2017年3月10日 更新

移住女子たちが語る田舎ライフ。人付き合いが成功のポイント~全国移住女子サミット2017レポート2~

移住する前に知っておきたい都会とのギャップ

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先日、東京にて「全国移住女子サミット 2017」が開催されました。今年で2度目を迎える本サミットでは、地方へ移住して活き活きと暮らしている女性たちのお話を聞くことができます。会場には、「いつかは田舎暮らしをしたい」という人から、すでに移住先での生活を始めた人まで、先輩移住女子たちに学ぼうという女性たちが詰めかけました。

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オープニングトークで参加者の皆さんに移住の意向を聞いていました。グー(具体的な移住先を探している)・チョキ(3〜5年後くらいに移住したい)・パー(とりあえず情報収集に来た)。それぞれが同じくらいの割合でした。

田舎は決して「スローライフ」じゃない!

都会での「人付き合い」の対象は、職場や趣味の集まりなど、住んでいる場所よりは仕事や興味関心という点で共通項がある相手が多くなります。一方、田舎ではご近所づきあいがとても大事、という話をよく聞きます。

全国移住女子サミットで「移住女子の失敗談!都会と地方のギャップで悩む移住ならではの悩み」というテーマでお話をされた畠山千春さん(福岡県糸島市在住)は、メディアで伝えられるイメージとは裏腹に、「田舎はスローライフじゃない!」と強調されていました。

福岡県糸島市の集落でシェアハウスを運営する畠山千春さん

福岡県糸島市の集落でシェアハウスを運営する畠山千春さん

「暮らすのに、お金は全然かからないんですけど、その代わり自分たちの時間とマンパワーを、別のところにかけてるんです。ただボーッとしてれば暖かくなって、うまいものがどんどんきてっていうわけじゃないんですよね。ご近所さんから、野菜とかたくさんもらうけど、もらってばっかりじゃいられないわけですよ。 お金の代わりにコミュニケーションで対価を支払ったりするので、やらなきゃいけないことが、すごくたくさんあるんです。特に都会で人間関係に疲れた人とかが田舎行ったら、最悪だと思います。人間関係から絶対に逃れられない」

 

ご近所づきあい無視できない理由

なぜ田舎では「人間関係から絶対に逃れられない」のでしょう? 長野県栄村に移住して9年になる渡辺加奈子さんは、その本質的な理由を、次のように話しました。

長野県栄村でいろいろな仕事を組み合わせて生活をする渡辺...

長野県栄村でいろいろな仕事を組み合わせて生活をする渡辺加奈子さん

田舎は、自分たちが住んでいる地域は自分たちで維持管理しなければならないんです。だから、「道路を整備する日」なんかが決まっていて、それには皆さんが出なきゃいけないし、「水がこなくなった」って言えば、水を管理する当番の人が見に行って、詰まっているところを掘ってくれたりだとか……、そういった活動はどうしても必要だし、やらないと暮らせない」

畠山さんも、集落の美しい景色は地域の人々が脈々と受け継いできたもので、その場所を守る活動に参加するのは住民としてとても大事なことだと言います。マンションの管理費を払っていればいつのまにか共有スペースの掃除がされているような都会では、なかなか身につかない感覚ですよね。

ちなみに、清掃、お祭りや運動会などの行事など、住民として参加を要請される活動は月に何度かあるようです。渡辺さんいわく、だいたい年間の予定が決まっているので仕事のシフトを入れないように調整したり、どうしても参加できないときは事前に伝え、「あの人はこういう理由で出られないんだ」と理解してもらうことが重要だとのことです。

 

地域への愛が試される

「田舎では新参者はなかなか受け入れてもらえない」という噂もよく聞きます。これに関しては、地域の人達がどれだけ外の人を受け入れる気持ちがあるかどうかや、実際受け入れてきた経験があるかなどによってかなり異なるでしょう。ただ、今回お話をされていた方々の移住先では「若い女性が来てくれて嬉しい!」と、総じて歓迎ムードのようです(「私は若くない」という方も、高齢化の進んだ地域では50代でも若者扱いされるそうなのでご安心ください)。

