2017年5月8日 更新

人に優しい働き方への挑戦の記録。パプアニューギニア海産工場長の『生きる職場』

フリースケジュール制で注目されるエビ工場の働き方改革が書籍化

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パート従業員が事前連絡なしで働きたい日に働き、休みたい日に休むことができる「フリースケジュール制」を実践する、パプアニューギニア海産という会社をご存知でしょうか?

テレビでも多数取り上げられるなど、その斬新な働き方が大きな注目を浴びており、『くらしと仕事』でも昨年の夏、工場長の武藤北斗さんにインタビューしました

その武藤さんが4月に刊行された『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』をお送りいただきました。インタビューでは聞ききれなかったことやその後の状況などについても、詳しく書かれています。その中から、特に印象に残ったふたつのポイントを紹介します。

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最初から「超ホワイト企業」だったわけではなかった

ひとつめは、「超ホワイト企業」と言っても良い今の会社の状態は、最初からそうだったわけではないということ。改革が始まる以前の工場は今とは全く違っていたことが、この本には赤裸々に描かれています。問題のある職場を理想的な状態に変えることができた、という事実は、多くの企業にとって希望に感じられるのではないでしょうか。

本書によれば、以前の工場は一般的なシフト制で、「代替出勤も許さず、何事にも細かく書類の提出を催促し、挙げ句の果てには工場内にビデオカメラを設置して、事務所から工場を監視するという、今から考えればあきれるような管理ぶり」だったそう。

武藤さんとパート従業員の関係も今とは全く異なっていました。以前の武藤さんは営業や企画、人事など事務方の仕事を広く担当し、パート従業員と面談することはあっても、工場の中に入っていって日常的に言葉を交わすことはなかったのです。それではお互いの信頼関係を築くことは難しいでしょうが、当時は武藤さんがあえて「悪役」になることで、現場の統制がとれ、生産効率が上がるのだと考えていたのだそうです。

そんな武藤さんを変える、ふたつのできごとがありました。ひとつめは、東日本大震災で全壊した宮城県石巻の工場のパート従業員との関係。大阪に移転して会社を再建することを決め、彼らに解雇を伝えたとき、「これまでの関係性で、最後まで親しく話ができなかった」と、非常に後悔したそうです。

そして大阪に移転後、工場長だった社員が辞めることになり、武藤さんが工場長を引き継ぐことになったときのこと。その時になって初めてひとりひとりのパート従業員とじっくり話し合った武藤さんは、「パートさんたちが誰も会社のことを好きではない」ということに気付きます。そして、その後の改革へのきっかけとなる目標を得たのでした。

 面談の中で強く感じた「パートさんたちが誰も会社のことを好きではない」という確信と石巻で感じた後悔。その二つに突き動かされるようにして、僕は動き始めました。
 まず僕の頭に浮かんだのは、社員であっても、パート従業員であっても「うちの会社はこんな素敵な会社なんです」「こんなに働きやすいんです」、そしてできたら「私はこの会社を絶対やめたくありません」そんな言葉を言ってもらえる会社にしたいということでした。
via 『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』76ページ

 

自由な働き方が可能になる条件とは

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従業員たちにとって本当に働きやすい会社にしよう、そう決意した武藤さんは、フリースケジュール制を皮切りに、職場の改革をどんどん進めていきました。今いる9名のパート従業員のうち7名はフリースケジュール制の導入当時から働いていた人たちなのだそう。それ以前は入社して数週間で辞める人が何人もいるような状況だったというので、いかに働きやすい職場になったのかが分かります。

改革の成功要因は、武藤さんの従業員の声をよく聞く姿勢や、働きやすさにつながると思われることなら、常識にとらわれずにどんどん試してみるという行動力にもあるでしょう。でも一番大きい要素は、武藤さんの次の一文に示されています。

会社の中でフリースケジュールのようなルールが成立しているのは、職場に信頼関係が築かれ、なおかつ、そのための努力を会社も従業員もできているという証拠です。
via 『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』189ページ

武藤さんが工場長になった直後の信頼のない状態から上記のような状態になるまでに何があったのか。本書には、様々な努力、試行錯誤、配慮が重ねられてきたことが綴られています。その内容は、決して「食品加工工場のパート従業員」にしか通用しないというものではなく、正社員の事務職なども含む様々な職場で参考になるはず。世の中で「働き方改革」が喧伝される中、「本当の働きやすさって何だろう?」と疑問を感じる方に、ぜひ読んでいただきたい本です。

『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』(武藤北斗 著 イースト・プレス)

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