2016年12月19日 更新

農業を子どもたちが憧れるカッコイイ仕事にする!神山町サテライトオフィスからの取り組み~代官山ワークス丸山社長インタビュー~

日本最大級規模の都市型マルシェ「太陽のマルシェ」や「横浜北仲マルシェ」など、ファーマーズマーケットやマルシェの企画運営をしている株式会社代官山ワークス代表取締役社長丸山孝明さんにインタビューしました。

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全国各地からこだわりの生産者が集い、たくさんのお客さんで大盛況のマルシェを企画運営する株式会社代官山ワークス。本社は東京代官山にありながら、今年7月に徳島県神山町にサテライトオフィスを開設されました。

神山町は地元NPOによるまちづくり「神山プロジェクト」や、IT系ベンチャー企業が相次いでサテライトオフィスを構えたことなどから注目を集める町。ここのサテライトオフィスで地域住民へお弁当を宅配する事業を立ち上げ、来年2017年1月のトライアルと4月からの本格的なサービス開始に向けて奔走中の丸山孝明さんに、地方でのビジネスや農家と消費者をつなげるサービスの可能性についてお聞きしました。

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農家と消費者をつなげるマルシェのプロデュースという仕事

- 勝どきで「太陽のマルシェ」、横浜で「横浜北仲マルシェ」を運営されていますがマルシェのプロデュース事業について教えてください。

前職時代、仕事で知り合った京都の農家さんの野菜をファーマーズマーケットで販売していたんです。あるとき湾岸エリアの地域活性の企画を作ってほしいと言われ、コンペでマルシェを提案したら通ったことから、会社を設立しました。

役割としてはマルシェでの場所の提供と告知や、当日の運営を行っています。月に1回定期開催しているマルシェの他に、スポットでの企画・運営もあります。

- 最近は、マルシェという言葉を聞くことも増えて、日常に馴染んでいるように思います。農家さんにとっては、販路が増えることになりますよね?

マルシェの使い方は農家によってそれぞれで、儲けようと思ってご出店される方もいらっしゃいますし、マーケティングの場所として、自分の作りたい野菜を「これで良いんだろうか」と消費者とコミュニケーションをとりながら販売してみたり、既存の流通に乗らない農薬、化学肥料不使用の野菜を直接消費者に販売したりと様々な想いや狙いを持って出店される方が多いですね。

「マルシェで買って食べてみたら美味しかったから、今度はネットで注文しよう」と思ってもらえるような、消費者と繋がることができる仕組みを作りたいと出店する農家も多いです。

- お店の出し方、お客さんとのつながり方など販売のアドバイスもされているのですか?

農家の方は野菜を作るのは専門家ですけど、売ることの専門家ではないのでアドバイスをすることもあります。消費者とつながってからもうワンステップ、食べた人が周りのいろんな人に発信したいと思うようなつなぎ方が大事ですね。

マルシェでは、上手く売るというよりは、「これ旨いから食ってみろ」のような寡黙で素人っぽさがあるくらいの方が、お客さんに喜ばれるんですよ。今後農家の声を届ける動画配信のサービスなども検討しています。

- 農家だけでなく、漁師を応援する活動もされているそうですね?

もう一つのグリーンストーリープラスという会社で「北海道食べる通信」という、食材が付録としてついてくる隔月刊情報誌を発行しています。

消費者が食べながら特集記事を読むというスタイルの雑誌で、生産者に取材に行って、生の声を消費者に届ける映像も毎回作成しています。

「北海道食べる通信」

地方のサテライトオフィスでの仕事の可能性

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- 神山町にサテライトオフィスを開設されたのはどのような経緯からですか?

知り合いを通して紹介してもらった神山在住の方から「神山は良いところだから遊びに来なよ!」と誘われたのがきっかけです。当初は、今までのビジネスの延長上でマルシェに出店する農家を発掘する目的で行ってきました。

ところが、実際に行ってみると、そこに暮らしている方たちが魅力的な人が多く、「神山にオフィスを出したら」と勧められ、サテライトオフィスを開設することになりました。

- いつ頃のお話ですか?

神山を訪れたのが今年2016年のゴールデンウイーク前で、7月1日から神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス(KVSOC)内にオフィスを開設しました。

- 最初からお弁当配達サービスをすると決めていたのですか?

いえ、まだその時は、今進めているお弁当のビジネスをするとは全く思っていませんでした。

実は以前から自社でも農業にチャレンジをしたくて、アボカド栽培に適した土地を探していました。なぜアボカドかというと、農家と競合しない作物でかつ需要があるものだからです。温暖化の影響から日本で栽培できるフルーツも多くなってきているので、国内産と海外産で競争したらどうなのかなと。

栽培する場所の候補地の中にたまたま徳島の神山があり、栽培の条件も揃っていたので、神山でやってみようかなと思いオフィス開設を決めました。

栽培に良い場所があるからと紹介してもらい、今もその作業を並行しているのですが、アボカドは植えてから実がなって収穫できるようになるまで3年かかるんです。

その間、何もしないわけにもいかないので、神山に住んでいる方たちが困っていることがあれば、サービスとして事業にしようかなと考えました。

- ニーズを聞いていったらお弁当だったということなのですね?

