2017年9月9日 更新

業界の中の人が語る「クリエイティブ業界のワークライフバランス」とは

クリエイティブ系の3社の方たちが語り合いました

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長時間労働の是正や生産性向上が叫ばれる昨今ですが、広告やWeb、ゲームなどの企画・制作会社をはじめとするクリエイティブ系の業界では、働き方を変えるのが難しいと考える人が多いようです。仕事とプライベートの線引きが難しいとされるクリエイターの働き方は、今後どう進化をしていくのでしょうか。4月に行われたイベント「クリエイティブ業界に、ワークライフバランスはあるのか。」では、業界を代表する3社からゲストを招いてディスカッションが行われました。

 

 

それぞれの会社が打ち出す「ワークライフバランス」のための対策とは

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今回のディスカッションでは、サイバーエージェント(以下CA)で採用担当をしている渡邊大介さん、面白法人カヤックの管理本部/広報担当の加勇田雄介さん、ワイデン+ケネディ トウキョウ(以下W+K)の広報担当の佐藤早苗さんの3人に、飛び入りでW+Kのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターである長谷川踏太さんも登場。イベントの主催者で、TOKYO WORK DESIGN WEEKオーガナイザーであり、「&Co.,Ltd」代表取締役の横石崇さんの進行のもと、それぞれの会社の「働き方」について語られました。

 

大切なのは「会社への安心感」。そのためには「徹底的に障害を排除」する

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広告からゲーム制作まで幅広い事業を展開し、クリエイティブ業界の中でも規模の大きい会社であるCAでは、「仮にワークライフバランスを保つための制度を作っても、それを社員が活用できないと意味がない。制度を浸透させることが重要」として、制度を浸透させるために「言葉の開発」に重点を置いてきたそうです。


「『家賃補助制度』は『2駅ルール』、『女性活躍促進制度』は『macalon』など、社内で流通しやすい言葉を意識して制度名称を考えてきました。人事、あるいは人事制度というものはいわゆる『お役所仕事・言葉』で遠い存在に感じてしまいがちですが、言葉を変えるだけで、社員にとってより身近に、理解しやすく使いやすい制度になるんです」と渡邊さん。


こうした工夫の他にも、ワークライフバランスには「障害の排除」が大切だと言います。 「ワークライフバランスはやじろべえのように、片方の手には仕事、もう片方にはプライベートがあって、お互いがゆらゆらしながら、時には手の長さを変えながら、バランスを取っているものだと思います。このバランスが壊れたら、社員も壊れてしまい、ひいては組織が倒れてしまう。そして、バランスを壊すきっかけは、ほんの小さなできごとだったりするんです」


CAでは様々な障害や組織課題を解決し、安心して社員が働くことを目指して、2年前から「GEPPO(ゲッポー)」というシステムを導入。月に1度、社員が体調や仕事の状況を書き込んだものを人事が確認し、何か問題あれば解決へ動くというもの。


「働く人間に『ワークライフバランスはこうあるべき』というマニュアルは存在しません。ですが、『会社に安心感があればクリエイティブが発揮される』ことは統計として確認されています。そこで、安心感を持ってもらうために、1人1人が抱えている『障害』を徹底的に排除していこうというのがCAの考え方です」


深夜から始まる会議、延々と続く長時間労働……かつての広告業界で当たり前のようにされてきた働き方から、いち早く脱却を目指したCA。そこには、1人1人が安心して働ける場を提供し、思う存分挑戦してほしい、という思いがあったようです。


 

誰かにとってのホワイト企業は、誰かにとってのブラック企業である

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面白法人カヤックの加勇田さんが問題提起したのは、すべての人にとってのホワイト企業は存在するのか、ということでした。


「面白法人は多様性を重視する組織戦略をとっていて、多様性を守るために、非効率であることは承知の上で、可能な限りルールを決めないことを基本方針にしてきたほどです。仕事に人をつけるか、人に仕事をつけるかでいえば、間違いなく後者の組織で、一芸をもった社員の入社をきっかけにして、新しい職種ができる、子会社が設立されることも珍しい話ではありません。ただ、一般論では仕事に人をつけるほうが、効率化がはかりやすい。つまり、あえて構造的に効率化が難しい組織戦略を採用しているんです。


そういった構造の中でも、効率化するための仕組みづくりにも最大限取り組み続けることは大前提として、人に仕事がつくことに面白みを感じている社員に対して、その根本を犠牲にしてまで、効率化を優先することは、はたして正しいのか。もしかしたら弊社の社員にとっては、それが『ブラック企業』ということもありえると思っています。」と加勇田さん。


そこで面白法人カヤックでは、「誰に嫌われる組織であるか」を明確にし、カヤックを嫌わない、つまり組織の文化に合う人がメンバーとなるようにしているそう。そのために、採用方法についても、独特の工夫が取り入れられています。