ただし、歓迎してくれる土地では 移住者への期待が大きい分、「本気でここに暮らし続けていく気があるのかどうか」をかなり気にされる傾向にあるようです。

そういった点から、独身の渡辺さんは、地元で結婚した人との差を感じると言います。

「結局出会いでしかないので仕方ないんですけど、嫁になった人とそうでない人の圧倒的差を感じる場面がどうしてもあります。栄村には共同浴場みたいな安く温泉に入れるところがあって、村の人がみんな来るんです。そこでネイティブの村の人は『良かったね、あんた。村の人になってくれて』って村の男性と結婚してくれた人に対して言うわけですよ。さらに赤ちゃんが生まれて一緒にお風呂に来るようになったら『我先に』と構いたがるばあちゃんたちがいっぱいいて……。ちょっと疎外感を感じるところはあります」

一方、一緒にシェアハウスを立ち上げたパートナーと移住後に結婚し、本籍も糸島市に移したという畠山さんは、地元の人に大喜びされたそう。

「引っ越してきたときに、みんな『住民票を移したのか?』って聞くんです。で、住民票を移したとなるとザワッとなって『移したらしいぞ』みたいな(笑) 家を借りてるのか買うのかによって、また違うんですよ。うちは借りてるから、持ち家の人とは扱いが違うんですよね。それで疎外感を感じたことはないんですけど。やっぱり借りてる人と買ってる人だと、集落で負う責任の度合いが違ったりするんです。でも、(結婚して)本籍移しましたってなったら、『うちの集落で結婚した』って、みんな大喜びしてくれました」

 

都会の常識との違いを尊重すること

住民票を移すか、家を買うかというのは大きな決断なので、移住当初には決められない場合もあるでしょう。それでもなるべく 地域の人達に受け入れてもらうには、その土地をリスペクトする態度が不可欠。「農業で住みます芸人 in長岡」として、1年間の予定で新潟県長岡市に移住生活中のチカコホンマさんは、失敗談としてこんなエピソードを披露しました。

よしもとクリエイティブエージェンシー所属。新潟県長岡市...

よしもとクリエイティブエージェンシー所属。新潟県長岡市に移住し、農業の良さ、田舎の良さをPRするチカコホンマさん。

「仲良くなったおじいちゃんが『うちの村は何もないから』みたいに言ったので、(ちょっとイジるつもりで)『ホントっすよね』って言ったら怒ったりとか(笑) 地域にすごく愛があってプライドもあるから……。私が調子乗りだからか、何回か『あっ!』ってなったことがありましたね」

また、人間関係をスムーズにするためには、 その「地域の有力者」を認識することも大事だそう。大事な話を最初に報告すべき人がいて、うっかり他の人に先に話してしまったりすると、信頼関係を取り戻すのに時間がかかることがあると、畠山さん。

「本当に田舎と都会って全然違う常識で回ってるんですよね。そういうギャップがあるということを、移住する人は知っておいた方がいいなと思います。(そのギャップを)住みながら探っていく能力は必要ですよね」

地域のしきたりや人間関係を把握するのは、最初はなかなか難しいと思いますが、移住をコーディネートしてくれる人や地元で仲良くなれた人に、いろいろ聞いてみるのがいいでしょう。ちなみに、「地方の子育て・結婚・パートナー事情 ー 地方で幸せに暮らすには ー」というテーマでお話をされたヒビノケイコさん(高知県嶺北地方)と佐藤可奈子さん(新潟県十日町市)は地元の男性と結婚されていて、旦那さんやその家族から、その地域での振る舞い方を教えてもらえたので、本当に助かったとのことでした。

新潟県十日町市で農業を営み、情報発信をする佐藤可奈子さ...

