、国際公務員として働くよりも、もしかしたら小さくても事業として始めたほうが、柔軟にアイデアを形にし、実行できるのではないか、と考えて起業を決意しました。実際に起業する1ヶ月半ほど前のことです。

- ビジネスプランはどのように立てたのでしょうか。

大学を卒業して最初に勤めた証券会社では、多くの高齢のお客様と接する機会もあり、日本が超高齢化社会目前であることを実感しました。一方で、都会で暮らしていると人付き合いがどんどん希薄になっていて、隣に住んでいる人のことすら分からないこともよくあります。そんな社会で、一人暮らしの高齢者が生活をしていくのは本当に大変。それまではずっと、開発途上国に目が向いていたのですが、周囲を見渡せば、身近な社会にたくさんの課題があることに気づいて…。

一方で、非労働者人口や非正規雇用者数は増加し、多様な働き方が求められている。そして、必ずしも労働市場に参加する必要のない専業主婦やアクティブシニア、世の中に役立ちたいと思っているけど、機会を見出せない人たちは多く、顕在化できていない現実がある。それで、これらの社会課題を同時に解決できる仕組みはないかと思いついたんです。

起業を決意した後、パラオの無人島に行って、このビジネスモデルを考えました。インターネットにもつながらないような環境で、自分自身と向き合ったり、友人たちと話をしたりして、いま社会に本当に必要とされているサービスはどのようなものだろうかと考えた結果、生まれました。帰国後は様々な情報をリサーチして、思いついたこのアイデアに自信が持てたので、これでやっていこう、と。

- 起業にあたってのリスクは考えませんでしたか。

開発途上国のまちづくりをしたい、と願っていたので、起業はその夢を実現していくオプションの中の1つでした。したがって、起業して夢に挑戦しないほうが、自分の人生にとっては大きなリスクだと考えたんです。だって、挑戦してみないと分からないことは多いですし、もし失敗しても経験したことは無駄にならないはず。金銭的に厳しくなることは予想していましたが、それでも死ぬことはないだろう、と思っていました。

- 起業を決意してから、行動に移していくスピードが速いですよね。

時代の流れはとても速くて、起業準備に時間をかけていたら世の中は大きく変わっていきいます。実際、私の場合、今やっている仕事の多くは、起業後に学んだことです。とにかくトライすることが大事ではないでしょうか。

- ものすごいチャレンジ精神ですね。

実は、起業するまでの間、このアイデアをなるべく人に話さないようにしていたことがあります。だれかに真似をされないようにと思って。でも当時の上司から「だれもアイデアを“真似する”なんてしないから」と笑われて、それ以来、周りの人に言うようになったんです。そうしたら多くの人からアイデアについてフィードバックをいただいたり、新しい出会いを紹介してくれたりするようになって、むしろ道が開けていきました。

アイデアって何もしなければアイデアでしかなくて。起業してから何人もの人に「同じアイデアを考えていた。」「これから同じことをやろうと思っている。」と言われた事もありましたが、実際に同じ事業を立ち上げた人は今までいませんでした。このアイデアが良いかどうかは別として、やはり、やるか・やらないかが大きな分かれ道になると思います。

- 起業をしようかな、と考えている女性も増えていると思います。何かアドバイスはありますか?

今の日本社会では、こうでなければいけない、これが成功、これが幸せ、という固定観念や社会の枠が強いと思います。また、何か新しいことに挑戦しようと思ったら、まずロールモデルを探す人が多いと思うんですが、それって結局はだれかの人生をコピーすること。それを否定するわけではないですが、自分の人生は自分でしか作れないし、10人いれば10通りの生き方があって当たり前だと思うんです。だから、固定観念や年齢、性別といった枠を超えて、本当に自分は何がやりたいのか、考えられるようになったら、人生の選択肢は広がっていくのではないでしょうか。

100万人のユーザーを増やすより、100人のコアファンを作りたい

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- 事業を立ち上げた当初はご苦労もあったのではないでしょうか。

最初はクラウドソーシングでエンジニアやデザイナーへ依頼したり、友人たちに手伝ってもらったりしながらサイトを構築しました。広告宣伝費を出す余裕がないので、営業リストを作ってチラシを配りましたし、シルバー人材センター事業などをやっている自治体に片っ端から電話をかけたこともあります。

でも、エニタイムズの概念を理解してもらうのはとても難しくて、最初の1年に登録してくれたユーザーさんは知り合い以外だと数十人。今でこそインターネット社会になりつつありますが、事業を始めたころはまだ、ネットで知り合った人との出会いに良い印象を持たない人が多くて。単純に使い方が分からない、というITリテラシーの問題もありました。

- 登録者をどうやって増やしていったんですか?

登録者はいま2万人を超えているのですが、口コミで増えていった感じです。広告宣伝費にお金をかけるより、改良を重ねて、使いやすいプロダクトにして自然と口コミで広げていくことが大事と考えていました。Airbnb(エアビーアンドビー)の創業者も話していた言葉でもありますが、100万人のなんとなく利用するユーザーを増やすより、100人のコアファンを作るのがとても大事だと考えていたんです。

- ユーザーさんはどのような方が多いですか?

