2016年10月13日 更新

子どものため、そして自分のためにスペインからイギリスへ移住【ボッティング大田朋子さんのくらし方・働き方・前編】

大学時代の海外インターンをきっかけに海外生活を続けているボッティング大田朋子さんに、これまで住んだ場所のことや、家族と仕事への思いを伺いました。前・後編に分けてお届けします。

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ボッティング 大田 朋子さんは、学生時代にドイツでインターンをして以来、世界各地で生活してきました。この8月には、5年暮らしたスペインからイギリスのカンタベリーに、イギリス人のパートナー、6歳と3歳の子ども達と一緒に引っ越したばかりです。その時々の状況に応じて暮らす場所や仕事を選択し、家族とともに自分らしい生き方を模索する大田さんに、ダイナミックな行動の裏にある考え方や、今後の展望を聞きました。

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暮らした場所は8カ国

- これまで、アメリカ、ドイツ、インド、メキシコ、アルゼンチン、スペインで生活をし、先日イギリスに引っ越されました。日本も入れると8カ国ですね。最初にアメリカに行かれたのはいつですか?

アメリカとドイツは学生時代です。AIESEC(アイセック)という、経済やビジネスを勉強している学生の団体が世界中にあるのですが、そこがいろいろな海外インターンシップを紹介しているのです。本格的に海外インターンを探す前にアメリカに滞在したことがあったので最初は英語圏でインターン先を見つけたいとエージェントや企業を回っていたのですが、結局ご縁をいただいたドイツでインターンをしました。

海外インターンに興味を持ったのは、海外で生活してみたかったというのもありますし、卒業後に何をしたいのかを考えるにあたって実際の仕事というものを体験したかったからです。当時の日本ではアルバイトくらいしか就業体験の機会がなかったので、海外インターンならその両方が叶えられそうだと思って。

 

- 卒業後も海外で仕事しようと考えていたのですか?

いえ、ドイツに行ったのが大学最後の年で、そのときは日本の企業の内定をいただいていました。卒業までドイツでインターンをして、帰国するつもりだったんです。ですが、インターンをしているうちに、色々分かってきたことがあったんですね。「自分はこういう形で働きたい」、「こういう働き方は嫌だ」とか……。それで結局、ドイツでのインターン中にお声をかけていただいた外資企業に就職することを選びました。

 

- その次のインドというのは?

就職したのがシティバンク銀行の金融ソフトウェアを開発しているi-flexという企業だったのですが、その会社のオフショア開発の現場であるインドに赴任することになったんです。バンガロールという、「インドのシリコンバレー」と呼ばれているところですね。

 

- なるほど。その後起業されたんですよね。

はい。メキシコとアルゼンチンでは自分でビジネスをしていました。大きな失敗も経験したりして、20代は事業の運営に追われる毎日でした。

 

- 色々な国に行かれていますが、どういう視点で行き先を選んで来られたのでしょう?

インターンをしたのは、ドイツのドレスデンの企業でした。アメリカ、アジア、ヨーロッパなど、いくつかインターン先の候補をもらったのですが、ベルリンの壁が崩壊してからちょうど10年目という時だったので、そんなタイミングで旧東ドイツにいられるって大きいな、と思って選びました。メキシコやアルゼンチンは、自分のフィーリングに合う場所でした。アルゼンチンではブエノスアイレスに住んでいましたが、すごく好きな街でしたね。

 

- パートナーと出会われたのはいつですか?

ブエノスアイレスにいたときです。相手もアルゼンチンで起業していて、今もその会社を経営しています。当時アルゼンチンは経済破綻が起きた直後だったので、人件費やオフィスの賃料も安くて、ビジネスを立ち上げるのに条件の良い場所でもあったんですよ。

子どもができて、住む場所に対する価値感が変化した

- その後スペインに移住されたのは、なぜですか?

ブエノスアイレスはふたりで暮らすには良かったのですが、長男が生まれてからは暮らす場所に対する視点が変わったんですね。アルゼンチンは私の母国である日本から一番遠いので、子どもを連れて帰るのも大変ということもあるし、何よりも治安や教育の面で不安が出てきたんです。

場所柄、経済や政治の状況次第ですごく平和なときもあれば、警察官が街でウロウロしていなければ危ないような時期もあって。住み始めたときは平和で安全な場所だったのですが、だんだん身近で犯罪が起きるようになり、子どもを育てる場所としてはどうかなと。

それに、教育システムと社会というのは密接につながっているものなので、政治家の賄賂が許されているようなところで教育を受けさせることにも疑問を感じました。

夫婦でいろいろ考えて、相手はアルゼンチンに会社があるので「自分がいなくても仕事が回る体制が作れたら出ようか」という話になりました。

 

