2017年4月17日 更新

女性活躍推進法スタートの2016年、企業が直面したジレンマと解決策とは?

「自分の人生を自分で選ぶ。人生をゆたかにする。」という理念のもと、女性活躍推進のコンサルティングを行う株式会社bouquet 取締役の髙橋玲衣さんに、女性の働き方に関する今年の変化について振り返っていただきました。

460 view

「1年速いよね。年々、速くなるよね。」という会話を重ねる今日この頃ですが、結婚・出産し、働く母になってから一層そう感じるようになった印象です。子育て、家事、仕事、自分のことと、忙しく慌ただしく過ごすうちに1年がまた終わる・・・ だからこそ、流してしまうことなく、この1年の変化や進化をしっかり振り返りたいところです。

2016年の変化の起点は「女性活躍推進法」

gettyimages (7594)

2016年、働く女性、特に子育てしながら働く女性にとっては「実は」これまでになく色々と前向きな変化のきっかけが生まれた年でした。「実は」と書いたのは、その変化の影響、果実や恩恵は、まだ受け取るに至っていない方が大半だと想像されるからです。ただ、大きな流れは確実に生まれた1年だったのではないでしょうか?

起点は「女性活躍推進法」の施行。昨年8月に成立し今年4月に施行されましたが、これによって法による「圧」がじわーっと各社にかかり始めました。

 

まず、従業員数301名以上の企業は、自社の女性従業員(正社員に限らず)の活躍状況を数値的に把握して課題分析する必要があります。たとえば、管理職全体の中で女性はどれくらい?役員に女性はどれくらいいる?男女の平均勤続年数の差は?残業時間はどんな感じ?など……。これらのデータは報告&一部公表が求められています。さらには、課題解決に向けて数値目標(代表的なのは、女性管理職比率を2020年までに○%にする!など)を含む行動計画を策定し公表しなければなりません。

分析・公表が求められるデータは、それなりに自社の現状を突きつけられるものでもあり、さらに公表先のデータベース上では他社と横並びになり相対化もされるわけで、何かしらの危機感醸成や、一歩踏み出すきっかけ提供としては一定の効果はあるのではないかと思います。

ちなみに公表先の「女性の活躍推進企業データベース」には、11月末の段階で7,516社が行動計画を公表しています。日本に上場企業が約3,500社、社員数が300名以下の中小企業を除く大企業数は12,000社といわれますから、この12,000社をざくっと対象企業の数と近しい数と置くと、6割強まで来ているというところでしょうか。

上記数字を、女性の活躍する社会の実現に向けて着実に進化していると捉えるのか?まだまだこれからと捉えるのか?は、中身を伴わないと意味のない議論になると思うので扱いません(扱えません)。この場では、各企業から「女性活躍推進」をテーマにご相談を受ける立場としてこの1年の変化・進化を、ワーキングマザー(以下、ワーママ)軸で総括してご紹介してみようと思います。

「女性活躍推進」取り組み初期段階の企業の注意点は

gettyimages (7598)

各社からお受けするご相談内容から「女性活躍推進」の取り組みステージは大きく2段階に整理できます。第1段階は、“KEEP”。第2段階は“UP”。

KEEPステージの企業は「女性たちが結婚・出産しても職場に戻ってきて働き続けてもらうためにどうしたらいいか?」の取り組みが中心です。

制度や仕組みの整備からスタートし、具体的には育児休暇や時短や時間限定の勤務などの勤務体系の整備、保育園やシッターサービスの補助など、女性たちがライフイベントを経て復職し、働き続けるためにはどんな制度や仕組みが効果的なのかを社内外からリサーチして整えていきます。

このステージの企業からご相談を受けることは少ないのですが(傾向としては、他社事例を参考にしたり真似たりして仕組み整備を進めているような……)、アドバイスを求められれば「結果、ワーママに対する戦力外通告にならないように。」と、お伝えしています。

一歩先ゆく企業の悩みと解決策

thinkstock (7595)

一歩先ゆくUPステージの企業は「ライフイベントを経て働き続ける女性たちを戦力化するには?」に取り組んでいます。頭を悩ませています。

もう少し生々しく状況を描写すると……、
育休から戻って来やすいように、子育てしながら仕事を続けやすいようにと整備された仕組み――例えば、育休を長く取れる、時短勤務の時間帯は自由に選べる&長く使える、育休明けは(現場ではなく)スタッフ職での復帰だよ、さあ在宅勤務も入れてみよう!
――が、いざ運用してみると、それなりのマネジメント負荷を生み「扱いにくい」の発言につながるわ、ワーママ当人たちも仕組みに甘えているような?仕事の意欲が低下しているような? あれれ? です。