新潟県十日町市で農業を営み、情報発信をする佐藤可奈子さん(左)と、高知県嶺北地方でお菓子の工房を開き、4コマエッセイスト・講師としても活躍するヒビノケイコさん(右)

 

自分らしくやっていくポイントはキャラ設定

とはいえ、地元の常識や人間関係を気にしてばかりで疲れてしまったら、なんのために移住するのかわからなくなってしまいますよね。オープニングトークでは、ヒビノさん、ホンマさん、鯨本あつこさん(『離島経済新聞』編集長、沖縄県在住)が、田舎での居心地のポイントは「キャラ設定」だとお話されていました。

左から鯨本あつこさん、ヒビノケイコさん、チカコホンマさん

左から鯨本あつこさん、ヒビノケイコさん、チカコホンマさん

鯨本さんは、離島に住む人にインタビューしたときのエピソードを語りました。

「『島ぐらしの何が大変ですか?』と聞いたら、『キャラがかぶらないこと』って言われたんです。芸人みたいですよね。その人郵便局員なんですけど(笑) でも、これは大事なことで、ある種ポジショニングなんですよね、自分がそのコミュニティの中で何の役に立てるのかという……。 他の人とキャラが被らないで、いかにその島の生態系の一部になれるのかを考えるといいです」

「何の役に立てるのか」を深刻に考えると気が重くなってしまいそうですが、ホンマさんは「ご飯大好き」、「いつも笑っている」キャラで、地元の人たちに可愛がられているそう。また、都会であれば矯正されてしまうような個性の際立った人が田舎にはたくさんいるそうなので、自分を伸び伸びと出してしまえば、意外と他にはいないキャラとして受け止めてもらえるかもしれません。

大学で陶芸を学んだヒビノさんは、京都郊外で田舎暮らしをしながら表現活動をされていましたが、出産を機に子育てしたい場所を探し、旦那さんの出身地である高知県嶺北地方に移住されました。そのとき、旦那さんは周りの人に「うちの嫁はアーティストだから」と説明したそう。

「夫がそう言ってくれていたので、すごくラクで。 『あそこの嫁はよくわからないけど、なんかアーティストらしい』と、それですべて許されるようなところがあって(笑)。私がいろいろな仕事を作ったりしていても、『あぁ、あそこの人は、アーティストなんで』と、それで通っちゃうんですね(笑)」

 

深い話のできる友人ができない?

生活の中で老若男女、個性も様々な人達と関わることになる田舎ですが、ヒビノさんは現在の集落に引っ越した当時、 世間話はできても、深い話をできる相手があまりいなかったといいます。

「例えば私だったらアートが好きだったり、学ぶことが好きだったり、そういう話ができる相手があまりいなかったりはしました。
京都のような都会にいると、自分の興味関心に合ったコミュニティがたくさんあって選べたりするんですけど、それがないので、『今日はご飯何作るの?』みたいな(笑)、わりと一般的な話しかできないというところはあります」

最近は、自治体などが積極的に移住者を呼び込み、外から来た人が増えている地域もあります。そういうところでは、移住者同士で共通の思いや悩みを語り合う機会も多いでしょう。今回の「全国移住女子サミット」では、住む場所が違っても移住女子達はとても楽しそうに語らっていました。 SNSなども活用し、場所を超えた交流をするというのも、寂しくならない秘訣かもしれません。

 

IではなくWeで語る移住女子

イベントのクロージングセッションでは、様々な移住女子達へのインタビュー本『移住女子』を刊行したばかりの伊佐知美さん(『灯台もと暮らし』編集長)が、とても印象的なことをおっしゃっていました。


『移住女子』(伊佐知美 著)

「移住女子たちに『これから何したいですか?』と聞くと、みんな『私たちは』とか、『この地域は』こうしたい、こうなってほしいと言うんですね。 『I』じゃなくて『We』に主語が変わっていくのがすごく素敵で、本音を言うと『羨ましいな』ってすごく思って、このインタビューに惹き込まれていきました」

田舎での人間関係づくりはきっと大変なところもありますが、一つの山を乗り越え、「地域の一員として一緒に地域を守っていく」と思えるようになると、都会では得られない人生の充実感を感じられそうです。

 

「全国移住女子サミット 2017」の他の分科会についてレポートした、こちらもどうぞ!
移住成功の秘訣は人との出会いと行動力!地方へ移住して仕事を作る方法~全国移住女子サミット2017レポート1

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