2016年12月1日 更新

海外リモートワークに必要な能力とは?旅するフリーランサー早瀧正治さんへの質問【後編】

クラウドソーシングサイトを使って翻訳の仕事をしながら、特定の企業との長期的な契約も結んでいる早瀧さん。後編では、世界各地に散らばったメンバーがリモートでコミュニケーションしながら働いているというDoist社の働き方や、日本と欧米のコミュニケーションの違いなどについて伺いました。

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世界各地のメンバーが自由裁量で働くDoist

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- 前編では、旅をしながら仕事をするというライフスタイルや、マーケティング視点をもった翻訳という仕事を見つけた経緯などをお伺いしました。 契約社員のような立場で働いているDoistは、早瀧さんだけでなくみんながリモートワークをしているそうですね。

そうです。50人くらいのメンバーが全員リモートワークで、ほぼ全員違う地域にいます。

- 他のメンバーの皆さんも、早瀧さんのように別の仕事と掛け持ちでやっているのでしょうか?

基本はフリーランスですね。開発者にはフルタイムの人もいますが。

- みんなが各地に散らばっていて、しかも他の仕事もしているとなると、普段のコミュニケーションはどのようにとっているのでしょう?

Twistという、Slackに少し似ているコミュニケーションツールを使ってます。スレッド方式の掲示板でやり取りするので、例えばカスタマーサポートをしているときに分からないことがあったりエラーが見つかったりしたら、「こんなエラーがあるよ」という新しいスレッドを立てて連絡します。特定の人に対応してもらいたい場合はその人をタグ付けすれば、相手に通知がいきます。

- 時差もあって、各自がやり取りできる時間もバラバラなのでは?

平日なら24時間以内には見てくれる、という感覚でやっています。
1日1回しか連絡できないので、伝えることを明確にするようには意識しています。

- 確かに、内容が不明確でその確認のためにやり取りをしていたら、何日も経ってしまいますね。オンラインミーティングをしたりすることはないのでしょうか?

以前はなかったのですが、最近は月に1度、各国のマーケティング担当者がGoogleハングアウトで顔を合わせて、互いの仕事の状況を報告するというのをやっています。参加者は10人くらいで、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、アメリカ、中国……、いろいろな国の人がいますね。

- 顔を見ながら会議をするようになって、相手の印象が変わったりましたか?

正直あまり変わらないです。もともと他の国のマーケティング担当者と会話する機会がなくて、ミーティングをするようになって初めて知り合ったという感じなので。

- ひとりで完結する仕事が多いということですか?

そうですね。ひとりでやるのが大変だったら、もらっている報酬の中でやりくりする限り、私がアシスタントを雇うこともOKなんですよ。実際、Todoistのブログは誰かに校正を頼もうかと考えています。
完全に放任主義の組織で、なんでも自分で判断して進めていけるんです。
例えばこのインタビューを受けることも特に許可をもらっているわけではないですし、私が誰かから「Todoistを試してみたい」と言われたら、ライセンスを無料であげる権限を持っています。そもそも会社から指示を受けたことは1度もなくて、Twitterでマーケティングをしよう、ブログで日本語の記事を書こう、そのためにタスク管理について勉強しよう――、そういう風に自分で考えてやってきました。

社員でないからこそ、やりがいのある仕事を選び、緊張感をもって取り組める

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- リモートで誰も見ている人がいなくて、指示もされないのに頑張ろうと思えるのはなぜでしょう?

自由にやれて、その上売上という形で成果が見えるので、やりがいがあるんです。それに、「日本市場を任せる」と言われたら、一国一城の主みたいな感じで責任感も芽生えますよね。
強いて言えば、正社員の場合と違っていつでも首を切れるということはあるので、成果が出せなかったりコミュニケーションが上手くいかなければ、切られることもありますよ。

- なるほど。働く側も「この仕事はやりがいがない」と思えばやめられますしね。お互いにほどよい緊張感があるわけですね。
そもそもなぜ、Doistの仕事をすることになったんですか?

日本向けのマーケティングをする人を探しているということで、Linkedinで声をかけられました。Skypeで面談をして採用が決まったのが2年程前です。

- 他の人もそういう採用方法が多いのでしょうか。リモートで仕事を任せられる人をどうやって見極めているのでしょう?

Linkedinやクラウドソーシングサイトのレビューは見られていますね。クラウドソーシングサイトは案件が終わったら必ずレビューを書かなければいけない仕組みになっているし、お客さんも仕事の良し悪しがあまり分かっていないこともあるので、あてにならないこともあります。Linkedinの場合は義務ではないし、いい加減なレビューを書いたら書いた人の信用も下がるので、かなり信頼できると思います。
あとはSkypeで話してみて、さらに5日くらい仕事をしてみて、できるかどうか判断する、という感じですね。

- リモートワークができる人というのは、どんな人だと思いますか?

自分でやるべきことを考えて、そのために必要な勉強できるかというのはひとつのポイントだと思いますね。

僕がTodoistでやっているようなマーケティングも広報も、SNSの運用も、ネットで勉強できるものなので、会社の誰かに教えてもらったわけではないです。

- 欧米の企業と仕事をしていて感じる、働き方のトレンドみたいなものはありますか?

フリーランスという働き方は、これからもっと増えていくでしょうね。ホワイトカラーの仕事のほとんではフリーランスでやっていけると思うんです。今、社員とフリーランスの境目が曖昧になってきていて、例えば税理士とか会計士とか、個人事業主なんだけど会社と専属契約して、ほぼフルタイムで働いているような人もいますよね。営業にしても、代理店を通して契約したり、フリーの営業を雇うことも増えてきています。特に繁閑の差が激しい会社は、仕事量に応じてフリーランスを雇える状態にしていったほうがいいですよね。

- 外部の人に仕事を任せるとノウハウが流出してしまうという問題もありませんか?

