2017年2月13日 更新

長時間労働を解消すると期待できる様々な効果とは〜働き方改革実現会議での提言より〜

「出生率アップ」をはじめとした、長時間労働是正による様々な効果を、「働き方改革実現会議」の委員である白河桃子さんのお話から考えます。

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政府は9月27日、安倍総理を議長、加藤勝信働き方改革担当大臣と塩崎恭久厚生労働大臣を議長代理とする「働き方改革実現会議」の初会合を開催しました。 委員の一人であり、女性の働き方に関わる提言を積極的にされている相模女子大学客員教授・少子化ジャーナリストの白河桃子さんは、「働き方改革は暮らし方改革」と題し、長時間労働の是正に取り組んでいくべきであると訴えました。長時間労働はなぜやめるべきなのか、はたして長時間労働をやめることはできるのか? 白河さんのお話から考えてみます。

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長時間労働は何故NGなのか

「24時間働けますか?」このキャッチコピーで一世を風靡したCMは、バブル期のサラリーマンの働き方を象徴的に表すものでした。時代は変わりつつありますが、現在でも労使で特別な協定(36協定の特別条項)を結べば残業時間を事実上、無制限に延ばすことができます。大手広告代理店の入社1年目であった女性社員が昨年末に自殺したことが波紋をよんでいますが、この女性が亡くなる前の10月には105時間にわたる残業をしていたと報道されています。厚生労働省が過労死のリスクが高まる「過労死ライン」として示している時間は、残業80時間。それにも関わらず、105時間の長短について議論になるほど、現在の日本では長時間労働が当たり前のように存在しています。

日経DUAL編集部が読者を対象に行った「働き方革命アンケート」では、長時間労働の大きな原因として「時間当たりの生産性を無視した人事・評価制度」が第一位にあげられています。

働き方革命アンケート2016 

働き方革命アンケート2016 

「時間当たりの生産性」が無視されるような環境では、短時間でしか働けない労働者は長時間労働できる労働者と比較してフェアに評価されることがありません。結果として、キャリアを望む女性であれば、子どもを持つことを躊躇するでしょうし、男性にとっても、子育てや介護等で早く帰宅することは難しいでしょう。

このことについて、安倍総理も「長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている。」と明言しています。

長時間労働がなくなると起きるよいこと

では、長時間労働がなくなることによってどのような効果があるのでしょうか?
白河さんは以下の5点を挙げています。

1. 出生率が上がる

第一子が生まれた家庭において、その後の第二子が生まれるかどうかは 夫の家事・育児時間と大きな関わりがあるという結果が出ています(厚生労働省「第9回21世紀成年者縦断調査」)。 男女ともワークライフバランスを向上させることが、少子化への歯止めになるということです。

『働き方改革は暮らし方改革』 白河桃子さん提出資料より

『働き方改革は暮らし方改革』 白河桃子さん提出資料より

2. 女性活躍の推進

子育て中など家の都合で勤務時間に制限があっても、 「時間あたりの生産性」が評価の軸にあればフェアな競争ができるようになります。 それにより、モチベーションを保って活躍する女性が増えるはずです。

3. 保育士不足の解消

子どもを預かる時間が短くなれば、保育士の長時間労働も減少し、 子育て中の保育士でも短時間での勤務が可能になり復帰しやすくなります。

4.企業の競争力が上がる

生産性が上がり、業績につながります。 人材流出を防ぎ、優秀な若手・学生にとって魅力的な企業として人材獲得競争に勝てるということです。

5.国の経済力が上がる

女性が出産ブランクで無職になると「1億から2億7千万」の損失と言われています。 女性が継続就業できると世帯所得が大幅にアップし、女性の老後貧困も防ぐことができて、社会保障費の節約につながります。

【参考】

『第1回働き方実現会議 働き方改革は暮らし方改革』 白河桃子

『第1回働き方実現会議 働き方改革は暮らし方改革』 白河桃子

『「成長と分配の好循環」「長時間労働に上限」で時間も分配できる』 白河桃子

『「成長と分配の好循環」「長時間労働に上限」で時間も分配できる』 白河桃子

 

 

長時間労働をなくすことはできるのか

しかし、実際に長時間労働をなくすことはできるのでしょうか。 学生/若手社会人160名アンケート(スリール株式会社)では「ブラック企業のイメージは22時以降の帰宅」が83.1%となり、また「希望した企業でやりがいのある仕事でも長時間労働の職場では30歳以降は転職していると思う」と73.8%が答えていました。将来的には仕事と生活のバランスを考慮する会社が人材戦略を制すると考えられます。

『働き方改革は暮らし方改革』 白河桃子さん提出資料より

『働き方改革は暮らし方改革』 白河桃子さん提出資料より

また、とも働き家庭1233人のアンケート結果(日経DUAL)では、子どもができて働きにくい人が82%。 「働きにくさ」の原因の上位4位までが「労働時間」に関するものです。さらに、介護になると預かり時間が保育園よりも短い現状から、 勤務時間の制約が子育て以上にあるという資料も紹介されています。

では、労働者側ではなく、経営者の立場からはどのような声があがっているのでしょうか。 ファザーリング・ジャパンの長時間労働アンケート2016によれば、「国(政府)に、労働時間の全体的な抑制の旗振りを期待する」という企業が9割です。この取り組み自体に反対ではないものの、一社ごとの取り組みには限界があるということです。

『働き方改革は暮らし方改革』 白河桃子さん提出資料より

『働き方改革は暮らし方改革』 白河桃子さん提出資料より

これに関して安倍総理は「やっとそういう雰囲気に変わり始めたので、ここは、正に我々が更に背中を押していくことが大切であろうと思います」と言及しており、今後法改正も含めた規制強化が検討されるのか政府の動向に注目が集まるところです。

まとめ

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これまで、企業は労働者から労働時間という資源を無尽蔵に搾取することができていました。その人的資源に、国からの抑制が入れば当然デメリットを受けるケースもあり、経済界からの抵抗が強いのがこの問題です。

しかし、団塊の世代が70代に突入する2017年が目前に迫り、労働力の減少が急速に進んでいくことは間違いありません。今後は、労働者の頭数を増やすためにも、時間的制約のある人も積極的に採用し、潜在労働力を活用していくことが必要です。そのためにも「時間あたりの生産性」で評価される仕組み作りは急務と言えるでしょう。

組織の一員である限り、個人でできることには限りがありますが、今後のライフスタイルや、家庭で大切にしたいこと、空いた時間があればどういったことで自己研鑽を積みたいと思うのか、そういった理想の暮らし方を考えることが、これからの働き方を変える一歩になるのかもしれません。そろそろ私たちは「自分の人生を主体的に生きる権利」を持っていると認識しても良いのではないでしょうか。

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西谷 じゅり 西谷 じゅり