このステージの企業から寄せられる相談は、
・ 現場(スタッフ職ではなく)に戻ってもらうにはどうしたら?
・ フルタイム勤務に早く戻ってもらうにはどうしたら?
・ リーダー職に挑戦したいと思ってもらうにはどうしたら?
など。

解決策は各社の状況に応じて様々ですが(ちなみに、手厚く整えすぎたKEEPの為の施策こそがネックになっているケースも結構あります。)、ワーママ戦力化の議論を通じて行き着く先は、以下の三点に集約されます。

1. ワーママを一括りには扱えない。

ワーママの中にもダイバーシティがあることを踏まえて打ち手を考えなければ!

2. リーダー育成・開発は、ワーママになってからでは遅い。

ライフイベントを迎える前からスタートして、変化のタイミングを捉えて継続的にアプローチして行かねば!

3. ワーママ本人だけの話じゃない。

意欲は関係性に影響を受けるし、「覚悟の前に期待を」だし、上司や職場(や、本人の家族)を巻き込まねば!

それぞれ、本質的で前向きなものだと思いませんか?

これらを前提にした、起点にした取り組みには、「なんか期待できそう&乗っかっても良いかも」と感じませんか? 自分自身ワーママでもある私は、そう感じています。

大きく進化するために、意味のある一年だった2016年

2016年、ワーママ戦力化に向けての大変革が起こったとは言い難いとはいえ、大きな一歩につながる意味のある一年だったと振り返ります。2017年、引き続きの女性活躍推進法の後押しもありつつ、多くの企業が早くここ(=UPステージの本質的なテーマへの到達)に達し、ワーママを取り巻く環境に実質的に大きな変化が生まれることを期待して、そして我々の元にもたくさんのご相談が寄せられることを期待して、総括を終えたいと思います。

女性活躍推進法ってナニ?女性にとってのメリットは? - くらしと仕事

女性活躍推進法ってナニ?女性にとってのメリットは? - くらしと仕事
15 件

この記事を読んだ人におすすめ

2016年の働き方関連ニュース振り返り。そして来年はどうなる?

2016年の働き方関連ニュース振り返り。そして来年はどうなる?

「女性活躍」や「働き方改革」関連のニュースが盛んに報じられた2016年。具体的にはどんな出来事があったのでしょう。私たちのくらしと仕事にまつわるニュースを5つのテーマに分けて振り返り、来年はどうなっていくのかを考えてみます。
やつづか えり | 647 view
配偶者控除の変更でくらしと働き方はどう変わる?「2017年度税制改正大綱」解説&所得税額シミュレーション

配偶者控除の変更でくらしと働き方はどう変わる?「2017年度税制改正大綱」解説&所得税額シミュレーション

かねてより議論されてきた配偶者控除・配偶者特別控除について、先日大きな発表がありました。これにより、私たちのくらしと働き方にどんな影響が及ぶのでしょうか?
藤本 つばさ | 5,946 view
130万円?150万円?「配偶者控除の収入上限見直し」に賛否両論

130万円?150万円?「配偶者控除の収入上限見直し」に賛否両論

2017年度の税制改正議論で配偶者控除の見直しについて話が進められているのは皆さんご存知でしょうか?控除対象となる配偶者の年収上限は現在103万円とされていますね。「103万円の壁!」と、この金額内に抑えてパートなどに出ている主婦の方も多くいます。今回の見直しでは、上限を130万円または150万円まで引き上げ、同時に、夫の年収にも上限額が設けるという制度が検討されています。果たしてメリットデメリットはいかに? 世間の声とともに考えてみたいと思います。
あん☆な | 29,336 view
配偶者控除の見直しで何が変わる?家計と働き方を考える機会に

配偶者控除の見直しで何が変わる?家計と働き方を考える機会に

現在、政府は女性の働き手を増やすことを狙って、それを抑制していると考えられている 「配偶者控除」の見直しを検討しています。 この機会に今後の働き方やライフプランについて、今一度考えてみませんか?
西谷 じゅり | 933 view
「働き方改革担当大臣」の誕生、私たちの働き方にどう影響?

「働き方改革担当大臣」の誕生、私たちの働き方にどう影響?

2016年8月3日に発足した第3次安倍第2次改造内閣では、「働き方改革担当大臣」という新しいポストができました。その狙いや、私たちの働き方に与える影響を解説します。
やつづか えり | 12,866 view

この記事のキーワード

この記事のライター

髙橋 玲衣 髙橋 玲衣