今はソーシャルメディアの時代なので、それはもう避けられないと思いますよ。技術的なノウハウを流出させないために、技術者にもっとお金を払うというのはありだと思いますけど、マーケティングみたいな仕事は自分でネットで勉強できますし。

逆に、フリーランスを雇って会社の仕事を任せるためには、組織の仕事を体系化して、マニュアルに落とし込み、新しい人でも直ぐにできるようにするべきだと思います。

- 早瀧さんも、いずれはDoistの仕事を離れる可能性があると思いますが、今やっていることを引き継げるようなマニュアルはありますか?

ありますよ。僕は物覚えが悪いので、やることをマニュアルにしているんです。毎朝「さあ、何をやればいいんだっけ?」と考えるよりも、自作マニュアルに従った方がラクなので(笑)

- フリーランスのよくある悩みとして、「自分が倒れたら代わりに仕事をしてくれる人がいない」ということがありますが、万が一のときのためにも自分がやっていることをマニュアルにしておくというのはいいですね。

欧米で仕事をするには、自分の意志を言葉で明確に伝えること

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- これまでヨーロッパで働いてきて、日本との違いを大きく感じることはありましたか?

日本ではアルバイトしかしたことがないので、日本の仕事の仕方についてはあまり語れませんが、それでも言えることは、日本人は文化的に職人気質なんだと思いますね。

極端な話、こちらでは採算が合わないことは初めからやらないし、仕事は8割終わっていればOKなんですね。私も会社勤めをしていたときに「そこまでやらなくていい」と止められることがありましたし、翻訳の仕事でも「読めればいいよ」とか、「ホームページの最初の2〜3ページは完璧にしてほしいけど、注文後に表示されるページは適当でいいよ」とか、そういう風に言われることが多いです。

- 日本だと採算が合わなくても完璧にやるのが素晴らしいという文化、確かにありますね。

それと、外国人と話すときは、とにかく伝えたいことを言葉で100%伝えることが必要です。日本は高文脈文化といって、言葉以外の状況とか声のトーンから相手の言いたいことを判断することが得意ですけど、それはある程度同じ文化のなかでしか通用しないんですよね。だから、言葉ではっきり伝えるということができないと外国人と働くのは難しいし、リモートワークだとなおさら、文章で表現する力が必要になります。

- 確かに、リモートだとテキストでどれだけ明確に伝えられるかが重要になります。

ドイツ人は特に上手ですよ。クラウドソーシングでドイツ人の翻訳のプロジェクトのオファーを見ると、「何月何日までに英語から日本語の翻訳お願いします。半分以上仕上がったらメールで送ってください。文字単価はいくらです。」といった感じで、これ以上質問しようがないというくらい情報が詰まった状態になっているので、それを見てイエスかノーかと答えるだけで仕事が始まります。
逆に日本やアジア系の方だと、最初の要件はふわっとしていて、入札すると「Skypeできますか」と連絡がきて、詳しいことはSkypeで伝えられる、といったケースが多いです。

- 分かりやすい例ですね(笑)。欧米では、組織の上の人に対してもはっきり言うというイメージもあります。

チェコやスロバキアの文化はわりと日本に近くて、上司への遠慮というのはある程度あります。でも、上司の方から「わからないことや問題があったら絶対言うんだよ」と念を押されます。こちらから不満や注文を伝えても、むしろ「言ってくれてありがとう」と言われるので、意見を伝えることは歓迎されているんだということを学びました。
仕事以外でも、言うべきことをちゃんというというのが、こちらではとても重用です。エアビーアンドビーとかホテルとか、ちょっとしたトラブルは結構あるんですよ。そういうとき、日本人は相手を傷つけたくないと考えて遠慮しがちですけど、欧米はみんな慣れているので、ちゃんと言っても大丈夫。例えばこの部屋も、最初はWi-Fiが使えなくて、連絡したらその日の夜には新しいルーターをもってきてくれました。あとは洗濯機の使い方が分からないとか、聞けば教えてくれます。
日本人と違って、嫌であればNoと言ってくれるので、安心して注文すればいいんです。

- 早瀧さんは、そういう欧米の文化にかなり馴染んでいるようですが、今後もしばらくは、今のワークスタイルを続けていく予定ですか?

今は若いうちにちょっと遊んでおこうと思ってこういう生活をしていますけど、海外にいることやフリーランスでいることにそんなに強いこだわりがあるわけではないんです。日本の企業のヘッドハンターからのオファーもあるので、条件が合えば日本でもいいみたいな感覚です。もし結婚したりしたら、相手にもリモートワークで旅に着いてきて、というわけにはいかないかもしれないですしね(笑)

働き方、くらし方の変化に対して、とても柔軟な早瀧さん。だからこそ、自身の能力が活かせる面白い仕事に出会うことができているんだろうな、と感じました。もし今後、日本の企業に就職したとしても、きっと新しいスタイルを切り開いていきそうで、その動向が楽しみです。

早瀧 正治(はやたき まさはる)

早瀧 正治(はやたき まさはる)

日本の大学を建材学部で卒業後、海外就職を経て、現在はリモートフリーランスとして働いています。サービスの内容は、日本に進出したい海外の企業や、海外の広告代理店にオンラインマーケティングや翻訳をすることです。
http://nihongo.hayataki-masaharu.jp/

海外でできる自分らしい仕事とは?旅するフリーランサー早瀧正治さんへの質問【前編】 - くらしと仕事

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