2017年6月27日 更新

検討が進む「勤務間インターバル制度」 ホンダではすでに40年以上の歴史

ホンダが働きやすい職場作りに取り組んできた背景には企業の哲学がありました

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3月に決定した働き方改革実行計画に基づき、インターバル制度についての議論が始まっています。

初の有識者会議が5月に行われ、既にインターバル制度を導入している会社の事例が紹介されました。その中で際立った存在なのが、1970年代からインターバル制度と同様の制度を取り入れている本田技研工業株式会社。どのような取り組みを行っているのでしょうか? 

 

 

インターバル制度とは

勤務間インターバル (11128)

インターバル制度とは、業務が終了してから次に開始するまでに一定の間隔「インターバル」を設ける仕組みです。上記の図のように勤務間インターバルを導入すると、夜遅い時間まで勤務した場合、翌日の始業時間を繰り下げることになり、労働者はしっかりと休息をとることができます。

厚生労働省は、29年4月よりインターバル制度に取り組んだ中小企業を対象に助成金を支払う「勤務間インターバル導入コース」を新設するなど、導入に力を入れているところです。

『職場意識改善助成金 勤務間インターバル導入コース(新設)のご案内』

現在は努力目標ですが、義務化するように求める動きについては「幸せにくらし、働くための第一歩。最低限の休息を確保する『インターバル規制』」でご紹介しています。

 

ホンダのインターバル規制

驚くことに、ホンダにおいてはインターバル規制に似た取り組みを1970年台の初めからスタートしてきました。 実際には、インターバルという文言ではなく「深夜勤務における翌日出社時間規制」という名称で22時を超えて時間外勤務を行う場合に労働者の休息時間を確保するというものです。この制度では、22時を超えて勤務を行った場合、翌日の出社時間までに12時間空けることとしています。

例えば23時まで出社した翌日は、12時間のインターバルをとるため11時の出社となります。 ただし、標準労働時間は9時から18時となっているため、12時間のインターバルをとった際に9時以降の出社となっても9時から出社時間までの時間は勤務したものとみなされるそうです。

 (11132)

厚生労働省「勤務間インターバル制度導入事例集」の情報を元に、筆者が作図

「本社」「研究所」「工場(製作所)」という事業領域ごとに運用方法を分けており、上記が適用されるのは「本社」と「研究所」。「工場」においては0:29までの勤務→翌日の出社は10時、 0:30~2:29までの勤務→翌日の出社は13時となっているそうです。

いずれにしても、このインターバルが適用されるのは設備トラブルやイベント準備などの突発的に起こる事象に対応するものであって、日常的には滅多におこらない というのです。

というのも、ホンダではインターバル規制だけにとどまらず、労使の協力により労働時間短縮へ向けた数々の取り組みの歴史があったのです。

 

他社を圧倒する有給取得率

ホンダの労働組合による啓発ポスター (内閣府 第3回休...

ホンダの労働組合による啓発ポスター (内閣府 第3回休み方改革ワーキンググループ 本田技研工業株式会社提出資料(2))より

インターバル規制の導入以前、1960年代とかなり早い段階から週5日制や時間外労働の軽減、有給休暇取得推進について議論が始まっていたそうです。

注目すべきは1970年にスタートした「年次有給休暇カットゼロ運動」という取り組み。

通常、有給休暇の繰越し限度日数は20日です。21日以上の有給休暇は次年度に持ち越せず、消滅しますが、その消滅する有給をゼロにしようというのが「年次有給休暇カットゼロ運動」です。カットゼロを前提に年間で計画的に有給休暇を取得しようと推進している結果、平均有給休暇取得日数は18~19日と多く、ある調査では6年連続してホンダがトップを誇っています。

(参考:「「有給休暇を取得しやすい」300社ランキング ホンダ6年連続1位!取れない会社との違いは」

有給取得率が外国と比較して最下位というデータもある日本(参考: 日本人の「有給休暇消化率」が低いのはなぜ? よく働きよく休む社会の実現へ向けて)。日本企業でありながらホンダについては驚愕の数値となっており、他社の追随を許さない状況となっています。

Honda | サステナビリティ | 人材 | 人材重要項目とデータ:働きやすい職場環境づくり (11150)

 

根底にある会社の哲学

根底にあるのは創業以来の基本理念「人間尊重」。その理念を実現するために創業者である本田宗一郎氏の「よく働き、よく遊べ」という考え方が脈々と受け継がれているようです。

時間は有限であるからこそ貴重、その資源を有効に使おう。それは会社という組織の中であっても個人の権利として当然持っているべきだという考え方が様々な取り組みから感じられました。

それにしても、ポスターの絵からは昭和のレトロ感が漂っているというのに標語自体はまったく古さを感じないことにホンダの先進ぶり、ひいてはこの何十年社会全体がいかに進んでいないのかということを痛感します。時代を牽引する企業の取り組みに今後も注目したいところです。

(参考: 厚生労働省 勤務間インターバル制度導入事例集

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西谷 じゅり 西谷 じゅり