現在は20代後半から40代前半が多く、特に30代が一番多いです。都内在住者が大半で、さらに言えば渋谷区や港区、新宿区、世田谷区が多いですね。IT系のお仕事にお勤めの人など、新しいWEBサービスに敏感な方々に特に利用していただいてます。たとえばAirbnb(エアビーアンドビー)のホストをしている人からの清掃依頼なども多いですね。

- 仕事を提供する側はどうですか?

私たちは仕事を提供する人を“サポーター”と呼んでいますが、主婦や便利屋さんをしている人、副業としてエニタイムズを使っている人などいろいろです。植木屋さんや大工さんなどの登録が意外と多く、テレビ局の大道具さんをしている方などもいて、家具の組み立てなどを依頼すると、プロの腕前にびっくりさせられます。

3ヶ月ぐらい前まで、仕事の内容の8割は掃除でした。次が料理、DIY系と続いていたんですが、最近は偏りなく、様々な依頼が来ています。12月には「サンタクロースの恰好をしてプレゼントを渡してほしい」という依頼があったり。最初、立ち上げたときには想像もしていなかった種類の仕事が増えていて、当初の10倍、20倍ぐらい、ジャンルが広がっている感じです。

もう1つ別のライフスタイルを手に入れる

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- シェアリングエコノミーの考え方がずいぶんと広がりを見せる中、エニタイムズが注目されることも多いのではないでしょうか。

起業するとき、様々な角度からリサーチして、インターネットを介したシェアリングエコノミーの流れがくるのではないか、と予想していました。何より、働き方に対する考え方が大きく変わり始めていたので、必ずエニタイムズの概念にマッチする時代がくる、と。

実際、起業したころは全く見向きもされなかったのに、今では政府の成長戦略にシェアリングエコノミーが入っているぐらいですから、地方自治体や地域活性化事業を行っている会社や団体などから問い合わせもたくさんいただくようになりました。これからは都会に住む若い人たちだけではなくて、地方に住む高齢者の方々にも使いやすいサービスにしていくのが目標です。もともとの夢が開発途上国でのまちづくりだったので、もちろん海外展開も視野に入れています。

- 角田さん自身もサポーターとしてお仕事を引き受けられることがあるとか。

そうですね。月に数回はサポーターとして仕事をお受けしていて、たとえば視覚に障害のある方の歩行のお手伝いなどをやっています。それまでは街で視覚障害者の方を見かけても話したことはなかったのですが、歩行のお手伝いなら私にもできるかもしれない、と思って始めてみたんです。

実際、一緒に街を歩いていると、目が見える立場では分からなかった問題に気づくことも多く、普段でも点字ブロックの状態とか気になるんですよ。自分ができることなら、と始めた仕事でしたが、逆に私自身がたくさん学ばせていただいており、とても感謝しています。

- なるほど。仕事をする側にも喜びが大きい、ということですね。

仕事の始め方としては、自分の得意なスキルを売る方法もありますが、こういうことをしてくれる人を探しています、という依頼を見て、応募することもできます。特別なスキルを持っていなくても、依頼内容を見たら「これなら私でもできるかも」と思う案件が多いと思うんです。それって潜在的な社会のニーズ。自分ができる仕事は、世の中にはたくさんある、ということに気づいてもらえたら、と思います。

高齢者の方でもできる仕事はたくさんあるので、定年退職後の可能性を広げるきっかけになったらうれしいです。だれかの役にたっている、社会から求められている、という実感が生きがいになれば、毎日、元気に過ごせるのではないでしょうか。

- 新しい自分の生き方も見つけられそうです。

エニタイムズは社会の枠や固定観念にとらわれず、自分らしい働き方を見つけられるプラットフォームだと思っています。普段は会社員として働いているけれど、空いた時間を使って語学を教えたり、スポーツのインストラクターをしてみたり。専業主婦の方も一緒で、ちょっとした時間を使ってできる仕事はたくさんあります。

エニタイムズで仕事をする、というのは、普段の生活とは別のライフスタイルがもう1つ増えるみたいなもの。私もそうなんですが、たとえ日々の業務に忙殺されることがあっても、サポーターとしてエニタイムズの仕事をして、依頼者さんから「ありがとう」と言われると本当にうれしくて、1人でもそう言ってくれる人がいる限りまた頑張ろうと思えるんです。

埋もれているスキルはだれにでも絶対にあると思うので、ぜひたくさんの人にエニタイムズで自分の新しい価値を見つけてもらいたいです。

角田 千佳(株式会社エニタイムズ 代表取締役, CEO)

角田 千佳(株式会社エニタイムズ 代表取締役, CEO)

慶應義塾大学法学部政治学科卒業。新卒で野村證券に入社し、その後IT企業を経て、 ”豊富な幸せの尺度を持った社会の実現”を目指し、 2013年に株式会社エニタイムズを創業。 同年末に、日常のちょっとしたお困りごとを簡単に依頼・請負できるサービス「ANYTIMES」をリリース。一般社団法人シェアリングエコノミー協会の理事も務める。

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吉岡 名保恵 吉岡 名保恵