- スペインではバレンシアにいらしたんですよね。

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バレンシアの小学校のファミリーディでパエリアを囲む人々

アルゼンチンを出て、一時的に相手の故郷であるイギリスのカンタベリー郊外に滞在しました。彼はそのまま住みたかったんだと思いますが、私は当時はあまりその場所が好きになれなくて……。ふたりが幸せになれる場所はどこかと考えて、スペインを選びました。

まず、相手がイギリス出身ということで、ヨーロッパ内だとVISAが取りやすかった。それから、彼が仕事でアルゼンチンの人と連絡を取り合うのに、アジアだと昼夜逆になってしまうので難しかったということもあります。治安の面で安心で、VISAが取りやすくて、私たちふたりともスペイン語がしゃべれたので、スペインだと。

バレンシアはふたりとも行ったことがなかったんですけど、Google マップを見ながら、適度な都会で自然との接点も近いような、大きすぎない街を探しました。バレンシアは市内を上から下まで歩いて移動できるくらいのサイズが、ちょうど良いと思ったんです。

 

- 地図を見て住む場所を選ぶ、それはすごいですね!

本当は下見に行けたら良かったんですが、子どもも小さいし、引っ越しの荷物もあるし……、地図だけ見て決めちゃったんですね(笑)。実際に行ってみると、「地中海の生活」というイメージどおりのところもある一方で、思ったよりコミュニティが閉鎖的だったりとか、「えーっ?」と思うようなこともいっぱいありました。でも海外から来た人もたくさんいるシェアオフィスなんかもあって、私達には暮らしやすい街でしたね。結局5年住み続けることになりました。

イギリス行きが家族にも自分にも良い選択だと思えた時

- そして先日、イギリスに移住されたのはどういう経緯だったのでしょう?

子育てのしやすさや、子どもたちに与えられる教育について考えたことが大きいです。やっぱり夫婦どちらかの家族の近くに住んだ方が子育て期は楽だということがひとつ。そしてイギリスでは、一人ひとりが違うということを普通に受け入れて、それに応じた教育の仕方をしているという点で、私たちがしたい子育てと共通項が多かったんです。良い教育を受けられるという点では、フィンランドとかオランダといった国の話も耳に入ってきますが、私たちが取りやすい選択肢の中では、イギリスが良かったんですね。

カントリーサイドでの暮らしにも、以前はあまり魅力を感じなかったのですが、義父が農業をしていて、子どもたちを連れて行く度にトラクターに乗せてくれたり、大自然に触れ合うことができて、子どもの頃からこういう経験ができるのはすごくいいなと。自分たちがしたいことを冷静に考えてみると、「ここってすごく恵まれている環境じゃないか!」と思えるようになったんです。

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おじいちゃんの畑で収穫のお手伝い

- 大田さんの心境の変化を、旦那さんは喜んでいるのでは?

そうですね。場所に影響を受けやすい人とそうじゃない人っていると思うのですが、私は前者で、人とのつながりとかお天気とか、周りの環境を重視する方です。相手は、家族が一緒に幸せにいられて、大事な仕事に打ち込めればどこでも良いというところがあるので、私が納得できるまで待っていてくれたんでしょうね。

「いつイギリスに行こうか」ということは、2年くらい前から話し合っていたんです。バレンシアに住むことを決めたときは急でしたけど、今回は丁寧に下準備をして、機が熟しきって答えがでた、という感じでした。何度も夫婦でしていた話し合いのなかでふと、自分の中でストンと落ちた瞬間があって。最初は「子どものために」ということだけでイギリス行きを考えていたんですけど、それが私にとってもまたとないチャンスだと思えたからだと思います。10年後を考えた時、仕事だけではなくて色々な意味でこのままスペインにいるよりも何十倍も可能性というか幅が広がりそうだと。「自分にとってもチャンスなんだ」、そう気づいて背中を押されたような気がしました。

後編では、仕事への思いや、この夏の息子さんとの特別な思い出について伺います)

ボッティング大田 朋子

ボッティング大田 朋子

ライター。同志社大学(商学部)卒業。アメリカ、ドイツ、インド、メキシコ、アルゼンチン、スペインを経て2016年夏より英国在住。「複数の国で働くノマドママ」として各メディアから注目される。『Japan Class(東邦出版)』で「情熱の国スペインに住んでみたら」コラム連載中。執筆参加書に「値段から世界が見える! 日本よりこんなに安い国、高い国 (朝日新書)」「「大好きに会いに行こう。世界のお祭り&イベントガイド(サンクチュアリ出版)」、「しらたきヌードルダイエット(学研)」がある。英国人のパートナーと多国語を話す息子娘の4人暮らし。
世界が拠点な生き方&子育てサイト:http://tomokoota.wordpress.com/
大田朋子ツイッター:https://twitter.com/TomokoOta

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