夫の赴任先マレーシアで在宅ワーク中。「夫をリタイアさせるのが私の夢」

元々保育士として働いていた甲斐田さんは、現在、ご主人の海外赴任でマレーシアに暮らしています。英語の言葉の壁や子育ての忙しさをバネに、オンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)の仕事にチャレンジしました。そんな甲斐田さんの描く将来の夢とは、どんなものなのでしょう。

ご主人の海外赴任のため、マレーシア・クアラルンプールに家族4人で暮らす甲斐田礼華さん。結婚前は保育士の仕事に就き、海外にはなじみがなかったといいます。新しい環境に飛び込み、四苦八苦しながらも「少しでもお金になる時間の使い方を」とオンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)の仕事をスタート。そんな中で、仕事への意識も変わり、「家族を支えられるまで成長したい」と思うようになったそうです。どんなきっかけで、甲斐田さんは変わったのでしょうか。

インタビュアー(ライター)

鈴木せいら
札幌市出身。横浜国立大学大学院工学修士修了。2007年夏より、函館へ移住。制作会社でライティング・編集業務を行い、実用書・フリーペーパー等のコンテンツ制作を担当、2011年よりフリーランスに。現在、「HELP YOU」プロフェッショナルライター。理系の知識を活かしたサイエンスやアカデミー系の文章から暮らしにまつわるエッセイ、インタビューなど幅広く手がける。

孤独で寝てばかりの毎日から 仕事と出会い、海外暮らしを楽しめるように

在宅ワークを始めたきっかけについて、教えてください。

2013年に主人の海外赴任が決まり、それと同時に結婚をして帯同することになりました。それまで勤めていた保育園は退職しました。子どもの年齢は14歳と1歳です。私の年齢は28歳なのに14歳の娘がいるのは主人が再婚で、育てていた娘と一緒に生活をしているからです。シンガポールに続き、マレーシアは2カ国目の海外生活になります。どちらの国も、結婚前に訪問したことはありませんでした。気候も言葉も食べ物も、何もかもが違い、加えて長女との生活も始まったので、海外在住者として、ステップマザーとして、困難なことや悩むことがたくさんありました。

主人の海外勤務は今後も続く予定で、東南アジアのいずれかが生活基盤になるかと思われます。海外へ来てからは専業主婦として毎日を過ごしていたのですが、主人は出張が多くて不在がちですし、一歩外へ出ると英語が飛び交い、言葉の壁を感じる日々。ストレスが溜まることが多くて、時間さえあればソファで寝てばかりでした。

そんなある日、当時住んでいたシンガポールの求人を見ていると、パートタイムで日本人の幼稚園教諭募集がありました。応募し、採用されたのですが、すぐに妊娠が分かり、里帰り出産を希望したために1年も経たずに退職しました。

新しい家族が増えてからは、毎日育児と家事に追われる毎日を繰り返していましたが、少しずつ生活リズムが整って自分の時間を持てるようになりました。その時間を以前のようにだらだらとするのはもったいないと感じ、「どうせならお金になることをしたい」と、在宅でできる仕事をネットで探しました。そうして見つけたのが「HELP YOU」のオンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)募集。在宅で働いた分だけ、お給料をいただけるというシステムに魅力を感じてすぐに応募しました。

始めは、「空いている時間でできることをやろう」と思っていたのですが、他のアシスタントとのやり取り、クライアントへの関係の構築など、会社で勤めていることと変わらないような取り組みが「もっと真剣にやりたい」という気持ちを沸かせました。
元保育士で、他のアシスタントとは違って秀でたスキルがなく、多少の劣等感はありましたが、自分ができる精一杯のことを頑張っていこうという気持ちで仕事をしてきました。

お子さんの成長につれて、生活に変化はありましたか?

現在は子どもが大きくなってきたので、保育園に預け、身軽になった時間を仕事にあてています。今は在宅の仕事の他に、料理サークルや、毎週近所のマーケットで日本食屋台を開いたりしています。サークルは日本人の主婦の方が集まって、クリスマスメニューなど季節のものや、韓国式手巻き寿司といった海外文化に触れた料理など、メンバーの自宅で調理し、食べるという活動をしています。お子さんがいる方いない方、20代から40代まで幅広く参加されていますが、皆さん社交的で美味しい料理とたまにお酒も楽しみながら、コミュニケーションの場としても機能しています。屋台の方は、もう一人の日本人パートナーとお店をやっています。私は店先で唐揚げやコロッケといった日本のお惣菜を揚げていて、日本人、ローカルの人問わず多くのお客様からご好評をいただいています。

いつか起業したいという夢を叶えるための勉強もしています。「起業の夢」はまだ具体的な形にはなっていないのですが、世界中に日本の子どもたちが安心できる居場所、力を発揮できる場があってほしいと思っています。それをサポートできるような事業を展開できたら、と。この気持ちは、サークルや屋台など、私自身が海外で新しいことに挑戦し、経験してきた中から生まれたものです。

ソファで寝転んでいた毎日がこれだけ充実するようになったのも、働く機会に恵まれたから。仕事は大変、疲れるもの、できればラクしたいと思う時もあります。けれど、人間が人間らしく生きるのは人が動くと書いた「働く」ことがベースになっていると思うのです。仕事量、内容は問いません。誰かのために体を動かすことが、その人自身のあり方をより良いものへと導いていくと考えています。

家にいながら、そういう機会に恵まれたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

海を越えてクライアントと対面 オンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)としての意識が深まる

在宅ワークを始めて、印象深いお仕事はありますか?