そうですね。神山町は店が少ないので、毎日食べるお昼ごはんがコンビニかフレンチレストランかしかない、という状況で、日常的に食べに行けるような定食屋や郷土料理を出すお店が非常に少ない。そこでお弁当にして配達したらどうかなと思い立ちました。

さらに、お弁当を配達するだけでなく、付加価値を付けられないかなと、町を歩いていて出会った人や社会福祉協議会に紹介してもらった人、地域の福祉サービス包括センターなどに話を聞いてまわりました。

そのとき困っていることとして聞いた話では、ヘルパーさんが、食事で困っているというんです。お弁当を持っていないので、仕事の日はお昼ご飯なしで済ませてしまうことが多いそうなんですよ。それから、ゴミ出しや電球交換など、高齢者が自分でできないことを手助けするサービスがなく、ヘルパーさんが厚意でやっているそうです。行政サービスの中で町がやるべき仕事とヘルパーさんがやることとの垣根がなくなってきていて、気づいた人たちがやるという暗黙の了解になっているということでした。

配食サービスのついでにその方たちが困っていることを手助けするサービスを提供できないかなと、お弁当配達と高齢者の見守りの両方を担えたらと考えています。

- その役割を担う配達をする人はもう決まっているのですか?

神山塾という人材育成事業をしている株式会社リレイションという会社があり、求職者支援訓練の半年後、神山に残るか彼らの地元に帰るかのどちらかなんですが雇用がないと神山に残るという選択肢が少なくなる。このサービスが雇用の受け皿になるのではということで、そこの塾生がトライアルに来ますし、近くにある大学の学生にもアルバイトをしないか声をかけています。そういう人たちの中から地域で活躍する人を輩出できたら良いですね。

- 他にも課題として何かありましたか?

もう一つ課題としてあるのが、人口5千人のうち1割くらいはヘルパーさんに頼らず生活ができる元気な高齢者の方もいて、まだまだ活躍できるシルバー人材が豊富にいるので、社会との接点の場として、僻地で食材を栽培するなど彼らの活躍のフィールドを作れないかなと考えています。

- 地域課題の解決ということで、地元での期待もすごく高まっているんじゃないですか?

そうですね、でもまずは作って届けることからですね(笑)

インターネットや新聞を見て情報収集するのではなく、何が大切で何を求められているのかということを現場の生の声を聞いてそれに対してサービスを行うというビジネスの組み立て方は地方ならではでないでしょうか。

それに都会で5千人のユーザーを作るとなるとハードルが高いですが、地方で5千人集めるのは他に競合がないというのもあってこっちの方が圧倒的にビジネスとして成立しやすいですね。

代官山ワークス丸山社長に聞く、これからの働き方

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子どもたちへつなぐ農家の未来

- 地方の農家がダイレクトに都会の消費者に販売できるようになるなど変化していますが、農業のこれからの働き方や仕組みについてどう思いますか?

農業の地位が低いとか低所得化と言われていていますが、農家を取り巻く現状を何とかしないといけないと思っています。

そのためにも、農家のイメージを子どもたちが「カッコイイ!」と憧れるようにしていきたいですね。第1次産業である農業自体を格好良く儲かる産業にしていく、そうならないと農業が続かないですよね。あと何年でそのような状態にできるかが勝負ですね。

今の事業の一番先の相手は誰かなと考えた場合、未来の子どもたちなのかなと思いますね。今の子どもたちに対してどういうものを残せるかというのがとても大事だなと。

- 農家の方が子どもには後を継がせたがらないという話も聞きますが、どうなのでしょうか?

うちも農家ですが、農家の後継ぎで30代40代の人はとても少ないです。これまでのシステムでは、こだわって作ったものでも近隣農家の同じ作物と一緒にされ、全部まとめて同一価格で出荷される。自分たちならではの独自性も活かせず、こだわりさえも関係なくて怠けた方が得になってしまう。そういう時代を私たちの世代は見てきましたから。

農業が変わって、子どもたちが後を継ぐようになれば、さらにその子どもたちも継いでくれるんじゃないかなと。

- 最近は地産地消といわれていますが、近くのエリアだけだと経済的に厳しいのですか?

逆に今まで地産地消をしてこなかったから農業が厳しい状況なのではと思います。東京ばかり見過ぎて、地元のものを食べるということをしてこなかったのも要因じゃないでしょうか。周辺地域には数万人の人が住んでいるのに、その人たちにアプローチしないで東京の市場に出ていく。そしてよく分からない評価をされ、「やっぱり売れないなぁ」となっていたのが今までの状況だからです。

そういう世の中を変えていくには消費者を教育していかなければならないと感じます。先生のように教えて伝えるのではなく、一般の消費者が農家と直接繋がることで現実を知ってもらいたいですね。

これからの働き方 第一次産業をつなげる仕事

- 代官山ワークスでは、新しい働き方への取り組みなどがありますか?

今後神山で作った仕組みを九州、沖縄、海外の台湾やシンガポールなどにも広げていきたいと考えています。そうなったときに、どこにいても仕事ができる自由な働き方を提案できたら。「夏は暑いから東京じゃなくて北海道で働こう!」というノマド的な考え方も、農家の現場により近くなるので良いですね。

- 女性の働き方について思うところはありますか?

「農業しなさい」と言いたいですね(笑) 女性の活躍のフィールドは食だと思います。お客さんにとっても、食べ物のことは女性から勧められた方が説得力がありますよね。

食の分野では、料理研究家、フードコーディネーターなど作る側の仕事には女性も多いですけど、より農業の現場に近いところで活動している人はまだまだ少ないです。

- もっと活躍できますか?

活躍できると思いますよ! 農家にならなくても動画の作成をしたり記事を書いたりして農家のプロモーションを担うなど、農家の右腕的な存在が増えると良いですね。

 

 

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