「すべての人にとってのホワイト企業が存在しないのであれば、マッチングの問題。仕事に人をつけることで仕事を早く終わらせるという価値観もあっていいと思いますが、そういった価値観の方が弊社に入社すると、お互いにとって不幸になる可能性が高い。であれば、多少の効率を犠牲にしても、人に仕事をつけることで、人に合わせて組織が変化することに面白みを感じてくれる方しかエントリーしない採用方法はないのかと、試行錯誤しています。その一例が、代表的なものは検索結果が履歴書になる『エゴサーチ採用』です。これは検索機能を利用したもので、応募者が指定したワードを入力したときに表示される検索結果で選考する採用方法です。」

他にも、社員全員が人事の肩書を持つ『ぜんいん人事』など、独自の制度を持つ会社ですが、こうした工夫には、「社員が主観をもとに行動を起こさないと働いていけない会社である」という理由からだそう。


加勇田さんは、「採用方法ひとつにしても、誰に嫌われるかを決断するのは企業側の義務だと思っています。そうすれば、『この会社自分には合わない』と感じる人のエントリーは相対的には少なくなるでしょう。『ルールを決めない』ことを決めたからこそ、誰にとってのブラック企業なのか、もしくはホワイト企業なのかが明確になるのだと思います。事業内容が幅広く曖昧だからこそ、会社の方針は明確化して、お互いがより良い環境であることを大切にしています」と言います。


お互いの幸せのために、会社ができることを最大限取り入れ実行する面白法人カヤックからどんなものが生まれてくるのか、今後の動向にも注目です。

 

「世界最大の独立系広告代理店」がクリエイティブを追求できる理由とは?

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W+Kは、株式公開をしていない独立系広告代理店。これは、「しがらみに囚われず、クリエイティブに集中する」という会社の方針からだそう。


そのため、クライアントとの関係性も、日本の広告代理店とは180度違います。


「W+Kネットワーク内には『The work comes first(いい仕事が第一優先)』という標語があるんですが、これはプライベートをおざなりにしても仕事を取るという意味ではなく、『良いアウトプットを作り出すことが最優先事項。社内の政治的なことなど、それを関係のない問題事象で邪魔をさせない』という意味。なぜならば、最高のアウトプットができれば、その他の問題も解決できると考えているからです」と佐藤さん。


まずはこの標語をクライアントに見せて、納得できるかどうかを判断してもらうそう。


「どれだけ大きな企画であっても、私たち、クライアントともにいいものが作れないと判断すれば、仕事は引き受けません。日本ではクライアントが優位になってしまいがちですが、お互いに『いいもの』を追求するためには、私たちが『NO』と言える立場であることが必要です」


また、「CAさんや面白法人カヤックさんのような、オリジナリティのある制度は特にありません」というW+Kですが、個々への対応はかなり柔軟なようです。


長谷川さんからも、「社員の1人から『子育てを地方でしたい』という要望が出たことがありましたが、その時には、リモートワークを使用するなどの対策をして引き続き仕事をしてもらいました。彼からは『以前より仕事がはかどるようになった』と言われましたね(笑)」というエピソードが語られました。


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ここで、外資系であるW+Kへ、「現在の日本の働き方改革」をどう感じるかという質問が上がりました。

「社員の育休や産休は『当たり前のこと』として捉えられています。国際色豊かな職場ですから、LGBTについてもしかり。今のままで会社は成り立っていますから、改めて『働き方改革』に乗って、何かを変えなくてはという発想はありません」とのこと。現在、日本が推進している「働き方改革」の土壌がすでにできあがっているようです。

 

「働き方改革」が「働かされ方改革」にならないために、納得できる働き方を追求しよう

ワークライフバランスとは「仕事とプライベートの調和」ですが、今回登壇した3社にも見られるように、それぞれの会社で「普通」の基準はかなり変わってきます。クリエイティブ業界は、それが顕著に表れる職場かもしれません。そのため、クリエイティブな仕事をしていこうとするならば、業界に入るというよりも、どの会社で、あるいは誰と働くかをよく見極めることが、重要になるのではないでしょうか。


ディスカッションの中で、「『働き方改革』は『働かされ改革』だ」という言葉が出てきました。個人は「自分が納得する働き方を自身で追求すること」、会社は「常にオープンで可視化された組織であること」が今後の「働き方改革」で必要なことではないかと感じました。

イベント「クリエイティブ業界に、ワークライフバランスはあるのか。 〜世界を代表する3社の働き方改革への挑戦〜」(主催:&Co. 協力:BUDDYZ )

イベント「クリエイティブ業界に、ワークライフバランスはあるのか。 〜世界を代表する3社の働き方改革への挑戦〜」(主催:&Co. 協力:BUDDYZ )

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