イレギュラーな案件ですが、私のクライアントにマレーシアでのビジネス展開を考えている方がいて、その方がクアラルンプールにいらっしゃる機会があったのです。私は現地案内をしたり、知人との情報交換の機会を設けたりしてクライアントの訪問のサポートをしました。普段は「チャットワーク」がメインのコミュニケーション手段でしたが、直にお会いし、言葉を交わすことでより親密な関係性を築けたことがよかったと感じています。私の大好きなマレーシアにお越しいただいて、ビジネス展開をしていきたいという思いを改めて聞かせていただき、このクライアントのお力になりたいという気持ちも湧きました。クライアントとの、リアルな人と人との関わりができたことが私の仕事意識を更に燃え上がらせるきっかけにもなり、携わることができて光栄でした。その思いは、今でも色あせていません。

オンラインアウトソーシング(在宅ワーカー)として働いてみての、率直な感想は?

海外で仕事に就くことが困難な私にとっては、貴重な収入源となる大事な仕事です。いただけるお仕事が増えてきたので、生活の支えとなっているのを実感しています。私と同じように、結婚して、積み上げてきたキャリアを手放して旦那様の海外赴任に帯同している友達に、「キャリアを活かせる仕事だよ」と勧めてあげたいです。現在の仕事内容は、主にクライアントからいただくデータの整理やリサーチがメインです。
最近はライティングのお仕事もいただいています。「HELP YOU」では、チームでの仕事が中心となるので、いい意味の緊張感をもって仕事に取り組めると感じています。

一日のスケジュールを教えてください。

5:30 起床、朝食準備、メッセージの確認、時間があれば掃除
7:30 子どもと朝食
8:40 子どもを保育園に連れて行く
9:00-15:00 仕事、家事、夕飯の仕込み、買い物、運動、料理サークルなど。仕事量と納期によって過ごし方が変わります
15:30 保育園バス到着、子どもとプールや公園で遊ぶ
16:30 夕飯の支度
17:30 子どもと夕飯
19:00 子どものお風呂、寝かしつけ
21:00 仕事、勉強、翌日の朝食の準備
24:00 就寝

家事・子育てと仕事の両立はできていますか? 仕事に対する家族の理解は?

始めは、生活における仕事の割合は小さいものでしたが、徐々に大きくしていったため、家事に手が回らなくなり悩んだ時期もありました。ワークライフバランスの難しさを感じました。ですが、今は子どもを保育園に預けることができたので、その間は仕事中心に、子どもがいるときは家族のことを中心にと、メリハリをつけて過ごせるようになってきました。主人は仕事を応援してくれていて、いただいたお給料の話をしたら「そんなにもらえたの?!」と驚かれたこともありました。

夫にも夢を叶えてほしい そのために、自分が支えになれるように

今後はどのようなことに挑戦していきたいですか?

文章を書くことが好きなので、ライティング案件をもっとこなせるようになりたいです。仕事を始める前はブログを書いていました。今は時間を作ることが難しく更新できていませんが……。Facebookで日常生活に関する投稿をすることもあります。Facebookは海外でできた友だちとより仲良くなれるということもありますが、日本にいる友達や家族とも繋がることができるので、なるべく興味もって読んでもらえるよう心がけて投稿しています。

長期的な目標は何かありますか?

私の収入だけで、家族が生活できるくらいになりたいです(笑)主人をリタイアさせてあげることが私の夢、目標なんです。主人も起業してみたいという気持ちがあるのですが、家族を養っている立場なのでなかなか踏み込むことができません。主人が働いているから私たちは何不自由なく、幸せな日々を過ごせているのですが、男性は仕事にやり甲斐を感じることですごく輝いて、かっこよく見えると思っています。主人にも、イキイキと毎日を過ごしてほしいという気持ちがあって、安心して独立できるように私も頑張りたいんです。やってみたいことをやりきって、清々しい気持ちでリタイアしてもらって、「最高の人生を過ごしてほしい」という願いがあります。リタイアしてからは世界を旅してみたいと言っていました。旅のお供に私もいれたら…私自身も幸せだな、と想像が膨らんでしまいます。

今後、働きかたはどのように変化していくと思いますか? ご自分はどんなライフワークを達成したいですか?

昨今は、会社と自宅の往復で人生を終わらせていいのかと懐疑的になる人たちが増えてきていて、それは大切にすべき思いだと私は考えています。なぜなら、自分の人生は自分で決めるべきであり、何が自分にとっての幸せかもその人自身が定めるものです。なので、働き方も枠に捉われない、型にはまらない、自由なあり方に変わっていくのではないかと思っています。私自身も、自分の時間と家族のための時間を大事にしたいので、時間が制約されたり、拘束されたりする環境では働くことを望んでいません。自分で時間を作り、収入を得ていく働き方をしながら家族を支えていきたいです。

取材後記

海外で新しい家庭を築きながら多くを学び 起業の夢が広がる

家族を大切に思い、仕事に対して真剣に取り組む甲斐田さん。様々な環境の変化に飲みこまれず、ご自身の力で様々なことに挑戦し、切り拓いていく姿勢は感動的です。「結婚後に新しいことに挑戦する」というのは、なかなか勇気のいること。でも、一歩を踏み出し仕事をしていく中で、また人生の次の夢が広がっていく。私たちも、日々の暮らしを送りながら、やりたいことをあきらめずに挑戦していきたいですね。

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